第 7 章 本研究のインプリケーション
第 3 節 清酒製造業の将来性
右田(2013)2は、清酒消費量の将来予測においてトレンド分析(国全体の消費量)、人口・
GDPを用いた分析(国全体の消費量)、人口、GDPを用いた分析(1人当たりの消費量)を用 いて推定を行った結果、いずれの手法を用いても、今後清酒の消費量は減少し、2020 年には
現在の67~68%に、2030年には約半減となり、2040年には約3割程度になることを予測して
いる。さらに清酒製造企業数の将来予測を行ったところ、消費量と同様、2040 年には蔵元数 が現在の約3割にまで減少すると推定した。清酒消費量は将来において年々減少することが予 想されるため、清酒製造業者は何らかの対応策を講じる必要がある。
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清酒の輸出数量は増加の傾向にある。平成元年は約6,700klであったのが、平成20年には
約12,000kl、平成24年には約14,000klへと増加した。輸出金額ベースで見ても、平成24年
は 89.5 億円に達する。このように、日本国内での社会環境や経済環境が変化し、需要が縮小
している中で、海外市場には潜在的な需要があり、販売拡大の可能性があると考えられる。清 酒製造業はこれまで国内市場での競争のみを考え、国際化への対策が遅れていた。国内市場全 体が需要低迷する中でも、消費者無視のシェア争いや低価格化競争に終始し、顧客価値を下げ 続けているように思える。視点を広く持つ勇気と努力が必要な時期が到来しているといえよう。
すでに、いくつかの企業ではマーケティング調査が積極的に行われ、その結果を受けて新商 品の開発や経営革新が実施されはじめている。しかし、各企業や各地の酒造組合、小売りグル ープ等、企業および団体単位での経営革新だけでは効果が限定的であろう。経営努力をしない まま放置を続けると、清酒および清酒産業は沈みゆくだけである。沈みかけた船のマストや舳 先に、特定の企業が上る努力を行っても、あまり大きな意味がない。産業が一体となって浮上 の道筋を模索するしかないのである。
そもそも清酒製造業は、アルコール消費量の大半が清酒であった時代からの社会環境の変化 に対応することができなかったため、国内市場の衰退につながった。清酒のシェアが下がって きたときでも、清酒業界はビールや他の酒類は競争相手ではない商品と考えて対抗しようとも せず、政府に税制の優遇を働きかけて損失の解消を目論んだり、外国産の原料米の導入を遅ら せたりするような活動を行っていた。また、清酒が本来はどの方向で顧客価値を構築し、産業 として世界市場の中でどのような位置づけを狙うべきなのかなどの基本的な戦略すら考えず、
現在に至っている。行政側による各種の調査や研究は、戦略なき革新の戦術の必要性を指導し ており、産業のグランドデザインや根本戦略の調査や研究成果は公表されていない。
今後、清酒産業は醤油産業のように海外へ生産拠点を移し、日本のマーケットのみならず世 界のマーケットを相手にする方向性も考えられる。産業として保護貿易体制に固執し、延命を 図って徐々に衰退していくか、海外技術移転か、もしくは国際的に通用する文化的背景と顧客 価値を持つ日本産清酒を構築し、輸出可能な商品として国際市場へ進出するか、つまり、醤油 やビール産業のような発酵工業清酒製造産業的戦略なのか、高級ワインのような醸造型清酒製 造産業的戦略なのか、それとも両方の戦略が成立する可能性があるのか等を検討しなくてはな らない。まさに、世界の酒類のポートフォリオの中でどの位置を目指すのか、産業としての戦 略を構築しなければならない。清酒製造業の将来性において、日本産清酒産業自体の国際化の 問題点を見直すことからはじめ、産業全体としてのグランドデザインを描き、総合戦略を立て て、国際市場へ向けて魅力ある清酒の商品化やブランディング等、顧客価値の構築行うことが 必須であると考えられる。
1 帝国データバンク http://www.tdb.co.jp/report/watching/press/pdf/p130901.pdf(2014年5 月27日閲覧)
2 右田(2013)「清酒消費数量の将来予測に関する研究」『年報経営ディスクロージャー研究』
第12号, pp.89-100.
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