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発音学習ストラテジー

ドキュメント内 九州大学学術情報リポジトリ (ページ 88-92)

第 4 章 日本語の発音習得度と発音習得度に影響を与える要因の関係

4.5 発音習得度と要因の関係

4.5.3 発音学習ストラテジー

発音学習ストラテジーの使用頻度と発音習得度の相関関係、発音学習ストラテジーが発 音習得度にどの程度影響を与えているのかを明らかにするために、相関分析および回帰分 析を行った。16の発音学習ストラテジー項目と発音習得度のスピアマンの相関の結果、「ア クセントに気をつけて発音する(単語:r = .487, p < .01, 短文:r = .580, p < .01, 文章r = .499, p < .01)」「イントネーションに気をつけて発音する(単語:r = .417, p < .01, 短文:r = .456, p < .01, 文章r = .327, p < .05)」の2項目において、有意な相関関係が見られた。「日本語 で独り言を言ったり、自問自答したりする」というストラテジーは単語(r = .338, p < .05)

と文章(r = .324, p < .05)において有意な正の相関関係が見られた。この3つのストラテジ

ーは、発音習得度と相関関係があることが分かった。対象者の数は46名だが、それに対し ストラテジー項目数は16項目あり、回帰分析に適した数だとは言えないので、因子分類を 行った後、回帰分析を行う。本調査のデータが因子分析に適するかどうかを測るため、KMO

およびBartlettの検定を行ったところ、KMO値は0.649で有意(p < .001)だった。本調査

のデータは因子分析を行うための最低基準値を満たしていると言える。因子抽出法は最尤 法、回転法はプロマックス法を用いて探索的因子分析を行ったところ、4因子が抽出された。

因子負荷量が 1を上回る項目、いずれの因子でも 0.35に満たない項目を削除し、3度因子 分析を繰り返し、3因子が妥当であると判断した(χ2 = 32.165, p = .509)。この3つの因子 で、全体の 49%を説明することができる。各因子のα係数は、第 1 因子で.80、第 2因子 で.73、第 3因子で.66であり、内部一貫性が認められた。因子分析の結果を以下の表17に

示す。

表 17 プロマックス回転後の因子パターン行列

因子 1 因子 2 因子 3 第 1 因子:意識・修正ストラテジー α = .80

日本語母語話者に発音についてのアドバイスや説明を聞いたあと、

それを意識する。 .862 -.235 -.052

自分で自分の発音に納得するまで、変化させながら発音を修正する。 .844 -.044 .084 アクセントに気をつけて発音する。 .668 .078 .026 第 2 因子:比較・ソロ練習ストラテジー α = .73

発音する時、舌や唇など口の中を意識して発音する。 -.115 .785 .051 日本人の口元を見て発音を真似する。 -.247 .706 .099 母語と日本語の発音の類似点・相違点を比較する。 .005 .594 -.202 下手だと思ったり、間違えたと思ったりしたら言い直して発音する。 .202 .433 -.383 日本語で独り言を言ったり、自問自答したりする。 .206 .42 .186 普段気がついた時に一人で発音の練習をする。 .111 .413 .225 第 3 因子:音重視ストラテジー α = .66

自分の発音を録音し、それを聞いて練習する。 -.033 -.085 .955 一音一音注意深く発音する。 .185 .184 .477

項目の内容を考慮し、因子1を「意識・修正」ストラテジー 、因子2を「比較・ソロ練 習」ストラテジー、因子3を「音重視」ストラテジーとした。意識・修正ストラテジーを構 成する3因子は、小河原(1997)の「自己評価型ストラテジー」に含まれるものと一致して いた。この3因子と評価点について、スピアマン相関を用いた相関分析を行った(表18)。

表 18 評価点とストラテジー3 因子のスピアマン相関の結果(N=46)

意識・修正 比較・ソロ練習 音重視

単語 .349* .178 .151

文 .306* .210 .094

文章 .308* .106 .164

*p < .05

因子1「意識・修正」ストラテジーは、単語(r = .349, p < .05)、文(r = .306, p < .05)、

文章(r = .308, p < .05)全てと有意な正の有意な相関があることが分かった。最も強い相関

関係が認められたのは単語だった。次に、重回帰分析を用いてストラテジーの3因子が評価 点を予測できるかどうかについて調べる。従属変数を評価点、ストラテジーを独立変数とし て重回帰分析を行った(表19)。回帰分析の結果、「意識・修正」ストラテジーと単語(β

= .383, p < .05, R2 =.069)および文章(β = .394, p < .05, R2 =.068)に有意な値が確認された。

意識・修正ストラテジーは単語および文章の発音習得度に影響を与えることが分かった。意 識・修正ストラテジーを構成する3つのストラテジーは、小河原(1997)の「自己評価スト ラテジー」に含まれるものであり、この結果は、小河原(1997)の自己評価型ストラテジー が発音習得度の向上に効果があるという結果と一致している。

表 19 単語の評価点とストラテジー3 因子の重回帰分析の結果(N=46)

R2 非標準化係数 標準化係数 B 標準誤差 β

単語

意識・修正

.069

29.060 11.041 .383*

比較・ソロ練習 -6.159 11.783 -.088

音重視 3.471 10.262 .052

意識・修正

.046

26.407 14.298 .303

比較・ソロ練習 6.421 15.259 .072

音重視 -6.591 13.290 -.077

文章

意識・修正

.068

16.340 6.722 .394*

比較・ソロ練習 -5.526 7.174 -.130

音重視 1.596 6.248 .039

*p < .05

4.5.3.1 物的リソース

次に、物的リソースの活用方法について評価点との関係を分析する。まず、本調査で調査 したリソースの種類とその活用方法をまとめた表 11 を再度提示する。複数選択式のため、

対象者数とは一致しない。

それぞれのリソースにおける各活用方法を一つのストラテジーと数え(例:「教科書を聞 く」「教科書を音読する」)、そのストラテジーを使用するか(1)、使用しないか(0)と いう 2カテゴリーにし、評価点との相関分析を行った。使用する人数が1〜4名だったもの は分析から除外し、評価点との相関関係をスピアマン相関を用いて調べた。その結果、有意 な相関が認められたのは「教科書のモデル発音と自分の発音を比べる」(文章:r = .296, p

< .05)「発音の教科書を聞く」(単語:r = -.312, p < .05, 文:r = -.356, p < .05)、「発音の 教科書のモデル発音と自分の発音を比べる」(文章:r = .297, p < .05)の3項目のみだった。

「発音の教科書を聞く」において見られたのは負の相関、「発音の教科書のモデル発音と自 分の発音を比べる」において見られたのは正の相関であるため、発音の教科書を「聞く」だ けではなく「比べて」考えることが評価点に影響することが示唆される結果となった。

表 11 リソースおよびその活用方法

聞く 音読 真似する シャドーイング 見る(読む) 歌う 書きとる 比べる 教科書 8 27 25 27 4 0 3 7 発音教科書 7 23 25 22 3 0 1 6 アニメ 15 5 14 13 12 1 1 1 ニュース 12 8 12 10 3 0 3 0 ドラマ・映画 19 11 19 13 13 1 0 3 バラエティ 15 8 11 10 6 0 0 5

9 7 15 8 0 12 0 1

4.5.3.2 人的リソース

本調査では「教師」との接触は分析の対象とせず、教師以外の母語話者との接触頻度と発 音習得度について分析を行った。教師以外の母語話者との接触頻度をまとめた表12を再掲 する。

表 12 日本語母語話者との接触頻度(N=46) 接触頻度 6-7 日/週 3-5 日/週 1-2 日/週 それ以下 人数(%) 13

28%

18 39%

12 26%

3 7%

接触頻度と評価点の相関関係を調べるため、ピアソンの相関を用いて相関分析を行った ところ、単語(r = .377, p < .05)、文(r = .298, p < .05)、文章(r = .349, p < .05)において 正の有意な相関関係が認められた。

次に、接触頻度がどの程度発音習得度に影響を与えているか明らかにするため、単語・

文・文章を従属変数、接触頻度を独立変数としてそれぞれ単回帰分析を行った(表 20)。

回帰分析の結果、単語(β= .377, p < .05)、文(β= .298, p < .05)、文章(β= .349, p < .05)の 3つすべてにおいて有意な値が確認された。β値が最も大きいのは文章を従属変数とした時

で、接触頻度は文章の発音習得度に最も大きな影響を与えている。したがって、日本語母語 話者との接触する回数が多いと、より自然に文章を読むことができると言える。

表 20 接触頻度と評価点の回帰分析の結果(N=46)

R 非標準化係数 標準化係数 B 標準誤差 β

単語 .091 26.732 9.897 .377*

文 .068 27.050 13.050 .298*

文章 .102 15.043 6.093 .349*

*p < .05

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