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ドキュメント内 立教大学博士学位申請論文 (ページ 103-106)

第 6 章 経営指標から見る昨今の清酒製造業と経営革新

第 8 節 小括

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悪くみえるが、その値は極めて平均的であり、問題視されるほどではないと考えられる。

以上をまとめると、オエノンG には大規模企業の特徴が現れているといって良い。特に 酒類事業の中で焼酎事業の56.7%を中心に、清酒事業でも12.2%のシェアを維持している。

オエノンG は大規模酒類企業であるが、酵素医薬品事業やバイオエタノール事業等の発展 性に期待しているところが垣間見られる。オエノンG の財務的特性は、清酒製造業という よりは食品製造業に近い構造を有している。同グループは焼酎事業が大きな収益事業であ るものの、酵素医薬品事業やバイオエタノール事業等への参入で経営の多角化が推し進め られていることが確認された。これは、大規模の清酒製造業の進むべき 1 つの方向性を指 し示しているといえよう。

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よ、本研究では精査までは行わないため、今後の研究課題になるだろう。

清酒製造業をサンプルとした経営指標で規模別の良否を検討しても、実際には判断がつ かない。そこで、製造業、食品製造業の収益性指標や安定性指標を比較して、清酒製造業 の経営実態を明らかにした。その結果、収益性は製造業より劣っており、一方で安定性は 製造業よりも良好であることが確認された。清酒製造業は、やはり低収益なのである。な お、安定性指標が良好であることには疑義が示された。すなわち、財務諸表の制度と構造 によって、偶然に指標が良好に映るだけかもしれないのである。結論の導出には精査が必 要であるが、情報入手の困難性から、精査は難しいだろう。

以上までは集計データ(平均値)を用いた分析である。そこで、本章では個票データの 分析を試みた。財務データは日本経済新聞デジタルメディア社が提供するデータベース、

日経テレコンに収録されている未上場企業のものを使用した。同データベースから取得さ れた清酒製造業は13社である。ただし、詳細なデータは開示されておらず、分析レベルは 前述の経営指標による分析と同様である。収益性および安定性について分析した結果は各 社各様であった。たとえば、固定比率について言及すれば、清酒の商品特性は大きく変わ らないため、流行とともに設備機械の更新を行わなければならないような業種ではなく、

更新のタイミングは各社で決定される。したがって、調査期間に更新投資をしたか否かで 固定資産の貸借対照表価額が異なり、それが固定比率に影響を与えるのである。

選択された13社の中で、旭酒造(山口県)と朝日酒造(新潟県)の収益性と安定性は群 を抜いていた。両社とも著名な特定名称酒を有しており、その商品が収益性を支え、企業 の安定につながっていると考えられる。両社が顧客を囲い込んだのは、メディア戦略と市 場展開の戦略であった。積極的にメディア(本研究では新聞)へ露出しするとともに、旭 酒造は業界の慣習に倣わず大都市をターゲットとした。朝日酒造は販売店の囲い込みを行 って顧客を創造した。規制緩和等による消費の落ち込みを背景に、経営者による経営革新 の強い意識がこれらの企業行動を生み出したと考えられる。つまり、経営者の意識によっ て、清酒製造業は業績を回復できる可能性があることを、両社の理念や行動は示唆してい る。

最後に、大規模清酒製造企業の事例研究として、オエノングループの財務分析を行った。

同社は親会社のオエノンホールディングスと子会社 12 社で構成され、酒類事業をはじめ、

食品事業、酵素医薬品事業、バイオエタノール事業、不動産事業等、経営の多角化を推進 しており、今日の大規模清酒企業の代表例である。同社の収益性や安定性は、清酒製造業 の平均よりも、食品製造業に近いものがあった。現状では酒類の製造・販売の事業セグメ ントによる売上高が圧倒的に多い。それにもかかわらず、経営指標が食品製造業に近似し ているのは、同社が清酒製造業からの脱皮を図り、食品製造業への移行を模索しているの か、あるいは大規模であるか故に、業種に関係なく大規模製造業の財務体質に近づいてい るか、もしくは単年度データによる分析がもたらす偶然のいずれかであろう。

清酒製造業を対象とした経営指標の分析は、緑川・桜井(1965)および桜井(1982)以

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降、確認することができない。その後、わが国の経済はバブル景気とその崩壊、バブル崩 壊以降の長引く不況、リーマンショックや種々の自然災害によって左右されてきた。本研 究はデータ入手の制約から、桜井(1982)以降の経営指標を扱うことはできなかったが、

平成11年以降の清酒製造業の収益性と安定性を多角的に検討することで、同業種の財務特 質を検証した。これは類を見ない研究であり、清酒製造業の研究をはじめ、規制産業の経 営に関する今後の研究に1 つの方向性を提示したことになる。これは本研究の1つの貢献 である。

1 緑川・桜井(1965)『清酒業の経営と経済』高陽書院,p.391.

2 緑川・桜井(1965),前掲書,p.119.

3 低収益企業とは、国税庁「清酒製造業の概況」において、税引前当期純利益50万円未満 の企業と定義されている。

4 緑川・桜井(1965),前掲書,p.391.

5 緑川・桜井(1965),前掲書,p.342.

6 中小企業実態報告書によると、2010(平成22)年の製造業の流動比率の平均は167.4%

である。

7 製成数量に関しては、1.8リットル=1,500円としてで売上高から算出したものである。

8 オンラインデータベースの日経テレコン21、毎索、聞蔵Ⅱビジュアル、ヨミダス歴史館 を使用した(2014年3月21日閲覧)。

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