第 9 章 で述べたように,運動方程式を構築するために最も重要な作業は, “要 素の剛性と質量マトリックスの作成”である。この章では,平面骨組系の構成
12.1 棒要素
棒要素(rod element)は,トラスの部材のように,両端に軸力だけが作用し,
軸方向にだけ変形する要素である。図
12.1(a)に示すように,要素座標系の
x軸 は要素軸で,
a端を原点とし,それから他の端
(b端
)の方向を正とする。なお,
a
端として,どちらの端を選んでもよい。
(1) 剛性マトリックス
図
12.1(a)は,要素の変形前の状態を示している。同
(b)は,変形時の復元力 と変位の関係を示している。 (
uxa,
uxb) および (
Qxa,
Qxb) は,要素の
a端と
b端に おける変位
(ここでは,
uは基準座標ではないことに注意
)および復元力である。
図ではそれらの正方向を示している。これらの復元力は,反作用として節点に 作用する力である。また,添字の
xは“要素座標系の
x方向”を表す。
x ①
u u
Q Q
b a
xb xb xa
xa a b
uxa
uxb
(c)変位の分布
a b
uxb uxa ‥
‥
(d)加速度の分布
②
(b)変形後
① ②
①
② δuxb
uxa
δ x
a b
(a)変形前
a b
u =1xa u =1xb
と0-1分布
0 0
図12.1 棒要素
(e)変位の1-0分布 u
δ
u‥
u
“力のつり合い”と“フックの法則”から
( )
0,
xa xa xb,
xa xb xa xb xa xb
Q u u AE
Q Q E Q Q u u
A l l
+ = = − ∴ = − = − (12.1)
である。ベクトル・行列表示すると
竹名 興英
温留漢 共著 亀岡 裕行
1 1
1 1
xa xa
xb xb
Q AE u
Q l u
⎧ ⎫ ⎡ − ⎤⎧ ⎫
⎨ ⎬= ⎢⎣− ⎥⎦⎨ ⎬
⎩ ⎭ ⎩ ⎭
あるいは { }
Qx =[ ]
K u{ }
x (12.2)である。したがって,要素の剛性マトリックス [ ] K は
[ ]
11 11xa xb
xa xb
u u
AE Q
K l Q
⎡ − ⎤
= ⎢⎣− ⎥⎦
(12.3)
である。なお,この章では,一つの要素の剛性あるいは質量マトリックスを論 じるので,煩雑にならないように,要素番号は割愛した。
(2) 質量マトリックス
(a)ランプト・マス
ランプト・マスは,要素の分布質量を
a端と
b端に等分に分配する仮定であ るから,要素の質量マトリックスは
[ ]
/ 2 0 ,0 / 2
xa xb
xa xb
u u
F
M m m Al
F
m ρ
⎡ ⎤
=⎢ ⎥ =
⎣ ⎦
(12.4)
である。
(u uxa, xb)および
(F Fxa, xb)は,
a端と
b端の加速度および慣性力である。
(b)
コンシステント・マス
コンシステント・マス
(consistent mass)とは,要素の各部分が同じ振動数で 調和振動している状態で,変位の要素内分布をある形状に仮定して“その要素 の分布している質量”を“両端の節点の集中質量”に慣性力の仕事において等 価に置き換える方法で,ランプト・マスを用いる場合より計算精度が高い。
位置
xの時刻
tにおける変位
uと加速度
uを図
12.1(c)と
(d)に,
tから
t+ ∆t間 の微小時間における微小変位
δuを同図
(c)に,それぞれ実線で示す。
(u uxa, xb)お よび
(δuxa,δuxb)は
a端と
b端の加速度および微小変位である。
円振動数
ωで調和振動している場合,変位
uと加速度
uは
2
2
u ω u u 1 u
= − ∴ = −
ω
(12.5)
の関係がある。当然,両端においても同じ関係が成り立つ。
2 2
1 1
xa xa
,
xb xbu u u u
ω ω
= − = − (12.6)
竹名 興英
温留漢 共著 亀岡 裕行
分布質量の慣性力を求めよう。要素の中間における変位を,“要素の中間に 力が作用しない条件で近似する”と,図
12.(c)の破線で示すように,
uと
δuの 近似曲線は
1 , 1
xa xb xa xb
x x x x
u u u u u u
l l δ δ l δ l
⎛ ⎞ ⎛ ⎞
= ⎜⎝ − ⎟⎠+ = ⎜⎝ − ⎟⎠+ (12.7)
となる
(この場合は直線である
)。式
(12.7)の第
1式に式
(12.5)・
(12.6)を代入し,
両辺に
−ω
2を乗じると
xa
1
xbx x
u u u
l l
⎛ ⎞
= ⎜ − ⎟+
⎝ ⎠ (12.8)
となる
(図
12.1(d)の破線
)。ここで
10
1 x ,
01x
x x
l l
= − = (12.9)
と置くと,式
(12.7)・
(12.8)は
10 01, 10 01, 10 01
xa xb xa xb xa xb
u u x= +u x δu=δu x +δu x u u x= +u x (12.10)
と表わすことができる。式
(12.10)の各式の第
1項と第
2項は,図
12.1(c)と
(d)の破線を点線で分割した,それぞれ①と②の部分である。
x10と
x01の物理的な 意味は,図
12.1(e)に示すように,それぞれ
a端と
b端の変位が
(uxa =1,uxb =0)と
(uxa =0,uxb =1)で要素の中間に力が作用しない場合の変位曲線である。それぞ れを
x方向の
1-0変位曲線と
0-1変位曲線とよぶことにする。したがって,変 位
u,微小変位
δuおよび加速度
uの近似曲線は,ともに“
a端の大きさに
1-0変位曲線を乗じたもの”と“
b端の大きさに
0-1変位曲線を乗じたもの”の重 ね合わせである。
さて,位置
xにおける単位長さの慣性力 (
−ρ Au ) は,式
(12.10)より
10 01
xa xb
Au Au x Au x
ρ ρ ρ
− = − − (12.11)
である。したがって,微小変位に対する分布慣性力の仕事は
( ) (
10 01)(
10 01)
0 0
l l
xa xb xa xb
W u Au dx u x u x Au x Au x dx
δ
=∫ δ
−ρ
= −∫ δ
+δ ρ
+ρ
( ) ( )
( ) ( )
2
10 10 01
0 0
2
01 10 01
0 0
l l
xa xa xa xb
l l
xb xa xb xb
W A x dx u u A x x dx u u A x x dx u u A x dx u u
δ ρ δ ρ δ
ρ δ ρ δ
∴ = − −
− −
∫ ∫
∫ ∫
(12.12)
竹名 興英
温留漢 共著 亀岡 裕行
である。
次に,等価集中質量の慣性力の仕事を求めよう。節点
aと節点
bの等価慣性 力
Fxaと
Fxbと質量マトリックス [ ]
Mの関係は
{ }
Fx = −[ ]
M u{ }
xあるいは
11 1221 22
xa xa
xb xb
F m m u
F m m u
⎧ ⎫ ⎡ ⎤⎧ ⎫
⎨ ⎬= −⎢ ⎥⎨ ⎬
⎣ ⎦
⎩ ⎭ ⎩ ⎭
(12.13)
あるいは
11 12
21 22
xa xa xb
xb xa xb
F m u m u
F m u m u
= − −
⎧⎨ = − −
⎩
(12.14)
である。
微小変位に対する等価慣性力の仕事 δ
W′は
xa xa xb xb
W u F u F
δ
′ =δ
+δ
(12.15)である。この式に
(12.14)を代入すると以下のとおりとなる。
11 xa xa 12 xa xb 21 xb xa 22 xb xb
W m u u m u u m u u m u u
δ
′ = −δ
−δ
−δ
−δ
(12.16)W W
δ
=δ
′であるから,式
(12.12)から
(12.16)を引くと
( ) ( )
( ) ( )
2
11 0 10 12 0 10 01
2
21 0 01 10 22 0 01 0
l l
xa xa xa xb
l l
xb xa xb xb
m A x dx u u m A x x dx u u m A x x dx u u m A x dx u u
ρ δ ρ δ
ρ δ ρ δ
− + −
+ − + − =
∫ ∫
∫ ∫
(12.17)
となる。任意の δ
ua,δ
u u ub, ,a bすなわち任意の
(δ
u ua a), (δ
u ua b),(δ
u ub a ),(δ
u ub b)に 対して,式
(12.17)が常に成り立つためには
2
11 0 10 12 0 10 01
2
21 0 01 10 22 0 01
0, 0
0, 0
l l
l l
m A x dx m A x x dx
m A x x dx m A x dx
ρ ρ
ρ ρ
⎧ − = − =
⎪⎨
⎪ − = − =
⎩
∫ ∫
∫ ∫
2
11 0 10 12 0 10 01
2
21 0 01 10 22 0 01
, ,
l l
l l
m A x dx m A x x dx
m A x x dx m A x dx
ρ ρ
ρ ρ
⎧ = =
∴ ⎪⎨
⎪ = =
⎩
∫ ∫
∫ ∫
(12.18)でなければならない。この式に
(12.9)を代入すると
2
11 0
2
12 21 0 22 0
1 3 3
1 ,
6 3
l
l l
x Al m
m A dx
l
x x m x m
m m A dx m A dx
l l l
ρ ρ
ρ ρ
⎧ = ⎛ − ⎞ = =
⎪ ⎜ ⎟
⎪ ⎝ ⎠
⎨ ⎛ ⎞ ⎛ ⎞
⎪ = = ⎜ − ⎟ = = ⎜ ⎟ =
⎪ ⎝ ⎠ ⎝ ⎠
⎩
∫
∫ ∫
(12.19)
竹名 興英
温留漢 共著 亀岡 裕行
となる。したがって,要素の質量マトリックスは
[ ]
/ 3 / 6/ 6 / 3
xa xb
xa xb
u u
m m F
M m m F
⎡ ⎤
= ⎢ ⎥
⎣ ⎦
(12.20)
である。
質量マトリックスの成分の意味を考察してみよう。式
(12.17)の左辺の第
1式は,
(12.18)より
0であるから,移項すると
( )
11 0 10 10
l
xa xa xa xa
m u u
δ
=∫ δ
u x ⋅ρ
A u x dx微小変位 振動学の慣性力
(12.21)
である。この式の右辺は,“
a端の微小変位 δ
xaに
1-0変位曲線
x10を乗じた変 位”に対する“
a端の加速度
uxaに
1-0変位曲線
x10を乗じた加速度の振動学の 慣性力
(符号のマイナスを無視,
9.5(1)を参照
)”の仕事である。
a端の微小 変位と加速度がともに単位長さ,すなわち δ
xa =1,uxa =1の場合,式
(12.21)は
N
( )
11 0 10 10
m =
∫
l x ⋅ρ
A x dx微小変位 振動学の慣性力
(12.22)