第 4 章 パネル討論結果
第 4 節 分野や大学形態等に強く関連する問題
パネリストの属性(研究分野および所属する大学の形態等)によって強く関連する問題であると考 えられる部分を以下に抽出した。
(1) 分野特有もしくは強調された問題点
①応用物理
・ 雑用(物品購入など)については、学生も負荷がかかっている。
・ 助 教 のいない研 究 室 が増 えており、研 究 成 果 を押 し下げる直 接 的 な要 因 に繋がってい る。
・ 英語論文が元々大多数ではあったが、IF の高い雑誌は国際論文誌なので英語論文は さらに増えている。
②化学
・ 国からの予算が年度で区切られているために計画的な高額な実験機器の購入が難しい。
また、機器のメンテナンスに係る費用は国予算から捻出することが難しいので別途予算の 確保を行わなくてはならない。
・ 実験結果を見ながら研究を進めていく分野のため、比較的長時間の実験時間が必要で ある一方で、就職活動の早期化・長期化によってその時間が失われつつある。
・ 研究機器を設置するスペースが不足している。新しい装置を購入した場合、離れた場所 に設置せざるを得ない。
③基礎生物学
・ 医学部は臨床医の育成に追われており、研究に手が回らなくなっている。
・ 各教 員が所 属する学会 数が比較 的 少ないために学会活 動 にかかる時 間の割合は少な い。
・ 研究室メンバー間での時間の使い方は比較的ばらつきは少ない。
・ 優秀な博士課程の学生確保が研究の生産性向上の観点からは非常に重要である。
・ 研究資金のつきやすい分野以外の研究が減少したため、ダイバーシティが失われつつあ る。
④機械工学
・ 若手研究者の自立化が求められるようになったため、シニアから若手へ暗黙知が引き継 がれなくなってきた。
・ 試 作 品 を外 部 の中 小 企 業 へ発 注 していたが、企 業 の技 術 力 低 下 に伴 って製 作 が困 難 になりつつある。
・ 研究テーマの変化に伴い、既存の技術職員では扱えない設備・機器が出てきたため、対 応できなくなりつつある。
・ 教 員 の評 価 としてカウントされる論 文 が英 語 論 文 のみとなったことにより、論 文 執 筆 の手 間がかかるようになった。
⑤数学・理論物理
・ 差別化を図るために、新しい名称の学科、専攻が多く設立されているが、基礎と応用(融 合)のバランスが上手く取れていない。
・ 大学経営の観点が強く影響しているために、研究・教育のシステムが崩れつつある。
⑥臨床医学
・ 臨床研修医制度が変わったことにより、地域医療の崩壊や学生が現場志向となった。研 究志向の学生が減少している。
・ 大学病院での診療に取られる時間が大幅に増加したため、研究に時間を割くことができ ない。
(2) 大学形態特有の問題点
①国立と私立の比較
・ 私立大学の場合、助教クラスの人材は任期付きでないと雇えない場合が多い。
・ 国立大学の場合、特に法人化以降も公務員の人事制度を継承している(準じている)た め、リストラが難 しく、時 代 の流 れに合 わせて求 められている人 材 を確 保 することが難 し い。
②旧帝大とその他の大学の比較
・ 競 争 的 な環 境 に置 かれたことで、資 金 だけでなく人 材 の偏 在 化 も生 じている。旧 帝 大 と 他の大学の格差が広がった。
・ 旧帝大以外においては、特に教育に関する外部資金獲得の要請が強まっている。
・ 旧帝大に比べてその他の大学は博士後期課程やポスドク、助教などの若手研究者の層 が薄いために、論文等の研究成果の量は少ない。
・ 私 立 大 学 や旧 帝 大 以 外 の国 立 大 学 は、入 学 者 確 保 のための教 育 サービス活 動 (地 元 高校へのPR、出張講義など)が増大した。
③大規模大学と小規模大学の比較
・ 大学組織マネジメント上必要な業務については、小規模な大学の場合、少ない教員・事 務職員で役割分担を行うために、一人一人の負荷が高まっている。
・ 小規模大 学 においては、大規模な競 争的資金に応募するだけの人的リソースを学内で 確保することが非常に難しい。
(3) ポジション固有の問題点
①教授・准教授
・ 研究資金確保に対する要請が高まってきたことによって、外部資金獲得に関する負荷が 増えた。
・ 大学組織におけるリスクマネジメント強化により、予算管理や安全管理などの負荷が増え た。
・ 学生に対するメンタルケアや留学生のケアなど学生の管理に関する負荷が増えた。
・ 特 任 助 教やポスドクなどの時 限 的なポジションが増えたために、採 用に関する負 荷 が増 加傾向にある。
・ 競争 的資 金 の申請書 作 成も時間がかかるが、審査をする側へのアサインも増えており、
審査のコメント作成などに費やす時間 数がかなり増えてきた。また、外部 評価に関しても 評価側としての活動時間が増えた。
・ 入試の回数が増えたことと、入試のミス等を防ぐため教員が全てのデータに責任をもつよ うになり、入試の点検業務等にかかる時間が 10 倍以上になった。
②助教・助手
・ 以 前 はシニア教 員 に比 べて研 究 時 間 を取 ることができていたが、一 時 的 なポジションが 増えたために、求職活動によって徐々に研究ができなくなってきている。
③ポストドクター
・ 短期的な成果を求められるようになった(成果が上がらないと次のポジションに移動できな い)ため、長期的な視野に立った研究が難しくなってきた。
④博士課程
・ 博士課程の進学率低下より、研究室運営の主力である博士課程在籍者の量質ともに低 下している。そのため、結果として、論文の生産力が低下している。
・ 現在のポスドクや教員の姿を目の当たりにしてアカデミック志望の学生が減った。
⑤修士課程・学部生
・ 就職活 動の早期化によって研究時 間および研 究に対するモチベーション低下が問 題と なっている。
⑥技術職員・研究支援者・研究事務支援者
・ 臨時雇用職員の比率が高まったために、専門的な業務に対応ができなくなった。