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「相対価格調整」機構の修正

第 2 章 国家独占資本主義の経済法則の修正

第 5 節 「相対価格調整」機構の修正

Ⅰ 世界市場の調整力は働いているか

独占部門と非独占部門の「部門内利潤率」はともに均等化しその格差が固定化しており、「独占的 労働市場の貨幣賃金率」と「非独占的労働市場の貨幣賃金率」の格差も固定していると前提し、独 占部門と非独占部門はそれぞれ労働手段・労働対象・生活手段の3財を生産するとして合計6部門 モデルの「独占価格・非独占価格体系」において、投入係数が与えられれば、「独占価格・非独占価

格」方程式よりw/p32を与えて相対価格と利潤率がえられる73。そしてクローズド・システム内で利 潤率格差を内包した独占価格と非独占価格との間に「相対価格の調整化」は作用していた。国際経 済論においては貿易財と非貿易財との間には「相対価格の調整」が作用していることが実証されて はいるが、多国籍企業を中心とした国際的な独占資本の利潤率と発展途上諸国の企業の利潤率との 間に「調整化作用」が働いているのか否かはいまだに解明されていない。1970年代前後の世界経済 で先進国の工業製品価格と発展途上国の資源・石油価格との交易条件が逆転した(「新しい価格革 命」)。この「価格革命」は先進資本主義国と発展途上国との間に一種の「相対価格調整」作用が働 いたことを意味するが、スタグフレーション脱出後は石油価格も安定化・低迷化して「相対価格の 乖離」が進行した。国際的な「相対価格調整化」作用の有無は現代のグローバル資本主義のもとで の世界的不均衡を調整し解決する力があるのかないのかにかかわる根本的問題である。本節では、

「クローズド・システム」内での「相対価格調整機構」論を世界市場に拡大した国際価格論の試論 を提起しておきたい。

Ⅱ 国際価格論― 2 国(中心−周辺) ・3 財モデル(6 部門モデル)

1 前提

クローズドシステムの「独占・非独占」価格体系と同じく、独占部門を中心国に非独占 部門を周辺国に変え、両国ともに3 財(労働手段、労働対象、生活手段)を生産すると想定して、

中心国が生産する労働手段・労働対象・生活手段と周辺国が生産する労働手段・労働対象・生活手 段の6部門に分割する。中心国と周辺国との支配・従属関係(「搾取関係」)が分析の焦点であるか ら、中心諸国と周辺諸国の利潤率はそれぞれ均等化し、格差が固定化していると想定する。貨幣賃 金率もそれぞれ異なり格差が固定化しているものとする。次項で説明するが、国内の独占・非独占 価格体系と同じように、発展途上国の賃金率と利潤率を与えれば、両国で生産される労働手段・労 働対象・生活手段の相対価格と実質賃金率が求められる。

どの財でも中心国の「均等利潤率」は周辺国の「均等利潤率」ρの<1+λ>倍、「中心国労働市場」

での平均貨幣賃金率は「周辺国労働市場」での平均貨幣賃金率wの<1+μ>倍、とする。それぞれの 国で使用する労働手段Fと労働対象Rのサブスクリプトの左側の1・2・3は生産部門(1:労働手 段、2:労働対象、3:生活手段)を示し、サブスクリプトの中央の1・2は生産部門が中心国(1)

か周辺国(2)を表示し、右側の1・2・3は使用する労働手段と労働対象を生産したのが中心国の 場合が1周辺国の場合が2、と表示する。したがって労働手段を生産する中心国では、使用する中 心国労働手段はF111、使用する周辺国労働手段はF112、使用する中心国労働対象はR111、使用する 周辺国労働対象はR112、を示す。労働力Lのサブスクリプトの左側1・2は使用される部門、右側 1・2は生産が中心国(1)か周辺国(2)かを示す。価格pと生産物Xのサブスクリプトの左側1・

2・3は生産部門、右側1・2は生産が中心国(1)か周辺国(2)かを示す。したがって労働手段を 生産する中心国では使用する労働力はL11、独占的労働手段の価格はp11、と表現される。

2 国際価格体系

「国際価格」体系は以下のようになる。

労働手段

中心国労働手段

ε(F111p11+F112p12)+ R111p21+ R112p22+w(1+μ) L11+

{F111p11+ F112p12+ R111p21+ R112p22+w(1+μ) L11}(1+λ)ρ=X11p11

周辺国労働手段

ε(F121p11+ F122p12)+ R121p21+ R122p22+w L12+

{F121p11+ F122p12+ R121p21+ R122p22+wL12}ρ=X12p12

労働対象

中心国労働対象

ε(F211p11+F212p12)+R211p21+R212p22+w(1+μ)L21+

{F211p11+F212p12+R211p21+R212p22+w(1+μ)L21}(1+λ)ρ=X21p21

周辺国労働対象

ε(F221p11+F222p12)+R221p21+R222p22+wL22+

73 拙著『国家独占資本主義の国内体制―現代資本主義の経済理論』第14章第1節第3項、参照。

数値例解については、拙著『現代マルクス経済学』桜井書店、2008年、138〜9頁、参照。ただし 線形連立方程式体系にするために、非独占利潤率を与えて相対価格と「非独占的生活手段」で割っ た実質賃金率(w/p32)を求めている。

{F221p11+F222p12+R221p21+R222p22+wL22}ρ=X22p11

生活手段

中心国生活手段

ε(F311p11+F312p12)+R311p21+R312p22+w(1+μ)L31+

p12/p32{F311p11+F312p12+R311p21+R312p22+w(1+μ)L31}(1+λ)ρ=X31p31

周辺国生活手段

ε(F321p11+F322p12)+R321p21+R322p22+wL32+

{F321p11+F322p12+R321p21+R322p22+wL32}ρ=X32p32

価格体系の6つの式をそれぞれの生産量で割って、労働手段の投入係数(F/X)をa、労働対象の投入

係数(R/X)をb、労働力の投入係数(L/X)をcとし、さらに「非独占的生活手段」の価格p32

割って整理すると、次項のような「国際価格」方程式が求められる。サブスクリプトは「国際価格」

体系と同じとする。

3 国際価格方程式

労働手段

中心国労働手段{εa111+ a111(1+λ)ρ}p11/p32+{εa112+a112(1+λ)ρ}p12/p32

+{b111+b111(1+λ)ρ}p21/p32+{b112+b112(1+λ)ρ} p22/p32+{(1+μ) c11+(1+μ)c11(1+λ)ρ} p12/p32

=p11/p32

周辺国労働手段

(εa121+a121ρ)p11/p32+(a122+a122ρ)p12/p32+(b121+b121ρ)p21/p32+(b122+b122ρ)p22/p32+(c12+c12ρ)w/p32

=p12/p32

労働対象

中心国労働対象

{εa211+a211(1+λ)ρ}p11/p32+{εa212+a212(1+λ)ρ}p12/p32

+{b211+b211(1+λ)ρ}p21/p32+{b212+b212(1+λ)ρ}p22/p32+{(1+μ)c21+(1+μ)c21(1+λ)ρ}w/p32

=p21/p32

周辺国労働対象

(εa221+a221ρ)p11/p32+(εa222+a222ρ)p12/p32+(b221+b221ρ)p21/p32+(b222+b222ρ)p22/p32+(c22+c22ρ)w/p32

=p11/p32

生活手段

中心国生活手段

{εa311+a311(1+λ)ρ }p11/p32+{εa312+a312(1+λ)ρ}p12/p32

+{b311+b311(1+λ)ρ}p21/p32+{b312+b312(1+λ)ρ}p22/p32+ {(1+μ)c31+(1+μ)c31(1+λ)ρ}w/p32

=p31/p32

周辺国生活手段

(εa321+ a321ρ) p11/p32+(εa322+a322ρ) p12/p32+(b321+b321ρ)p21/p32+(b322+b322ρ)p22/p32+(c32+c32ρ)w/p32

=1

μとλは一定であるから、方程式が6つで、未知数は5つの価格とw/p32(非独占生活手段表示の 実質賃金率)と非独占利潤率ρの7つであるので、w/p32を与えれば相対価格と利潤率がえられる

74。あるいは非独占利潤率ρを与えれば、6つの「相対価格」がえられる75

4 例解

投入係数を以下のようにして、周辺国利潤率を与えて相対利潤と周辺国実質賃金率

(w/p32)を求めよう。簡単化のために、中心国と周辺国の3部門(3財)の投入係数は同じとする。

a111=a211=a311=1/4,a121=a221=a321=1/3,a112=a212=a312=1/6,a122=a222=a322=2/9,b111=b211=b311=1/4,b121= b221=b321=1/3,b112=b212=b312=1/6,b122=b222=b322=1/3,c11=5/8,c12=5/4,c21=2/3,c22=4/3,c31=3/4,c32=3/2、 とし、ε=1/10,ρ=0.05、とおく。そして相対価格を、p11/p32=u,p12/p32=v,p21/p32=x,p22/p32=z,w/p32

=w´とおけば、価格方程式は以下のようになる。

中心国の労働手段部門

( ̶ 153/160)u+(7/240)v+(43/160)x+(43/240)y+(129/128)

w´=0

周辺国の労働手段部門

(1/20)u ̶ (29/30)v+(7/20)x+(7/20)y+(21/16)

w´=0

74 数値例解については、同上書、138〜9頁、参照。ただし線形連立方程式体系にするために、非 独占利潤率を与えて相対価格と「非独占的生活手段」で割った実質賃金率(w/p32)を求めてい る。

75 w/p32は、労働力の価格の相対価格とみなせる。

中心国の労働対象部門

(7/160)u+(7/240)v ̶ (117/160)x+(43/240)y+(43/40)

w´=0

周辺国の労働対象部門

(1/20)u+(1/30)v+(7/20)x ̶ (13/20)y+(7/5)

w´=0

中心国の生活手段部門

(7/160)u+(7/240)v+(43/160)x+(43/240) ̶ z+(387/320)

w´=0

周辺国の生活手段部門

(1/20)u+(1/30)v+(7/20)x+(7/20)y+(63/40)

w´=1