第 4章
文字の理解を促す指導のあり方
本章では、小学校 算数科 にお ける文字 の理解 を促す指導 のあ り方 を検討す るために、算 術 と代数 の関係 につ いて プ レ代数指導
"と
早期 の代数指導"の
二つ の視点か ら考察 し 小学校算数科 にお ける文字 の理解 を促すための授業構成 について検討す る。第 1節 算術 と代数の関係
第3章第3節にお いて、小 山 (1988)は記号や 文字 に対す る認識 の違 いは、算術 と代数 の思考の違いにあることを指摘 している。そのため小学校算数科 における文字 の理解 を促 すためには、代数的 な思考 を促進 す るこ とが有効 である と考 える。
そ こで本節 では、小学校算数科 にお け る文字 の指導 のあ り方 を検討す るために、算術 と 代数 の関係 について プ レ代数指導
"と
早期 の代数指導"の
二つ の視点か ら考察 し、小 学校段階にお ける代数指導 のあ り方 について述べ る。プレ代数
(pre―algebra)指 導
小学校算数科 の主要 な焦 点は算術 であ り中学校 。高等学校 の主要な焦点は代数である。
算術 は数 の計算の練習 を含 んだ働 きや答 えを求 める活動が 中心であ り、代数 は表記 を用い て一般化や関係性 を表現す る活動 として捉 え られてい る。そ して、
Blanton&Kaput
(2005)は、以前 までの伝 統的なカ リキュラムは、小学校算数 で計算 の流暢 さや手順 に焦 点 を当てて指導 し、 中学校 以降 に代数等 の数学概念 に関わ る指導 を行 うとい つた、小学校 と中学校が分離 された指導 の流れ であると述べてい る。 この よ うに算術 と代数 は、その大 部分 を別 の もの と して捉 え られて きた。 しか し、SChllemannら (2007)は、算術 か ら代数 へ学習をスムーズに移行す るためには 算術の終わ りの部分
"と
代数 の始 ま りの部分"において架 け橋 とな るものが必要 であ り、代数 を学ぶ 1、
2年
前 に、その準備 とな る算術 か ら拡張 された記号や意味、使 い方 を学習 してい くものであると述べてい る。 そ して、 こ の架 け橋 となる部分 を プ レ代数指導"と
して捉 えてい る (図 4‑11)。Dirdion of:緊 曲 u哺
o臓attt,wnetic
図
4‑1‑1
プ レ代数指導 (SChllemannら ,2007,px!)プ レ代数指導 を支持す る人々は、 この よ うな準備 となる学習 を行 うことで、児童が代数 学習 の導入時 に困難 を示す のを和 らげ ることができる と考 えてい る。 しか し、Schllemann ら (2007)による と、プ レ代数指導 による認識 の変容 は児童 に とつて決 して容易ではない ことを指摘 してい る。 その具体例 として、等号
(=)の
理解 を挙 げてい る。算術 における 等号(=)の
扱 い は 「〜 にな る」 とい う計算結果 を表す意味で使 われてい る。 そのため児 童 は 「3+5=8+4=12」 の よ うな表現 を快 く受 け入れて しま うが 「8=3+5」 や 「3+5=7+1」 な ど の表現 を認 めよ うとは しない。 これ は代数 において等号が計算結果 を表す意味だけでな く 相等性 の意味 をもつ ため、算術 か ら代数 の学習 の移行 において意 味 を拡 張 しなけれ ばな ら な くな り、児童 に とつてはその こ とが困難 である と考 え られ てい る。 そのた め、両辺 に変 数 のある方程式「3x=5x+14」 を解 く際 にも 「両辺か ら5xを引 く」 とい うよ うな代数的 操作 を理解す るこ とが困難 な ものになつて しま うとの ことで ある。
この よ うなプ レ代数指導 では、算術か ら代数へ学習 を移行す る際 に算術 でいつたん構成 した数学的概念や記号の意味、解釈 な どを拡張す る必要があるため、代数の学習が児童 。 生徒 に とつて困難 である とい える。
2 早期の代数 (early algebra)指 導
Schllemannら (2007)は、初等数学教育全般 において、数 学的 なアイデ アや数 学的 な概 念 を一般化 した り、代数表記 を使 った りす る機 会 は豊 富にあ る と述べてい る。そ して算術
にお ける数学的なアイデアや概念 のい くつかは、中学校 。高等学校 にお ける代数 にお ける 用法 と一貫性 のあ る方法 で早期 か ら扱 われ るべ きであ る と主張 してい る。そ して「算術は 代数の一部である (Schliemannら ,2007,p.xii)」 (図
412)と
捉 えることは、算術 と代 数 を切 り離 して考 えるのではな く、算術 は本質的 に代数的特徴 を有す る もので、代数 と異 なる領域 とい うよ りはむ しろ代数 の一部 として考え、数学的なアイデア・概念 ・記号な ど 一貫性 のある方法で扱 うこ とである。図 牛
1‑2
「早期の代数における算術 と代数の関係図」(SChliemannら ,2007,p xii)
そ して
Carraher&Schliemann(2007)は
、青年期 の生徒 が代数 に示す困難性 は、算術 にその一因が ある と指摘 してい る。 同様 にBooth(1988)も
次 の よ うに指摘 してい る。「学生が代数の中で経験す る困難は、代数 自体の困難ではなく、む しろ改善 され ないまま残 る算術 の問題 で ある」(p.304)
この よ うに、算術 の導入部分か ら代数 を見据 えた一貫性 のある指導 を行 うことが算術 と 代数 の学習 を円滑 に進 めるこ とができる と考 え、
Carraher&Schliemann(2007)は
、「早期の代数 (early algebra)」 を次のように捉 えている。
「お よそ6歳か ら 12歳 までの幼 い学習者が代数的推論や代数 に関す る教育 を受 けるこ と」(p.607)
この よ うに小学校算数科 の早期 に、代数 に関す る教育 を行 ない代数的推論 を促進 してい くこ とが、数 学的 なアイデ アを考 える素晴 らしい機会 を提供 してい る と述べてい る。筆者 もこの よ うな早期 の代数指導 を支持 し、小学校算数科 の早期 の段階 か ら代数 に関す る教育 や代数的推論 を取 り入れ てい くこ とが重要 であ ると考 える。 中学校 。高等学校 の代数 との つ なが りを意識 した指導 を小学校算数科 の段階か ら行 うことで、数学的なアイデアや概念 の一般化や関係性・ 規則性 、数 と文字へ の焦点化、数学的記号の意味や解釈 な どの学習 を 進 めてい くこ とに よつて、文字 の理解 を促進す るこ とがで きるのではないか と考 える。