第 6 章 わが国地方自治体における資金調達内部統制の現状と課題
3 東京都公金管理ポリシーと国東市財務活動管理方針の比較
東京都公金管理ポリシーはホームページで公開されており、首都の資金管理規程であ るため、地方自治体の資金管理方針作成に影響を与えてきたものと考える。他団体で資
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金管理方針をホームページで公開している団体はほとんど見られなかった。そして、第 5章における、わが資金管理(調達・運用)規程の分析結果で見出したさまざまな要素 の多くが、東京都公金管理ポリシーと国東市財務活動管理方針に対照的に存在するもの と考察される。そのため、図表6-1が示すように、東京都と国東市の資金管理方針を比 較することで、わが国地方自治体資金管理方針の現状を考察する。
① 東京都と国東市の共通性
運用商品の制限、運用期間の制限、ペイオフ対策、取引先の財務健全性の検証、お よび資金運用等の実績や方針公表の規定があり、不正と誤謬の防止および発見の規定 がない。なお、資金運用期間の制限は共通であるが、東京都の場合、歳計現金等は1 会計年度以内、基金は10年以内としている。国東市は歳計現金、基金および地方公営 企業の別なく、余裕資金を上限30年での運用を認めている。
② 対象資金の違い
東京都は会計管理者保管資金および準地方公営企業資金が対象であり、国東市は会 計管理者保管資金および地方公営企業資金が対象である。これに関連して、資金管理 規程の分析調査では、資金管理規程を会計管理者管理資金と地方公営企業資金の双方 に適用する62団体(31%)がある。
③ 対象活動の違い
東京都は歳計現金の保管、一時借入、基金運用が対象であり、国東市はそれに長期 資金調達が加わった、資金運用と資金調達の統一規程である。これに関して、資金管 理アンケートにおいて、国東市が制定している「資金運用と資金調達の統一規程」は 8団体(2%)が制定している。
④ 目的の違い
東京都は安全性、流動性、効率性の順に優先すると順番が付けられているのに対し、
国東市は安全性および効率性に順位を付けず双方の実現を目指している。これに関し て、資金管理規程の分析では、151団体(76%)が、安全性および流動性を効率性に優 先し、効率性を劣後目的と定めている。
⑤ 金利変動リスク等対応の違い
東京都はリスク全面回避のため債券を満期保有する原則である。一方、国東市は金 利変動リスクの対応のために債券売却を認めている。国東市財務活動管理方針にはリ スクコントロールの規定があり、「リスクとは目的達成の成否を不確かにする要素と影
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響のことであり、目的に対して正(=促進)の結果をもたらす場合と負(=阻害)の 結果をもたらす場合がある。資金の安全性に係る信用リスク、流動性リスク、及び金 利変動リスク等に関わるさまざまな要素を金融取引のみでなく市の内外のすべての環 境から見出し、適切なリスクコントロールを通じて、効率性の向上を図る1」と定めて いる。
⑥ 基金の流動性リスク対処の違い
東京都は基金の個別運用であるが、国東市は基金、地方公営企業資金および外郭団 体資金を含めた全基金一括運用を定めている。
⑦ 短期資金調達の違い
東京都は一時借入または基金繰替運用のうち、効率性が高い方を選択するとしてい る。国東市は金融市場金利に連動した金融商品を基本に、緊急時は指定金融機関の専 用当座貸越を選択するとしている。
⑧ 長期資金調達の違い
東京都は、長期資金調達に関する規程を確認できなかった。国東市は、債務早期償 還および利息負担軽減を目的に、起債の活動基準として、(ⅰ)据置期間撤廃、(ⅱ)
元金均等償還方式の選択、(ⅲ)償還期間短期化、(ⅳ)償還シミュレーションによる 借入方式選択、(ⅴ)金利見直し方式の見直し条件は国債等市場金利基準と定めている。
⑨ 外部専門家の活用の違い
東京都では、金融専門家によるアドバイザリーボードが資金運用方針策定や資金運 用に強い影響力を有している。国東市は外部専門家の活用は証券会社からの情報収集 にとどまっている。「東京都公金管理アドバイザリー会議設置要綱」(平成28年11月 14日、28会管公第732号会計管理局長決定)第2条では「①公金管理の基本的方針、
②金融機関及び金融商品の選択、③公金の適正なリスク管理、④その他、公金管理に 関する必要な事項方針の更新や業績の公表を検討し、会計管理局長に意見を表明する」
ことが所掌事項になっている。アドバイザーは、公認会計士、野村総合研究所研究員、
証券会社役員兼大学教授、アジア開発銀行研究所エコノミストおよび弁護士である2。 これに関連して、資金管理アンケート調査では、「金融専門家にアドバイザーを委託」
は15団体(5%)であり、「証券会社からの無料の金融情報収集」は267団体(82%)
である。
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図表6-1 東京都および国東市の資金管理方針の比較
出所:東京都公金管理ポリシー(平成27年3月26日会管公第1117号)および国東市財務 活動管理方針(改正平成29年8月23日告示第82号)を参照して筆者作成。
東京都公金管理ポリシーと国東市財務活動管理方針を比較して、東京都公金管理ポリ シーで鮮明になったことがある。それは、確実性(安全性、流動性確保)が効率性に優 先するため、安全性に係る運用期間制限、ペイオフ対策、取引先の健全性検証等の規定 は整備されている。そのため、債券運用においても、資金の確実性(安全性、流動性)
を効率性に優先させるため、金利変動リスクを全面的に回避するための満期保有原則は 規定されているが、金利変動リスクに対して、適切なリスクコントロールを通じて効率 性の向上を図る規定はない。また、基金の流動性リスクを軽減し超長期運用資金を創出 するための一括運用の規定がない。なお、東京都公金管理ポリシーは資金運用実績を公 表する規定があり、ホームページで公金管理ポリシーと運用実績を公表することによっ て、説明責任を果たしている。
東京都公金管理ポリシー 国東市財務活動管理方針 運用商品の制限 公共債、円建て外債、社債、金融債等 預金、公共債AA以上 運用期間の制限 歳計現金等は1会計年度内
基金は10年以内
歳計現金、基金、地方公営企業の余裕資 金は最長30年以内
ペイオフ対策 ある ある
取引先の財務健全
性の検証 ある ある
資金運用等の実績
および方針公表 ある ある
不正と誤謬の防止
および発見 ない ない
対象資金 会計管理者保管資金、準公営企業資金 会計管理者保管資金、公営企業資金 対象活動 現金の保管、短期資金調達、資金運用 現金の保管、資金運用、一時借入、起債
目的 安全性・流動性を確保したうえで
効率的な運用 資金の安全性および効率性の実現 金利変動リスク等
の対応 債券満期保有原則 適切なリスクコントロールを
通じて効率性を実現
流動性リスク 個別運用 全基金一括運用、公営企業・外郭団体
の資金を含む 短期資金調達 一時借入または繰替え運用の
うち効率性の高い方
金融市場に連動した金融商品 緊急時は専用当座借越
長期資金調達 ない 据置期間撤廃等の活動基準
外部専門家の活用 金融専門家等による
アドバイザリーボード 証券会社の無料情報等 方針の変更 アドバイザリーボードの意見を
聞いて毎年更新 改善改革のたびに随時、更新。10回改正 共
通
違 い
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