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現代資本主義の経済理論の修正

第 2 章 国家独占資本主義の経済法則の修正

第 2 節 現代資本主義の経済理論の修正

第2部では国家独占資本主義の国内体制として、国家独占資本主義の構造(内的編成)分析と動 態分析として、国家独占資本主義(第1章)、産軍複合体―国家の軍事支配(第2章)、商品経済の 全面化−市場原理主義批判(第3章)、不換銀行券制度(第4章)、株式会社―現代の資本機能(第 5章)、現代の「資本=賃労働」関係―現代の労働過程・労働関係・生産関係の変容(第6章)、現 代の再生産過程(第7章)、サープラスの増大傾向とサープラスの吸収機構―「ムダの制度化」(第 8章)、現代の土地所有(第9章)、現代の賃労働(第10章)、国民所得と諸階級(第11章)、現代 の景気循環の変容(第12章)、現代の相対価格調整機構(第13章)、現代資本蓄積の傾向(第 14 章)、国家と金融寡頭制(第 15 章)、を考察した。これらの国内体制は世界体制を基本的に規定する とともに、世界体制においては制約され修正させられている。不換銀行券制度、現代の景気循環の 変容、現代の相対価格調整機構については第3〜5節で論じることにして、本節ではそれ以外の章 で展開した現代資本主義の経済理論の修正について簡単に指摘しておきたい。

1 市場原理主義のグローバルな展開

資本主義経済は商品経済が全面化したシステムであ り、現代資本主義では「耐久消費財ブーム」(大衆消費社会)と新自由主義の市場原理主義の宣伝に 煽られて商品経済化は生活の隅々にまで浸透し、多国籍企業による「グローバル資本主義化」によ って世界の隅々にまで商品経済化が押しよせている56。世界経済のグローバリゼーションは発展途 上諸国の非商品経済・伝統的生活様式を商品経済化しているが、それによってかえって発展途上諸 国の貧困層の増大と環境破壊が進み、新しい投機の世界を生み出している。それと同時にグローバ リゼーションと金融化のもとで世界的に貧富の格差が深まってしまった。富める一握りの富者たち

(1%ないし0.1%の人間)が支配する世界がグローバルに進展し、彼らのタックスヘイブンを利 用した税逃れは国民国家の社会福祉政策や所得再配分政策を阻害するに至っている。

第3章では投入係数と投入労働量(時間)が決まれば価値は投下労働時間として規定できるとし たが、世界市場においては労働の自由移動が制度的には保証されていないので世界共通の単一労働 は成立していない以上、国際価値は存在しないと考える。第5節で、世界市場での「相対価格調整 機構」として国際価格を規定する。

2 多国籍企業( 「グローバル資本」 )

現代資本主義では「自己増殖する運動体」としての資 本機能を株式会社が遂行している。「独占・非独占」価格体系になっても独占利潤と非独占利潤は、

それぞれの部門で生産された余剰労働手段・余剰労働対象・余剰生活手段を独占価格と非独占価格

55 たとえば、ヴェ・イ・レーニン著、宇高基輔訳『帝国主義』岩波文庫、1956年、第7・9章。

56 拙著『国家独占資本主義の国内体制―現代資本主義の経済理論』(リポジトリ)の第3章、参 照。

で集計したものと規定され、労働力を購入した資本が両利潤を搾取し、その一部が蓄積にまわされ て「自己増殖」していく。株式会社のもとで「会社による所有と支配の統一」が実現しており、支 配的な資本形態は企業集団としての金融資本であり、その経済力を基盤として政治・社会・軍事・

教育研究のリーダーたちとの結合関係を形成している(金融寡頭制)57

(ⅰ)企業集団の再編過程 グローバリゼーションの進展とバブル崩壊後の長期停滞によって国内 的にも世界的にも競争が激化し、産業・金融の再編が起こった。日本の金融機関では、都市銀行は 3大メガバンクになり、地方銀行の合併やシステムの統合が進められている。産業界では企業集団 相互の業務提携や合併が進行し、外国資本と業務提携する企業も増えた。株式相互持合いは株価の 長期的低下によってその負担が大きくなり、既存企業集団の弛みと再編成を促進していった。

(ⅱ)6大企業集団の崩壊と独占体制の強化 企業集団の推移は次のようにまとめられる。①三大 メガバンクに銀行・金融の分野が再編され、②企業集団はグローバル競争に直面して自ら崩壊し、

③大企業と大銀行の依存しあう関係として金融資本概念は有効であり、④安定株主構造の変換・転 換・組み換え・再編はあったが、崩壊はしていない、⑤メインバンク関係は「解消」し、株式相互 持合いによる安定株主構造は「崩壊」し、6大企業集団体制は「崩壊」した58

(ⅲ)M&A(吸収・合併) 20世紀末からの大企業体制の再編はM&Aによって実現している。

当然M&Aも国際的にも行われてきた。

3 世界市場における「資本―賃労働」関係

株式会社が支配的資本となることによって株 式会社組織が労働者を管理するようになり、「科学的労働管理」(テーラー=フォード方式)や株式 会社内部の「産業官僚制」や「企業内労働市場」が形成された(「ピラミッド型労働編成」)59。世界 経済においては発展途上国から中心資本主義国に移動した労働力(「移民労働」)や多国籍企業に現 地採用された労働者たちは強制的にこうした現代的な「資本=賃労働」関係が強制される。戦後の 技術革新は消費生活を一変させ、情報通信技術革命と結びついた産業構造の変化(サービス経済化・

金融経済化)は新興経済諸国や発展途上国にも押し寄せている。また現代の国家主導の科学=産業 革命は中国のような「国家指令的中央経済」においても継承されている、ともいえる。しかし世界 経済は資本主義が全面化しているのではなくて多くの非資本主義的経済が存在し、

したがって「資本―賃労働」関係以外の生産関係(「自給自足的独立労働」「家族労働」など)と併 存している。多国籍企業はむしろ労働コストを節約するためにこうした「非資本主義的労働」を積 極的に存続させ「搾取」を高めている。

4 世界経済の再生産過程

現代の再生産過程として、(1)三部門の価値表式(マルクス表式の 拡張)、(2)市場価格表式と生産価格表式、(3)生産価格法則に基づくサープラスの分配と近代的な 商業利潤・銀行利潤・地代、(4)再生産と国民所得、(5)「独占・非独占」価格表示の再生産表式、

(6)対人サービスと再生産表式、(7) 軍事産業と再生産、を提示した60。世界経済においては、

各国の国民所得データを集計したり国際産業連関表を作成し、それをマルクス再生産表式と適合的 にする課題がある。

5 世界経済における土地所有

戦後日本の土地所有形態は農地以外は法人所有・自治体所有・

国有の拡大が主流であり、三大階級としての土地所有者階級は現代では消滅している。しかし私的 所有が存続している世界経済全体においては依然として農地の個人所有が多いが、中心資本主義国 手は農業人口が極端に低下した(1990〜1年の農業人口はアメリカ2.9%・イギリス2.1%・ドイツ

3.0%・フランス6.4%)。農業は現在の73億人の地球人口の生命と健康を維持し向上させるための

必要不可欠な本源的生産活動であるが、各国が激しい食糧戦争を繰り広げ、農業が提供する原料や 食料は巨大な多国籍企業(アグリビジネス)が支配している61。このように世界経済における農業問題 は深刻であり、人口爆発や環境危機との関連で世界土地問題を解明する必要がある。

6 世界経済における労働形態

世界には賃労働以外の非資本主義的労働が発展途上国を中心 として多数存在している。中心資本主義国においては「労働力の再生産」機構は変容し、租税制度 や社会福祉政策も労働者の生活に影響する。発展途上諸国では古典的資本主義(自由競争資本主義)

と同じく、基本的には受け取る賃金によって労働力を再生産している。中心資本主義国では耐久消 費財ブームや情報通信革命によって消費生活にますます商品が浸透し「欲望の疎外」が深化した。

57 同上書、第5章、参照。

58 鈴木健『六大企業集団の崩壊』新日本出版、2008年、1〜7頁。

59 拙著『国家独占資本主義の国内体制―現代資本主義の経済理論』(リポジトリ)の第6章、参 照。

60 同上書、第7章、参照。

61 同上書、第8章、参照。

労働力養成の高等教育化や効率化・複雑労働化が進み、サービス労働の増大や研究開発・企画・デ ザイン・生産技術部門の増大や認知労働の全面化が進んできた。さらに労働力再生産に消費者ロー ンが入り込み、年金基金や個人貯蓄がさまざまな機関によって金融商品に運用され、労働者が家計 資産として株式を保有するようになってきた62

情報通信革命に促進された「グローバル資本主義化」によって発展途上国に進出した多国籍企業 は、現地の安い単純労働によって現地生産するとともに情報通信技術を開発する「エリート労働者」

をつくり出した。発展途上国の低賃金は賃金以外の自給自足的労働による「労働力再生産」を余儀 なくさせるとともに、押しよせる中心資本主義からの「大量生産=大量消費」型生活様式の「輸入」

商品の「市場問題」を生みだしている。同時に発展途上国から生まれた新興経済国では一握りの大 富豪と「エリート労働者」と圧倒的多数の大衆層との間の「貧富の格差」を拡大している。

7 世界的な貧富の格差

中心資本主義国内では労働者階級内部の分断化と階層化が進み、階級 概念だけでは十分に把握できないさまざまな社会問題(家族・世代・地域・ジェンダー・公害・環 境破壊)が発生している。経済格差をもたらす基本要因が階級であり階級所属は固定化傾向にあり、

新自由主義のもとでさらにバブル崩壊後には一層労働者状態が悪化した。資本側の蓄積体制再構築 政策によって正規労働者のリストラと非正規雇用の増加が進み、地域や家庭での生活共同体が崩壊 し、新たな貧困問題が発生している。また女性の就業化によって「核家族化」が進行して、生活困 難者や困窮者の「ホームレス」化が進展した63

「グローバル資本」(多国籍企業)の資本蓄積は発展途上国にさまざまな「貧困」と環境破壊をも たらしてきた。グローバルにみれば、飢餓線上をさまよっている貧民層と一握りの億万長者として 富と貧困の両極的蓄積傾向は貫徹している。さらに21世紀初頭までに難民は増加しつづけ、1990 年代に地域紛争においてクルド難民・ルワンダ難民・コソボ難民・東チモール難民などが発生した。

で難民数は推計6,560万人(2016年6月20日)となり、難民の86%が低・中所得国で生活して いる。アメリカや日本でも所得や資産の格差は拡大してきた。情報通信革命と金融化によって「格 差と貧困」は一層拡大し、格差の拡大どころか富や権力・影響力の極端な集中に向っている。経済 の金融化によってアメリカの家計の債務(借金)の占める比率は上昇してきたが、90%にあたる階 層の債務比率は若干低下しているが、90%層が住宅ローン以外のローン(学生ローン、自動車ロー ンなど)の90%を占めていた64

8 世界市場におけるサープラスの吸収

現代の資本蓄積過程に内在する過剰蓄積傾向を制 度的・構造的に解決しよとする方法が制度化され、資本主義の「腐朽性」が強まってきた。1950・

60年代の高成長期には資本蓄積は「大量生産=大量消費型蓄積」として進行したが、過剰蓄積が進 みはじめて「景気過熱の兆候」と判断すれば、国家は過剰蓄積が一層進展し恐慌が深く・広く・長 くなることを未然に防ごうとして人為的に景気を引締めた。過剰蓄積は軽微化した恐慌として発現 していたが、短期的な景気調整政策は長期的には構造的な過剰蓄積状態を作りだすとともにインフ レーションを加速化させ、1970 年代に中心資本主義国が一斉にスタグフレーション病に陥った。

1970年代末から80年代初頭にかけて国家独占資本主義の世界体制は「グローバル資本主義」に転 換し、蓄積様式も「大量生産・大量消費型資本蓄積」から「グローバル化・金融化型資本蓄積」へ と変化した。経済の金融化とそのグローバル化は「質的に新しい投機的金融活動」を生みだし、貨 幣資本は現実資本の運動から乖離して自己累積的な独自の運動をするようになった。質的に新しい 投機的金融活動の大膨張は実体経済への投資も刺激したが、金融の暴走によって現実資本の蓄積加 速化=過剰化が先に延ばされ、過剰蓄積の爆発として過剰生産恐慌が爆発したのではなく金融の暴 走による金融崩壊によって世界的に深刻な同時恐慌が引き起こされた。

「グローバル資本主義」における加速的蓄積=過剰蓄積は多国籍企業の「グローバル資本蓄積」

によって展開された。「グローバル資本」化した多国籍企業は本国では産業の空洞化をもたらし、投 機的金融活動に過剰貨幣資本が吸収されたが、世界的には新興工業経済国を中心とした発展途上国 に資本を輸出し、新興工業経済国が世界的な加速的蓄積=過剰蓄積を主導するようになった65。資 本蓄積の段階的な変化と過剰蓄積化の変容とともに、過剰蓄積の「解決」(吸収)する制度が作りだ されてきた。しかし世界市場においては「過剰蓄積吸収を吸収する制度」など存在していないから、

もろに世界レベルで過剰蓄積傾向が発現しやすくなっている。

9 グローバルな資本蓄積の傾向

「グローバル資本主義」になるとグローバル資本(多国籍

62 同上書、第10章、参照。

63 同上書、第11章、参照。

64 同上書、第13章第1節第1項、参照。

65 同上書、第11章、参照。。