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第 3 次的予防(事後予防)による性犯罪予防の方法

第 5 章 新たな性犯罪者対策の提唱(まとめにかえて)

第 6 節 第 3 次的予防(事後予防)による性犯罪予防の方法

次に、事後的再犯予防である第

3

次的予防における、性犯罪に有効と考えられる再犯予防 方法について述べたい。第

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次的予防の段階まで来てしまうと、裁判所による刑期に従って 再犯予防措置を行われなければならないため、責任主義に基づく刑期の制限という、再犯予 防を強制的に出来る期間の制限を免れられない。そこで責任主義に基づく刑期の制限の枠は 越えられないものの、以下の方法により、第

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次段階における再犯予防措置の効率化・有効 化を図ることにより、責任主義に基づく刑事司法制度の枠の中でも、有効な再犯予防措置を 行いたい。内容は①強制性交等(強姦)罪・強制わいせつ罪等で出所した者の、警察への情 報提供制度による監督の継続、②性犯罪に特化した刑事施設による効率的な治療、③保護観 察における性犯罪者の専門的処遇、④刑の一部執行猶予制度の活用による治療期間の確保で ある。

1 、性犯罪で服役した者の出所者情報の警察への情報提供

警察による性犯罪再犯予防策として、子どもを対象とした強制性交等(強姦)罪・強制わ

411 小笠原和美「子どもを性被害から守る―函館性暴力被害防止対策協議会発足に寄せて」季刊現代警 察第153号(第42巻第3号)4-9頁(啓正社、2017年)。他に、北海道警察函館方面本部ホームペー ジ「函館性暴力被害防止対策協議会」(北海道警察本部)

(http://www.hakodatehonbu.police.pref.hokkaido.lg.jp/seibouryoku.html, 2018514日最終閲 覧)、函館市ホームページ「函館性暴力被害防止対策協議会」(函館市)

(http://www.city.hakodate.hokkaido.jp/docs/2018020100042/, 2018514日最終閲覧)など。

412 子ども自身の問題を解決する力を育て、自分を守るための行動をとれるようにロールプレイ等を通 じて学ぶことが出来るプログラム。NPO法人CAPセンター・JAPANホームページ「CAPプログラム とは」(http://cap-j.net/program, 2018515日最終閲覧)。

413 小笠原、前掲注(411)、8頁。

414 同上、8頁。

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いせつ罪等の暴力的性犯罪で服役した受刑者の出所情報を、法務省から警察庁が情報提供を 受け、対象者の帰住予定地の警察署が居住確認・面談(任意)を行う再犯防止措置制度が行 われている。この措置は、任意とはいえ面談を行い対象者に注意喚起等を刑期終了後も行え るため、刑事施設出所後に何も行っていなかった従来の制度と比較し、性犯罪者への継続的 な再犯防止の取り組みを行っている点で非常に画期的である。

しかし現状の点で述べたとおり、現実には出所予定者が帰住予定地を正確に申告しなかっ たり帰住予定地に戻らなかったりするケースも多く、そうした場合には警察で調査を行った としても本当の居住地を発見するのは困難である。よって刑事施設は、満期釈放の場合であ っても、更生緊急保護を受けるか否かに関わらず、出所する際に帰住予定地の保護観察所と 連携し、申告した帰住地に確実に居住しているか等を確認した上で警察に情報提供を行うべ きであると考える。そして警察は、居住場所の把握回数を上げるなどして、出来る限り出所 後の継続的確認を行う取り組みとすることが望ましい。法務省から警察庁への情報提供の際 には、帰住予定地のみではなく、刑事施設における処遇状況等の情報もより多く共有するこ とにより、警察側も対応しやすくなると考えられるため、そういったより多い情報の共有も 必要である。

2 、性犯罪者の専門的治療の可能な刑事施設の創設

3

章第

3

節及び第

4

節における現状分析のとおり、性犯罪者処遇プログラムは実施さ れているものの、性犯罪者を精神疾患と認定し、精神医学に基づく専門的治療を中心として 処遇を行っている刑事施設は現在の我が国には存在しない。

我が国には、国際法務総合センター(八王子医療刑務所)(東京都)、大阪医療刑務所(大 阪府)、岡崎刑務所(愛知県)、北九州医療刑務所(福岡県)に

4

つの医療刑務所が存在する

415。医療刑務所では、一般刑務所では対応できない精神疾患のある受刑者や物質関連障害

(薬物依存症・アルコール依存症等)の受刑者等、専門的治療を要する者を収容し、刑務作 業を行わず治療を中心に処遇を行っている 416。そのため、性犯罪で服役しスクリーニング によって、特別なプログラムを受けた方が良いとされた受刑者には、医療刑務所のような専 門的治療の行える施設への移送が望ましい。特にアルコール依存症や薬物依存症が認められ ているならば、性依存症も認められるはずである。よって、性犯罪者に対しても特別な刑事 施設を作り、そこでの処遇を受けさせることが有益である。治療のできる刑事施設を新しく 創設することはコストがかかるが、前述のとおり、性犯罪は被害者に生涯にわたる精神的苦 痛等を残す重大な犯罪であり、社会に不安を与える深刻な問題であることから、通常の処遇 で税金をかけつつリスクを残すよりも、リスクを減らすために大幅な投資をすることが合理 的であると考える。

415 法務省ホームページ「全国の矯正管区・矯正施設・矯正研修所一覧」(矯正局)

(http://www.moj.go.jp/kyousei1/kyousei_kyouse16-03.html, 2018722日最終閲覧)。

416 吉本康孝「精神疾患を持つ受刑者と医療刑務所の役割」犯罪心理学研究47巻特別号205頁(日本犯 罪心理学会。2009年)。

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具体的には、性依存症等の治療が出来る刑事施設を作り、スタッフは半数以上を医療関係 者とし、治療をベースとした処遇を行うことが望ましい。治療内容は、例えば効果の確認さ れている認知行動療法のリラプス・プリベンション(

Relapse Prevention

)モデル 417によ る治療等を行うこととしたい418。そのためには、刑事施設も執行刑期が

10

年以上(

L

)や 犯罪傾向の進んでいる者(

B

)といった分類だけでなく、国際疾病分類の

ICD-10

に基づい た分類の検討も行うべきであると思われる419

3 、保護観察所における性犯罪者への専門的処遇の実施

性犯罪者処遇プログラムにおいても、プログラムの内容だけでなく保護司や保護観察官の 役割がかなり大きいとされる 420。それならば、性犯罪者の再犯防止指導を保護観察時にも 取り入れ効果を出そうとするならば、刑事施設から性犯罪者処遇プログラムの訓練を受け実 施している人材を保護観察所に呼びプログラムの実施を行ってもらうことや 421、保護観察 官の人員を増やし、性犯罪者に対する専門的な処遇が出来る人材の育成を図るべきである。

保護観察官のみの体制では不十分である場合は、前述の社会復帰調整官のように、精神保健 福祉士等の福祉系や医療系資格の有資格者を、国家総合職・国家一般職の枠とは別に専門職 で法務省が人材を採用し、保護観察所に配置する方法が有効と思われる。また、そうしたス ペシャリストとの人事交流で、他の法務事務官も専門性を高めていくことも期待できる。こ ちらも矯正処遇と同様に、社会的に重大な案件に対しては十分にコストをかけることが合理 的と考えられるため、予算の厳しさは承知の上であるが、国は実施するべきものであると考 える。

加えて、警察・検察・裁判所・矯正施設からの情報提供による保護観察制度の充実も重要 であると考える。保護観察所において性犯罪者処遇プログラムを実施する際に、刑事施設か らの引継ぎ資料が限定的であるという問題点が保護観察官から指摘されていたが 422、刑事 司法手続きのどの段階でも対象者に関する情報が多くあれば、処遇に関して柔軟性をもって 対応が出来るはずである。そこで、警察段階・検察段階・裁判段階・刑事施設での対象者の 情報を一括管理された状態にし、保護観察官に渡すことにより対象者の社会復帰に資すると

417 原田、前掲注(208)、139-146頁。

418 拙稿「累犯性性犯罪者に対する特別法の制定に関する研究」、前掲注(207)、139-140頁。

419 尾田「再犯防止対策と他(多)機関連携」、前掲注(367)、155頁。

420 「性犯罪をした人はそう簡単に人を信じたり頼ったりできません。だからこそ、出所後に初期に出 会う保護司や保護観察官との関りは、性犯罪をした人が人を信じ頼ることができるようになるための最 初のチャンスと言えます。そういう意味でも、保護司や保護観察官は、彼らの再犯を防止するための鍵 を握っていると言えるでしょう。」有野雄大「保護観察処遇における性犯罪再犯防止指導の効果的な活 用」更生保護第69巻第221頁(日本更生保護協会、2018年)。

421 実際は保護観察官が交代で行っている。伊藤一文「現場からのレポート 性犯罪者処遇プログラム を実施して思うこと」更生保護第59839頁(日本更生保護協会、2008年)等。

422 中村=大塚、前掲注(227)、9頁。