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インタビュー結果に基づく民間 CIO の役割

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第6章 検証による日本型 CIO コア・コンピタンスの特徴

6.2. インタビュー結果に基づく官民 CIO コア・コンピタンスの差異

6.2.2 インタビュー結果に基づく民間 CIO の役割

  本節では,企業CIO並びに企業 CIO関係者へのインタビュー内容の要点から,民間 CIO の特徴を検証した.検証方法は前述の行政 CIO と同様に,インタビュー対象者の 発言内容からキーワードを抽出し,キーワードの登場回数で優先順位について偏差値比 較を行った.この作業を通して,日本企業のCIOあるいはCIO関係者が考えるCIOの 役割や特徴を理解することが出来る.

(1)  構造改革(業務改革)/イノベーション

  直近5年間で日本のCIOなどが最も重視する要素は構造改革,あるいは業務改革,そ してイノベーションであった.たとえば,フューチャーシステム・コンサルティング取 締役副社長の碓井誠氏は,コンビニ最大手のセブン−イレブンの POS システムを手が け,世界で初めてといわれる POS システムを利用した戦略的なマーチャンダイジング とマーケティングを確立したが,CIOという言葉が世に出るはるか以前の1978年から,

ビジネスとシステムの融合を目指し,情報戦略担当者として,セブン・イレブンが独自 のシステム化に取り組んできた.そして,1990年代に入り,IT の標準化とオープン化 を進めてきた.これらは IT を使って,業務改革とシステム改革は同時に進めるべきも のであり,ビジネスとシステムと IT の三つのバランスを鑑み,全体最適を目指すこと だと言及する.また,薄井氏は,ITはイノベーション,新しい価値を生み出す行為であ り,ITなくしてイノベーションは創出することは出来ないと述べる.

また,大阪ガス理事・情報通信部長の平山輝氏は,複数の組織で行っている業務を個々 の組織から切り離して独立させ,グループ企業で共有して集中/統合したサービス提供 を受ける間接業務のシェアードサービスによって,40%ものコストを削減した.IT戦略 の構築「エネルギー情報サービスの実現」「ユビキタスオフィスの実現」「ITガバナンス の強化」によって,IT を最大限活用し,顧客満足を図るなど戦略性を重視する.また,

事業拠点が全国に点在し,従業員も多いため,組織内でのコミュニケーションを緊密に とらなければならないため,現状のシステム運用コストを削減するために,IP化によっ て経費節減を図り電話の利便性を向上させた.その他,固定の IP 化のみならず,いつ でもどこでもアクセスできるユビキタス性を取り入れコスト削減を目的とした業務改革 によって,経営基盤のさらなる強化をめざしている.日本CIO協会会長の真瀬宏司氏は,

理想の CIO 像として,「情報技術(IT)を活用し,統合化と見える化(Integration &

transparency) を 推 進 す る こ と に よ っ て , 業 務 改 革 と 構 造 改 革 (Innovation &

transformation)を実現する」と言及する.また,業務改革の主たる享受者は顧客であ り,CS(顧客満足度)を高めるために,共立メンテナンス情報マネジメント部門取締役 の竹本泉氏は,自社の課題やトレンドを敏感に察知することの大切さを説く.同氏は大 局的に考えると,情報リーダーの仕事は各々の企業によって考えなければならない領域 が異なるという.

(2)  セキュリティ/危機意識/イノベーション

危機管理要請の高まりを受け,セキュリティ対策や BCP を導入する企業が増加して いる.NEC代表取締役副社長(現社長)の矢野薫氏は,サイバー上のセキュリティだけ でなく,災害・テロをはじめとする物理的セキュリティ対策の構築の必要性があると述 べる.同氏は,情報セキュリティ分野においては,個人情報保護,情報漏えい,システ ムダウンによるセキュリティの側面が重視し,対策を講じてきた.その他,ネット関連 の新興企業も情報システムの強化には熱心である.ぐるなびの社長室室長である吉本匡 祐氏は,成長段階の企業では情報共有や社内ポータルによって社内の情報格差をなくす など,情報システムの位置づけが高いため,情報セキュリティを強化している.ラスト リゾート情報システムグループ・チーフの名取和高氏も,社内のセキュリティを強化し た.そして,情報システムの重要性や有効性を経営層に啓蒙し,社内の IT 改革を推進 している.イー・エンジン代表取締役の植田健治氏も,情報サイトでは顧客情報の管理 が大切なため,個人情報保護に重点を置き情報セキュリティを管理している.そして,

いかなるビジネスにも最初に目標があるはずであり,求職者のニーズを満たす目的をビ ジネスとして遂行するにあたって IT は柱でしかないことを理解しながらビジネスを俯 瞰し,遂行することの大切さを力説する.また,社員に対して,情報セキュリティに対 する理解を深めるために,ヤンセンファーマ執行役員CIO兼情報システム部長の須佐秀

男氏はe-ラーニングによる教育を実施している.

近年は,教育機関にもCIOが設置されるようになり,その一人が学校法人成蹊学園の 学園情報センター白井祐司氏である.成蹊学園には 1981 年,学園組織の中核を担う成 蹊大学において成蹊大学情報処理センター(現・成蹊学園 学園情報センター)が,全学 生を対象にした情報リテラシー教育の推進と工学部などの専門教育研究に活用できる先 進的な環境づくりを目的として設立された.ここではシステム構築だけでなく,利用者 教育への力点も重視し,マルチメディアに対応する高速性,信頼性の向上,セキュリテ ィ機能の強化の実現を図っている.そして,個人情報保護の問題はあるが,要は情報の 中でも守るべきものは守り,そうでないものは公開する方針を決めるべきであり,情報 の正しい取り扱いに関心を払うことであると説く.実際に,2003年夏に大流行したブラ スターの被害額は1週間の業務停止によって10億円程度の損失となるなど,CIOはIT が及ぼすインパクトを定量的に捉えるべきであり,特にセキュリティ対策に関する注意 を払うことを,日経BP社ガバメントテクノロジー編集長  土屋泰一氏は言及する.

また,損害保険ジャパン常務執行役員(CIO)の望月純氏によると,事業継続計画(BCP)

などリスク・マネジメントも,企業の急務課題とされているが,災害に対しては会社全 体で危機管理対策のレベルをまず決めることが必要であり,同社は対策として,大枠は 情報部門から示し,継続必須業務を整理した.通常時に提供しているサービスを100%,

ITでカバーするのか,代替手段があるのかというブレークダウンをし,そこから各部と 連携しながら全体整理をしているという.また,企業統合の際の経験から IT 統合リス クについて,できるだけ広く文書化してリスクの所在を洗い出しておく必要があり,統 合自体の進め方によって全体のリスクは全く違ってくるため,各社のトップ同士がそれ

を認識することが重要であると指摘する.また,国内外で法制化が進む米国企業改革法 への対応についても,会社法施行を機に専任部署を設置し,統合後も個別に推進してき たセキュリティやリスク・マネジメントは継続的に行っていくべきであるとする.また,

品質管理の面でもリスク・マネジメントの概念が役に立つとし,品質の維持やリスク管 理のレベルを設定し,中間指標を設けてモニタリングするなど,一定水準の実績をしめ すことの必要性を述べる.また,前述の真瀬氏は,BCP などリスク・マネジメントも,

企業の急務課題とされているが,いつでも元に戻せるシステムにすればコストがかかる ため,ITの進歩で従来よりも安く実現できる方法は出てきたが,どこまでやるのかはト ップの考え方や業界によっても異なるだろうと指摘する.また,国内外で法制化が進む 米国企業改革法への対応について日本の金融商品取引法や会社法で求められている内部 統制を構築すれば業務革新が完成するというわけではなく,法に合わせるシステム化は 本末転倒であり,会社にとってしかるべき日常のオペレーションがきちんと回るように システムを構築して徹底すれば,法がどう変わっても対応できると期待する.このよう なみえにくいリスクを可視化し,トップやステークホルダーに説明することもリスク・

マネジメントの一環であるとする.また,事前対策として予め関係者を説得してシステ ムを準備しておくことが企業の存続の一助になるという.

(3) IT経営/IT戦略/ビジネス戦略

民間CIOにとっては,戦略的なIT経営やビジネス戦略も重要な役割のひとつである.

たとえば,前述のNEC矢野氏によると,CIOに期待されている役割は,その会社の経 営改革・改善といったことを IT という道具立てを使いながら進めていくこと,そのた めには当然会社の経営課題は何かということを把握し,方法を考え,実施していかなけ ればならないと述べる.同氏は,CIOはCEOやCFOと同様にその会社の戦略などにつ いて説明できる知識と見識を持つことが必要であると考えており,ビジネス・プロセス の国内外へのアウトソーシング化や,選択と集中によるバリュー・チェーンの再構築と 高付加価値化の重要性を以前から指摘していた.また,CIOは基幹業務であれば経営に 参画すべきであり,CIOが参画するメリットは基本的には経営者目線でシステムを構築 が可能になると述べている.NTT副社長(元CIO)の中村直司氏も,CIOはITを導入 し,どう経営に役立てるか,どのように活用していくか,という考え方が弱いため,補 強する必要があるとし,企業経営にIT投資効果を生みだすためには,ただ単にITを導 入するだけではなく,それをどう活かしていくかという活用能力が大変重要であると述 べる.これを高めるのがCIOにとって重要な役割になるという.同氏はこうした概念を IT 活用ビジョン構築能力,IT 活用コミュニケーション能力,プロセスデザイン能力,

IT投資デザイン能力,チェンジリーダー開発能力の視点から成る ITケイパビリティと 称している.

CIO の戦略性の重要性は,多くの企業が指摘するがその中でも特に金融業は CIO を 早くから導入するなど,CIO 人材を有効に活用した IT 戦略を講じてきた.金融業が力 IT

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