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各章のまとめ

ドキュメント内 九州大学学術情報リポジトリ (ページ 110-113)

第 5 章 終章

5.1 各章のまとめ

課題(3)

発音習得度に最も影響を与えている要因は何か。

課題(4)

発音に対する考え方に影響を与えている要因は何か。

課題(5)

発音学習ストラテジーに影響を与えている要因は何か。

上記の研究課題を解明するために、質問紙調査と発音タスク調査を実施し、そのデータを 分析した。課題(1)については相関分析、課題(2)については単回帰分析、課題(3)、課題(4)・ (5) には重回帰分析を用いた。

3.3.1 では、本研究で使用する発音タスクの作成のために、中国語母語話者に見られる日

本語の発音特徴に関する先行研究を整理した。3.3.1.1破裂音、3.3.1.2母音、3.3.1.3特殊拍、

3.3.1.4アクセント・イントネーション、3.3.1.5ナ・ラ・ダ行、3.3.1.6外来語、3.3.1.7中国語

の方言差という 7 つの視点から先行研究を概観し、次のようなことが明らかになった。有 声・無声破裂音について、多くのCLにとってはこの区別が難しいが、上海方言には有声・

無声の区別があるため、北方方言話者より有利である。方言の影響の他に、学習年数の影響 も見られ、学習年数が長くなると習得が進む。日本語の無声破裂音を中国語の有気音、日本 語の有声破裂音を中国語の無気音で発音する傾向がある。

母音の習得においては、知覚の面では大きな問題が見られないが、生成の面では日本語の 単母音に中国語の異なる音を対応させて発話していることが分かった。知覚の際にも中国 語の他の音を対応させて聞き分けているが、それぞれ異なる音を対応させているため識別 には問題がなく、生成する際に問題が起きてしまう。

特殊拍については、撥音の後に同じ種類の鼻子音が連続する場合の知覚が難しく、生成の 面では「ん」を[n]で代用してしまう問題が確認されている。促音に関しては知覚・生成とも に困難であり、入声音がある閩南語や広東方言を母方言とする学習者に関してもデータの 蓄積が必要な状況である。促音、長音においては様々な話速に対応することも難しい点の一 つとして挙げられている。長短の判断に関しては、上級レベルにおいても知覚する際の確か な基準が確立されておらず、初級レベルにおいては長音の持続時間がかなり長くないと知 覚が難しいことが確認されている。生成の面においても、日本語能力が高い場合にも意図通 りに発音することが難しいことが明らかになった。

アクセントについては、アクセントの知識が増えると聴取能力も良くなることが分かり、

学習年数と滞在期間の影響も認められるという結果が出ている。頭高型は覚えやすく、平板 型と尾高型の混同が顕著である。イントネーションの発話意図については、語末が「じゃな

い」の文において「同意要求」「非難」のイントネーションの知覚習得は中級から上級にか けて進み、「否定」→「同意要求」→「非難」の順に習得するという。

ナ・ラ・ダ行の習得に関する研究は、南方方言話者を対象としたものが多かった。南方方 言話者にとっては、ナ・ラ・ダ行の習得は知覚・生成の両面において難しいが、知覚がより 難しいことが明らかになっている。しかし、南方方言話者の困難点を一括りにできるわけで はなく、方言によって苦手とする音が異なることも明らかになった。

外来語は、表記がカタカナであることもあり、苦手意識を持っているCLが多いだけでな く、知覚や生成に問題があるためコミュニケーションにおいても障害になっている。間違っ て聞き取ってしまうと、辞書を引くことができないため意味の理解も難しくなり、CLにと って困難である有声・無声破裂音や特殊拍などが含まれる外来語の場合にはさらに困難に なることが明らかになった。

使用する母方言による発音習得の差異も確認されており、上海方言話者は有声・無声破裂 音やアクセント・イントネーションの習得において有利であることが明らかになった。ナ・

ラ・ダ行の音声習得は南方方言話者にとって困難であると言われているが、南方方言話者間 でもその習得に違いが見られた。四川方言話者は、ナ行の混同が最も顕著で、次いでラ行、

ダ行の混同はほとんど見られない。広東語話者は、ダ行音の混同が多く、ナ行・ラ行音の聴 取混同も見られる。台湾語話者は、ダ行音をラ行音に聞き間違えることが非常に多いことが 明らかになっている。

これらの先行研究の結果に基づいて、3.3.2 において本研究で使用する発音タスクを作成 した。発音タスクは単語・発話意図の指示がある短文、文章の3つより構成される。3.4に おいては、作成した発音タスクの実施方法および評価者に関して詳細を述べた。

第4章では、4.3において質問紙調査の集計を行い、各要因についてデータの記述統計を まとめた。4.4において発音タスクの評価点データを示し、各発音タスク項目別に平均点と 方言別の平均点を算出した。方言による目立った違いは見られず、最も評価点が低かったの はアクセント融合型複合名詞である「中央改札」だった。4.5においては、課題(1)・(2)に沿 って発音習得度と各要因の関係を分析した。発音に対する考え方と発音授業の受講経験は 発音習得度に与える影響が大きくないことが明らかになった。4.6では上位群・下位群のデ ータの比較を行い、4.5の分析結果を補足した。人的リソースである日本語母語話者との接 触頻度だけでなく、上位群は日本語母話者との接触場面が複数あることが明らかになった。

4.7 においては、課題(3)である発音習得度に最も大きな影響を与える要因を明らかにした。

課題(2)の単回帰分析において有意な β値が得られた項目と発音習得度の重回帰分析を行っ

た結果、発音習得度に最も大きな影響を与えるのは、「意識・修正ストラテジー」であるこ とが明らかになった。しかし、文章の発音習得度に与える影響は「日本滞在年数」の方が大

きかった。4.8においては課題(4)・(5)を解明した。課題(4)は発音に対する考え方に影響を与 える要因を特定するもので、発音に対する考え方の 2 つの項目に発音に関する授業の受講 経験が影響を与えていることが明らかになった。課題(5)は発音学習ストラテジーに影響を 与えている要因を明らかにするもので、分析の結果、発音学習ストラテジーの選択に最も影 響を与えているのは発音授業の受講経験だった。マイナスの影響であることから、発音授業 を受けたことがない対象者の方がこのストラテジーを使用する傾向があると解釈できる。

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