本節 では、実態調 査 の結果 か ら、児童 の□
,△
な どの記号 に対す る認識 の特徴 を検討す ることが 目的 であ る。 また分析結果 を もとに、児童 の文字 の理解 を促進 す るための有効 な 方法 について考察す ることが 目的である。1
実 態調 査 の結 果実態調査の結果の概要は表
3‑21で
あ り、児童が行つたグループ分けは、全部で6種
類 である。筆者 は、文字を学習す る前の児童の□,△
な どの記号の認識は 「文字の意味理解 の枠組み」において巨三回の段階であることが望ましい と考えている。そのため、児童が 行つたグループ分けの中で、下の二つのグループ分けが筆者の意図である。また、表
32‑1の
下 。中 。上は、抽出児童のCRT標準学力調査結果の下位 。中位 。上位 をさす。表
3‑2‑1
実態調査 の結果 (単位 は人)5年
生6年
生合計
文字の意味理解の枠組み における段階
下 中 主 下 中 上
①②
o③Φ
︐︼国の段階
①②④・③
1 1
9
1
2‑Aの
段 階①
o②③Φ
1 1 1 3①
o②①・③
1①
o② o③④
22‑Cの
段 階①
o②o③ ・○
12.実
態調査 の考 察実態調査の結果より、調査問題で使われている□の記号を筆者の意図と同様にグループ
分けした児童は
3人
(/12人)であつた。また、その中でも、問題④に関 して、「□には どん な数でも入るけど、一方が決まれば、もう一方 も決まるとい う関係 として扱われている」な ど問題③ と問題④の□の扱いを細か く区別することができる児童 もいた ことが明 らかにな った。一方で、他のグループ分けをしている児童 も9人
(/12人)存
在 し、その中でも特に 次の二つの特徴がある。(1)数
の代わ りと して捉 える ことについて問題① と問題② を同 じグループに した児童が
4人
(/12人)で
あ り、特に中・下位の児童 に多 く見 られた。このような児童は「文字の意味理解の枠組み」における国 の段階 とE211の段 階を区別す ることができていない と言える。問題① と問題② を同 じグループに した主な理 由として、該 当す る児童は、次のように述べている。□には、決まつた数 を書 き込む とい う感 じ
□には、決 まつた数が入 るところ
数 を書 き入れ る 。当てはめる場所 としての□
このような児童は、問題②で使われている□に対 して、数を当てはめる場所 としての認識 (国の段階
)が
強 く、数 の代 わ りとしての認識 (□の段階)で
はない と考 え られ る。(2)変
数 と して捉 える ことについて問題② と問題④ を同 じグループにした児童が
5人
(/12人)であつた。 このような児童は、「文字の意味理解の枠組み」における□ の段階ではあるが、未知数(巨 ―コの段階)と 変数
(巨―∃の段階)を区別す ることができていない と言える。問題② と問題④ を同 じグループ と した主な理由として、該当す る児童は次のように述べている。
□は、決 まつた答 えの よ うな ものが入 る
□には、具体的に決まった数や与え られた数が入 る
□には、具体的に決 まつた答 えが入 るけ ど、今 は分かつていないだけ 答 えを求 めるた めに□ を使 う
このような児童は、問題③や問題④で使われている□を、数の代わ りとして認識 している が 「今は分かつていないが、決まつた数が入る」 といつた未知数(巨―コの段階)と して認識 してお り、変数(巨―∃の段階)の認識ができていない といえる。特に、問題② と問題④を区 別す ることができない児童は、関数 (変わ り方
)の
学習で扱われ る□と、方程式 (□を使っ た式)の
学習で扱われ る□を同 じ認識で扱 っていると考えられ る。そのため、□を「決まつ た数を入れる 。求める」といつた固定 された値を代入 した り、答えを求めた りす る認識で扱 っているといえる。また問題② と問題③を同 じグループに して しま う児童は 「□に数 を入れ ると答 えが求ま る (出る)」 といつた認識で□や式を提 えている。そのため式 自体が数量の関係 を表 し、結 果 (答え
)を
も表 しているとい う意識が乏 しく、口にいろいろな数が入ることを理解できて いないことがインタビューか ら明 らかになった。以上のような児童は、問題③や④で使 われている□が具体的に決まった数や答 えが入 る ところや求めるために使 うところであるといつた認識が強 く 「いろいろな数の代わ りとし ての記号」ではなく 「(具体的に
)分
か らないが決まつた数の代わ りをす る記号」 としての 認識であるといえる。つま り、このような児童は、□,△
な どの記号を具体的な数の代表 としてみる見方が育っていない可能性があ り、□は何か決まつた数値 を求めるもの、代入す る ものであるといつた認識 (E211・ 巨三コの段階
)が
強 く、いろいろな数の代表であるといつた 認識 (巨三国の段階)ま
で十分 に育 っていない と考え られ る。3 指導への示唆
以上か ら、以下の
2点
が示唆 され る。。
□,△な どの記号 を数 の代 わ りとして認識す ることがで きていない。
・ □,△な どの記号 を具体的 な数 の代表 (変数
)と
しての認識 まで深 まっていない。一つ 目は、小学校算数科 では□の答 えを求める際に、計算 の必要がな く□の答 えが求ま る問題が多 く存在す るためである。そのため、児童 は□を数や量を表す役割 としての認識 や意識 になつていない こ とが考 え られ る。 そ して前島 (1960)は、□の認識 の深 ま りに関 して□が答 えを書 き込む空欄 であると考 えている児童が多 く、数 としての役割・量 をあ ら
への移行 において困難な要因の
一つ になつている と指摘 してい る。 このため、低学年 の数 を書 く場所や数値 を入れ るとこ ろ としての扱 う□ (国の段階
)か
ら、中学年の数の代わ りとして扱 う□ (□の段階)へ
の移行 の際 に、量感覚 を伴 った表現 (線分 ・面積 ・絵 な ど
)や
擬変数 な どを用 い るこ とが、文字 の理解 において重要 で ある と筆者 は考 える。
二つ 日は、小学校算数科 にお ける□
,△
な どの記号 を扱 った問題 は、値 を代入 した り、当 てはま る数 (答え)を
求 めた りす る手続 き的な活動 に焦 点が置 かれ てい るためで ある。その ため、□,△ な どの記号 を具体的な数 の代表 として認識 を深 めるよ うな指導が十分に行 われ ていない現状が指摘で きる。また小林 (1992)は、児童 は□を 「未知数=答
え」と捉 えてい るため、□を使 う有用性 が理解 で きない こ とを指摘 してお り、未知数 ではな く変数 か らの導 入や □を使 いたい とい う場 面 の必要性 を述べてい る。この よ うに児童は、国が未知の数量であ り、答 えを求 めるための ものである と考 えている ため、□を用いた式 が一つ の数量 を表 していることや 、数量の関係性や一般性 を表 している ことを理解で きていない と考 え られ る。そ して、□
,△
な どの記号や文字 な どの代数記号の 指示対象 につ いて、小 山(1988)は
認識論 の視点か ら次の よ うに述べてい る。「小学校 の学習の対象が記号や文字によつて表 され得 る未知 の数量であるの に対 して,中学校 のそれ が記 号や 文字 を用 いて表 され た関係 で あ る とい うこ と に起 因す る といえよ う」 (p57)
この よ うに小 山
(1988)は
、記 号や文字 に対す る認識 が小学校算数科 では未知 の数量であ るのに対 して、中学校数学科 では関係 を表すた めの ものであ るこ とか ら、そ こに認識 の違 い があることを指摘 し、この よ うな認識 の違いは、算術 と代数 の違いにある と述べてい る。そ のため算術的な特徴 を有す る小学校算数科 と代数的な特徴 を有す る中学校数学科 の間には□,△な どの記号や文字 の解釈 または扱 い に大 きな違 いがあ り、算術 と代数 が有機 的に接続 していない ことが問題 で あ り、 この よ うな飛躍 をいか に して無 く してい くかが重要で ある と筆者 は考 える。そ こで、算術 と代数の接続 を見据 えた文字 の指導が重要であることが示唆 され る。
以上 の ことか ら、筆者 は小学校 の早期 の段 階か ら代数 的 な思考 を通 して記 号や 文字 を扱 うこ とが、文字の理解や認識 を深 めるために有効であ ると考 える。
第 4章
文字の理解を促す指導のあり方
本章では、小学校 算数科 にお ける文字 の理解 を促す指導 のあ り方 を検討す るために、算 術 と代数 の関係 につ いて プ レ代数指導