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研究課題2の解決:継続的な実践の改善のために必要なもの

ドキュメント内 日本語教育実践はどのように改善されるか (ページ 176-184)

第7章 日本語教育実践の改善のために何をどうすべきか

3. 研究課題2の解決:継続的な実践の改善のために必要なもの

本節では、研究課題2の「研究課題1を踏まえ、日本語教育実践の改善の困難さの克服 策を提案する」を解決する。まず、研究課題2の解決のために設定したRQ5と6を再度、

ここに示す。

RQ5. 「ピア・サポート」の成果はどのように生かし、課題はどのように克服するか。

RQ6. 日本語教育実践の継続的な改善のために実践者に必要なものは何か。

以下の3.1では「『ピア・サポート』の成果の生かし方」を、3.2では「『ピア・サポ ート』の課題の克服」について述べ、RQ5に答える。3.3では、「継続的な実践の改善 のために必要なもの―相互尊重」について述べ、RQ6に答える。3.4「まとめ:研究課 題2」で本節を総括し、研究課題2を解決する。まずは、今回の「ピア・サポート」の成 果の生かし方から述べる。

3.1 「ピア・サポート」の成果の生かし方

今回の「ピア・サポート」の成果は、「実践者のエンパワーメント」と「実践改善に 繋がる対話のパターンの実証」であった。「実践改善に繋がる対話のパターン」とは、

「実践の言語化・分析・再構築」を可能とするような対話のパターンのことであり、こ れらの対話のパターンをとして実践の改善が可能となることが明らかになった。そして、

これらの対話のパターンは、「実践者のエンパワーメント」に繋がるものであることも 証明された。それでは、上記の2つの成果はどのように生かすことができるのであろう か。ここでは、それについて述べる。

「実践の改善に繋がる対話のパターン」を促すためには、第一に「現場と言語教育観........

173 が異なる....

実践者...

での遂行....

」が挙げられる。今回の「ピア・サポート」において、ナ先生 とミレ先生は実践の現場が異なっていた。そのため、今回の「ピア・サポート」の場に おいて、自分の実践について暗黙の前提を持たない他者に向けて実践を語らなければな らなくなっており、実践の言語化を行っていた。そして、実践を言語化してはじめて、

ナ先生も、ミレ先生も実践の分析が可能となり、実践の再構築にも至っていた。ただ、

「現場が異なる」ことと「言語教育観が異なる」ことは実践の改善において意味が違う。

「現場が異なる」ということは、暗黙の前提がないため、自分の実践を言語化しなけれ ばならないことを意味する。この言語化をしてはじめて、実践の分析も可能となるとい うことである。一方、「言語教育観」が異なるということは、自分の言語教育観から考 えては自分の実践には全く問題がないにもかからわず、異なる言語教育観を持つ実践者 から見れば疑問視されることがあるということを意味する。「なぜそういうふうに実践 を組み立てているのか」、「なぜそういう方法を使っているのか」という疑問を互いに 抱くことになり、異なる言語教育観の間で「ぶつかり合い」が生じる可能性が高い。こ の「ぶつかり合い」は必ずしも悪いわけではない。「異交通」としての対話を促し、

「深い省察」を可能とするからである。何よりも、言語教育観の「ぶつかり合い」があ るからこそ実践者たちは自分の実践について「なぜ」という問いを発することができる。

それによって、「自分の目指す日本語教育」を更に問い続け、実現方法を見出していく ことになるのである。同じ現場においても言語教育観の異なる実践者はいくらでもあり うる。しかし、現場が同じ場合は、いくら言語教育観が異なっていても暗黙の前提は厳 として存在するものである。従って、「実践の改善に繋がる対話のパターン」を促すた めには、暗黙の前提がなく、かつ異なる言語教育観を持つ実践者間での「ピア・サポー ト」の遂行が望ましいのである。

「実践の改善に繋がる対話のパターン」を促すためにもう1つ必要なものは、「研究..

者.

的実践者....

のファシリテーターとしての力量...............

」である。実践の言語化を促すためには

「質問―説明」の対話のパターンが活発化することが求められる。そのためには、「研 究者的実践者」がファシリテーターの役割に徹し、「ピア・サポート」に参加する実践 者たちにとって「当たり前」のような前提が見つかった場合は、それについて質問を問 いかけたり、他の実践者に質問を促したりすることを入念に行わなければならない。

「質問―説明」のパターンが頻繁に起きるようになってからは、参加者たちは「質問を すると説明をしてくれる」ことが分かってくるため、自然と参加者間で「質問―説明」

のパターンが起こりやすくなると予想できる。実践の言語化が起こりやすくなると、今 回の「ピア・サポート」の事例から明らかになったように、実践の言語化に続き、実践 の分析が同時的に発生すると考えられる。「研究者的実践者」は、実践者たちの話をひ たすら聞いていたり、自身の経験や知識を語ったりするのではなく、対話の様子を注意 深く察し、実践の分析が促されるように「質問―確認―説明」のパターンで対話が行わ れるようにファシリテーターの役割を果たさなければならない。実践の言語化が起きた

174

場合、「研究者的実践者」は他の実践者に「今、授業でそのように説明をすると言った が、どのような理由からか」、「そのやり方がいいと思うのは、どのような理由から か」、「学習者たち普段は、どのような反応か」などの質問を問いかける必要がある。

カンファレンスにおいて、実践者間で自分の実践をただ語るのではなく、他者の質問を 受け、じっくり振り返りながらそれに答え、実践の分析が可能となるように「研究者的 実践者」が常に意識的に問いかけることが必要なのである。他の実践者たちが積極的に 上記のように問いかけるのが一番望ましいが、そうでない場合は、「研究者的実践者」

が他の実践者たちに「質問―説明」のパターンが起きるように促すのもよいであろう。

「ピア・サポート」の遂行が長期化すると、参加者たちも互いの実践や教育観、重視 するもの、目指す授業が分かるようになり、それを踏まえて助言をすることが頻繁に起 こると考えられる。つまり、「助言―説明」と「激励―説明」のパターンが起こりやす くなることが予想される。当然、「指摘や批判ではない」助言をし合うことが一番、理 想的であるが、もし自分の実践がカンファレンスの対象となっている実践者が、他の参 加者からの助言を「批判や指摘」として受け止める場合は、コンフリクトの火種になる 恐れがある。その場合は、「研究者的実践者」が「批判や指摘」ではなく、「好意から の助言」であることを丁寧に説明するしかない。第6章の2.2で確認したように、「研究 者的実践者」が一方の実践者の主張に賛同することは禁物である。コンフリクトが激化 するからである。コンフリクトが生じた場合は、「研究者的実践者」がじっくり他の参 加者たちの話を聞きながら、対話を「助言―説明」と「激励―説明」のパターンに戻さ なければならない。コンフリクト解消のための調整に失敗した場合は、実践の改善に繋 がらない「『主張』の繰り返し」と「主張―反論」のパターンが多発してしまい、参加 者間でコンフリクトが深刻化し、「ピア・サポート」が中断されるという事態にまでな る恐れがある。従って、「実践改善に繋がる対話のパターン」の促進のためには、「研 究者的実践者」のファシリテーターとしての力量が求められるのである。

また、「実践の言語化・分析・再構築」の循環において一番、重要となるものは実践 の再構築である。実践の分析にまでは至ったものの、どういうふうに実践を組み立てな おせばいいのかの目処が立たない限り、実践に変化は起きない。特に、実践者に「制約 による教師の思い込み」が生じている場合、ナ先生の事例で確認したように、実践の再 構築は非常に難しくなる。実践者に「制約による教師の思い込み」が生じていない場合 は、「研究者的実践者」が「質問―説明―助言―主張」と「助言―質問―確認」のパタ ーンが起こるようにファシリテーターの役割に集中する。「制約による教師の思い込 み」が見られない実践者なら、ミレ先生の事例で確認できたように、躊躇無く、次の実 践でやるべきことや方法論を自ら語り、実践の再構築を行うに違いない。一方、「制約 による教師の思い込み」に陥っている実践者の場合は、全ての助言を「どうせできな い」、「うまくいかないに決まっている」と受け止めない可能性がある。そのため、

「質問―説明―助言―主張」と「助言―質問―確認」のパターンは起こりにくいことが

175

予想される。この場合は、「研究者的実践者」が主導し、実践の分析を促すパターンで ある「激励―説明」を起こし、「制約による教師の思い込み」に陥っている実践者を励 ますことが必要である。この励ましは、愛情のこもった忠言でもよい。ナ先生の事例で は、筆者の「ナ先生、元気失いすぎ!」、「努力をせず、教師に楽にできる授業をして いた」などの愛情のこもった忠言で、ナ先生は目が覚め、自ら「制約による教師の思い 込み」を乗り越えようとし、見事に実践の再構築に至っていた。このことから、実践者 に「制約による教師の思い込み」が見られる場合は、「激励―説明」のパターンを起こ すことで「実践者のエンパワーメント」が起き、その実践者の目指す方向へ実践に変化 を与えていくことが期待できる。なお、今回の「ピア・サポート」の事例のように、実 践者間(「研究者的実践者」を含む)で対話を通して関係性を築いていき、率直な意見交 換と激励が行われるようにしていくことも重要と言える。

以上、今回の「ピア・サポート」の成果の生かし方について述べた。次は、「ピア・

サポート」の課題である「時間的負担」の軽減について述べる。

3.2 「ピア・サポート」の課題の解決方法

ここでは、今回の「ピア・サポート」における「時間的負担」を軽減させるために、

2つの方法を提案する。

1つ目の方法は、「カンファレンスの回数と頻度の調整」である。「ピア・サポー ト」における「時間的負担」を軽減させるためには、「ピア・サポート」に参加する実 践者たちで遂行前に協議し、カンファレンスの回数と頻度を決めることが必要である。

今回の「ピア・サポート」では、「研究者的実践者」の立場に立った筆者がナ先生とミ レ先生にカンファレンスの頻度の決定を一任されており、筆者の韓国滞在期間に合わせ て一方的に決めていた。これが毎月、過度なカンファレンスの集中をもたらし、ナ先生 とミレ先生にとって負担として感じられていたと考えられる。今回の「ピア・サポー ト」では、2012年5月から同年9月までは、毎月4回の2CFと2回の3CFが実施されてお り、1人の教師は週1回の2CFと3CFに参加しなければならなかった。2CFにはに約2~3 時間、3CFには約3~4時間が所要されていた。毎週、約5~7時間を「ピア・サポー ト」のために時間作りをしなければならない形になっており、時間的負担を感じること も十分納得できる。これを反省し、「ピア・サポート」の遂行前に参加者間でカンファ レンスの回数と頻度を協議し、負担にならない頻度にすることが必要である。ちなみに、

今回の「ピア・サポート」では、ナ先生も、ミレ先生も3人の参加者でカンファレンス を行う頻度としては、3CF...

を月..

1.

回行う形で負担にならない............

との意見を示していた。従 って、カンファレンスの仕方についても参加者間で協議して決めることで「時間的負 担」の軽減が図れると言える。

2つ目の「時間的負担」の軽減のための方法は、「インターネット環境の活用」であ

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