第6章 検証による日本型 CIO コア・コンピタンスの特徴
6.1. 日本における優先的 CIO コア・コンピタンスと学習目標
表 17 CIOに必要な学習目標優先順位
Table 17 The Priority of the Learning Objectives for CIOs 優先
順位 学習目標 平均値
(4段階)
平均値 (8段階)
1 1-11 コミュニケーション能力 3.81 7.63
2 1-4 経営トップ,COO(最高執行責任者),CIO,CFO(最高
財務責任者)の間の相互連携 3.75 7.50
3 1-6 プライバシーとセキュリティ 3.63 7.25
3 2-4 協力関係やチームの構築能力 3.63 7.25
5 4-3 IT計画の方法論(優先順位付け,ギャップ分析など) 3.56 7.13
5 4-4 危機管理計画(データのバックアップ,災害復旧プランな
どの緊急プラン) 3.56 7.13
5 7-4 各種IT投資(あるいは非IT投資)を選別するための評価
法 3.56 7.13
8 1-1 任務・組織・機能・政策・手順 (情報部門のトップと経営
幹部としてのCIOの役割) 3.5 7.00
8 4-1 IT計画実施における現有IT資源(ハードウェアや要員の
能力など)の能力評価分析 3.5 7.00
8 4-6 IT予算の管理 3.5 7.00
8 6-6 プロジェクトの調達管理(プロジェクト・ライフサイクル
におけるCIOの責任など) 3.5 7.00
8 10-1 セキュリティの基本原則とベストプラクティス 3.5 7.00
8 10-3 経営者とエンドユーザーに関する法的・政治的課題 3.5 7.00
8 10-4 セキュリティ強化手法 3.5 7.00
15 2-7 優秀なIT要員の確保・維持方法 3.44 6.88
15 2-8 説明責任並びに組織への周知徹底 3.44 6.88
15 4-5 モニタリング・評価の手法(ITの業務改善に関する費用対
効果) 3.44 6.88
15 6-3 プロジェクトの時間・費用・成果の管理 3.44 6.88
15 6-5 プロジェクトのリスク管理 3.44 6.88
15 6-7 システムのサイクルマネジメント 3.44 6.88
15 7-3 リスク管理のモデル・方法 3.44 6.88
15 7-5 投資分析のモデル・方法(正味現在価値法など) 3.44 6.88
15 11-8 情報セキュリティの実行計画 3.44 6.88
15 13-1 社会環境の把握 3.44 6.88
25 2-2 IT管理体制の構築と技術専門職員の育成方法 3.38 6.75
優先
順位 学習目標 平均値
(4段階)
平均値 (8段階)
25 3-1 組織発展・変革の手法・モデル(SWOT分析,「抵抗勢力」
への対処法など) 3.38 6.75
25 4-2 組織間における IT 機能分析(部門横断システムの構築手
法など) 3.38 6.75
25 6-4 プロジェクトの品質管理 3.38 6.75
25 6-11 プロジェクト・マネジメントの概要把握 3.38 6.75
25 10-8 IT投資評価分析 3.38 6.75
25 13-2 社会変化の予測 3.38 6.75
32 6-2 統合的なプロジェクト管理(複数プロジェクトの管理) 3.31 6.63
32 7-1 ベストプラクティス 3.31 6.63
32 7-2 費用対効果・経済性・リスク分析 3.31 6.63
32 7-7 任務目標遂行と予算策定の整合性 3.31 6.63
32 7-12 IT投資におけるPDCAサイクルの実施 3.31 6.63
32 7-13 ユーザー部門に IT 投資対効果の定期的な報告並びに評
価の義務付け 3.31 6.63
32 10-2 情報システムの脅威とぜい弱性 3.31 6.63
32 10-5 情報システムへの侵入や誤用に対応する標準手段 3.31 6.63
32 10-6 情報公開 3.31 6.63
41 1-2 法・規制管理(ITマネジメント改革法,政府業績成果法な
どの行政改革関連法規の習熟) 3.25 6.50
41 3-5 BPR(ビジネスプロセス再構築)のモデル・手法(総合的
品質管理など) 3.25 6.50
41 4-8 情報システムのマネジメント 3.25 6.50
41 5-1 ITの業務的価値と顧客満足度の評価法(IT 戦略計画とビ
ジョン,政府業績成果法) 3.25 6.50
41 5-3 ITにおける成功度の評価法(バランス・スコアカード・ベ
ンチマーキングなど) 3.25 6.50
41 5-4 ユーザー調査の作成・管理・分析方法 3.25 6.50
41 9-3 コミュニケーション方法の業績標準と実践 3.25 6.50
48 2-5 人事・業績管理方法 3.19 6.38
48 4-7 情報技術のマネジメント 3.19 6.38
48 5-2 新システムのモニタリング・評価法(現システムの破棄と
新システム導入の時期・方法) 3.19 6.38
48 7-10 組織内部門間での情報化成果についてのベンチマーク評
価 3.19 6.38
優先
順位 学習目標 平均値
(4段階)
平均値 (8段階)
48 10-7 SOX法に基づく組織内コンプライアンスの調整
3.19 6.38
53 1-7 (技術,法規類,その他の各種要因の動向に関する)情報
の管理 3.13 6.25
53 3-2 プロセス管理・統制の手法・モデル(あるべき姿とのギャ
ップ分析,)シミュレーション 3.13 6.25
53 6-1 プロジェクト範囲・要件の管理 3.13 6.25
53 9-1 e-政府・e-ビジネス・e-コマースの出現に伴うビジネス戦
略上の課題と変化 3.13 6.25
53 9-7 社会的課題(個人情報保護,デジタルディバイドなど) 3.13 6.25
53 12-4 ユーザーの状況把握 3.13 6.25
59 1-10 予算策定と執行 3.06 6.13
59 2-6 ナレッジマネジメントの理論と実践 3.06 6.13
59 3-6 ベストプラクティスの収集と活用 3.06 6.13
59 5-5 有効な業績測定法の定義・選択法 3.06 6.13
59 5-7 ITレビュー・監査プロセスの管理 3.06 6.13
59 7-8 投資レビューのプロセス 3.06 6.13
59 11-6 データ管理(データ標準化,データマイニングなど) 3.06 6.13
59 13-3 技術トレンドの予測 3.06 6.13
67 1-3 連邦政府の意思決定・政策立案プロセス,予算編成・執行
プロセス 3.00 6.00
67 2-3 要員の能力査定(基準,資格,業績評価) 3.00 6.00
67 3-3 モデリング・シミュレーション用のツール・手法(データ・
ウエアハウスなど) 3.00 6.00
67 3-4 クオリティ(品質)改善のモデル・手法(活動基準原価計
算など) 3.00 6.00
67 5-8 サービス・レベル・アグリーメント 3.00 6.00
67 6-9 システム監査 3.00 6.00
67 7-6 ビジネスケース分析 3.00 6.00
67 11-1 EAの機能とガバナンス 3.00 6.00
75 7-11 同業他社との情報化成果についてのベンチマーク評価 2.94 5.88
75 11-2 コアとなるEAの概念 2.94 5.88
75 12-2 情報配信技術(インターネット・イントラネット・キオ
スクなど) 2.94 5.88
78 5-6 業績評価の実例と基準 2.88 5.75
優先
順位 学習目標 平均値
(4段階)
平均値 (8段階)
78 12-1 最先端技術 2.88 5.75
80 1-5 政府機関相互にわたるプログラム,政策,プロセス 2.81 5.63
80 1-12 組織内外における幅広い人脈の構築 2.81 5.63
80 6-10 ソフトウェア経営 2.81 5.63
80 9-2 ウェブサイト構築戦略(アーキテクチャーとコンテンツ管
理) 2.81 5.63
80 9-4 チャンネル(サプライチェーン)の問題 2.81 5.63
80 9-6 顧客・市民向け情報提供サービス 2.81 5.63
80 12-5 アクセシビリティやユーザビリティの基本原則 2.81 5.63
80 13-4 日常業務において利用される技術習得 2.81 5.63
88 2-1 上級幹部,CIO,職員,その他関係者のそれぞれの役割・
技能・責任の明確化 2.75 5.50
88 6-8 ソフトウェア開発 2.75 5.50
88 8-3 合理的かつ統一的な調達方法論 2.75 5.50
88 11-7 エンタープライズアーキテクチャーのための評価手法 2.75 5.50
92 7-9 連邦政府・州・地方をつなぐ横断プロジェクトにおける連
携 2.69 5.38
92 7-14 撤退ルールの設定 2.69 5.38
92 8-2 調達における代替モデルの選別(内製と外注,単一,マル
チベンダー体制など) 2.69 5.38
92 11-3 EAの発展と維持 2.69 5.38
92 11-4 IT投資の意思決定におけるEAの利用 2.69 5.38
97 8-1 代替機能の選別方法論(実質的に業務上の同じ機能の代替
案を考え,最適な選択をする) 2.63 5.25
97 8-4 実績評価を含む IT 契約管理モデル・方法(ベンチマーキ
ング,出来高制など) 2.63 5.25
97 8-5 IT調達のベストプラクティス 2.63 5.25
97 11-5 EAモデルの理解や解釈 2.63 5.25
101 1-8 政府・自治体の仕組み 2.56 5.13
102 8-6 供給計画と評価 2.5 5.00
102 12-3 パソコン・ツールを習熟するための学習計画 2.5 5.00
104 9-5 機動的価格設定(無料と有料の線引きの仕方など) 2.25 4.50
105 1-9 官民の役割分担の明確化 2.19 4.38
資料:第 5 回「日本における CIO コア・コンピタンス優先度に関するアンケート」小尾・
岩崎(2007 年)
検証結果から,次のことが理解できる.特に日本では,CIOにコミュニケーション能 力や他の役職者との連携,協業,そのための良好な組織を構築することを主たる役割と 認識している点が顕著である.米国の既存の学習目標に独自に追加した 1-11コミュニ ケーション能力 が1位であることからも伺える(4段階平均値3.81/8段階平均値7.63).
さらに,類似する 1-4 経営トップ,COO,CIO,CFO の間の相互連携(同 3.75/同 7.5) で2位, 2-4協力関係やチームの構築能力(同3.63/同7.25) で3位という結 果からも理解できる.
また,経営やマネジメント,管理に関する学習目標は比較的上位に位置し,基本的な 技術的スキルやパソコン・ツールを習熟するための学習計画(同 2.25/同 5.0)などは 下位である.その他, 1-6 プライバシーとセキュリティ(同 3.63/同 7.25) で 3位,
4-4 危機管理計画(データのバックアップ,災害復旧プランなどの緊急プラン)(同
3.56/同 7.13) で 5位にランクインするなど,米国と同様にセキュリティやリスク・
マネジメントが重要と認識されている.
一方,米国と大きく異なる点は, 1-9官民の役割分担の明確化(同2.19/同4.38)
である.米国では79位,日本では最下位の105位であった.このことから,日本では,
官民の役割分担は全く異なるものと理解され,あえて明確化する必要性を有していない ことが分かる.したがって,この結果からも日本の現状においては,官民CIOの融合を 図る,つまり民間CIOのベストプラクティスを行政組織や政策策定に活かす事の難しさ を意味しているといえよう.