第 6 章 モード解析の概念
もう 1 つの方法は,ベクトルを座標系の成分の配列すなわち数ベクトルで表 わす方法である。この方法では,成分の配列番地の意味が暗黙に了解されてい
ることが前提にある。たとえば,力,微小変位,速度,加速度は,通常,成分
を縦に並べた列ベクトルで表わし,番地の
1行と
2行は,以下のように,それ
ぞれ xy 座標系の
x軸方向と y 軸方向の成分を意味している。
竹名 興英
温留漢 共著 亀岡 裕行
, , ,
x y
xy x
xy y
F x x x
F v a
F y y y
∆ ←
⎧ ⎫ ⎧ ⎫ ⎧ ⎫ ⎧ ⎫
=⎨ ⎬⎩ ⎭ ∆ =⎨ ⎬⎩ ⎭∆ =⎨ ⎬⎩ ⎭ =⎨ ⎬⎩ ⎭ ←
座標系の 軸方向の成分
座標系の 軸方向の成分 (6.48)
これらの数ベクトルは,横に並べた行ベクトル で表わしてもいいのだが,ベ クトルにおける積の約束事の都合から,主に列ベクトルで表現する。式
(6.48)の数ベクトルは,すべて共通の座標系の成分で表されているが,数ベクトルで 注意しなければならないことは,同一のベクトルを同じ空間において異なる座 標系の成分で表す場合があることである。したがって,ベクトルが数ベクトル で表されている場合,それがいかなる座標系の成分で表されているかを意識す ることは重要なことである。
(b)
ベクトルの内積と直交
2
つのベクトル a b , を考える。それらを基本ベクトルで表わすと
x x y y, x x y y
a a e= +a e b b e= +b e
(6.49)
となる。数ベクトルで表すと
{ }
,{ }
x x
y y
a b
a a b b
a b
⎧ ⎫ ⎧ ⎫
=⎨ ⎬= =⎨ ⎬=
⎩ ⎭ ⎩ ⎭
(6.50)
である。もし両ベクトルの始点が一致していない場合は,ベクトルは平行移動
しても変わらないから,図
6.6(b)に示すように,平行移動させて始点を一致さ せる。そのとき,
2つのベクトルの内積 を
a biで表し,以下のように定義する。
a b abi = cos
θ
(6.51)ここで,
θは両ベクトルが作る
2つの角で小さい方で,
aと
bはそれぞれのベ クトルの大きさ,すなわち
a= ax2+a2y, b= bx2+b2y (6.52)
である。この定義から,“
2つのベクトルが直交する場合
(θ π= / 2)は内積が
0である”ことがわかる。
内積を式
(6.49)の基本ベクトルで表わした式で計算すると
( ) ( )
( ) ( ) ( ) ( )
x x y y x x y y
x x x x y y y y x y x y y x x y
a b a e a e b e b e
a b e e a b e e a b e e a b e e
= + +
= + + +
i i
i i i i (6.53)
となる。
x軸と y 軸が直交していることを考慮すると,相異なる方向の基本ベ
クトルの内積および同じ基本ベクトルの内積は,それぞれ
竹名 興英
温留漢 共著 亀岡 裕行
1 1cos 2 0, 1 1cos 0 1
x y x x y y
e ei = ⋅ π = e ei =e ei = ⋅ = (6.54)
である。式
(6.53)に
(6.54)を代入すると次式となる。
x x y y
a b a bi = +a b (6.55)
また,内積を数ベクトルで表わす場合,次のような約束になっている。
{ } { } { } { }
T x T x{
x y}
xy y y
a b b
a b a b a b a a
a b b
⎧ ⎫ ⎧ ⎫ ⎧ ⎫
= = =⎨ ⎬ ⎨ ⎬= ⎨ ⎬
⎩ ⎭ ⎩ ⎭ ⎩ ⎭
i i (6.56)
ここで, { } a
Tは列ベクトル { }
aを行ベクトルに転置することを意味している。
したがって,数ベクトルで表わした内積は,式(6.55)から
{ } { }
x x x T x{
x y}
x x x y yy y y y y
a b a b b
a b a a a b a b
a b a b b
⎧ ⎫ ⎧ ⎫ ⎧ ⎫ ⎧ ⎫ ⎧ ⎫
=⎨ ⎬ ⎨ ⎬ ⎨ ⎬ ⎨ ⎬= = ⎨ ⎬= +
⎩ ⎭ ⎩ ⎭ ⎩ ⎭ ⎩ ⎭ ⎩ ⎭
i i (6.57)
である。
数ベクトルで表す方法のすぐれている点は,ベクトルそのものより,それを 構成する成分が強調されていることである。このことは,多次元ベクトルある いは多次元座標系への拡張につながっている。
(2) 基準振動の直交性
x
1O
x
2x
1O
12
22
Φ
Φ→
Φ2
→ Ψ1 Φ21
m
2x
1x
2m
1Φ11R x
2x R
1222
Φ
F1
→ Δ→2
-m u
1‥ 2Φ21-m u
1Φ11 12
Φ
‥
δu
2δ u
2x
1(a )基 準 振 動 の 直 交 性 (b)基 準 モ ー ド の 直 交 性 図 6.7 基 準 振 動 と モ ー ド ベ ク ト ル の 直 交 性
図
6.5の問題に戻ろう。図
6.7に示すように,元の変位
x1と
x2をそれぞれ横
軸と縦軸とした
x x1 2直交座標系を考える(2 種類のベクトルが重ならないよう
に,同じ座標系を同
6.7(a)と
(b)に示した)。点
R x x( ,1 2)は,時刻
tにおいて,節
点
1と節点
2の変位がそれぞれ
x1と
x2であることを意味している。この座標系
竹名 興英
温留漢 共著 亀岡 裕行
の存在する空間は,実在する空間でなく,理論上の空間である。
変位ベクトル
1 2
OR x x
= ⎨ ⎬⎧ ⎫
⎩ ⎭ (6.58)
は位置ベクトルである。
時刻
tの微小時間
∆t後における,
2次基準振動の節点
1と節点
2の微小変位
12 u2
φ δ
と
φ δ22 u2は,
x x1 2座標系において,図
6.7(a)に示すように,点 R を始点と した微小変位ベクトル
∆2の
x1軸方向と
x2軸方向の成分とみなすことができる。
すなわち
12 2 2
22 2
u u φ δ φ δ
⎧ ⎫
∆ = ⎨ ⎬
⎩ ⎭ (6.59)
である。同様に,時刻
tにおいて,点 R を始点とした
1次基準振動の慣性力ベ クトル
F111 1 1
21 1
F 2m u m u
φ φ
⎧− ⎫
= ⎨⎩− ⎬⎭ (6.60)
を考えることができる。
∆tは微小時間であるので,その間の慣性力
F1は変化し ない。したがって,
F1と
∆2の内積
F1i∆2は,その間の仕事である。式
(6.57)か ら
11 1 12 2
1 2 11 1 12 2 21 1 22 2
21 1 22 2
2 2
m u
Tu
F m u u m u u
m u u
φ φ δ
φ φ δ φ φ δ
φ φ δ
⎧− ⎫ ⎧ ⎫
∆ =⎨⎩− ⎬ ⎨⎭ ⎩ ⎬⎭= − ⋅ − ⋅
i (6.61)
である。式
(6.36)より最右辺が
0である。
1 2 0
Fi∆ = (6.62)
すなわち,この理論上の空間において,ある基準振動の慣性力ベクトルと別の 基準振動の微小変位ベクトルは直交する。これが慣性力に対する基準振動の“直 交性”とよばれるゆえんである。式
(6.61)の最右辺に着目すると,第
1項と第
2項は,それぞれ節点
1と節点
2の
1次基準振動の慣性力が
2次基準振動の微小 変位に対してなした仕事である。式
(6.62)は,これらの仕事の合計が常に
0で あるということである。これが慣性力に対する基準振動の直交性の物理的な意 味である。
変位
x1と
x2が座標とよばれるのは,上記のように,それらによって理論上の
竹名 興英
温留漢 共著 亀岡 裕行
座標系が構成されるからである。
式
(6.62)を変形すると
11 12
1 2
21 22
2 0
m
Tm u u
φ φ
φ φ δ
⎧− ⎫ ⎧ ⎫
⎨− ⎬ ⎨ ⎬ =
⎩ ⎭ ⎩ ⎭
となる。
−u u1δ 2を消去すると
( )
11 12
11 12 21 22
21 22
2 2 0
m
Tm m
m
φ φ
φ φ φ φ
φ φ
⎧ ⎫ ⎧ ⎫
= + =
⎨ ⎬ ⎨ ⎬
⎩ ⎭ ⎩ ⎭
すなわち
( ) ( )
1 11 12
1 11 12 2 21 22
2 21 22
0 m
Tm m
m
φ φ
φ φ φ φ
φ φ
⎧ ⎫ ⎧ ⎫
= + =
⎨ ⎬ ⎨ ⎬
⎩ ⎭ ⎩ ⎭ (6.63)
である。これを“質量に対するモードベクトルの直交性”とよぶが,式の誘導 からわかるように,“慣性力に対する基準振動の直交性”と同じ意味を持つ。一 般性のある“モードベクトルの直交性”の証明は,第
10章で行列を用いて行 う。
図
6.7(b)に示すように,質点の位置R x x( , )1 2を始点として,“
1次モードベク トルの成分と質量の積”を成分としたベクトル
Ψ1と
2次モードベクトル φ
21 11 12
1 2
2 21 22
m , m
φ φ
φ φ φ
⎧ ⎫ ⎧ ⎫
Ψ =⎨ ⎬ =⎨ ⎬
⎩ ⎭ ⎩ ⎭ (6.64)
が考えられ,これらは質点の位置にかかわらず不変であり,直交する。
6.4