本論文は図4のように構成される。
第 1章と第2章では,中国の女性労働に関する歴史的背景,時代により女性労働への取 り組み,中国企業における組織構造や企業における役員・管理職の登用制度を説明・検討す る。その目的は,経済移行の段階とともに,国有企業の改革の各段階における企業の統治構 造の特徴と女性労働の問題を明らかにして,女性役員・管理職の登用に影響する制度上の要 因を析出することである。
図4. 本論文の構成
序章:研究方法と枠組み 課題導入
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第1章:中国の女性雇用における経済・社会制度の歴史的分析
↓ 歴史的分析 第2章:中国の女性雇用における企業統治構造の歴史的分析
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第3章:女性役員・管理職のデータ分析
↓ ↓ 事例分析 第4章:国有企業の事例分析 第5章:民間企業の事例分析
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終章:要約と結論 結論
(出所)筆者作成
そのうち,第1章では,中国女性の雇用における経済・制度の歴史的背景および各段階に おいて,中国政府の女性の雇用制度および女性の雇用状況を説明し,中国女性の労働問題と 今後の行方を検討する。具体的に,まず,中国建国後の女性労働を「建国時代」,「文革時代」,
「改革開放時代」,「社会主義市場経済時代」,「企業改革時代」という5期に分け,各段階に おける雇用の特徴および主たる法令を明らかにする。つぎに,筆者は社会主義市場経済化の 進展に伴う各段階の雇用制度や法令を概観し,国家・企業・意識の側面においての女性の労 働問題を考察するとともに,中国女性の労働と企業側との関連性を提起する。
第2章では,まず,中国国有企業の改革の段階を分けて,各段階においての企業制度と企 業の統治構造の特徴を概観する。そして,近代中国企業の権力均衡,経営透明化や監督など 法的規定・条例を説明するとともに,中国企業の統治構造における欠陥を明らかにする。ま た,中国企業,特に国有企業のなかで存在する共産党組織と工会組織の機能と特徴を示し,
中国企業の統治構造は二重構造であり,新・旧権力組織間に存在する矛盾点が企業の人事制 度に影響を与えるという事実を確認する。とくに,企業のトップ管理層における人数の少な い女性役員・管理職は,二重構造の企業統治システムの影響で,企業における昇進の「機会」
と「権力」がないため,簡単に昇進することができないことを明らかにする。
第3章では,企業における女性役員・管理職の登用に関して,統計データを用いて分析す る。その目的は,企業に存在する女性の役員・管理職への登用状況を把握し,女性の登用を 阻害する組織上の阻害要因,すなわち男女役員・管理職の昇進構造など処遇の違いを解明す ることである。具体的には,まず,中国上場企業における女性管理職の登用に着目し,上場 企業の職務別女性の登用実態を統計することによって,企業における女性役員・管理職への 昇任・登用プロセスに存在する登用の実際を明らかにする。また,法律の面から,企業の職 務や権限についての規定が曖昧である事実をとおして,法律上の不備により女性の役員・管
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理職の登用実態が正しく認識されないことを取り上げ,従業員は管理職まで昇進・登用でき ない要因を指摘する。
第 4章と第5章では,中国企業の所有形態によって,女性役員・管理職登用の促進政策 の有無と実際的な女性役員・管理職の登用事例を通じて,女性の役員・管理職への昇進をめ ぐる「法律の無力化」や「企業の統治構造に影響された登用制度」の存在および組織の「権 力」の実像を明らかにする。
そのうち,第 4 章は,中国の経済体制や社会システムの移行に伴う女性雇用への影響を 考察し,中国企業の組織構造と権力構造をめぐって,低い女性役員・管理職の割合を維持し ている国有企業の事例を通じて,女性役員・管理職の登用実態と現行の人事制度に存在する 欠陥を解明することを目的とする。
具体的には,まず,筆者は上位の上場企業の統計データをとおして,産業別や企業の所有 形態別において,それぞれの女性役員の登用特徴を明らかにする。つぎに,女性役員・管理 職の比率の低い製造業とサービス業の国有企業に着目し,女性役員・管理職の登用の評価・
昇進・配置制度へのオリジナル調査を通じて,政策の実施過程およびその影響を考察し,中 国国有企業における女性役員・管理職の登用実態を明らかにする。このため,まず,製造業 の S 社の党委書記兼代表取締役へのインタビュー調査を通じて,女性役員・管理職登用の 現実や管理層における男性幹部の女性役員・管理職に対する認識を明らかにする。そして,
従業員に対する現行の評価・昇進・配置制度については,S社の「従業員考課制度」をとお して,女性従業員の管理職に至るまでの制度上の阻害要因を分析する。また,サービス業の T社の人事部の担当者(女性)に対するインタビュー調査をとおして,筆者は,国有企業に おける女性役員・管理職登用の促進政策の施行方法の特徴を明らかにする。
第 5 章では,中国の非国有企業における女性役員・管理職の割合が国有企業に比べて高 い理由を明らかにする。そのために,まず,製造業の民間企業 A 社の人事部門の担当者に 対するインタビュー調査結果を通じて,女性役員・管理職の登用の促進政策の有無および企 業の統治構造の特徴を明らかにする。それから,国有資本のない民間企業B社とC社,お よび外資系企業 K社の役員を対象としたインタビュー調査結果を提示し,外資系企業にお ける女性役員の昇進制度および統治構造の特徴を明らかにする。そのうえで,女性役員・管 理職が昇進プロセスのどの段階で,企業側はどのような昇進制度を採用し,どのような「資 質」を有する女性を昇進させたかという一連のプロセスを明らかにする。最後に,中国の国 有企業と非国有企業における女性の登用と「比率」「機会」「権力」という要因との関係を検
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討し,それらの結果をもとに,構造的要因が女性役員・管理職の昇進プロセスに関わる影響 を分析する。
それでは,まず第1章にて中国の女性雇用の特徴,そして問題になった経緯について,中 国の経済システムと雇用制度の歴史分析をとおして議論する。
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