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第 6 章 わが国地方自治体における資金調達内部統制の現状と課題

2 効率性に関わる基本的な観点

(1)資金調達と資金運用における利回り曲線の共通性

図表6-13が示すように、金融市場における利回り曲線は、一般に償還年限が長くな れば利回りが上昇し、償還年限が短くなれば利回りが下降する性質がある。この利回り と償還期間の関係は資金調達と資金運用において共通であることから、資金調達の利回 り軽減(調達コスト軽減)のための償還年限短期化という戦略と相関して、資金運用に

起債平均残高 利子額 利子負担率(%)

都道府県 47 1,900,250 22,957 1.15

政令市 20 910,942 12,885 1.32

中核市・

旧特例市 84 120,045 1,283 1.06

特別区 23 23,092 332 1.50

市 686 30,208 316 1.05

町村 928 6,412 67 1.05

合計 1,788 80,994 968 1.06

区分 団体数

(1団体平均値) (利子負担率:各団体負担率平均)

利回り ~0.6 ~0.9 ~1.1 ~1.3 ~1.5 ~1.7 ~1.9 ~2.1 ~2.5 ~2.9 ~4.5 ~5.1 合計

団体数 17 289 838 509 95 18 14 0 4 0 3 1 1,788

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おける利回り向上のための償還年限の長期化という戦略が考えられる。資金調達はお金 を借りることであり、資金運用はお金を貸すことである。資金調達と資金運用は金融取 引の両面であることから、金融を媒介にした共通性においてとらえることができる。

図表6-13 利回り曲線(一般的な事例)

出所:筆者作成。

(2)満期一括償還方式と定時償還方式における事象の相関関係

起債には満期一括償還方式と定時償還方式がある。都道府県および政令市が市場公募 満期一括償還地方債を発行し、特別区は指定金融機関の引受で満期一括償還債を発行し、

その他の地方自治体は金融機関から定時償還方式による起債を行っている。地方自治体 では、満期一括償還債と定時償還債は異質のものとして、両者を共通性においてとらえ て、効率性を比較することはなかったことが考察される。

しかし、図表6-14が示すように、両者を相関関係においてとらえれば、定時償還方 式は満期一括償還の集合である。この関係を理解することは、調達コスト(利子負担)

を抑制し、債務を早期償還するための資金調達戦略を考察する前提である。

図表6-13で示したように利回りは償還期間が長いほど一般的に高いことから、償還 期間1年が最も利回りが低く、期間5年に向けて利回りが逓増する。したがって、図表 6-14で示すように、満期一括償還債の場合は元本すべてに対して、償還期間5年の最 も高い金利が適用される。

図表6-14 満期一括償還方式と定時償還方式の相関図

0.4%

0.3%

0.2%

0.1%

0 1年 2年 3年 4年 5年 利

回 り

償還年限

178

出所:堀内聡『これだけは押さえておきたい!自治体資金調達・運用の基礎知識』、2015年、105 頁。

一方、元金均等償還方式および元利均等償還方式は、期間1年から期間5年に至る各 償還年限の満期一括償還債の集合であることから、償還期限1年から5年の満期一括償 還債ごとに1年債から5年債の国債利回りが適用されることになる。定時償還方式は、

満期一括償還に比べて、適用される利回りが低いうえに、利息計算の要素である借入金 が減っていくため、支払利子が安くなる。また、元金均等償還は元利均等償還に比べ、

元金の償還率が高いため支払利子が少なくなる。

これらのことから、同じ償還期間であっても、満期一括償還方式は最も高い金利が適 用されることに相まって、元本が満期まで償還されないため、支払利子が最も多くなる。

定時償還方式は毎年元本を償還していくために適用金利が低く、そのうえ、金利計算の 要素である借入金が減っていくために、支払利子が少なくなる。また、元金均等方式は 元利均等方式に比較すれば、元本が早期償還されるため支払利子が少なくなる。

図6-15満期一括償還方式・定時償還方式における据置期間による平均償還年限比較表 借入日からの期間(年)

元 本 残高

元本 残高 元 本残 高

期間5年の 国債利回り+α%が 適用

期間1年の国債利回り+α%が適用 期間2年の国債利回り+α%が適用

期間3年の国債利回り+α%が適用 期間4年の国債利回り+α%が適用 期間5年の国債利回り+α%が適用

期間1年の国債利回り+α%が適用 期間2年の国債利回り+α%が適用 期間3年の国債利回り+α%が適用 期間4年の国債利回り+α%が適用

期間5年の国債利回り+α%が適用

①満期一括償還方式 ②元金均等償還方式

③元利均等償還方式 ○一般的には、イールドカーブは右肩上が りの曲線になることから、期間 1 年から期 間4年の国債利回りは、期間5年の国債利 回りより小さくなる。

○したがって、借入金額の全てに期間 5 年 の国債利回り+α%が適用される①よりも、

②や③の方が借入利率が低くなる。

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出所:「B国債利回」は財務省「国債金利情報/20161010日金利」を参照して筆者作成。

http://www.mof.go.jp/jgbs/reference/interest_rate/、(2016129日閲覧)

次に、図表6-15において、満期一括償還方式と定時償還方式の金利への影響、およ び、定時償還方式における据置期間の長短による金利への影響に関して、具体的な事例 による試算を通じて検証を行う。そのために、100億円を10年半年賦償還で調達する場 合の、①満期一括償還方式、②定時償還方式・据置期間5年、および③定時償還方式・

据置期間なしの3つの事例につき、平均償還年限と国債基準利率を試算して比較を行う。

「平均償還年限」の算定は、定時償還の借入を、借入期間の異なる 20 の満期一括償 還方式の借入に分解し、それぞれの借入について、(借入金額)×(期間)の総和を求 め、その総和を元金100億円で除することで算定する。なお、貸付金利は、国債利率を 基準(ベース)に、借手のリスクに応じてプレミアムが付加されて決定されるため、国 債基準 利率の多寡が貸付金利の多寡に比例することになる。

図表6-15が示すように、①満期一括償還方式、②定時償還方式・据置期間5年、③ 定時償還方式・据置期間なしの順に、平均償還年限が長く、国債基準利率が高くなる。

したがって、長期資金調達において、利子負担軽減と債務早期償還を達成するためには、

B国債 利回

C 償還額

D=A×C 借入期間

×償還期間

C 償還額

D=A×C 借入期間

×償還期間

C 償還額

D=A×C 借入期間×償還

0.5年後 0.001% 5億円 3(年*億円)

1年後 0.030% 5億円 5(年*億円)

1.5年後 0.040% 5億円 8(年*億円)

2年後 0.049% 5億円 10(年*億円)

2.5年後 0.061% 5億円 13(年*億円)

3年後 0.072% 5億円 15(年*億円)

3.5年後 0.093% 5億円 18(年*億円)

4年後 0.113% 5億円 20(年*億円)

4.5年後 0.131% 5億円 23(年*億円)

5年後 0.149% 5億円 25(年*億円)

5.5年後 0.166% 10億円 55(年*億円) 5億円 28(年*億円)

6年後 0.182% 10億円 60(年*億円) 5億円 30(年*億円)

6.5年後 0.215% 10億円 65(年*億円) 5億円 33(年*億円)

7年後 0.248% 10億円 70(年*億円) 5億円 35(年*億円)

7.5年後 0.295% 10億円 75(年*億円) 5億円 38(年*億円)

8年後 0.341% 10億円 80(年*億円) 5億円 40(年*億円)

8.5年後 0.382% 10億円 85(年*億円) 5億円 43(年*億円)

9年後 0.422% 10億円 90(年*億円) 5億円 45(年*億円)

9.5年後 0.462% 10億円 95(年*億円) 5億円 48(年*億円)

10年後 0.502% 100億円 1,000(年*億円) 10億円 100(年*億円) 5億円 50(年*億円)

100億円 1,000(年*億円) 100億円 775(年*億円) 100億円 525(年*億円) 10.0年

0.502%

借入方式 H26/10/10国債金利

満期一括償還方式 定時償還方式

据置10年 据置5年、半年賦均等償還 据置なし、半年賦均等償還

平均償還年限=D計/C計 7.75年 5.25年

国債基準利率 0.318% 0.158%

A借入期間 (償還年次)

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償還年限と据置期間を短くする調達戦略が導かれる。

(3)長期資金調達戦略の効果

前目において、満期一括償還方式と定時償還方式の相関関係から、利子負担および債 務早期償還に関して、元本の満期一括償還が最も非効率であり、据置期間を設けない定 時償還方式が最も効率的であることを示した。そして、長期資金調達において利子負担 軽減と債務早期償還を達成するために、償還期限と据置期間を短くする戦略を導いたと ころである。図表6-16はその戦略の効果を考察する事例である。

図表6-16は、国東市役所の会計別に、起債残高に対する償還年度までの利子負担額 の割合を算定したものである。一般会計の利子負担率6.9%に比べて、簡易水道事業16.2%、

公共下水道事業16.6%および市民病院事業13.6%等に見られるように、地方公営企業の利 子負担率が約2倍以上である。これは、一般会計は主に元金償還の据置期間1年、10年 見直し金利方式および償還期限 20 年以内で起債してきたのに対して、地方公営企業は 主に据置期間5年、30年固定金利方式で起債してきたからであると考察される。

一般会計の据置期間1年と地方公営企業の据置期間5年を比較すれば、一般会計は早 期に債務が償還できるための利子削減効果および平均償還年限を短期化するための利率 低下効果を得られる。また、一般会計の10年見直し金利方式と地方公営企業の30年固 定金利を比較すれば、一般会計の方は固定された償還期限が短いので金利が安くなる。

仮に10年後の金利が上昇しても、据置期間が短ければ、金利上昇リスクにさらされる債 務が早期に減少することになる。国東市の地方公営企業は、償還期間と据置期間を最長 にし、金利変動リスクを回避するために、30年間固定金利等の借入方式により、多額の 利子を負担してきた。なお、国東市は、現在、地方公営企業においても、据置期間を撤 廃している。

図表6-16 国東市会計別将来にわたる利子負担の状況

(単位:千円)

181 出所:国東市提供資料を参照して筆者作成。

大蔵は地方公営企業の資金調達のあり方について、「民間は長くても10年で、多くは 数年以内の借入である。一方、自治体は10年が基本で、長ければ20年、30年もある。

(略)期間が長いこと、金融市場環境変化がダブルで効いて、平均金利が 3%前後、す なわち水道料金の15%位が利払いという信じられない事態が生じている10」と言及して いる。

他の地方自治体においても、国東市の過去の地方公営企業と同様に利子負担削減の視 点が欠落した資金調達が行われている可能性がある。地方自治体において、起債におけ る利回り削減と債務早期償還という財政の継続性維持に関わる重要な認識が欠落してい るとすれば、憂慮すべき状況である。