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清酒製造業の現在の産業政策と経営実態

ドキュメント内 立教大学博士学位申請論文 (ページ 39-42)

第 4 章 清酒製造業における産業体質の特徴とその影響

第 2 節 清酒製造業の現在の産業政策と経営実態

清酒製造業は、今日に至るまで国税庁の管轄による免許制度が布かれている。酒類販売 免許は平成 13 年 9 月から実質的に自由化がなされ、その後も各地域における緊急調整地 域の撤廃がなされて、販売免許の要件を満たせば原則としてどの地域でも申請が可能とな った。これに対して清酒の製造に関する免許制度による新規参入業者の抑制は依然として 続いている。

製造免許は、酒税法に基づいて製造しようとする 酒類の品目、製造場毎にその製造場の 所在地にある所轄税務署長から受けなければならない。製造免許を受けるためには、申請 者等および申請製造場(酒類の製造場を設置しようとする場所)において、品目毎に最低 製造数量基準(清酒の場合、最低製造数量基準は 60kl、1.8 リットル換算で年間 33,000 本)を満たすことが条件であり、3 年連続でこれを下回ると免許が取り消しされる。さら に、税務署長は、次の各号のいずれかに該当するときは、拒否要件として製造免許を与え ないことができる(図表4-1)。

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図表 4-1 酒造免許の拒否要件

[出典]国税庁ウェブページ「酒税行政関係情報」より筆者作成

国税庁「清酒製造業の概況」によると、清酒製造業者は昭和 60 年の 2,456 者から平成

17年には1,737 者へと減少し、20年で約 700者が姿を消している。国税庁は酒税法の目

的である税源涵養と酒税保全を維持するため 、さまざまな産業活動(生産および価格)を 抑制し、コントロールしてきた。その過程で制定された規制や産業保護は、経済状況の変 化によって徐々に緩和されたが、清酒製造業者は必ずしも自由な経済活動が容認されてき たわけではない。結果として、大規模な事業者と中小規模の事業者間で出荷量、事業規模、

資本力、人員等で大きな格差が生じた。経済先進国の多くは中小企業の割合が9割を超え ており、わが国でもその比率は99.7%といわれている。清酒製造業に限ってみるとその比 率はさらに高い。大規模の清酒製造業(資本金1億円超かつ従業員 300人超)に該当する 企業は 7 社(平成 17 年)のみである。また、年間販売数量が 10,000kl 超の製造業者 13 社で清酒製成数量全体の 43.2%を占めている。たとえば、平成 19 年における出荷量のラ ンキングを参照すると、第1位が白鶴酒造(兵庫)、第2位が月桂冠(京都)、3位が宝酒 造(京都)であり、上位20社の出荷量で清酒製造業全体の約 6割を占めている(図表4-2)。

近年では、酒類商品の多様化や若年層の清酒需要の減少等に伴って、経営の効率化や売 上規模の拡大等を目的とした業界再編が加速しつつある。たとえば、出荷量第8位のオエ ノンホールディングス(東京)は、合同酒精(東京)、秋田県発酵工業(秋田)、越の華酒 造(新潟)などをグループ傘下に収めている。近年では、大関やジャパン・フード&リカ ー・アライアンスが地方の業者を系列下に置く動きがみられるほか、人材派遣企業や外食 1号 酒税法の免許又はアルコール事業法の許可を取り消されたことがある場合(酒類不製造又は不

販売によるものを除きます。)

2号 法人の免許取消し等前1年内にその法人の業務執行役員であった者で、当該取消処分の日か ら3年を経過していない場合

3号 申請者が未成年者等でその法定代理人が欠格事由(1、2、7~8号)に該当する場合 4号 申請者等が法人の場合で、その役員が欠格事由(1、2、7~8号)に該当する場合 5号 製造場の支配人が欠格事由(1、2、7~8号)に該当する場合

6号 免許の申請前2年内に、国税又は地方税の滞納処分を受けている場合 7号

国税・地方税に関する法令、酒類業組合法若しくはアルコール事業法の規定により罰金刑に処 せられ、又は国税犯則取締法等の規定により通告処分を受け、その刑の執行を終わった日等 から3年を経過していない場合

7号の2

未成年者飲酒禁止法、風俗営業等適正化法(未成年者に対する酒類の提供に係る部分に限り ます。)、暴力団員不当行為防止法、刑法(傷害、暴行、凶器準備集合、脅迫、背任等に限りま す。)暴力行為等処罰法により、罰金刑が処せられ、その刑の執行を終わった日等から3年を経 過していない場合

8号 禁錮以上の刑に処せられ、その刑の執行を終わった日等から3年を経過していない場合 10号 破産者で復権を得ていない場合

場所的要件 9号 正当な理由なく取締り上不適当と認められる場所に製造場を設置する場合(酒類の製造場又は 販売場、酒場、料理店等と同一の場所等)

経営基礎要件 10号 経営の基礎が薄弱であると認められる場合(国税・地方税の滞納、銀行取引停止処分、繰越損 失の資本金超過、酒類の適正な販売管理体制の構築が明らかでない等)

受給調整要件 11号 税の保全上酒類の需給の均衡を維持する必要があるため免許を与えることが適当でないと認 められる場合

技術・設備要件 12号 酒類の製造について必要な技術的能力を備えていないと認められる場合又は製造場の設置が 不十分と認められる場合

人的要件

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企業が清酒製造業者を買収する動きも拡がっている。

図表 4-2 全国の主な清酒製造業者 (出荷量上位 20 社)

[出典]日刊経済通信社 (2008)「酒類食品統計月報」第 49 巻第 13 号より筆者作 成

また、中規模企業以上を中心に事業の多角化が進んでいる。平成 18 年度における酒類 製造業による売上高1兆1,670億円のうち、清酒製造事業による売上高は5,164億円であ り、その他の事業の売上高が過半(約 56%)を占めている。営業利益でみると、328億円 のうち清酒製造事業によるものは26億円に止まり、1割にも満たない。清酒製造事業によ って利益を確保するのは困難であり、他の事業の利益によって清酒製造業を維持し ている 状況にある。

小規模零細の清酒製造業については、事業を多角化することもできず、878者中468者

(全体の53.3%)が欠損企業となっている。この要因は、既述のとおり需要の減少に対応

した設備処理ができず、膨大な過剰設備を抱えてしまっていることにあ ろう。現有製造能 力の合計は120万1,776klであり、需要量の2.4倍に達する。稼働率は 42.1%でしかない。

特定名称酒、特に純米酒は製造数量を安定的に保持しており、高付加価値化が求められ ている。高付加価値を追求するには、ある程度の規模、人員、資金力、マーケティング、

順位 銘柄 企業名 本社 出荷量(kl)

1 白鶴 白鶴酒造 兵庫 61,784

2 月桂冠 月桂冠 京都 52,007

3 松竹梅 宝酒造 京都 46,361

4 大関 大関 兵庫 39,867

5 日本盛 日本盛 兵庫 29,458

6 世界鷹G 小山本家酒造 埼玉 24,172

7 黄桜 黄桜 京都 21,647

8 オエノンG オエノンHD 東京 21,300

9 菊正宗 菊正宗酒造 兵庫 19,933

10 白雪 小西酒造 兵庫 15,285

11 白鹿 辰馬本家酒造 兵庫 13,583 12 清州桜 清洲桜醸造 愛知 12,878

13 沢の鶴 沢の鶴 兵庫 11,112

14 剣菱 剣菱酒造 兵庫 9,006

15 朝日山 朝日酒造 新潟 8,193

16 菊水 菊水酒造 新潟 6,506

17 高清水 秋田酒類製造 秋田 5,373

18 爛漫 秋田銘醸 秋田 5,026

19 立山 立山酒造 富山 4,609

20 千福 三宅本店 広島 4,465

39 そして技術が必要である。

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