• 検索結果がありません。

トヨタ自動車 CIO  天野吉和氏

ドキュメント内 CIO CIO CIO CIO CIO CIO (ページ 125-128)

第6章 検証による日本型 CIO コア・コンピタンスの特徴

6.3. ケーススタディ

6.3.1. トヨタ自動車 CIO  天野吉和氏

トヨタの置かれている立場は急激にグローバル化が進んだ.情報システム部門はそれ を支える基盤を提供する部門だ.24 時間 365 日いつでもどこでもどこからでも情報に アクセスできる環境を提供することが役目である.

CIOとして実施してきたことは次の通りである.第一に,物理的なネットワーク,デ ータセンターを充実させた.第二に,業務のアプリケーション,開発,生産,物流,調 達,などの分野の業務を標準化し,情報システム部門のアプリケーションを統一した.

第三に,アプリケーションを支えるためのコールセンターやヘルプデスクを整備し,グ ローバルを支えるバックヤードの部分を強化した.第四に,現在推進中であるが,「情報 の清流化」である.情報は各ステージで重みがあり,それを清流化して,ユーザー(使 う側)にデータを渡すことが,CIO としてのミッションであり課題である.たとえば,

清流化とは,実際のデータを誰が見ても分かりやすいような使い勝手のいいレベルに正 規化することである.

トヨタでは,CIOはチーフ・インベストメント・オフィサー(Chief Investment Officer)

とも言われることがある.つまり,投機の統括責任者である.したがって,この面にお

いてもCIOの役割は重要である.

トヨタは,グローバル化を推進してきており,各国各地域のマネジメントも検討しな ければならない.日本のトヨタが本部となり,どこまでを管理して,どこまでを地域に 権限を委譲するか,といった仕組みを構築することもCIOの役割である.そのためには,

経営層として,システム・セキュリティやアクセス権限についても取り組みが必要であ る.トヨタでは 2000 年初めごろから生産,販売の海外シフトを強化してきた.そのと きユーザー部門と徹底的に話し合ったのは,全社的な目標や業務プロセス改革を実現す るためにどういうオペレーションをどこまで世界共通化するかということ.たとえば新 車開発期間の飛躍的短縮を図るために,どういう共通化が必要なのか.ICTで設計情報 を共有することで業務プロセスを一新できるなら,そのために必要な世界全社共通の CAD(コンピュータによる設計)システムを導入し,各国ごとに違っていた部品コード を統一する.今では開発,生産,物流といったトヨタの生産方式を支える部分はほとん どグローバルなシステムになっている.

世界共通のインフラ整備については情報部門が支え,各国固有の法制や商習慣,リス ク・マネジメントなどに対応するシステムについては各国独自につくってもらう.標準 化は,IT投資のみならず業務全般において重要である.今求められるのはグローバルで の標準化である.統一すべきところのオペレーションは何か,全体として決定すべき項 目は何か,地域に対するオペレーションは何か,地域でやるべき業務は何か,というこ とを,融通を利かせながら決めていくことが基本である.情報投資はそれに対してある べきであると考えている.まず,情報投資の考え方としては,システムの寿命を考慮し たうえで,インフラなどのハードを掛け合わせて検討するものである.また,長期的な スパンでの視点が求められる.そして,全社的に,システム開発の管理用法や予算,費 用対効果などに関して,グローバル・スタンダードで構築しドキュメント化している.

もちろん評価項目も必要で事に決定している.しかし,この点は非常にむずかしくSOX 法対応に伴う費用対効果などの評価は困難である.したがって,J-SOX法ではシステム 部門とユーザー部門を区別して投資している.トヨタの基本的な評価手法は納期,開発,

納期,期間,などであり,今まで車両開発が20ヶ月でできたことを15ヶ月にするなど で評価している.これらの評価判断は,役員会で議論されるものである.IT投資の意義 ははっきり理解しなければならない.IT 投資を促進する経営者との均衡は大切である.

ただ,IT投資と社内の仕事の仕方は同時並行で進めなければならない.社内の仕事の仕 方が変わらないにもかかわらず,IT投資をしても何の役にも立たない.CIOとしての責 任範囲のひとつだが,特に機能やシステムがどの程度使われているかとを判断し,抑制 する役割もある.たとえば,あるシステムに1000個の機能をつけたとしたら,その1000 個が本当に使われていなければならない.実際にはビジネス系のシステムの場合,日常 的に使われる機能は3割くらいで,期末処理など時々使う機能が2割くらい程度である.

ということは残りの5割はほとんど使われておらず,情報システムの投資額は予算の5 割で十分である.

IT投資の考え方は,半歩先を行く程度の先見性が大切である.さらにIT投資の絶対

加したことで,地域ごとで手法が変わってきたためである.つまり,これまでは米国は 米国,欧州は欧州,というように独自で行ってきた.グローバル化の進展に伴い,共有 化すべきところ,共通にすべきシステムの比率が増えてきている.これまでのように,

地域毎にユニークなオペレーションをすると米国と日本との品質に差が生じてしまう.

そのため,オペレーションの資質や能力スキルの標準化が大きな課題である.すべて日 本の品質が求められるようになる場合の各地域の対応が大変である.

その他,財務報告に関連してユーザーに対しては投資対効果について一定の説明責任 を果たしてきた.しかしこれからは一般の人に対しても,もっと分かりやすい言葉で説 明するべきかもしれない.

トヨタでは,ユーザー部門の要求に即座に応えられる体制を事前につくっておくこと が,情報部門の主要なミッションと考えている.我々が心がけているのは,二,三年お きに示される中長期のビジョンをよく把握して,どのようなインフラ整備が必要になる かを考えておくことである.たとえば世界全体での目標販売台数がビジョンで示された ら「世界のどこの地域でどのように実現するか」という部分に注目してそれに対する準 備を整え,提案する.もちろん,情報部門が先走りしすぎると最終的に使ってもらえず,

時間をかけてつくったシステムが無駄になる.私のイメージでは「ユーザー部門の一歩 先ではなく,半歩先を行く」くらいが望ましいと考える.

トヨタでは調達システムを一番先にグローバル化したが,グローバルなオペレーショ ン化に対する発想がなかったところに,コンセンサスを取ることが大変だった.あえて 言えば,トヨタで初めてグローバルシステムで標準化を行う場合,多言語対応が最も苦 労した.その他,アジア地域でのデジタル・デバイドの解消も焦点であり,そのために 現地スタッフの人材育成がかぎとなる.トヨタでは,調達部がオペレーションに関して,

米国で200人くらいを招集して,宣教師をつくり各国,各地域への弟子を育てていく仕 組みを作った.

米国企業改革法に関しては,トヨタがニューヨークに上場しているために海外を含め た内部統制を構築する必要があった.専門のチームを作って三年前から動き始めている.

すべての業務を対象にシステムを構築すると莫大なコストがかかるので,まず自分たち の業務が基本的にどうなっているかの調査を行い,どこまでやるべきなのか運用を決め た.その上でコンピュータを使って自動化,暗号化する部分,情報部門でトヨタ流にカ スタマイズする部分,ユーザー部門の工夫に任せる部分を決めていった.やはり仕事の ノウハウに関する重要な部分は自社流を通すべきだろう.

自然災害や大規模な事故などでリスクレベルが上ったときに社長が直に指揮を執る 防災センターや世界中の日々のオペレーションを見るバックアップ情報システムを用意 し,一定の災害想定はしてある.しかし危機管理は日常のトラブルの延長線上でかなり の部分をカバーできる.今後は自動車部品メーカーや部品メーカーへの災害時情報シス テム投資をどこまで一緒にできるかが課題だ.

トヨタは機能別の組織なので,それを実データに基づいて横断的に見る能力を持つ CIOを育てたいと考えている.各部署,各機能別に持っているデータベースを見て,そ の情報が他のデータベースとどのように関係するのか,どれくらいの情報量がどの部署

ドキュメント内 CIO CIO CIO CIO CIO CIO (ページ 125-128)