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オエノングループの財務分析

ドキュメント内 立教大学博士学位申請論文 (ページ 100-103)

第 6 章 経営指標から見る昨今の清酒製造業と経営革新

第 7 節 オエノングループの財務分析

オエノンホールディングスの起源は、神谷傳兵衛が明治33年に開設した日本酒精製造で ある。同社は民間初となるアルコールの製造を開始し、明治36年には日本のワイン醸造の シャトーカミヤ(茨城県牛久市)を建設するなど、日本の産業の黎明期に国産アルコール と本格ワイン造りという2つの事業を成し遂げた株式会社である。大正13年、北海道内の 焼酎製造会社4社(神谷酒造旭川工場、東洋酒精醸造、北海道酒類、北海酒精)を合併し、

合同酒精が設立された。その後も各種の酒造会社を合併しながら、平成15年に持株会社制 に移行し、オエノンホールディングスに商号を変更した。同年には福久娘酒造、平成19年 には北の誉酒造を子会社化して今日に至っている。

オエノングループ(オエノンG)は、オエノンホールディングスを筆頭に12の子会社で 構成され、事業セグメントは酒類事業のほか、食品事業、酵素医薬品事業、バイオエタノ ール事業、不動産事業、その他の事業等に分かれる。酒類事業も焼酎、チューハイ、清酒、

合成清酒、みりん、アルコール、洋酒等と多岐に渡り、合同酒精、福徳長酒類、福久娘酒 造、秋田県醗酵工業、北の誉酒造、越の華酒造が製造し、それら各社に加えてワコーが販 売している。

オエノンGの売上高(連結)は83,707百万円で(図表6-19)、セグメント別の売上高シ ェアは酒類事業が87.0%で圧倒的に多く、食品事業5.6%、酵素医薬品事業4.4%、バイオエ タノール事業1.0%、その他の事業 2.0%と続く(図表6-20)。酒類事業の売上高は72,807 百万円である。酒類事業の売上高シェアは、焼酎 56.7%、チューハイ9.5%、清酒 12.2%、

洋酒7.9%、合成清酒6.6%、アルコール5.4%、みりん1.7%となっている(図表6-21)。

図表 6-19 オエノン G の損益計算書の要旨

[出典]オエノンホールディングスウェブページより筆者作成 (単位:百万円) 平成22年度(2010)

83,707 66,360 17,347 15,237 2,110 2,015 1,983 損益状況

売 上 高 合 計 売 上 総 利 益

売 上 原 価

税引前当期純利益 販売費 一般管理費 

営 業 利 益 経 常 利 益

98

図表 6-20 オエノン G の事業別セグメントの売上高とシェア

[出典]図表 6-19 と同じ

図表 6-21 オエノン G の酒類事業のセグメント別売上高とシェア

[出典]図表 6-19 と同じ

図表6-22は、オエノンGの経営指標の良否を判断するため、オエノンGが属する大分 類の製造業、中分類の食品製造業、小分類の清酒製造業の平均値と比較するために作られ た表である。

資本収益性を示す総資産営業利益率を見ると、オエノンGは3.4%であり、製造業、食品 製造業、清酒製造業のいずれにも勝っている。総資産営業利益率を売上高営業利益率と総 資産回転率に分解すると、売上高営業利益率では各平均値と比べて目立つほどの差は感じ られないが、資産の活用効率(総資産回転率)が良好であるが故に総資産営業利益率が良 好であることが確認できる。売上高総利益率が 20.7%であり、製造業、食品製造業とは変 わりがないものの、清酒製造業と比較すると良好ではない。酒類の製造以外の事業セグメ ントにおける売上原価率に要因が隠されているのではないかと推察できる。研究開発投資 の一部は、一定条件を満たせば製造原価への算入が認められている。シェアは低いものの、

酒類以外のセグメントを成長分野とみなし、投資している結果かもしれない。この点は、

クロスセクション分析に加えて時系列分析やオエノンGのIR情報を参照しながら精査して いくべきであろう。売上高販管費率もまた、製造業、食品製造業と類似した値となってお り、清酒製造業と比較すると低く抑えられている。結果として売上高営業利益率は相対的 に高い。

セグメント内容 平成22年度売上高 シェア

酒類事業 72,817 87.0%

加工用澱粉事業 4,671 5.6%

酵素医薬品事業 3,709 4.4%

バイオエタノール事業 830 1.0%

不動産事業その他 1,679 2.0%

(単位:百万円)

平成22年度 シェア

焼酎 41,292 56.7%

チューハイ 6,894 9.5%

清酒 8,862 12.2%

合成清酒 4,812 6.6%

みりん 1,273 1.7%

アルコール 3,914 5.4%

洋酒 5,767 7.9%

その他 0 0.0%

(単位:百万円)

99

図表 6-22 他産業と比較した財務分析

[出典]中小企業庁『中小企業実態基本調査報告書』(平成 22 年)、国税庁ウェブページ

『清酒製造業の概況(平成 23 年度調査分)』およびオエノンホールディングス ウェブページより筆者作成

安定性については、オエノンG の値は流動比率、固定比率、自己資本比率のいずれも、

清酒製造業よりも食品製造業に近似している。企業規模から勘案し、生産に必要な固定資 産を多く保有していることは想像に難くない。その取得に固定負債を活用しているため、

固定比率が高くなっているのであろう。家業もしくは家業に類する企業の場合、調達でき る資金の範囲は限定的であり、かつ、限りなく自己資金である。しかし、大規模企業にな ると負債を有効に活用できるのである。中小規模の多い清酒製造業に比べると支払能力が

製造業 2.27%

食料品製造業 2.75%

清酒製造業(全体) 1.80%

オエノンホールディングス 3.4%

製造業 2.2%

食品製造業 1.9%

清酒製造業(全体) 2.3%

オエノンホールディングス 2.5%

製造業

1.03

食品製造業

1.46

清酒製造業(全体)

0.80

オエノンホールディングス 1.30

製造業 20.9%

食品製造業 21.7%

清酒製造業(全体) 31.6%

オエノンホールディングス 20.7%

製造業

18.7%

食品製造業

19.8%

清酒製造業(全体)

29.4%

オエノンホールディングス 18.2%

製造業 167.4%

食品製造業 129.8%

清酒製造業(全体) 213.9%

オエノンホールディングス 125.7%

製造業

113.9%

食品製造業

154.4%

清酒製造業(全体)

84.0%

オエノンホールディングス 164.4%

製造業

38.0%

食品製造業

29.4%

清酒製造業(全体)

51.4%

オエノンホールディングス 27.6%

総資産営業利益率

売上高営業利益率

総資本回転率(回)

売上高総利益率

売上高販管費率

流動比率

固定比率

自己資本比率

100

悪くみえるが、その値は極めて平均的であり、問題視されるほどではないと考えられる。

以上をまとめると、オエノンG には大規模企業の特徴が現れているといって良い。特に 酒類事業の中で焼酎事業の56.7%を中心に、清酒事業でも12.2%のシェアを維持している。

オエノンG は大規模酒類企業であるが、酵素医薬品事業やバイオエタノール事業等の発展 性に期待しているところが垣間見られる。オエノンG の財務的特性は、清酒製造業という よりは食品製造業に近い構造を有している。同グループは焼酎事業が大きな収益事業であ るものの、酵素医薬品事業やバイオエタノール事業等への参入で経営の多角化が推し進め られていることが確認された。これは、大規模の清酒製造業の進むべき 1 つの方向性を指 し示しているといえよう。

ドキュメント内 立教大学博士学位申請論文 (ページ 100-103)