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インタビュー結果に基づく行政 CIO の役割

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第6章 検証による日本型 CIO コア・コンピタンスの特徴

6.2. インタビュー結果に基づく官民 CIO コア・コンピタンスの差異

6.2.1. インタビュー結果に基づく行政 CIO の役割

行政CIO,並びに行政CIO関係者へのインタビューを2003年から実施してきた.彼

等の発言内容をもとに現場の行政CIOが必要と考える役割について検証した.検証方法 は,上記のインタビュー対象者の発言内容から,キーワードを抽出し,キーワードの登 場回数によって,CIO役割の優先順位を偏差値比較した.後述するインタビュー結果に 基づく企業CIOの役割においても同様の検証方法をとっている.

(1)  人材育成/戦略

行政CIOの役割として最も重視する点は, 人材育成 や 人材戦略 である.総務 省情報通信政策局情報通信利用促進課長の飯島信也氏によれば,効率的で質の高い電子

自治体を実現するための高度IT人材の育成を推進中だが,特に米国のCIO大学などの 先進事例を活用すべきであり,府省のみならず地方自治体のCIOを育成するために,教 育基盤となるスキル標準の構築が必要であると言及する.同氏は,官民が連携した形で 地方公共団体における様々なレベルでのIT人材の育成手法を確立する事が急務である,

とも述べている.そして,ほとんどの IT スタッフはプログラムの開発やシステムの問 題修正のための教育は受けているが,人をマネジメントする業務,管理のための教育は 受けていない点を,公正取引委員会CIO補佐官の塩川鎮雄氏は指摘する.経済産業省で 実施されている行政CIOを育成するための研修プログラムでは,経営よりは技術的なス キルに比重が置かれている.

(2)  インフラの構築,システムの見直し

一方,日本における行政CIOの任務は,各府省における共通業務システム,レガシー

(旧式)システムの見直しである.それまで各府省がバラバラに整備,運用していたシ ステムを共通化,統一化を図ることである.また,IT活用によって,業務改革や情報シ ステムを分析・評価し,最適化計画を目指す.各省庁の中核にCIO が設置されたのは,

e-Japan戦略 を構成する重要要素として,タテ割りの部署間における情報共有化を

目指し,組織における足並みをそろえるためであった.また,省全体への最適化計画を 推進し,個別システムから組織全体の最適化を目指し,ITガバナンスを確立させること である.そのためには府省間の協業,予算との連動が必要となる.CIOをサポートする CIO補佐官の役割は,業務改革や情報システムの分析や評価,最適化計画を策定するに あたり,CIO及び各所管部門長に専門家的見地から支援・助言を行うことである.その 意味でCIO補佐官には業務分析や,情報システム技術,情報セキュリティなどに関する 専門的な知識や経験が要求されている.CIO 補佐官の役割は,「電子政府構築計画」の 中に記載されており,主として各省庁の中での IT に関する役割を持ち,省庁に横断的 な推進を計るために「CIO補佐官など連絡会議」という全体会議を設置している.補佐 官はそこで各種助言を行う役割を持っている.しかし,CIO 補佐官には決定権はなく,

各省庁のCIOや,行政の専門家である行政スタッフのIT関連業務の遂行に助言を与え ている.CIO補佐官は,特にITの専門家ではない行政スタッフをIT構築などの方向性 や妥当性などの判断の助言と支援を行う役割を担う.CIO補佐官は,管轄部署と3ヶ月 に1 度の定期会合を持ち IT 化の進捗状況や補強すべき点,改良すべき点を中心に報告 している.CIOには横断的に組織内の人間関係を構築し最適化させる能力が求められる ため,マネジメント能力は必要不可欠である.

(3)  官民人事交流

米国では頻繁に施行されている官民 CIO の人事交流制度は日本ではまだ定着してい ないが,今後こうした制度が実現すれば,産官の壁を越えた人的コミュニケーションの

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今以上に経営やビジネス,戦略的思考が求められる.総務省 CIO(官房長)森清氏は,

官民人事交流の目標はIT業界での知識・経験の還元,日本全体のITの促進することで あって,官民CIOのベースは同一とみなしている.同氏は,官民CIO モデルの融合は 可能だが,働く場所に注意することが重要で,米国が先進事例になると言及してきた.

また,人事交流の有効性に関しても,民間では新しいテクノロジーによって新しいビジ ネスモデルができ,さらに新しいテクノロジーが生まれる相乗効果と土壌があるが,行 政にはこの流れが生まれないため,官民のCIOの交流によって行政でもこうしたシステ ムの創出に牽引すると期待を寄せていた.

(4)  セキュリティ対策

インタビューを開始した時期は2003年であり,2007年までに至る約5年の間に,CIO に求められる役割にも変化が見られる一方,府省,自治体CIOは,極めて先見性が高く,

数年後の社会環境の変化や急激な情報システム環境の変化に順応すべき CIO の役割を 予見していた.たとえば,総務省行政管理局局長の松田隆利氏は,情報システム化は従 来,あくまでコンピュータ専門家だけの観点から整備していたものであり,今後CIOを 中心に,予算や政策にも重点を置くことを主張し,セキュリティや個人情報保護の問題 などとも組織と業務の改革の観点などから統括し,リードしていく体制をつくることを 重要課題と認識していた.この傾向は,2006年版の米国 CIOコア・コンピタンス/学 習目標でも重点分野と認識されている.

(5)  リーダーシップ

総務省行政管理局行政情報システム企画課長の田部秀樹氏が二つの側面を挙げてい る.ひとつは電子政府構築推進の責任者としてのCIOであり,電子政府構築計画に沿っ た各種の方針決定,IT化による業務改革,オンライン化状況の把握,電子政府構築計画 の改訂を行う役割である.もうひとつは,各省内の人事,会計,総務を所管する行政改 革の責任者としての官房長の役割である.特に後者の場合,府省内の予算配分でリーダ ーシップが発揮される.

(6) CIO補佐官としての役割

行政にはCIOの他,CIO補佐官という職務がある.前述の塩川氏や,経済産業省CIO 補佐官の野村氏などは,次官あるいは官房長が務めるCIOを補佐する役割を担う.彼ら は民間から派遣された人材であり,民間ベストプラクティスを行政に生かす目的で導入 された.塩川氏によれば,CIO補佐官は,次の3つの機能が求められるという.一つは,

経営戦略に基づいて IT 戦略の立案ならびに情報システムの構築,そして新たな業務組 織や業務プロセスを作り上げる機能である.二つ目は,コア・コンピタンスに基づいて,

業務ノウハウや知識を再構築し,業務組織や業務プロセスを再構成し,さらに情報シス

テムを適合させていく機能である.三つ目は,IT資源,特にハード,ソフト及び人的資 源をどのように保有するかを考え,情報システム部門を再編成し,業務部門に適合させ ていく機能である.

(7)  組織間の連携/協業

中央省庁ではCIOならびに CIO補佐官の役割は法的に明確化されているが,地方自 治体などでは,CIOの役割が標準化されておらず,CIOの重責や業務の複雑化,あるい は人材配置の面で問題を抱えている.高知県CIO(国土交通省東京国道事務所長)石川 雄章氏によれば,CIOには,法律や住民ニーズなどの理解に基づく能力が必要であると いう.また,岐阜県知事公室参事情報化推進担当の知地孚昌氏はPMO(プロジェクト・

マネジメント・オフィス)をつくり,行政として最低限のプロジェクト・マネジメント の推進に努め,PMOの実施と円滑なプロジェクトの推進することがCIOの役目と認識 している.そのほかベンダーとユーザーのバランスを重視し,住民サービスの向上を図 るなど,ITを手段として,公共サービスを高めることに注力する行政CIOもいる.1980 年代から,電電公社(現 NTT)とともに,「INS(情報ネットワークシステム)実験」

を行うなど,情報化に関する先進的な取り組みを行う自治体として知られる三鷹市では,

情報政策コーディネーターである前田隆正氏が,組織文化としての柔軟な対応や様々な 意見やアイデアを創出できる自由な風土の構築が成功要因と主張する.前田氏は「日本

発自治体CIO」であり,三鷹市の情報政策内部の情報化ではなく,地域の情報化を推進

する立場として市全体の情報化を促進した.

(8)  役割の拡大

電子自治体として知られる横須賀市では,市長自らCIOを名乗っていた.沢田市長は,

市長はいわば都市の CIO であり,IT基本戦略の一部として,市役所内部の推進組織と いう位置づけで「電子市役所推進本部」を市役所だけで設置した.そして,「電子市役所 推進本部」は,部局長以上がメンバーになり,市長がCEO,CIO,CISO的な立場とし て,自然体で戦略を練って電子自治体実現のための施策を実施した.また,情報化とは,

コンピュータを導入することではなく,組織間の連携を円滑化し,市民の便益を最大化 することであり,そのためにリーダーシップと協働が大切であると主張している.

(9)  住民サービスの向上

三鷹市や横須賀市など市民サービスの向上に主眼を置くことが主要目的であるが,

CIO の役割に対する認識や概念は異なる.日本における行政 CIO の導入や取り組みは 開始されて5年が経過した.府省における CIOの導入は e-Japan 戦略で策定され枠組 みは確立しつつあるものの,機能性に問題があるといえよう.また,府省におけるCIO

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