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女性雇用に関わる歴史的視点

第 1 章 中国の女性雇用における経済・社会制度の歴史分析

2. 女性雇用に関わる歴史的視点

中国は建国された後,中国婦女第 1次全国婦女代表大会(1949年3月)の開催に伴い,

女性の権利を保護するためのいくつかの法律が初めて現れた。そして,1980年代末までの 社会主義計画経済時期では,中国の女性雇用と就業は国の指標による「統一分配」のシステ ムが採用されていたため,中国女性の失業率は比較的低かった。1980年の改革開放以後,

中国共産党は経済復興と発展を最優先とした国策を唱えると同時に,女性の雇用環境が変 わり始めた。1990年代以来,特に 2000年前後,国有企業の改革の本格化に伴い,中国企 業の雇用形態が女性に不利になってから,都市部における女性従業員のリストラ,女性の再 就業,労働参加率の低下などに関する問題は顕在化され始めた91。このように,経済の発展 および経済体制の移行が進行されると同時に,女性の雇用は,経済環境のほか,国家の政策,

法令,企業における雇用の慣習など,多くの要素にも影響されている。そのため,現在の中 国企業における女性の雇用に影響を与える要因をより全面的に把握すれば,歴史的視点か ら女性雇用の変遷をみることが必要である。

歴史的視点から,時期を区分して女性の雇用を考察すると,次の二つのメリットがある。

91 孫芬・曹杰(2011)pp.67-81

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第1に,時期毎における国・企業・社会的側面での政策を比較すれば,その時期において,

企業の統治システムにおける権力構造の特徴を見ることができる,即ち,経済の発展と企業 の改革に伴い,企業の意思決定権が一体誰に握られ,女性役員・管理職の登用が誰に左右さ れるかが把握できる。第2に,中国女性の雇用に関する歴史的歩みを把握することにより,

将来,変動しつつある経済環境と少子高齢化の時代に入った中国企業に対して,いかに女性 の人材を活用して,企業の労働力と競争力を確保するかの対策を計画することができる。

中国女性の雇用に関する歴史時期の区分について,筆者は,建国後から改革開放までと改 革開放以後の二つの段階に大別し,各段階をさらに数期を区分して分析すると,時代的な背 景が経済・社会に対する影響をより把握しやすいと考えている。よって,企業における女性 の登用について,企業の統治システムと女性の登用に影響を与える機会・権力・比率を分析 すると,より客観的で,正確な結果を得ることができるといえるであろう。したがって,企 業の統治システムをいかに女性の登用に影響することを探求するために,まず,次では,中 国経済体制の沿革によって時期を分けて女性雇用の特徴を整理していく。

建国後から改革開放するまでの期間では,中国経済は社会主義市場経済の規律に従わず,

国家「○◯五計画」(第◯◯カ五年計画)の方針の指導で進行された一方,労働を含めすべ て生産財が中央により管理・統治された。中国労働制度の発展成段階に基づいて,趙(2003)

92と蘇(2005)93は社会主義計画経済時期における中国の労働制度を,(1)新中国94労働制 度の初歩的な確立時期(1949~1956年),(2)新中国労働制度体型の初歩的な形成時期(1957

~1965年),(3)新中国労働制度が破壊された停滞期(1966~1977年)との3期に分けた。

本章では,これらの研究を参考したうえで,1966年に起こった文化大革命を転折点とし て,社会主義計画経済時期における中国労働を「発展期」(1949~1965 年)と「停滞期」

(1966~1977年)2期を区別して説明を行う。

1978年以後の社会主義市場経済時期では,賈(2009)95は,改革開放以後における中国 の経済体制の改革段階によって,中国の発展段階を,(1)改革の試行段階(1978~1984年),

(2)改革の全面的な探索段階(1984~1992年),(3)社会主義社会主義市場経済体制の初 歩的な成立段階(1992~2002 年),(4)社会主義市場経済体制の改善段階(2002 年以後)

の4期に分けた。また,徐・李(2008)96は,中国国有企業の改革段階の側面から,企業の

92 趙毓坤(2003) pp.44-49

93 蘇樹厚(2005)pp.21-33

94 一般的に,1949年前の中国は「旧中国」,1949年以後の中華人民共和国は「新中国」と呼ばれる。

95 賈紀磊(2009)pp.26-29

96 徐向芸・李楠(2008)pp.9-13

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所有形態や制度の改革段階を,(1)企業所有権・経営権拡大の段階(1979~1986年),(2)

企業の所有権と経営権は分離し,契約経営制度の推進する段階(1987~1992 年),(3)現 代的な企業制度と国有経済の戦略的な再編段階(1993年以後)の3期に区分した。本章で は,これらの研究を参考し,筆者は社会主義計画経済体制時期における政策・方針および,

社会主義市場経済時期における国有企業改革の段階について,下記の5期に区分した。

第1期(1949~1965年):建国時代における二元化社会と計画された女性雇用

第2期(1966~1978年11月):文化大革命時期における婦女開放政策と男性化された女 性の雇用意識

第3期(1978年12月~1987年9月):改革開放政策下の国有企業と女性雇用

第4期(1987年10月~1992年6月):国家にコントロールされた社会主義市場経済と 女性幹部育成の意識

第5期(1992年6月以後):中国に特色のある社会主義市場経済化と女性雇用への影響

この 5 期のなかで,筆者は,建国初期と文化大革命期間における労働政策と女性の雇用 慣行を概観し,その時代の特殊性と社会主義市場経済体制を導入する必要性を確認したう えで,1978年の改革開放以後の3期に焦点にあて中国女性の労働と雇用を考察する。

本章の分析手法について,筆者は図5を用いて説明していく。このアプローチでは,筆者 は前文で言及したように,中国改革開放後,経済体制の移行に伴う女性の雇用に関する経 済・社会政策,法的制度の変化を出発点として,企業の所有形態と企業の統治システムにど のような影響を及ぼすのか,そして,企業における女性登用の「機会」「権力」「比率」はど のような影響を受けるかについて検討する。

このような方法に基づいて中国女性の雇用を分析すれば,男女雇用の格差の有無および 傾向はより観測されやすいと考えられる。例えば,働いている女性たちの就業は,転職,リ ストラや育児などの理由で一時的に中断されると,再就業する際では,契約社員としてしか 雇用されず,キャリアの構築はできないケースがよくみられている。さらに,現在の中国企 業では,民営化への改革を行っても企業ガバナンスは国によってコントロールされること が多く,従来の国有企業にある従来の評価制度や昇進制度などはそのまま残られた。そのた め,女性に対して,就業問題とともに,昇進における不平等性も無視できない。

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図5. 経済・社会制度の変遷からみた女性登用の三つの要素

(出所)筆者作成

つぎでは,経済体制から社会主義市場経済への体制移行が中国女性の雇用に影響する各 法令を整理するゆえに,歴史分析で,中国の女性雇用における根本的な問題を明らかにした い。