第 4 章 事例でみる国有企業における女性役員・管理職の登用の実態
3. 国有企業における役員・管理職登用制度の実際
3.2 女性役員・管理職登用の実態
(1)S社
S 社では,全体的に,女性の正規従業員の比率は 29%を占めるが,管理職の女性比率は 11%をしめる一方,部長レベル以上の管理職に登用された女性はいない。また,旧国有企業
中央国資委
N社
(親会社)
党群工作部
(党委)
(工会)
(紀委) T社
(子会社)
営業所 党委組織部
(党幹部管理部門) 人的資源部 財務部
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の時代から,役員の女性を登用したケースはなかった。現在,S社における性別での役員・
管理職の登用について,S 社の取締役の9人と管理職の7 人はすべて男性であることが目 立つ。女性役員・管理職がゼロになった主な理由について,現役の男性代表取締役が以下の 4点を述べる。
一つ目は業種の制限である。S社は工業の企業であるため,企業の生産技術や製品の販売 に興味を持つ女子大学生は非常に少なく,新入社員の約 90%は男性である。そして,女性 社員が入社しても,ほとんど財務課や工会など,トップ管理層に昇進する可能性が微小であ る部門に配置されたため,現在 S 社では,管理職を希望している女性社員がみられない。
さらに,S社においては,管理職を採用する際は,前述した企業の意思決定部門に報告し,
上級部門の判断に従わなければならないため,上級部門の指示がないと,企業側は自ら女性 従業員に対するキャリアアップ研修や管理職候補の女性従業員の意識・スキルの向上に関 する教育を実施する権限がない。したがって,S社の管理職を希望する女性従業員がいても 自身の努力や自身の能力にかかわらず,結局上級部門の登用指示を待たなければならない。
二つ目は作業内容と出勤制度の制限である。S社では,女性社員に対して特別な短時間勤 務制度や共同勤務制度などはないため,従業員は男女差別なく,同一の勤務時間で働いてい る。S 社の生産工場では,24 時間運転のため,管理者は残業,休日出勤や夜勤をすること が当然であるが,それらの問題を克服し,一般社員から管理職への昇進を希望する女性は未 だにみられていない。
三つ目は家庭の要因である。S 社では,『女性従業員の労働保護規定』で規定された内容 に基づいて妊娠や育児中の女性社員に対して,産休休暇を与えている。しかしながら,女性 は復職後,賃金は休職時点レベルのままである一方,休職による全年度の勤務業績(企業例 会の参加,政治・工作感想文の提出,定期出勤報告書の提出など)は全くないため,産休を とった女性従業員は,同期の男性従業員に比べて,キャリアアップのチャンスを失った。数 年後,その女性たちは再び昇進したいという意識があっても,年齢差のため,若い後輩たち に比べて,競争力はさらに低下した。
最後は,福利制度の要因にある。S社では,もともと企業に附属している保育園や幼稚園 などの福祉施設は充実していたが,企業の改革に伴ってそれらの福利施設はすべて民営化 されたため,その利用料は以前の数倍に高騰した。したがって,一部の女性社員は,出産後,
高額の入園費用や老人施設の利用料を節約すると同時に,自宅で子供や年配の両親の面倒
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をみる必要もあるため,休暇期間を 1 年間までに延長したり,そのまま退職して専業主婦 になったりするケースもある。つまり,中高年層の女性社員のなかで,管理職への昇進意欲 があっても充実していない社会福利制度の影響により,仕事する時間のほとんどを家事に とられるため,結果として昇進にあきらめることになった。
(2)T社
T社では,取締役6名(うち男性4名,女性2名),トップ管理職7名(うち男性5名,
女性2名)が登録されていた。役員の政治的身分について,S社はT社と同様に,役員6名 がすべて共産党員である。一方,T社が公開した管理職の7人の職務は,いずれも,「経理」,
「監事」や「独立取締役」などの意思決定権のないミドル管理職である。ミドル管理職の政 治的身分は役員と同様,すべて共産党員である。職務別・性別についての統計結果は下記の 通りである。
男性取締役4名(うち「党委書記」兼「取締役」2名,「党委委員」兼「取締役」1名,一 般党員1名)
女性取締役2名(うち「党委委員」兼「会計士」兼「取締役」1名,「会計士」(党員)
兼「取締役」1名)
男性ミドル管理職5名(うち「取締役会秘書」(党員)1名,「党委委員」兼「経理」3名,
一般党員1名)
女性ミドル管理職2名(うち「党委委員」兼「副総経理」2名)
T 社が管理している営業所において,一般の女性従業員は全体の女性従業員の約 7 割を 占めるが,その大半は契約社員や非正規雇用で働いている従業員であるため,彼女たちは昇 進しても,担当する地域販売店(小売)の店長(ロア管理職)までしか上がれないケースが ほとんどである。それ以上の職位へ登用する際には,S社の考課制度と同様,女性従業員の 学歴,政治的身分(共産党員であるか),業績や年齢などの制限条件が多く存在している。
さらに,T社の役員・管理職は国家の党組織により T 社の上部行政組織や親会社から選出 されるため,現時点では,T 社における女性は,一般職から社内昇進で T社の管理職にま で昇進したケースはない。
以上のように,国有企業 M社の子会社S社および,中央企業N社の子会社T社におい て,役員・管理職の選出についての最終的意思決定権が,国家の党組織により握られている ことがそれぞれの調査結果から確認できた。
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