竹名 興英
温留漢 共著 亀岡 裕行
0
i
x Q
x xi+1
k Δxi
Δ x
復元力
竹名 興英
温留漢 共著 亀岡 裕行
16.2
復元力の非線形履歴モデル
復元力と変位の関係は,変位が小さい範囲ではほぼ線形に挙動する。しかし,
変位が大きくなると降伏し,明確な履歴ループ
(hysterics loop)を描くようにな る。
信頼性のある非線形解析を行なうためには,各要素の履歴特性を適切に表現 した非線形履歴モデルを用いる必要がある。それは,種々提案されている。そ の モ デ ル で は , 骨 格 曲 線 と 履 歴 特 性 の 規 則 が 定 め ら れ て い る 。 骨 格 曲 線
(skeleton curve)とは,要素を無載荷状態から単調に荷重をプラス方向あるいは マイナス方向に増加させていった場合に,変位に対して復元力が描く曲線であ る。ここでは,図
16.2に示す“動的解析によく用いられる非線形履歴モデル”
である,①バイリニアーモデル
(bilinear),②トリリニアーモデル
(trilinear)と
③ランベルグ・オズグッドモデル
(Ramberg Osgood)などの共通の履歴規則を説 明する。
Q
x
ラ ン ベ ル グ ・ オ ズ グ ッ ド モ デ ル
Q
ト リ リ ニ ア ー モ デ ル
x Q
x
図 16 .2 非 線 形 履 歴 モ デ ル の 骨 格 曲 線
バ イ リ ニ ア ー モ デ ル
0 0 0
これらのモデルで,履歴特性に関する共通の規則が
2つある。
1つは,
Masingの規則である。骨格曲線を
( )
Q Q x= (16.14)
とすると,図
16.3に示すように,無載荷状態 (0,0) から単調に復元力を増加さ
せて,
A x Q( ,a a)で除荷を開始したとする。その除荷曲線は,骨格曲線
OAをち
竹名 興英
温留漢 共著 亀岡 裕行
ょうど
2倍だけ間延びした曲線を描いて戻ってくるとする。したがって,その 曲線は,原点に対して A と点対称な
C x(− a,−Qa)で骨格曲線と交わる。骨格曲 線上の任意の点 ( , ) x Q に対応した除荷曲線の点を
( , )x Qとすると,規則から
xa x 2, Qa Q 2x Q
− = − =
,
2 2
a a
x x Q Q
x − Q −
∴ = =
となる。この式を式
(16.14)に代入すると2 2
a a
Q Q x x
− Q⎛ − ⎞
= ⎜ ⎟
⎝ ⎠
となる。 x を
xに,
Qを Q に変更すると除荷曲線は,下式となる。
2 2
a a
Q Q x x
−
Q
⎛ − ⎞= ⎜⎝ ⎟⎠ (16.15)
除荷曲線上の
B x Q(
b, b) から再載荷した場合の曲線は,同様に
2 2
b b
Q Q x x
−
Q
⎛ − ⎞= ⎜⎝ ⎟⎠ (16.16)
である。
もう
1つの履歴特性に関する規則は,除荷曲線や再載荷曲線が骨格曲線と交 わった場合には,それ以降は骨格曲線上を移動するということである。
x Q
A
B 0
x
x
a bC
Q
b- Q
aQ
a- x
a図 16 .3 非 線 形 履 歴 の 規 則
竹名 興英
温留漢 共著 亀岡 裕行
16.3
要約
非線形動的解析の逐次近似法では,時間区分
ti < ≤t ti+1で,復元力 Q が,
xiの 接線剛性
kiに比例して増加する仮定して計算する。
第
4部の参考文献
[4.1]
高橋大輔,
(2000),“数値計算”,岩波書店。
[4.2]
川村哲也,
(2000),“キーポイント偏微分方程式”,岩波書店。
[4.3] Mario Paz,(1997),“Structural Dynamics”,Chapman & Hall。
[4.4]
柴田明徳,
(2000),“最新耐震構造解析”,森北出版株式会社。
[4.5]
数学ハンドブック編集委員会,
(1989),“理工学のための数学ハンド
ブック”,丸善株式会社。
竹名 興英
温留漢 共著 亀岡 裕行
第 5 部 振動学と“複素数”
振動を深く学ぼうとする人にとって,複素数の数学的手法は必須である。こ の部はそのような人のためのものである。物理や数学において,複素数の応用 範囲は極めて広い。振動学のような周期的な関数を扱う学問では,特にその威 力を発揮する。しかし,複素数を“観念上の数”としか認識していない人にと って,それは理解を混乱させるだけのものでしかない。複素数が“実在する数”
であるという観点から熱心に解説している数学の本が,少数存在する(参考文献
[5.1])。それ等を参考として,振動学への応用の視点から複素数を説明する。
第 17 章 複素数
17.1
複素数とは
2次方程式
x
2 +2 x
+ =5 0 の解は,公式から
x= − ±1 2 −1
である。
i≡ −1とおくと
x= − ±1 2iと表せる。このような数を複素数といい, i を 虚数単位とよぶ。
複素数の意味を考えるために,以下の簡単な方程式について考えてみよう。
x
2 =4 の解は,
x= ± 4= ±2 (17.1)である。しからば,方程式
x
2 = −4
(17.2)では,“ x
2 ≥0 であるので解が存在しない”,それとも“解は
x= ± − = ±4 2i” と考えるべきであろうか。また,後者であれば,
2iとはどのような数であろう か。これを考える前に,“正と負の数”について考えてみよう。
3
個のリンゴから
5個を取り去ったとき,残った個数
Nを求める方程式は
N = −3 5 (17.3)
である。標高
3mより
5m低い標高
xmを求める方程式は
竹名 興英
温留漢 共著 亀岡 裕行
x= −3 5 (17.4)
である。それぞれの方程式の解は
N
= −2, x
= −2
(17.5)である。最終的な答えは,問題の本質を考えて,前者の問題に対しては“元の 個数より多い個数を取り去ることができないので,解なし”,後者の問題に対し ては“標高は
−2m ”である。
以上のことから, “問題を解く”ということは,①方程式を構築する,②方程 式を解く,③その解を評価して目的と合致した答えであるかどうかを判断する,
という
3つの段階で構成されていることがわかる。“リンゴの問題”における
①と③の段階では,
Nは正の整数である。それに対して,“標高の問題”にお ける①と③の段階では,
xは実数である。しかし,②の段階では,両問題とも,
見かけ上で未知数の名が異なるが,完全に同じ方程式を解いている。
すなわち,次のことが言えるのではないか。方程式を解く段階においては,
未知数は,整数を含んだすべての数すなわち実数を意味している。さらに, “真 のすべての数”とは複素数であるから,方程式の未知数は複素数を意味してい ると考えるべきではないか。
言い換えると,方程式
(17.3)あるいは
(17.4)の未知数は,自然数
(1, 2,"
)の概 念しか持ち合わせていない子供においては自然数であると思い込み,大人でも 複素数に対する認識が不足している場合は実数であると思い込んでいるにすぎ ない。このような錯覚は,方程式の構築の段階では,通常,実数を対象として いるからである。したがって,いかなる場合でも,方程式における未知数は,
複素数を意味していると考えるべきである。
負の数の幾何学的な意味を考えてみよう。実数は,図
17.1(a)に示す数直線で 表される。正の数 4 と負の数
−4 は,原点
Oに対して対称な点
Aと点
Bで表さ れる。
− = × −4 4 ( 1) であるから, 4 に
−1 を乗じることは,同図に示すように, 4
(点
A)をπだけ回転させて
−4
(点
B)に移動させることを意味している。
式
(17.2)の解の一つである
x=2iについて考えてみよう。式
(17.2)を満足する から
(2 ) i
2 = × × = −(4 ) i i 4
である。すなわち, 4 に i を
2回乗じることは, 4
(点
A)をπだけ回転させて
−4
(点
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温留漢 共著 亀岡 裕行
B)
に移動させることを意味する。したがって, 4 に i を
1回乗じることは,図
17.1(a)に示すように, 4
(点
A)をπ
/2だけ回転
(時計と逆回りを正とする
)させて 4i
(点
C)に移動させることである。数直線をπ
/2だけ回転させた縦軸上の数は,
純虚数 bi ( b 実数)であるので,縦軸を虚軸という。それに対して横軸である数 直線上の数は実数であるので,その軸を実軸とよぶ。両軸で構成された平面を 複素平面という。複素数を取り扱うときには,常に複素平面を描いて考えると わかりやすい。
π / 2 π / 2 4 i C
A 0
4 B
- 4
数 直 線 (実 軸 ) π
虚軸
実 軸 0
虚軸
rθ
P z
(a )数 直 線 , 実 軸 と 虚 軸 (b ) 複 素 平 面 図 17 .1 数 直 線 と 複 素 平 面
b i
a r
複素平面上で,正の実定数 r を
θだけ回転させた数 z
(点
P)は,図
17.1(b)か らわかるように
z=r
(
cosθ +isinθ)
と表せる。このように複素平面上の点として表される数を複素数とよぶ。実数 は,複素数において
θ =nπ(nは整数
)の特殊な数である。
,
a b を実定数とすると,複素数は,一般に
z a bi= + (17.6)
と表せる。
aと
bを実部 と虚部とよび,それぞれ Re( ) z と Im( ) z で表す。
2つの 複素数 z a bi w c di
= +,
= +が等しいとは,図
17.1(b)の複素平面からわかるよう に,実部と虚部がそれぞれ等しい場合である。すなわち
,
z w
= ↔a c b d
= = (17.7)である。また,複素数 z が
0とは,実部と虚部がそれぞれ
0の場合である。す なわち
z a bi
= + =0
↔a
=0, b
=0
(17.8)である。
竹名 興英
温留漢 共著 亀岡 裕行
,
x y が実変数の場合,複素数
z x yi= + (17.9)
を 複素変数という。
複素数を極座標すなわち原点からの距離 r と実軸に対する角度
θで表すと z r ( cos i sin ) , r a
2b
2, tan b
θ θ θ a
= + = + = (17.10)
となる。これを複素数 z の 極形式という。 r と
θを,それぞれ複素数 z の 絶対値 と偏角 とよび,それぞれ記号
zと arg z で表す。
自然対数の底
eの指数関数 e
xをマクローリン級数に展開すると
2
1 1! 2!
x x x
e = + + +"
となる。これを純虚数
x i= θに拡張すると
( ) ( ) ( )
2 3 42 4 3 5
1 1! 2! 3! 4!
1 2! 4! 3! 5!
i i i i i
e
i
θ
θ θ θ θ
θ θ θ θ θ
= + + + + +
⎛ ⎞ ⎛ ⎞
= −⎜ + + ⎟+ ⎜ − + + ⎟
⎝ ⎠ ⎝ ⎠
"
" "
となる。最右辺の第
1項と
2項は,それぞれ
cosθ と
sinθ のマクローリン級数
展開であるから
e
iθ =cos θ
+i sin θ
(17.11)である。これがオイラーの公式 である。これを用いると,式
(17.10)は,以下の
ように指数で表すことができる。
z re
= iθ(
r は正の実定数
) (17.12)このように,複素数は
3つの方法すなわち式
(17.6)・
(17.10)・
(17.12)で表す
ことができる。それぞれ,有益な点があるが,指数で表した式
(17.12)のすぐれ ている点は,微分あるいは積分した場合に形が変わらないことである。
例題
17.a減衰自由振動の解(斉次解)
減衰自由振動の微分方程式(2.15)を再掲すると
x
+2 h x ω
+ω
2x
=0
(a)である。複素数を用いて,この方程式を解くことによって,複素数の概念を把
ドキュメント内
土木/建築技術者のための基礎から学ぶ振動学
(ページ 192-200)