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石器の三次元形態解析の展望

第 4 章  石刃石器群の多様性と石器形態の関係

第 6 節 ナイフ形石器の三次元計測データの分析

3. 石器の三次元形態解析の展望

 ナイフ形石器の三次元計測データを用いた形態分析では、ねじれ・湾曲などの既存の計測 方法では正確な取得が困難な属性が抽出された。これらの属性は遺跡間で明瞭な差異を示す ことが分かり、前節までに分析してきた石器の機能形態学的な特徴との関連で有意に説明す ることが可能であった。また、刺突実験に用いた実験石器の分析からは石器のねじれ・湾曲 と破損パターンの間に相関がないという結果に至り、これを発展させて行動論的に解釈する 余地を見出した。

 今回取得した三次元計測データと標識点からはさらに、ナイフ形石器の先端角・基部加工 の角度、先端と長軸のずれ、剥離軸と長軸の関係、断面形や諸々の計量的属性など多数の検 討材料を得られることが想定される。ただし、このような展開には素材となる石刃や、別の

加工体系による表現形である他器種(エンドスクレイパーや彫刻刀形石器など)との比較が 必要となる。それはより具体的な遺跡内・遺跡間の素材選択性を明らかにし、そこから当該 期の行動にアプローチする手がかりが多く得られるだろう。

 本論において扱った清水西遺跡・高倉山遺跡・太郎水野 2 遺跡・白山 E 遺跡・横道遺跡 に関しては完形石刃の三次元計測を進めており、さらに他器種とも相同に比較可能な標識 点のセットを考案することが求められる。予察されていた実験使用痕分析との親和性(渡 邊 2018)も確かめられた。本論で浮上したものに限っても今後取り組むべき課題は多いが、

それこそがこの分野の発展性の証左であると考える。

第 4 章註

4.1) 高瀬山遺跡の測定例を除き、これらの放射性炭素年代の測定例は東北大学考古学研究室の「最  上川流域の後期旧石器文化の研究」プロジェクトの成果によるものである。資料番号が PLD の 3  点は筆者が株式会社パレオ・ラボから「第 14 期若手研究者を支援する研究助成」を得て測定を依  頼した資料の一部であり、同プロジェクトの一環として進められた研究の一部である。非較正の放  射性炭素年代値として各報告・論考からδ 13C の補正を受けておらず、端数が丸められていない  値を利用し、Oxcal (version 4.3.2)(Bronk Ramsey 2009・2017) を用いて暦年較正を行った。較正  曲線には Intcal13 (Reimer et al. 2013) を適用した。

4.2) 「打面転位」と「打面転移」の二通りの表記がある。筆者は打面上の打点の移動と明確に区別し(織  笠 1990)、あらかじめ複数設定した打面のうちから作業に用いる面を選択するという意味で「打面  転位」の語を用いる。

4.3) 使用痕分析に先立って、多様な要因による痕跡形成メカニズムや、分析が可能かどうかの評価  基準についても近年重視されつつある。使用痕・製作痕などを含む様々な「痕跡」の形成過程に  ついてはいくつかの試みがあり、近年ではトライボロジー(摩擦学)の考えを用いた研究(鹿又  2012a)や埋没状況の再現による表面変化の観察記録(御堂島 2015 など)がある。

4.4) 石器の幅は長軸に直交する最大の距離を測り、厚さも同様である。

4.5) 分析の便宜上の分類である「ナイフ形石器」という器種が同一という意味であり、その様々な  特徴や性質を同一視するものではない。

4.6) 重量・横断面面積・横断面外周の 3 変数を三次元散布図として表す分析方法は、Ames ら (2011)  の研究を参考にしている。ただし、彼らの目的としたダートと鏃の識別は、本論では主要な目的で  はないため、そこで用いられた識別基準は参考にとどめるものとする。

4.7) 三次元散布の状況を二分するに際して、非階層クラスター解析(K-means 法、引数 2)によっ  て追確認したところ、事前の分け方に対して 100% の正答率を得た。太郎水野 2 遺跡についても同  様である。

4.8)

library(Momocs)

list<-list.files("KN-all",full.name=T) import<-import_jpg(list)

outlines<-Out(import)

preform<-coo_slidedirection(outlines, "E", center=T) preform1<-coo_center(preform)

preshape<-coo_align(preform1) preshape2<-coo_flipy(preshape)

preshape3<-Out(sapply(reshape2$coo,function(x){x/sqrt(coo_area(x))})) Site<-c(rep("A",7),rep("B",5),rep("C",1),rep("D",2))

E<-efourier(preshape3,30,norm=F,start=F) P<-PCA(E)

da<-data.frame(knives=Site)

plot(P,fac=da$knives,xax=1,yax=2,ellipses=T, conf.ellipses=0.8,chull.filled=F) plot(P,fac=da$knives,xax=3,yax=4,ellipses=T, conf.ellipses=0.8,chull.filled=F) PCcontrib(P)

scree_plot(P)

panel(BL.preshape3,names=T,cex=0.5,dim=c(8,12))

4.9)  高倉山遺跡出土石器の三次元計測は早稲田大学大学院の渡邊玲氏に計測法の教授を受けながら  2018 年 2 月に実施した。清水西遺跡・太郎水野 2 遺・横道跡出土石器の三次元計測は各々の資料  調査の際に同時に実施した(第 2 章参照)。展示資料や、石質あるいは接合状態の問題で計測不可  であった資料があることに注意しておく。

4.10) 無相関検定においては危険度 5% で TCSA -発生数の間のみに相関があると認められる。

4.11) 三次元計測データから特定箇所の石器横断面積・外周を計算することができるが、本論では  三次元計測ができなかった石器や対象外の資料との対比の可能性を残すために幅と厚さから算出す  る TCSA(Shea 2006)を用いた。

第 5 章

「基部整形石器」に関する

東アジア的視点