• 検索結果がありません。

文字の意味理解の枠組みの構築

蝙 ̲

第 3節    文字の意味理解の枠組みの構築

第 2章

文字の理解の様相

本章 では、小学校 算数科 と中学校数 学科 にお ける文字 に対す る児童。生徒の理解 の現状や 困難性 を把握 す るた めに、先行研 究 として杜威(1991)、 日野・口十(1998)、 Kuchemann(1981)、

国宗 (1997)を 概観 し、整理す る。そ して、これ らをも とに小学校 の児童 が□

,△

な どの記 号や こ とばの式 を どの よ うに認識 、理解 して中学校 での文字 の学習 につ なが つてい くのか を捉 えるための枠組 み につ いて考察す る。

第 1節    小学生の文字の理解

第 1章第 1節で述 べた よ うに小学校算数科 。中学校数学科 で扱 われ る文字 の意味は多義 的であ り、児童 。生徒 の文字 の理解 は小学校算数科 にお ける数 、□

,△

な どの記号、 こと

ばの式 な どの理解 か ら大 き く影響 を受 けてい る。そ してそれ らの理解 を も とに、児童 。生 徒 は中学校数学科 にお ける文字や文字式等 の理解 を深 めてい く。 そ こで、小学校算数科 と 中学校数学科 にお け る文字 に対す る児童 ・生徒 の理解 の現状や 困難性 を把握す る必要が あ る と考 える。

本節 では、まず小学校算数科 において数 か ら文字へ至 る学習指導 にお け る児童 の理解 と 困難性 を明 らかにす る。 そ のため、先行研究 として杜威 (1991)、 田口 (1989)、 日野・ 叶

(1998)、 前 島 (1960)を概観 し、整理す る。

杜威(1991)は、中学校 にお ける文字 の理解 の困難 は、小学校算数科 にお ける文字 の学習 指導へ至 る過程 に問題 が あ る と指摘 してい る。 そ して、杜威(1991)は小学校 にお ける文字 の導入過程 を図

2‑11の

よ うに示 してい る。

□、△な どの謙号

2‑1‑1 

月ヽ学校 の算数 において導入 され る文字 (社威,1991,p136)

2‑11に

おいて、児童 は数 の学習か ら□

,△

な どの記号や言葉 を含 む式 の学習 につな が り、 さらにそれが文字 の学習 につながる (実)。

 

そのた め、文字 の学習 は数 か らの影 響 も受 けてい る (点線)。

この よ うに、文字 は数量 を表す言葉や □

,△

な どの記号 と同 じ意味で取 り扱 われ るよ う

に、カ リキュラムが構成 されていることを、杜威(1991)は指摘 してお り、それに付随 して 以下のような問題点を述べている。

「数量を表す言葉や□

,△

な どの記号 の代 わ りに文字 を導入 した こ と、

そ して、文字 を導入す る前 に使 われて きた□

,△

な どは変数 として捉 えて きた こ と、更 に、導入 した文字 はいままで使 われて きた□

,△

な どや言葉

と同 じ意味で取 り扱 われ ることによつて、小学校で使 われ る文字 も変数 と して捉 えなければな らない。 しか し、小学校 で使 われ てきた□

,△

な どの

記号 は、そのほ とん どが直接 に取 り扱 う対象でな く、む しろ数量や 計算記 号ない し関係 記号 な どを入れ る場所 、いわゆるプ レイスホル ダー(place holder)に 過 ぎないのである。」 (p137)

本来 のカ リキュラム構成 では、小学校 算数科 で学習す る□

,△

な どの記 号 は、変数 とし て理解 された上で文字へ移行す ることになってい る。 しか し、社威 (1991)は小学校段 階 での日

,△

な どの記 号 は、数字 を入れ る場所 として扱 われ てお り、数 の代 わ りをす る記号 や変数 として理解 されず に文字 が導入 され てい るこ とを指摘 してい る。

さらに、 田口(1989)も □

,△

な どの記 号か ら文字へ の移行 に関す る指導 の困難 点 として 次の2点を述べてい る。

「 。□や○を数 をあてはめる場所 (placrholder)と して考 えてい るが、

それ を未 知数 としてみた り変数 としてみた りす る見方 が十分で ない。

・ よ り具体的な数値 を求 める傾 向にあ り、□や〇、文字 を使 うことへの 抵抗 が あ る。特 に、文字 を具体 的な数値 の代表 としてみ るこ とへ の とま

どいが強 い。」 (p53)

この よ うに田口 (1989)も 、児童 は□

,△

な どの記号 を 「数 をあてはめ る場所」や 「具 体的な数値 を求 め るもので ある」 とい う認識 の傾 向があるため、具体的 な数 の代表 として み る変数 としての見方 が育 っていない と指摘 してい る。

文字 を導入す る前段階 として□

,△

な どの記号 は、数 の代 わ りをす る記号や具体的 な数 の代表 (変数

)と

して認識 されていなけれ ばな らい。

 

しか し児童 に とつて□

,△

な どの記

号は、数 の代 わ りをす る記 号や 具体的 な数 の代表 として認識す るこ とが難 しく、文字 を導 入す る際 に誤 つた認識 を生み、文字 の理解 を困難 に してい る可能性 がある と考 え られ る。

また 日野・叶(1998)は、小学校算数科 で扱 われ てい る文字 の先駆 的 な役割 を果 たす □,

△な どの記号 を児童 が どの よ うに理解 しているかが、文字の意味 を理解す る上で大 きな影 響 を与 えてい る̀と 指摘 し、以下の よ うに述べてい る。

「算数の学習の中では、□・ 〇は

2つ

の意味 をもつてい る。1つは、数 を 書 き込む場所 としての□ 。○、 も う1つは数 の代わ りをす る記号 としての

□ 。○の意味である。」 (p34)

「数 を書 き込む場所」 としての□ 。○は、 2+3=□

"や

‑3=4"な

どの よ うに答 えを書 き込む場所や計算 の必要 がな く当てはま る数 を書 き込む場所 として使 われ てい る場合 であ る。 また、「数 の代 わ りをす る記号」 としての□。○は、主に文字の導入 として使われ るも のである。そ して 日野・ 叶(1998)は、小学校 の低学年 か ら□ 。○が「当てはまる数を書 き 込む場所」 としての使 い方 が され てお り、児童 はその よ うな意識 を強 くもつてい る と指摘 してい る。そのため、児童 の多 くは 「数の代わ りをす る記号」 としての意味 を重視す る文 字式 の学習 において、式 自体 が値 を表 してい る とい う見方 に困難 を示 します。

また前島 (1960)も □

,△

な どの記号か ら

xな

どの文字へ の移行 の際 に、児童 が文字 を 理解 で きない状況 について次 の よ うに述べてい る。

「児童は□についての中に 「なにかあてはまるもの」 と考 えている。端 的 に言 うと答 えを書 きこむ空欄 と考 えてい る。即 ち数 として認識

,量

をあ

らわす もの として

,こ

の□を意識 の上にのせていないのである。」 (p16)

□か ら文字

xな

どへ切 り換 わる際に、 これまで□ 自体 を数や量 を表す役割 があるもの と 認識 させ るよ うな指導 を していないため「なにかあてはまるもの」 として文字 を扱 って し まい文字 を理解 で なきかつた り、誤 つた文字の理解 を生んだ りす るこ とを指摘 してい る。

この よ うに小学校算数科 において、文字の先駆的な役割 を果たす □

,△

な どの記号 が

「数 の代 わ りをす る記号」や 「数や量 を表す役割があるもの」 として認識 されていなけれ

ばな らない。 しか しその よ うな認識 は児童 に とつて困難であるため、文字 を導入す る際 に 誤 つた認識 を生み、文字 の理解 を困難 に してい る と考 え られ る。

以上の よ うに、児童 が文字 の先駆的な役割 を果 たす □

,△

な どの記 号 を 「数 の代 わ りを す る記号」や 「具体的 な数 の代表」 としての認識 に至 っていない状態 で文字 を導入す る と 不十分 な理解 につ なが る。 この よ うに筆者 は、小学校算数科 にお け る□

,△

な どの記号 の

理解が文字の理解 に大 きく影響 を与えてい ると考 える。

第 2節    中学生の文字の理解

小学校算数科 にお ける文字 に対す る認識や理解 は、中学校数学科 にお けるそれ と密接 に 関係 してい る。小学校算数科 にお ける文字 の学習指導 のあ り方 を検討す るた めには、中学 校数学科 にお ける文字 の理解 の現状や 困難性 を把握 し、小学校算数科 において どの よ うな 認識や理解 を育ててお く必要が あるのかを明確 にす る必要が ある。

そ こで本節 では、中学生 の文字 の理解 の現状や 困難性 を明 らか にす るた めに、先行研 究 と して杜威 (1991)、 Kuchemann(1981)、 国宗 (1997)を 概観 し、整理す る。

1.杜

(1991)の

調 査

杜威 (1991)は中学生が文字式の学習の際に、文字をどのよ うに読み取つているのかに 関 して調査 している。その結果、中学生は文字 を次のように読み取つていることが指摘 さ れている。

プ レイ スホル ダー と して使 われ る文字 物 と して使 われ る文字

定数 と して使 われ る文字 未 知 数 と して使 われ る文字 変数 と して使 われ る文字

(杜威,1991,p86)

中学生の文字 の読み取 りの 中で、不十分 な文字 の理解 として「

プ レイスホル ダー として 使 われ る文字」 と 「

n物

として使 われ る文字」の

2つ

があげ られ る。

杜威 (1991)による と 「

プ レイスホル ダー として使 われ る文字」 の例 としては次 の よ うな ものがあ る。あ る二十 台の数2□の一 の位 にあてはまる数字 を求 める学習経験 か ら文字 式2aを二十台の数 とみて、そ こにある文字aを 「一の位 の数字 を入れ る場所」つま り文字

aをプ レイスホル ダー として読み取 る誤 りであ る。この原因 として、小学校算数科 にお ける

「□+5=8」 な どの問題 において、計算 の必要がな く□の答 えが求 ま るため、□が数字 を入れ

る場所 として認識 されてお り、数量 を表す記号 として認識 になつていないためである。そ し て、□の代わ りに文字 を導入 したため、□ と文字が同 じ役割 である と考 え、「a+5=8」 にある 文字 aも 同様 に、数字 を入れ る場所 と認識 してい る とい う指摘 であ る。この よ うに、小学校 での不十分な認識 のまま文字 を導入 した ことで、児童 。生徒 が誤 つて文字 を理解 している可 能性 がある と考 え られ る。

また 「Ⅱ

 

物 として使 われ る文字」の例 としては、次の よ うなものがある。attattatta+aの

問題 を、文字aを物 として考 え 「aが

5つ

あるか ら、5aや a5な る」 と考 えた り、3b―bの問 題 を「3bは 3と

bで

、そ こか ら

bを

とるので3になる」と計算処理 した りす る誤 りである。

この よ うな誤 りは、算数の学習 において、おは じきの個数 を数 える学習や、2メ ー トルの も の と 3メ ー トルの ものを合 わせ て 5メ ー トル となるか ら 「2メ ー トル+3メ ー トル=5メ ー ト ル」な ど単位 をつ けた計算 が原因であると杜威 (1991)は 指摘 してい る。そのため、文字式 にお ける文字 をお は じき 自体 と考 えた り、 ものの単位 として見な した りす る とい つた誤 つ た認識 で読み取つてい る可能性 があると考 え られ る。

この よ うな文字 の認識 が、中学校数学科 の文字 。文字式の学習 に大 き く影響 を与 えてお り、 これ は小学校算数科 にお ける□

,△

な どの記号や ことばの式 な どの不十分 な理解 か ら くる影響 であ る。本格 的 に文字 を扱 う中学生 において、 この よ うな不十分 な認識 のまま文 字 を扱 うと文字 を使 う有用性や表 してい る意味 を読み取 るこ とがで きない と考 え られ る。

2.Kuchemann(1981)の

調 査

Kuchemann(1981)は

文字のもつ意味に着 日して、中学生の文字の理解 について調査を 行つている。その結果、中学生は次のように文字を解釈す るとしている。