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知識流通システムと知識経営アーキテクチャー

3. 知識流通システムの構造化の研究

3.3 企業の知識流通システムの構造化

3.3.1 知識流通システムと知識経営アーキテクチャー

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容も改変した.本研究では,この各レイヤーの実施項目を,知識経営アーキテクチャーと 呼ぶ.知識流通システムと知識経営アーキテクチャーを図3-1に示す.

知識経営 戦略

知識業務 プロセス

知識経営 環境 (ツール、制度)

経営システム 組織構造

企業文化

企業の知識経営ビジョンの提示 知識経営ボードの設立 知識経営環境要因のサポート 知識ワーカーのモチベーション改善 経営トップによる知識経営のコミットメント 知識流通業務の円滑化

知識ワーカーの協力体制の構築 知識共有プロセスの体系化 外部組織との統合と調和 知識経営成功要因の同定 知識経営パフォーマンスの評価 改善すべき知識経営施策の選定 知識経営のルールとガイドラインの制定 知識経営のための情報とコミュニケーショ ンサポートツールの提供

知識流通システム 知識経営アーキテクチャー 知識経営

戦略 レイヤー

知識業務 プロセス レイヤー

知識経営 施策群 レイヤー

図 3-1 知識流通システムと知識経営アーキテクチャー

図3-1の右側の知識経営アーキテクチャーは,階層化された知識経営の抽象化知識経営タ スクを示している.このアーキテクチャーおよび抽象化知識経営タスクは,Enkelら(2007)

によりM&A等の事例に特化した知識ネットワークアーキテクチャーの階層および方法論

をもとに,単一企業内の知識経営を分析するために変更したものである.本研究の目的は,

知識経営施策を起点に知識流通システムを構造化することであるため,Enkelらのレイヤー 名を変更し,知識経営実践のための方法論を抽象化知識経営タスクとし,その内容も改変 した.抽象化知識経営タスクは,企業の知識経営を実践するために各階層の責任者が実施 する方法論である.表3-1に知識経営アーキテクチャーをレイヤーごとに示す.次に知識経 営アーキテクチャーと抽象化知識経営タスクについて説明する.

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表 3-1 知識経営アーキテクチャー

レイヤー名 ID 抽象化知識経営タスク

知識経営戦略 レイヤー

#1.1 企業の知識経営ビジョンの提示

#1.2 知識経営ボードの設立

#1.3 知識経営環境要因のサポート

#1.4 知識ワーカーのモチベーション改善

#1.5 経営トップによる知識経営のコミットメント

知識業務プロセス レイヤー

#2.1 知識流通業務の円滑化

#2.2 知識ワーカーの協力体制の構築

#2.3 知識共有プロセスの体系化

#2.4 外部組織との統合と調和

#2.5 知識経営成功要因の同定

#2.6 知識経営パフォーマンスの評価

#2.7 改善すべき知識経営施策の選定 知識経営施策群

レイヤー

#3.1 知識経営のルールとガイドラインの制定

#3.2 知識経営のための情報とコミュニケーションサポートツールの提供

(1)知識経営戦略レイヤー

このレイヤーは企業の知識経営戦略に関する抽象化知識経営タスクを表現している.#1.1 は企業の知識経営ビジョンの提示である.企業の経営戦略としての知識経営ビジョンの提 示を意味するタスクである.#1.2は知識経営ボードの設立であり,知識経営を成功させる ために必要なタスクである.#1.3は知識経営環境要因のサポートであり,経営の立場から,

現場における知識経営実践へのサポートは重要である.#1.4の知識ワーカーのモチベーシ ョン改善と#1.5の経営トップによる知識経営へのコミットメントは,経営陣と従業員の関 係性を維持するために必要なタスクである.知識経営戦略レイヤーでは,経営陣が知識経 営戦略全体を管理しサポートすることの重要性がタスクとして明確化されている.

(2)知識業務プロセスレイヤー

このレイヤーには大きく分けてふたつの種類の抽象化知識経営タスクが存在する.ひとつ 目は,知識業務プロセス自体の実現に関するものであり,#2.1,#2.2,#2.3,#2.4が該当 する.もうひとつは,企業の知識業務プロセスを維持するために必要なものであり,#2.5,

#2.6,#2.7が該当する.#2.1は,知識流通業務の円滑化である.知識流通業務の円滑化は

個々の従業員の知識流通を支援するタスクである.#2.2は,知識ワーカーの協力体制の構 築である.このタスクは,企業内に存在する組織間の壁を打破することなど,知識ワーカ ーの協力を促進することを狙いとする.#2.3は知識共有プロセスの体系化である.このタ スクは,時代遅れとなって現場での業務にそぐわなくなった業務スタイルを効率的な知識 業務スタイルに体系的に変更することを狙いとする.#2.4は外部組織との融合と調和であ る.このタスクにより,社内外の異なる組織との円滑な知識流通が可能となる.#2.5の知

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識経営の成功要因の同定,#2.6の知識経営パフォーマンスの評価,#2.7の改善すべき知識 経営施策の選定のタスクは,現場での知識業務プロセスを維持するためのタスクである.

これらのタスクを実践することで,企業の知識経営の実態を調査・分析し,知識業務プロ セスの効果を維持することができる.

(3)知識経営施策群レイヤー

下位の知識経営施策群レイヤーには,知識業務プロセスを実現するための個別の知識経 営施策が位置する.#3.1は知識経営のルールとガイドラインの制定である.3.2は知識経営 のための情報とコミュニケーションサポートツールの提供である.このレイヤーの抽象化 知識経営タスクは,#3.1,#3.2の名称が示すとおり,たいへん抽象度の高いものである.

3.1にはルール,ガイドラインの制定が含まれている.ガイドラインはルールを現場で実行 可能なレベルに記述し直したものと言える.#3.2には知識経営のための情報システムや従 業員のためにデザインされたオフィスが含まれる.企業内で実施されている知識経営施策 は,知識経営施策群レイヤーの抽象化知識経営タスクに内包される.このレイヤーに相当 する個別の知識経営施策は,上位レイヤーである知識業務プロセスレイヤーの抽象化知識 経営タスクを実現するために実施される.

本研究では,知識流通システムを構造化するために,表3-1の知識経営アーキテクチャー を規定した.知識経営アーキテクチャーは,企業の知識経営のために実践すべき方法論を レイヤーごとの抽象化知識経営タスクで表現したものである.Enkelらのモデルでも主張さ れているように,この3階層のレイヤーは関係性を持ち企業の知識経営に作用する.本研 究では特に,3つの階層のうち,知識業務プロセスレイヤーを重視する.知識経営施策群レ イヤーは,知識業務プロセスレイヤーの抽象化知識経営タスクを実現するための個々の知 識経営施策が属するレイヤーである.また,知識経営戦略レイヤーは,知識業務プロセス レイヤーでの現場レベルの活動をサポートする抽象化知識経営タスクが属するレイヤーで ある.

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