第5章 性能設計への応用
5.5 まとめ
第5章の参考文献
1) 本城勇介:地盤構造物の性能設計,土と基礎, Vol.50, No.1, pp1-3, 2002.
2) 日本原子力学会:日本原子力学会標準 原子力発電所に対する地震を起因とした確率 論的リスク評価に関する実施基準:2015,2015年12月25日.
3) Jennings, P. C.: Periodic Response of a General Yielding Structure, Proc. ASCE, EM2, pp.131-163, 1964.
4) Hardin, B. O. and Drnevich, V. P.: Shear modulus and damping in soils: Design equations and curves, J. SMFD, Proc. ASCE, Vol.98, No.SM7, pp.667-692, 1972.
5) 吉田望:地盤の地震応答解析入門, pp.52-55, 2000.
6) Towhata, I., and Ishihara, K.: Modeling soil behavior under principal stress axes rotation, Proc.
5th International conference of numerical method in geotechnical, Nagoya, Vol.1, pp523-530, 1985.
7) Iai, S., Matsunaga, Y. and Kameda, T.: Strain Space Plasticity Model for Cyclic Mobility, SOIL AND FOUNDATIONS, Vol32, No.2, pp.1-15, 1992.
8) 大竹雄,本城勇介:地盤構造物設計におけるモデル化誤差の定量化,土木学会論文集 C(地圏工学), Vol.70, No.2, pp.170-185, 2014.
9) 公益財団法人鉄道総合研究所編:鉄道構造物等設計標準・同解説-土構造物[平成25年改 編],平成25年6月25日発行.
10) Jennings, J. E. and Burland, J. B.: Limitations to the Use of Effective Stresses in Partly Saturated Soils, Geotechnique, 12, pp.125-144, 1962.
11) 阿部廣史: 技術手帳 不飽和土の膨潤とコラプス, 地盤工学会誌, Vol.59, No.10, pp.56-57, 2011.
12) 土木学会東日本大震災フォローアップ委員会原子力安全土木技術特定テーマ委員会:
原子力発電所の耐震・耐津波性能のあるべき姿に関する提言(土木工学からの視点),
平成 25年7月.
13) 公益財団法人鉄道総合技術研究所編:鉄道構造物等設計標準・同解説-耐震設計,
pp.203-207, 2012.9.
14) 仙頭紀明, 風間基樹, 渦岡良介:非排水繰返しせん断履歴後の再圧密実験と体積収縮特 性のモデル化,土木学会論文集, No.764/Ⅲ-67, pp.307-317, 2004.
15) 海野寿康, 風間基樹, 渦岡良介, 仙頭紀明:同一繰返しせん断履歴における乾燥砂と飽 和砂の体積収縮特性の関係,土木学会論文集C, Vol.62, No.4, pp.757-766, 2006.
16) 海野寿康, 谷茂:繰返しせん断ひずみ履歴に基づく液状化後の体積収縮量の評価に対す る試験制御や試験条件の影響,土木学会論文集C, Vol.64, No.4, pp.776-781, 2008.
17) 海野寿康, 仙頭紀明, 小野大和, 林健太郎:繰返しせん断ひずみ履歴を用いた砂質土の 液状化に伴う体積ひずみの評価法,土木学会論文集C, Vol.68, No.4, pp.680-694, 2012.
第6章 結論
6.1 各章のまとめ
第1章では,本研究の背景と目的を述べた.近年頻発する巨大地震により,従来あまり 顧みられてこなかった不飽和地盤の沈下による被害が頻発している.そこで,不飽和地盤 の地震時沈下現象のメカニズムを解明すること,そしてその推定手法を提案し実務設計に 適用することを目的として本研究を実施する旨を述べた.
第2章では,地震時の地盤沈下を扱った既往の研究と本研究の位置づけについて述べた.
はじめに,飽和地盤における液状化起因の沈下に関する既往研究について述べた.その後,
不飽和地盤の動力学特性に関する既往の研究や,現状の設計基準・指針類で扱われている 地盤の地震時沈下量評価方法について述べ,本研究との関係性および本研究における現象 へのアプローチ方法や観点の相違を示した.
第2章のまとめは次のとおりである.
① 土粒子と水と空気の三種類の媒体から構成される不飽和地盤は,水に満たされた土 である飽和地盤に比べて力学的に安定であること,二相系の媒体に比べて三相系の 媒体の動的な地震時相互作用を明らかにすることは難しいことなどから,不飽和土 の動力学に関する研究は後回しにされてきた感があり,研究は端緒についたばかり である.
② 飽和地盤の地震時挙動(動的挙動)に関する既往研究では,液状化現象を対象として きたことから,繰返しせん断試験を行う場合の試験条件は非排水条件で行われてき た.
③ 不飽和地盤の地震時沈下事例として,2007年新潟県中越沖地震の際に東京電力(株) 柏崎刈羽原子力発電所構内の埋戻し地盤に生じた事例を中心に,2008年岩手・宮城 内陸地震における建設途中のフィルダムに対する沈下予測計算事例,2011年東北地 方太平洋沖地震における仙台市の盛土宅地地盤に生じた被害事例などを取り上げ た.
④ 不飽和地盤を対象とした繰返しせん断試験の多くが非排水条件で行われている.そ の理由としては,不飽和地盤に対しても地震時の液状化の懸念が第一に考えられて きたこと,また,液状化に対する抵抗を上昇させるための方策としての地盤の不飽 和化を目的とする研究が主に行われていることによる.
⑤ 本研究では,液状化に起因しない不飽和地盤の沈下現象を対象としている.したが って,繰返しせん断試験を実施する際は,地盤中の間隙水が移動するものと仮定し た排水条件のもとで行うことになる旨を述べた.
第3章では,不飽和砂質土試料を用いた室内の繰返しせん断試験,振動台実験を実施し,
それらの結果・データから,不飽和砂質地盤が地震時に生じる沈下の主要因である繰返し せん断による体積収縮量の定量化とメカニズムに関する考察を行った.
第3章のまとめは次のとおりである.
① 不飽和砂質土試料に対し中空ねじり排水繰返しせん断試験を実施した.試験結果よ り,繰返し回数が増加するに従ってせん断剛性が大きくなりせん断ひずみの発生量 は徐々に小さくなること,体積ひずみはせん断ひずみの変化に対応して載荷初期に 急増し繰返し回数が大きくなってからは単調増加すること,といった不飽和砂質土 の繰返しせん断過程における体積収縮特性が定量的に把握できた.
② 非排水条件下の飽和地盤では,繰返しせん断荷重を受けることにより剛性低下を生 じるのに対し,排水条件下の不飽和地盤では,繰返しせん断荷重を受けることによ り剛性硬化(密実化)を生じて体積収縮する,という相違が明確になった.
③ 異なる地点から採取した試料において,それぞれ初期含水比を変化させた供試体を 用いて排気排水条件の中空ねじり繰返しせん断試験を実施し,それぞれの体積ひず み量を比較,考察した.その結果,締固め曲線が鋭い砂質土ほど含水比を変化させ た時の繰返しせん断による体積収縮特性の変化が大きいことがわかった.このこと は,締固め曲線の形状から,地震時に地盤沈下が生じやすいか否かを判定できるこ とを示している.
④ 正弦波繰返しせん断載荷の周波数を変化させた試験における体積収縮量の比較を行 った.0.02~1.0Hzの周波数範囲において,繰返し回数50回までの体積ひずみの載荷 速度依存性は認められないことが確認できた.
⑤ 不飽和砂質地盤を対象とした地震応答解析を実施する場合,地盤の動的変形特性を 表現するパラメータ(せん断剛性率(Geq)とせん断ひずみ(γ)の関係および履歴減衰率
(h)とせん断ひずみ(γ)の関係)が必要となる.そこで,3ケースの含水状態を呈する
不飽和中空円筒供試体を用いた排水条件下の繰返しねじりせん断試験を行い,含水 状態の相違による動的変形特性を比較した.その結果,今回設定した初期含水比10, 15, 20%の条件では,Geq~γ関係およびh~γ関係に大きな相違は認められなかった.
また,初期含水比3状態いずれの場合も,ダイレイタンシーはせん断ひずみ0.01%前 後から生じており,せん断ひずみが大きくなるに従って体積ひずみ(εv)が増大する 傾向もほぼ同様であった.
⑥ 不飽和地盤の地震時沈下挙動あるいは破壊に至る挙動の理解を図るため,1G重力場 における振動台実験を行った.加速度と加振後の沈下量,飽和度および破壊形態の 関係を考察した結果から,不飽和地盤の破壊形態を分岐させる飽和度の閾値が存在 すること,不飽和地盤は空気をトラップした状態で液状化に至ること,不飽和地盤 の平均的な初期飽和度と初期乾燥密度を事前に把握しておくことで,地震後の破壊 形態がおおよそ判断可能であること,などが判明した.
第4章では,不飽和砂質地盤の地震時沈下量を推定手法の提案を行った.繰返しせん断 を受ける不飽和砂質土の体積収縮特性を等体積ひずみ曲線として設定し,地震応答解析と 累積損傷の考え方に基づいて,2007年新潟県中越沖地震で柏崎刈羽原子力発電所内の不飽
和埋戻し地盤で生じた沈下に対する再現を試みると共に,推定手法の適用性確認を行った.
数種類の異なる地震動においてそれぞれ沈下量を算定したところ,地震動の特性が反映 された沈下量推定結果が得られ,提案手法の特徴が発揮された.
第4章のまとめは次のとおりである.
① 不飽和砂質地盤の地震時沈下量推定手法を提案した.
② 地震時沈下量推定に際して,正弦波を用いた応力制御方式の繰返しせん断試験に基 づいて体積収縮特性を規定する(等体積ひずみ曲線を設定する)場合は拘束圧依存 性を考慮する必要がある.
③ 等体積ひずみ曲線と地震応答解析によるせん断応力時刻歴波形を用いた累積損傷 度解析によって評価した体積収縮量(沈下量)は,2007年新潟県中越沖地震で柏崎 刈羽原子力発電所内の不飽和埋戻し地盤に実際に生じた沈下の実測値と概ね整合 した.
④ この累積損傷度解析によって評価した体積収縮量は,観測地震動によって地盤に生 じるせん断応力波形を模擬した不規則波荷重を直接供試体に加えた室内試験から 得られた体積収縮量とほぼ一致した.これにより,評価手法の適用性が確認できた ものと考えている.
⑤ 本提案手法による推定沈下量には,地震動の加速度や速度などの規模に加え,継続 時間の大きさなどの地震動ごとの特徴が反映される.本提案手法による推定沈下量 は,地震動指標SI値との相関が高いことを示した.
⑥ 本提案手法の適用限界を明示した.構造物が近接する地点の沈下量については本提 案手法では評価できない.構造物際で生じる主働すべり破壊も加味した地盤の沈下 量評価を行うためには,構造物と地盤との地震時相互作用を考慮した推定手法が必 要である.
第5章では「性能設計への応用」と題して,地盤の物理特性のばらつき(偶然的不確実さ) を加味した信頼性解析を実施し,限界状態ごとのフラジリティ曲線を示すことによって不 飽和砂質地盤の地震時沈下量推定に関する確率論的評価について例示した.沈下量推定に 重要な地震応答解析手法の相違によるモデル化誤差(認識論的不確実さ)をも含めたフラジ リティ曲線(コンポジット・フラジリティ曲線)を算定し,地震動の大きさに応じて生じ る沈下量の確率論的な評価事例を示すとともに,地震外力の規模に応じた沈下量の推定精 度について議論した.
第5章のまとめは次のとおりである.
① 同一材料から構成される地盤であっても不飽和状態は様々であることから,地盤物 性のばらつきを考慮した性能評価が重要である.
② 地盤物性のばらつきを考慮した信頼性解析に基づいて,任意の沈下量を限界状態と して規定したフラジリティ曲線を算出した.さらに,地震応答解析手法の相違によ るモデル化誤差も加味した沈下量評価の事例を示した.
③ これらのフラジリティ曲線からは,地震力が大きくなるほど沈下量推定結果のばら つきが大きくなることが明らかとなった.これは,各種構造物の検討・評価・照査 などにおいては,地震力が大きくなるほど安全率や変位・変形量などの各種指標の