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知識流通システムの構造化の事例研究

3. 知識流通システムの構造化の研究

3.4 知識流通システムの構造化の事例研究

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(x)知識経営施策の評価

(x)知識経営施策の評価のタスクは,(II)アイデア創造段階で構造化された知識経営施策の

優先度を評価し,(III)同化段階の(vii)ロードマップ構築のタスクの指針を決定するタスクで ある.操作分析段階のタスクによる優先順位の決定を受けて,最終的な同化段階を遂行し,

知識経営の実態に即した知識流通システムの構造化とロードマップの構築がされる.

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【目標 4】“協力しあう”スペシャリストを育成する必要がある

【目標 5】利用者側からの視点で,知識共有施策の連携を強化する必要がある

(ii)知識経営の事実の抽出

このタスクフォースは,表3-2に示す企業内で実施された知識経営調査から知識経営の事 実を抽出した.タスクフォースにより知識経営調査結果は再分析され,知識経営に関する 100の事実が抽出された.タスクフォースは,この事実を知識経営アーキテクチャーのレイ ヤーで分類した.たとえば,経営トップへのインタビューからは,10の知識経営に関する 事実が抽出された.この10件の内訳を知識経営アーキテクチャーのレイヤーで分類すると,

知識経営戦略(S)に関するものが4,知識業務プロセス(P)に関するものが5,知識経営施策 群(T)に関するものが1となった.5つの調査から抽出された100の事実は,知識経営戦略

(S)に関するものが38,知識業務プロセス(P)に関するものが38,知識経営施策群(T)に関す

るものが24であった.この100の事実を,現在の知識経営目標に対する達成度の評価と知 識経営課題の抽出に利用した.知識経営の事実の抽出は,企業の知識経営状況を把握する 活動であり,知識経営戦略レイヤーの抽象化知識経営タスクである#1.1知識経営ビジョン の提示に関連するタスクであり,知識経営目標の達成状況を評価するための事実を抽出す るタスクである.このタスクで抽出された事実の例は,「業務の現場でのノウハウが共有 できていない」といったものであった.

表 3-2 知識経営の事実の抽出

調査名 事実の数 階層名

経営トップへのインタビュー 10

S 4

知識経営戦略(S) P 5 38

T 1

知識経営アンケート 57

S 15

知識業務プロセス(P) 38

P 28

T 14

従業員満足度調査 21

S 12

P 4

T 5

企業コミュニケーションサイト

アンケート 7

S 7

知識経営施策群(T) 24

P 0

T 0

企業ポータルアンケート 5

S 0

P 1

T 4

100

(iii)知識経営施策の抽出

タスクフォースのメンバーは,経営企画部門,情報システム部門,技術部門,事業部門 に所属する従業員で構成されていたため,社内で実施されている知識経営施策の存在と効 果,限界を把握することができた.タスクフォースのメンバーは,社内の知識経営施策の 実施者や利用者であったため,それぞれの知識経営施策についての実施状況や特徴をタス クフォースに提供し,議論した.この結果,タスクフォースでは30の知識経営施策を抽出

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し,知識流通システムの構造化の対象とした.知識経営施策の抽出タスクは,知識経営戦 略レイヤーの抽象化知識経営タスクである#1.3知識経営環境要因のサポートを具体化する タスクである.

この事例において,タスクフォースの事務局メンバーは,準備段階を行うにあたり,全 社的経営戦略の解釈と知識経営戦略の導出,知識経営調査結果の入手,知識経営施策の整 理用のフォーマットの開発など,(IV)操作分析段階の分析モデルの決定タスクを実施した.

(II)アイデア創造段階

(iv)事実による知識経営目標の評価

表3-3は事実による知識経営目標の評価結果を示したものである.タスクフォースのメン バーは,知識経営調査の結果から抽出した事実を,知識経営目標に対応付けた.事実が知 識経営目標を支持する内容であれば「○=2点」,一部支持する内容であれば「△=1点」,

支持しない内容であれば「×=-1点」,無関係であれば「空白=0点」をつけ得点化した.

このように知識経営目標を知識経営調査から抽出した事実に基づいて評価することで,知 識経営を実践する上で強化すべきポイントを明らかにした.表3-3の結果から,タスクフォ ースは閾値を-10に設定し,目標1,目標3,目標5を改善の必要な知識経営目標として 選択した.また,表3-3からは,知識業務プロセスレイヤーの得点が-42と最も低く,多 くの課題が集中していることも明らかになった.

表 3-3 知識経営の事実による知識経営目標の評価

目標1 目標2 目標3 目標4 目標5

W( *. 知識経営戦略) -2 5 -3 0 -3 -3

W( *. 知識業務プロセス) -6 -9 -14 -9 -4 -42

W( *. 知識経営施策群) -3 4 -1 4 -7 -3

TW(* ) -11 0 -18 -5 -14 -48

(iii)改善の必要な知識経営目標と知識経営施策の関連付け

表3-4は,知識流通システム構造化のためのマトリックスである.このマトリックスは,

改善の必要な知識経営目標と知識経営施策の関係を示したものである.表3-4の表頭には,

知識経営施策のID,知識経営施策の名称,改善の必要な知識経営目標,関連する抽象化知 識経営タスクを配置した.表3-4の表側には,30の知識経営施策を配置した.知識経営施

策のID,知識経営施策の名称には,タスクフォースが付与したこの企業で実施中の知識経

営施策のIDおよび知識経営施策の名称が記述されている.表中の改善の必要な知識経営目 標には,個々の知識経営施策と改善の必要な知識経営目標の関係があれば1の値が入る.

この評価結果は,タスクフォースのなかの3名が相互にレビューを通じて,事務局メンバ ーが確認した結果である.

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なお,表3-4での知識経営施策の名称のうち,一部の施策の名称のみを具体的に記載した.

具体的に名称を記載した施策は,本論文で知識流通システムの構造化およびロードマップ 化の効果を説明する際に登場する施策である.それ以外の施策の名称は,知識経営制度,

知識経営調査,知識経営ツール,知識経営ルール,知識経営評価の5つに#(ナンバー)をつ けて示す.知識経営制度は,知識経営を実現するために従業員に提供された制度を示す.

知識経営調査は,知識経営の状態を測定するために実施された調査系の施策を示す.知識 経営ツールは,知識経営実現のために,従業員に提供された情報システムを示す.知識経 営ルールは,企業内での知識の開示範囲の条件など,知識経営を制御するルールの提示な どの施策を示す.知識経営評価は,企業の知識経営状態を評価する枠組みの検討などの施 策を示す.

表 3-4 知識流通システムの構造化のためのマトリックス

目標1 目標3 目標5 知識経営戦略 知識業務プロセス 知識経営施策群

1 知識経営制度#1 1 #2.3 #3.1

2 知識経営ツール#1 1 1 1 #1.3 #2.1 #3.2

3 知識経営ツール#2 1 1 1 #2.1 #3.2

4 知識経営調査#1 #1.1 #2.6 #3.1

5 知識経営調査#2 #1.1 #2.6 #3.1

6 企業内コミュニケーションサイト 1 1 1 #1.1 #2.1,#2.2 #3.2

7 知識経営調査#3 #2.6 #3.1

8 知識経営ツール#3 #2.7 #3.2

9 知識経営ツール#4 1 1 1 #2.1 #3.2

10 知識経営制度#2 1 #2.1 #3.1

11 知識経営制度#3 1 1 #2.7 #3.1

12 知識経営ツール#5 1 #2.1, #2.3 #3.2

13 知識経営ルール#1 1 #2.4 #3.1

14 知識経営ルール#2 1 #2.4 #3.1

15 知識経営ツール#6 1 1 #2.4 #3.2

16 社内ニュースサイト 1 1 1 #1.1 #2.1 #3.2

17 知識経営調査#4 #2.5 #3.1

18 知識創造オフィス 1 1 1 #2.1,#2.3 #3.2

19 知識経営評価#1 #2.6 #3.1

20 システム利用調査 1 #1.1 #2.6 #3.1

21 知識経営評価#2 #2.6 #3.1

22 知識経営評価#3 #2.6 #3.1

23 知識経営調査#5 #2.6 #3.1

24 知識経営制度#4 #2.5 #3.1

25 知識経営制度#5 #2.5 #3.1

26 知識経営制度#6 1 1 1 #2.7 #3.1

27 人材育成プログラム 1 1 #1.1 #2.2 #3.1

28 技術知識共有サービス 1 1 1 #2.7 #3.1

29 技術Q&Aサービス 1 1 1 #2.1 #3.1

30 社内メールマガジン 1 1 1 #2.1 #3.2

ID 知識経営施策名

改善の必要な

知識経営目標 関連する抽象化知識経営タスクID

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(vi)知識経営施策の抽象化

抽象化知識経営タスクには,個別の知識経営施策に関係する抽象化知識経営タスクをそ れぞれのレイヤーごとにタスクフォースのメンバーが記述した.タスクフォースのメンバ ーは,知識流通システムの構造化が知識業務プロセスレイヤーを重要視することと,表3-3 の結果,知識業務プロセスレイヤーの得点が最も低かったことから,知識業務プロセスレ イヤーの抽象化知識経営タスクに着目した.タスクフォースのメンバー3名は,表3-4中で,

個別の知識経営施策と関連する抽象化知識経営タスクを対応付ける際に,双方のあいだに 存在する意味的関連性について検討した.個別の知識経営施策と知識業務プロセスレイヤ ーの抽象化知識経営タスクの意味的関連性は知識流通システムの構造化における概念的な 構造を意味するものである.

この結果,改善の必要な知識経営目標と関係のある知識経営施策(WST)は,

WST = {1, 2, 3, 6, 9, 10, 11, 12, 13, 14, 15, 16, 18, 20, 26, 27, 28, 29, 30}

の19施策となり,検討すべき個別の知識経営施策を30から19に減らすことができた.さ らに,個別の知識経営施策と,抽象化知識経営タスクの関係から,改善の必要な抽象化知 識経営タスク(WGT)は,下記の10タスクとなった.

WGT = {#1.1, #1.3, #2.1, #2.2, #2.3, #2.4, #2.6, #2.7, #3.1, #3.2 }

本事例では,(Ⅳ)操作分析段階の(ix)価値モデルの構築のタスクとして,(Ⅱ)アイデア創造 段階を実施する際の事実による知識経営目標の設定の得点化方針や,閾値の設定,施策と 知識経営目標を関連付ける表3-4の整理用のフォーマットとその利用方法を検討し,タスク フォースメンバーに提供した.

(III) 同化段階

表3-4に基づいて知識流通システムをロードマップ化した.表3-4に基づいて構築された ロードマップを図3-3に示す.図3-3のロードマップには,知識経営戦略レイヤーの抽象化 知識経営タスクとして,#1.1と#1.3を配置した.また知識業務プロセスレイヤーの抽象化 知識経営タスクとして,#2.1,#2.2,#2.3,#2.4,#2.6,#2.7を配置した.知識経営施策群 レイヤーには,抽象化知識経営タスクではなく,19の個別の知識経営施策を配置した.抽 象化知識経営タスク#3.1のルールやガイドラインに分類されるものを丸印で,抽象化知識 経営タスク#3.2の情報システムやコミュニケーションサポートツールに分類されるものを 長方形で示した.

タスクフォースは改善の必要な抽象化知識経営タスクのなかから,表3-4で最も出現頻度 の高い#2.1の抽象化知識経営タスクに着目した.そして,#2.1を十分条件とする抽象化知 識経営タスクとして,#2.4と#2.6を,#2.1の必要条件となる抽象化知識経営タスクとして

#2.2を選択した.#2.1の必要条件,十分条件となる#2.2,#2.4,#2.6は二重枠でロードマ ップに示した.#2.1を十分条件とする抽象化知識経営タスク#2.4と#2.6は,ロードマップ 上の#2.1の後方に配置した.また#2.1の必要条件となる抽象化知識経営タスク#2.2はロー