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ケーススタディの比較分析

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第6章 検証による日本型 CIO コア・コンピタンスの特徴

6.3. ケーススタディ

6.3.3. ケーススタディの比較分析

  トヨタ自動車天野CIOと東京証券取引所鈴木 CIO の共通項,あるいは相違点を把握 するために,前述のインタビュー内容を表21にまとめてみた.

表 21  トヨタ自動車と東京証券取引所のCIO比較

Table 21  Case Study - TOYOTA CIO and Tokyo Stock Exchange CIO

企業名 トヨタ自動車(製造業) 東京証券取引所(金融サービス)

CIO 天野吉和

2007年5月1日時点

鈴木義伯

2007年5月1日時点 位置づけ 常務役員・CIO(専任) 常務・CIO(専任)

前職(前役職) トヨタ自動車 NTTデータ 実 施 し た プ ロ

ジェクト事例

• 物理的ネットワーク,データ センターの充実(365 日 24 時 間アクセス可能なインフラ整 備と提供)

• 業務のアプリケーション,開 発,生産,物流,調達,アプ リケーション(部品コード表 など)の世界標準化

• 車両開発プロセス革新

• 開発期間,納期の短縮化

• 大規模なシステム改善

• トランザクションの集中に対 するキャパシティ管理

• 市場動向の管理新しいビジネ ス モ デ ル へ の 対 応 (B2B→ B2B2C)

CIOの役割 • ユーザー部門との均衡

• コスト削減

• 中長期ビジョン把握

• 物理的ネットワーク,データ センターの充実

• 情報システム部門におけるア プリケーションの標準化

• コールセンターやヘルプデス クの充実

• 投機・顧問

• システムやセキュリティ,ア クセス権限の強化

• IT投資と評価項目事前策定

• EA化

• 事業継続計画(BCP)

• 自然災害や大規模事故などの リスク・マネジメント対応

• SOX法/内部統制対応

• 積極的な行動

• 変革力

• 変化とビジネス戦略

• 変化に対する強さや柔軟性

• リスク軽減

• 次世代システム強化

• 大規模システム改善

• 人的マネジメント

• 変化するビジネスモデルへの 対応

• 先見性

• 創造性

• 事業継続化への備えと強化

企業名 トヨタ自動車 東京証券取引所 グ ロ ー バ ル 化

への対応

• 品質管理

• オペレーション資質の均一化

• 多言語対応

• デジタル・デバイドの解消

• 現地の人材育成と仕組みの構 築

• トヨタ生産方式;開発,生産,

物流,調達のグローバルシス テム化

• 情報部門による世界共通のイ ンフラ整備

• 各国固有の法制や商習慣,リ スク・マネジメントなどに対 応する各国独自のシステムに 依存

• グローバル化に対応可能な新 し い 次 世 代 シ ス テ ム の 確 立

(2009年)

• 競争相手はグローバルマーケ ットであることへの認識

人材育成 • 機能別組織において実データ に基づいて横断的に見る能力 を持つCIOの育成

• 情報部門経験者の他部門での キャリア経験

• 大型プロジェクト推進におけ る散在する人材の能力やスキ ルのバラつきの調整

• 標準化に向けた教育と浸透化

• 経営センス(あるいは経営者)

のある人達へのIT教育 意 思 決 定 / 権

• IT投資評価などは役員権限

• システム開発,標準化

• 保守,維持,調達など多面的

• システム開発,標準化などは CIO

CIO に 求 め ら れる資質

• 分析能力

• 変革力/先見性

• 情報システムの造詣

• モノ作りの経験

• コンピュータ知識は絶対条件

• プロジェクト・マネジメント

• ユーザー部門とのコミュニケ ーション能力

• 結果を出せる能力

• 経営戦略に実データをリンク させる能力

• 以前の役職とCIO自身が備え るべき資質は別

• プロジェクト・マネジメント

• リーダーシップ能力

• IT部門経験者;事業のサービ ス;ITを使って創造するサー ビス,ビジネスモデルの創造 性

• ビジネス・経営経験者;ITそ もそもの能力や知識

• サービスに対する感受性

企業名 トヨタ自動車 東京証券取引所 専任化 • あらゆる役職者はCIO的なス

キルが必要

• 事業の根幹に IT を使ってい る企業は絶対に専任であるべ き

• CIO は兼任がするほど生易し いものではない.

ア ウ ト ソ ー シ ング

• アウトソーシングや地域への 権限委譲の枠組みを構築

• 2000年初めごろから生産,販 売の海外シフトを強化

• ユーザー部門の全社的な目標 や業務プロセス改革を実現す るためのオペレーションの世 界標準化への着手

• 業務プロセスの一新

• 部品コードの統一

• アウトソーシングの利点を最 大 限 生 か す こ と も 重 要 で あ る.内部で人材を育成し続け ることの負担の軽減につなが る

• 基幹システムの要件・定義,

外部設計以外は全て発注

今後の課題 • 自動車部品メーカーや部品メ ーカーへの災害時情報システ ム投資の共有化 

• 社内役員会をいかに説得し,

現場との距離を縮めるか.

• 大規模災害対策

• BCP確立

• 24時間以内のシステム立ち上

• 2009 年次世代システムの稼 動にあわせたバックアップセ ンターの設立と事業継続性の 整備

1;インタビューは,トヨタ自動車天野CIOには,20065月,20069月,20072月にイン タビューを実施した.

2;東京証券取引所の鈴木CIOには20072月,3月にインタビューを実施した.

3;専任の定義は,業務の3分の2以上をCIOとしての職務を遂行している場合,日本型の専任と 定義している.

  表21の通り,トヨタ自動車天野CIOと東京証券取引所鈴木CIOを比較分析した結果,

次の共通項を理解することができる.まず,CIOに就任する以前は何れも情報システム 部門に携わった経験の持ち主である.そして,大規模な情報システム改革や,プロセス の改善に関わり,着実に結果を出してきた.CIOに就任してからは,単に情報システム 部門のみならず,IT 投資をはじめ,IT 人材育成,標準化など多面的な業務を委任され ている.そして,役員として権限も任されている.

さらに,CIOの役割としては,ユーザー部門並びに社内における他の役職者達とのコ ミュニケーション能力の重要性を謳っている.変革(イノベーション)に対しては,両

氏ともに積極的である.特に鈴木CIOの場合,東京証券取引所のトランザクション問題 やグローバル化への取り組みの遅れから,前職経験を買われ,東京証券取引所からのア プローチでCIOに就任した経緯がある.そのため鈴木氏は東京証券取引所のレガシー・

システムの抜本的改革を行う必要性に迫られており,必然的に変革力やシステムとビジ ネス戦略とを融合させる役割が重要であると理解しているのである.

また,企業方針として国際的なビジネス展開に注力しているため,グローバル戦略に も造詣が深い.グローバル化に伴う各国間でのデジタル・デバイドや人材スキルの問題 点を克服するために,システムの標準化や,現地での人材育成にも取り組んでいる.鈴 木CIOの場合は大規模プロジェクトを遂行する際に,散在する人材スキルを標準化する ことの大切さに言及している.そして両氏はCIOの人材育成は必要不可欠であると述べ ている.CIOに求められる役割や資質に関してはプロジェクト・マネジメント能力の重 要性を指摘した.その他,CIO がマネジメント領域にシフトしつつある中でも IT のス キル,たとえばデータ分析,基本的な IT ツール,システム全般に関わる能力の習得の 必要性を説いている.

先見性に関して,天野CIOは,物事はユーザーの一歩先ではなく,半歩先を見つめる ことが大切であると述べ,鈴木CIOは新しい市場動向や,ビジネスモデルに対する先見 性を持つことの意味を述べている.

意外にも,自動車産業という製造業と,証券業界という金融サービス業におけるCIO の役割は異なるように思えるが,実際はかなりの面で共通項が存在する.両氏とも,多 面的な側面において,CIOの役割や資質,取り組み内容に共通項を持っていることが理 解できる.必ずしも,彼らの役割や認識が一致するとはいえないが,CIOの役割に対す る捉え方はほぼ同義であるとみなすことができる.むしろそれほど大きな相違点は存在 しない.天野CIO や鈴木CIO 両氏のケーススタディは日本企業の先駆的事例になりえ る.

さらにいえば,急激なグローバル化やビジネスモデルの変化への対応に迫られており,

ITという分野で各 CIO に期待するところも大きい.そのため,彼らの社での位置づけ や権限委譲など,専任 CIO としての貢献は図り知れないものとなっている.こうした CIO と CIO を取り巻く組織の関係は米国型に近く,両氏の役割は日本企業の中でも特 に醸造されている.彼らが果たすべき功績は大きい.トヨタと東証のCIOは醸造され,

その功績は日本におけるあらゆる組織に対して有効な功績になるだろう.

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