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研究支援体制を考える際のポイント

ドキュメント内 平成19年度  (ページ 138-200)

第 5 章 総合分析

第 2 節 研究支援体制

2. 研究支援体制を考える際のポイント

パネルでの議論から、研究支援体制を考える際のポイントが 3 つ浮かび上がった。

(1) 多様な「研究支援」を分類した上での議論が有用である

パネルを通じて、研究を進めていく場合に必要な「支援」に対しての考え方は、研究分野によっ て考え方が異なることが判明した。「研究支援」には、実験準備や機械・装置運転のような支援、知 的財産を扱うような支援、一般的な事務的支援のように多様な機能があり、これらを分類せずに議 論されることが多いが、支援の内容を詳細に捉え、支援の中身に応じて対応施策を考慮していくこ とが必要であることが改めて確認された。

(2) 「研究」と「研究支援」の区切りは単純ではない

どこまでが研究(教育的側面も含めた On the Research Training)で、どこからが研究支援なのか については分野によって解釈が異なる場合が見られる。博士課程や修士課程の学生が研究支援

(いわゆる「雑 用 」等 の作 業 を含 む)をさせられて研 究 ができていないとの指 摘 もある一 方 で、 On the Research Training としてうまく機能しているとの指摘もある。したがって、学生にどこまでの業務 に関わらせるかは、単純には決められない。米国型研究支援システムは、研究活動において必要 なアクティビティを細分化し、専門特化したジョブディスクリプションに応じて研究支援体制を構築す るものであるが、日本の研究環境の現状を踏まえてどのような研究支援 機能の強化を行なうことが 適当か、分野毎の特性も踏まえた具体的な検討が必要である。

(3) 研究支援者の配置と処遇について

研究支援者の配置について、分野により、研究室単位で考えるか、学科単位で考えるかは異な る。大学における定数削減の流れの中で、現在、学科・学部単位での研究支援者枠は減らされる 一方であるとの意見がほとんどのパネリストから表明されており、研究室単位での要望に応じた対応 を十 分 にはしてもらえない状 況である。この場 合 、外 部 資 金 を利 用し、一 時 的 に研 究 室 単 位 で研 究支援者を雇うことになるため、外部資金獲得状況により雇用が可能な研究室とそうでない研究室 との差が生まれる。また、ここに内在する問題点として、一時的な研究支援の量の確保はできるが、

知識や技術の蓄積・継承ができず、長期的視点からの研究支援レベルの向上は見込めない点が 挙げられる。

第6章 今後の対応の方向性

本 調 査において、大 学 の研 究 者 の活 動 実 態についてアンケート調 査した結 果、国 立 大 学の法 人化前となる平成 15 年度にくらべ、平成 19 年度には、調査対象の分野を問わず大学分類にも関 わらず、研究時間が減少していることが明らかとなった。また、研究時間の質の面でも、時間の細切 れ化や研究時間内に実施する並行作業が多いことなどにより、研究に集中しにくくなっていることも 明らかとなった。つまり、わずか 4 年の間に研究時間の量・質の両面で深刻な状況に進みつつある。

この 4 年間において、今回調査対象とした研究室の多くはでは総活動時間をふやすことで、これに 対処してきているケースが多いが、既に一般的な労働者平均値に比べ相当分長くなっていることか ら、さらに総活動時間を増やすことによる研究時間の確保は現実的な策ではない。研究者の研究 時間の量・質の確保が急務である。

第1部で見たように、日本の論文生産量は近年頭打ち傾向であり、またトップ 10%論文について も伸び悩 みと言わざるを得 ない。論 文 生 産 において大きな役 割 を果 たしている大 学 群 が何 らかの 要因をはらんでいると考えられる。このような状況を招く要因としては、「研究費や研究者数といった インプット自体の不足」や「大学という組織の研究機能の問題点の顕在化」が考えられる。今回明ら かとなったように、大 学 の研 究 者 が研 究 活 動 に充 分 に時 間 を割 けていないことは、研 究 機 能 に改 善を要する点があることを示している。

日本の基礎研究力の維持・向上を目指すのであれば、「大学教員が研究時間の質・量を確保で きる」ようにし、「博士課程、修士課程の学生が研究・教育に傾注できるようにする」ための策を講ず ることは急務である。

(1) 大学研究者の研究時間の量・質を確保できるような大学運営の実現

大学研究者の研究時間の確保に向けて、大学は、自校の教員が組織運営に関わる業務にどの 程度時間を使うべきかについて、見直しをする必要があるのではないか。今回の調査でも、一番研 究時間を圧迫している時間として、組織運営に関わる業務の拡大が挙げられている。国立大学の 法人化を境に、安全管理面や倫理面などの運用の厳格化のためや、各種評価の実施、大型の外 部研究費への応募準備などにより、会議等の数が増加し、その影響で研究時間の量のみならず、

研究時間の分断化などの影響が出ているとの意見が多かった。これらの中でルール遵守に必要な ものは別として、各会議を見直し、必要なステップのみに縮減する、教員全員が関与すべきかの見 直し等を行なうべきである。

また、会議や講義をある曜日やある時間帯に集中させることにより、連続して集中することのでき る研究時間を研究者に確保するなどの、大学教員全体としての時間効率を高める業務マネジメン トが必要である。数学・理論物理のパネリストからは、ある曜日に講義を集中させることにより週に 1 日は研究に集中できる日を確保する努力をしているとの指摘があった。さらに、教員間での大学と して必要な教育、研究、組織運 営、社会サービス等の機能 をうまく分担することにより、全体として の時 間 の有 効 性 を向 上 させる方 策 も考 えられる。このような業 務 マネジメントを通 じ、研 究 時 間 の 量・質の確保をすることにより、研究活動の活発化や論文生産の向上を、大学全体として実現する ことを検討するべきである。このような見直しは、自発的な点検に基づく内部の変化を促すことであ り、来年度より始まる第 2 期中期目標・中期計画においても、健全な大学運営を行なう上での視点

として重要であろう。

(2) 分野や大学の特性を踏まえた研究支援機能の強化のためのモデル事業の実施

大学研究者 の研究時間の量・質を確保し、さらに改善していく上で、研究支援機能の強化、具 体的には「支援者」の増強を検討することは重要である。ただ、大学における研究支援者の増強に ついては、以前より政策課題とされてきているにもかかわらず、なかなか改善されないという現実 が あり、その要因は何かを明らかにし、これを踏まえた対応策を講じることが必要である。

今回の各分野にまたがるパネルの議論を通じて、まず、「研究支援」については、どこまでが研究 で、どこからが支援なのかについて、分野による考え方の違いがあることが明らかになった。即ち、こ のような分野特性を充分に踏まえない横並びの対応策では必ずしも十分な効果が上がらず、また、

多くの分野の大学研究者の合意が形成されないことから、大学内の実質的な意思決定がなかなか できない恐れがある。

さらに、同一の分野であっても、限られた研究支援のリソースをどう使うのが最も有効かは、各大 学の歴史に由来する組織の特徴や文化によっても変わってくると考えられる。

このようなことを踏まえると、現状についての一層の掘り下げはもちろん必要であるが、このような 分析から“最適の”研究支援強化方策を導出することには限界があると考えられる。そこで、このよう な分野の特性、大学毎の特性も踏まえて、どのような強化方策をとることが有効かを明らかにすると ともに、そのノウハウを多くの大学で共有できることを眼目としたモデル事業を国の一定の支援のも とに実施することが有効であろう。分野特性を踏まえるため、その実施単位は大学全体ではなく部 局単位(あるいはその一部)である必要があるとともに、プロジェクトの有効性を「大学教員の研究時 間の量と質の拡大・充実」と「博士課程、修士課程の学生の研究・教育への傾注度向上」というよう な指標から計測すべきである。これにより、研究への直接支援、知財や外国人対応の支援、といっ た支援機能を一つの軸から優先付けすることが可能となる。

あわせて、(1)で述べた運営面の改善を加えるよう誘導することによって、日本の研究環境の特性 に合い、かつ有効性の高い支援機能の強化の方策及びこれに関わる各種のノウハウを構築してい くことが可能となると考えられる。

ドキュメント内 平成19年度  (ページ 138-200)