• 検索結果がありません。

不飽和砂質地盤の繰返しせん断試験による体積収縮特性

第3章 不飽和砂質地盤の地震時沈下メカニズム

3.2 室内試験による検討

3.2.1 不飽和砂質地盤の繰返しせん断試験による体積収縮特性

(1) 東京電力(株)柏崎刈羽原子力発電所埋戻し地盤の基本特性

東京電力(株)柏崎刈羽原子力発電所(以下,KK 発電所と称す)構内各所の埋戻しに使 用されている砂は,敷地内の表層を構成している新期砂層と呼称されている完新世の沖積 砂(砂丘並びに海浜性砂層)である.建屋等の構築のために掘削された現地発生土を再利 用している.

図3-1に示した1号機原子炉建屋(#1R/B)南東側の外壁から約2.0m,11.5m,22.5m離れた3 箇所でボーリング調査を行い,全深度にわたって埋戻し土の不攪乱試料をロータリー式三 重管サンプラーを用いて採取するとともに,原位置におけるダウンホール式のPS検層およ び標準貫入試験を実施した.標準貫入試験は不攪乱試料採取およびPS検層を行ったボーリ ング孔に隣接する別孔で実施している.採取された不攪乱試料については深さ方向に約1m の間隔で物理試験を行った.以下に,これらの孔内調査および室内試験から得られた不飽 和埋戻し地盤の基本特性を示す.

図3-1 KK発電所1号機原子炉建屋(#1R/B)南東側の埋戻し地盤における 実測沈下量(2007年新潟県中越沖地震時)と試料採取位置

#1 R/B

岩盤部 地下水位面 不飽和状態の

埋戻し土層 87cm 57cm

3m

30~40cm 12~20m

地震後の地表面 地震前の地表面

25m

原子炉設置岩盤 ( 試料採取位置)

3箇所のボーリング調査地点におけるS波速度,P波速度,N値,乾燥密度,相対密度,飽 和度および間隙比の深度分布を図3-2に示す.S波速度は地表からG.L.-5m程度までの表層で 約100m/s,G.L.-5~-12m程度では約150~200m/s,G.L.-14m以深では300~350m/s程度であ る.N値は表層で5~20程度,G.L.-10m以深で20~50以上である.N値はばらつきが大きい.

また,建屋に最も近い調査地点のN値は他の2地点に比べて小さい傾向を示している.深部 においてN値>50,Vs>300m/sを示す箇所の試料について詳細に観察したが,礫が多量に 混入しているようなこともなく,他の深度の試料と大きく異なる様子は認められなかった.

乾燥密度および相対密度には顕著な深度依存性は認められず,乾燥密度は1.5~1.7g/cm3(平 均1.60g/cm3),相対密度は80~100%(平均84.7%)である.

図 3-2(1) 不飽和埋戻し地盤における弾性波速度,N値 および乾燥密度の深度分布(KK発電所)

1.3 1.4 1.5 1.6 1.7 1.8 乾燥密度 ρd(g/cm3) 0

2 4 6 8 10 12 14 16 18 20 22 24 26

0 10 20 30 40 50

深度G.L.-(m)

N値

建屋から 約 2m 地点 建屋から約11.5m地点 建屋から約22.5m地点

0 1000 2000

P波速度 Vp (m/s) 0

2 4 6 8 10 12 14 16 18 20 22 24 26

0 200 400

深度G.L.-(m)

S波速度 Vs (m/s)

建屋から 約 2m 離れた地点 建屋から約11.5m離れた地点 建屋から約22.5m離れた地点

図 3-2(2) 不飽和埋戻し地盤における相対密度,飽和度 および間隙比の深度分布(KK発電所)

3箇所のボーリング調査地点における採取試料の粒径加積曲線を図3-3に示す.当該地点 の埋戻し土は細粒分含有率10%を越える箇所がわずかに認められるが,大部分では10%以 下であり,平均粒径0.3~0.5mmのほぼ均一な砂であることがわかる.粒径加積曲線は深度 5mごとに区分して表示したが,ある特定の深度の試料が礫分を多く含むこともなく,礫の 混入は全深度に渡って適度にばらついている.また,礫分含有率が大きい深度とN値およ びVsが大きい深度が対応する様子は認められない.

各物性値の平均を以下に再掲する.

・湿潤密度:1.88g/cm3

・乾燥密度:1.60g/cm3

・相対密度:84.7%

・自然含水比:17.5%

・飽和度:66.1%

・間隙比:0.737

・細粒分含有率:7.16%

0 2 4 6 8 10 12 14 16 18 20 22 24 26

0.4 0.6 0.8 1.0 間隙比e 0

2 4 6 8 10 12 14 16 18 20 22 24 26

30 50 70 90

飽和度 Sr (%) 0

2 4 6 8 10 12 14 16 18 20 22 24 26

20 40 60 80 100 120

深度G.L.-(m)

相対密度 Dr (%)

建屋から 約 2m 地点 建屋から約11.5m地点 建屋から約22.5m地点

図 3-3 埋戻し土の粒径加積曲線(KK発電所)

0 20 40 60 80 100

0.01 0.1 1 10 100

粒  径   (mm)

通過質量百分率 (%)

      G.L. -5m 以浅       G.L. -5~-10m       G.L.-10~-15m       G.L.-15~-20m       G.L.-20m 以深 建屋から約 2m離れた地点

0 20 40 60 80 100

0.01 0.1 1 10 100

粒  径   (mm)

通過質量百分率 (%)

      G.L. -5m 以浅       G.L. -5~-10m       G.L.-10~-15m       G.L.-15~-20m       G.L.-20m 以深 建屋から約11.5m離れた地点

0 20 40 60 80 100

0.01 0.1 1 10 100

粒  径   (mm)

通過質量百分率 (%)

      G.L. -5m 以浅       G.L. -5~-10m       G.L.-10~-15m       G.L.-15~-20m       G.L.-20m 以深 建屋から約22.5m離れた地点

(2) 試験条件と試験ケース

はじめに,不飽和土の地震時挙動を調べるために実施する繰返しせん断試験について述 べる.本研究では一貫して中空ねじり繰返しせん断試験を行っている.

地盤工学会編「地盤材料試験の方法と解説,第5章 ねじりせん断試験」1) では,ねじ りせん断試験の利点が次のように記されている.

『ねじりせん断試験は,中空円筒供試体の上または下端にトルクを加えて円周方向にね じることによって供試体全体にせん断変形を与える試験であり,直接型せん断試験の一種 である.他の直接型せん断試験と比較すると,供試体の側方応力条件が明確であることと 供試体の水平・鉛直面に共役なせん断応力を確実に作用させることができるという利点を 有する.したがって,供試体に作用する主応力の大きさと方向が容易に求められる.また,

三軸試験に代表される間接型せん断試験と比較して以下のような利点を有する.

①主応力方向が連続的に回転するような応力状態も再現することができる.

②軸方向に対して直角方向にせん断できる.

③比較的広範囲な応力経路またはひずみ経路を供試体に与えられる.』

これらの利点に加えて,本研究では次の事項も考慮した.すなわち,本研究では大地震 時を想定しており,0.5を上回るような比較的大きなせん断応力比を供試体に加える必要が あるが,三軸繰返しせん断試験では伸張側への応力伝達の不安定さがしばしば生じる.そ のような状況を回避するためには,せん断変形を直接供試体に生じさせることが可能な中 空ねじり繰返しせん断試験を行う必要がある.

図3-4 中空ねじり繰返しせん断試験の供試体

KK発電所1号機原子炉建屋(#1R/B)の南東側の外壁から15m程度離れた地点の埋戻し地 盤の表層から攪乱試料を採取し(図3-1),乾燥密度1.6g/cm3,含水比20%を目標に作製した 供試体(図3-4:外径70mm,内径30mm,高さ70mm)に対し,二重セル式装置を備えた中空 ねじりせん断試験機(図3-5および図3-6)を用いて繰返しせん断を与え,その際の体積変化 (収縮)量を測定した.不飽和供試体の体積変化は供試体の内体積の変化から測定できない ため,二重セル内の外体積の変化から測定している.なお,供試体の乾燥密度の目標値 1.6g/cm3は,1号機原子炉建屋周辺の埋戻し工事が終了して間もない時期(1984年)に調査・

試験された乾燥密度の平均値(1.60 g/cm3)や,地震後の調査ではあるが図3-2に示した調査 結果を参考として設定した.このように,2007年新潟県中越沖地震の23年前と地震後にお ける乾燥密度の平均値はほぼ同様であったが,図3-2に示したようにばらつきの範囲内であ ると考えられる.また,含水比の目標値20%については,地震後の調査結果の平均値(約

17.5%)を参考として設定した.供試体の作製はふるい分けによる粒度調整は行わず,目視

によって2mm程度以上の礫を取り除き,5層の突き固め法により行っている.

図 3-5 二重セル型中空ねじりせん断試験装置の外観

図 3-6 二重セル型中空ねじりせん断試験装置の仕組み

中空ねじり繰返しせん断試験における平均拘束圧σ’mは,埋戻し地盤の層厚(25m)を考慮 してσ’m= 50, 100, 300 kPaの3種類とした.初期応力状態は等方圧密状態である.それぞれの 拘束圧に対してせん断応力比(SRd = τd /σ’m)を4段階変化させ,正弦波(周波数0.1Hz)による せん断荷重を応力制御方式で繰返し載荷する試験を全12ケース実施した.繰返しせん断過 程は排気排水条件である.各試験ケースにおける拘束圧,圧密後の乾燥密度および最大せ ん断応力比を表3-1に示す.なお,表3-1には,「4.2.3 沈下量推定手法の適用性確認」で 言及することになる“不規則波試験”の実施ケースと条件についても記載している.

表 3-1 繰返しせん断試験 実施ケース一覧(KK発電所:不飽和砂質土)

(3) 繰返しせん断試験による体積収縮特性

正弦波荷重による中空ねじり繰返しせん断試験結果の4例(試験番号2-1,2-3,1-3,3-3) を図3-7に示す.これら4例により,①同一拘束圧条件下において異なるせん断応力比で載 荷したケースの比較,②異なる拘束圧条件下においてほぼ同一のせん断応力比が載荷され たケースの比較,を行い,排気排水条件下における不飽和砂質土の体積ひずみ特性を把握 する.同図は,繰返し回数に対するせん断応力,せん断ひずみ,体積ひずみの関係と,せ ん断ひずみとせん断応力の履歴曲線を示している.

試験番号2-1および2-3は,平均拘束圧σ’m = 100kPaの条件下において最大せん断応力比 (SRd = τd /σ’m)が0.26および0.52を示したケースである.

載荷方式 (せん断荷重の種類)

試験 番号

拘束圧 σm’(kPa)

圧密後乾燥 密度(g/cm3)

最大せん断応力比 SRd= τd /σ’m

応力制御 (正弦波)

1-1

50

1.673 0.23

1-2 1.667 0.35

1-3 1.708 0.50

1-4 1.665 0.58

2-1

100

1.686 0.26

2-2 1.718 0.39

2-3 1.706 0.52

2-4 1.706 0.60

3-1

300

1.833 0.21

3-2 1.832 0.42

3-3 1.815 0.55

3-4 1.797 0.65

応力制御 (不規則波)

R-1 50 1.627 0.72

R-2 100 1.688 0.83

R-3 300 1.767 0.68

R-4 456 1.799 0.65

図3-7(1) 中空ねじり排水繰返しせん断試験結果の例

(KK発電所不飽和砂質土:試験番号2-1,σm’ = 100kPaSRd = 0.26)

最大せん断応力比が0.26の試験番号2-1のケースでは,繰返し載荷にともなうせん断ひず みの変化は顕著ではないが,体積ひずみはわずかではあるが徐々に圧縮側に増加する傾向 を示す.これに対し,せん断応力比が0.52の試験番号2-3のケースでは,せん断ひずみは載 荷初期段階に大きく,繰返し回数の増加にともなって次第に小さくなり一定値に収束する 傾向を示す.体積ひずみは載荷初期段階では大きなせん断ひずみの発生にともなって圧縮 側に急増し,せん断ひずみが一定値に収束してからは一定の増分量となる.これは,繰返 し載荷にともなって供試体が体積収縮し,せん断剛性が増加するためである.せん断応力 とせん断ひずみの関係においても繰返し回数の増加にともなって履歴曲線の割線勾配が次 第に立ち上がっていく様子が認められる.

-80 -400 40 80

0 20 40 60 80 100 120 140

せん断応 τd (kN/m2 )

-0.4 -0.20.00.20.4

0 20 40 60 80 100 120 140

せん γ (%)

0.0 0.5 1.0 1.5 2.0

0 20 40 60 80 100 120 140

体積 ε (%)

-50 -25 0 25 50

-1.0 -0.5 0.0 0.5 1.0 せん断ひずみ γ (%) せん断応力 τd (kN/m2 )

繰返し回数 N (回)

     N= 1~ 20回      N= 21~ 50回      N= 51~100回      N=101~150回

図3-7(2) 中空ねじり排水繰返しせん断試験結果の例

(KK発電所不飽和砂質土:試験番号2-3,σm’ = 100kPa,SRd = 0.52)

すなわち,応力一定の条件下では繰返し回数が増加するに従ってせん断剛性は大きくな り,せん断ひずみの発生量は徐々に小さくなる.せん断ひずみはやがて一定値に収束する.

体積ひずみはせん断ひずみの変化に対応し,載荷初期に急増し,せん断ひずみが一定値に 収束してからは単調増加する.このような状態は,非排水条件の下で液状化に至るような 飽和砂質土の繰返しせん断試験等には当然のことながら認められない.不飽和砂質土に対 して排気排水条件で繰返しせん断を行うことにより間隙比が減少して生じる剛性の硬化現 象に起因するものと考えられる.

-80 -400 40 80

0 20 40 60 80 100 120 140

せん τd (kN/m2 )

-2 -101 2

0 20 40 60 80 100 120 140

せん断ひ γ (%)

0 5 10

0 20 40 60 80 100 120 140

体積 ε (%)

-100 -50 0 50 100

-2.0 -1.0 0.0 1.0 2.0 せん断ひずみ γ (%) せん断応力 τd (kN/m2 )

繰返し回数 N (回)

     N= 1~ 20回      N= 21~ 50回      N= 51~100回      N=101~150回