• 検索結果がありません。

第 8 章 被用者年金の適用拡大に関する財政分析 153

8.4 推計方法

8.4 推計方法

8.4.1 被用者年金の適用拡大による被保険者数の変化

以下では, 被用者年金の適用拡大による各年金制度の被保険者数の変化の推計方法を説 明する*8. 1, 産業・従業員規模別適用除外される事業体に雇用されている有業者数 比率(REU F)を, 次の (8.2) 式から推計する.

REU FIN,SE =

s

aEU Fs,a,IN,SE

s

aNs,a,IN,SE (8.2)

ここで, EU F は, 適用除外される事業体に雇用されている有業者数, N は有業者数, IN は産業, SE は従業員規模である. EU F は, 『就業構造基本調査』より得られる

Ns,a,IN,SE,OF から, 厚生年金保険法第6条に規定されている適用除外を受ける企業に雇

用されている従業員数を控除したものである*9. ただし, OF は経営組織である.

第2に, 被用者年金が適用されている事業体に就業している非正規雇用者数IECF を, 次の (8.3) 式から推計する.

IECFs,a = (∑

IN

SE

IEs,a,IN,SE

)

(1−REU FIN,SE) (8.3) ここで, IEは非正規雇用者数である. IEは『就業構造基本調査』より得られるものを利 用する.

第3に, 適用拡大範囲を設定し, 非正規雇用者における被用者年金の適用者数IEEP を 推計する. 本稿は, 雇用と年金に関する研究会 (2003) を踏襲して, 適用拡大範囲を週間就 労時間20時間以上あるいは年間収入65万円以上に設定する*10.

IEEP は, 次の (8.4) 式から推計する.

IEEPs,a =IECs,a·RCIEs,a (8.4)

*8適用拡大による被保険者数の変化の推計方法は,基本的に雇用と年金に関する研究会(2003)に沿っている , 雇用と年金に関する研究会(2003), 適用拡大総数のみを明らかにしている. 山本(2003),雇用と年金 に関する研究会(2003) の推計値を按分している.

*9厚生年金保険法第6条第1項は,厚生年金の適業除外を受ける事業体は個人企業かつ従業者規模5人未満, あるいは個人企業かつ従業員数5人以上で農業,林業, 漁業, 飲食店・宿泊業,専門サービス業,洗濯・理容・美 容・浴場業,娯楽業,その他サービス業,および宗教業としている. なお, 上の産業分類は,『就業構造基本調査』

に沿って, 日本標準産業分類第11回改定に準拠させている.

*10山本(2003) も雇用と年金に関する研究会(2003) を踏襲している.

ここで, RCIE は非正規雇用者にかかる被用者年金適用比率である. RCIE は, 次の (8.5) 式から推計する.

RCIEs,a= IEHs,aO +IEHUEs,aO

IEs,a (8.5)

ここで, IEHO は, 週間就労時間20時間以上の非正規就業者数, IEHUEOは週間就労時 間20時間未満かつ年間収入65万円以上の非正規就業者数である. IEHOは,『就業構造 基本調査』を利用する*11. IEHUEOは, 次の (8.6) 式から推計する.

IEEOHs,aU =IEEOHsU·IEEs, aO (8.6) から推計する*12.

第4に, 被用者年金適用拡大数を次の (8.7)式から推計する (表 8.3).

EN EPs,a =IEEPs,a−IEs,a·ACREPs,a (8.7) ただし, ACREP は, すでに被用者年金が適用されている非正規雇用者比率である. ACREP は, 厚生労働省『パートタイム労働者総合実態調査』平成 18年版より得られる 性別パートおよびその他労働者数および性・年齢・就業形態・公的年金の加入状況別パー トタイム労働者の割合RCP から推計する.

第5に, EN EPs,aRCPs,a,e,P S を乗じて, 第1号, 第3号および未加入者分に按分 する*13. ただし, P S は加入している年金制度である. 加えて, 第2号被保険者の増加分 を, IEC における官公庁職員数および学校教職員数の合計の比率によって厚生年金分と 共済組合分に按分する (表 8.4).

*11『就業構造基本調査』では,雇用形態を(1) 正規の職員, 従業員, (2)パート, (3)アルバイト, (4)労働者 派遣事業所の派遣社員, (5) 契約社員, (6) 嘱託, (7) その他に分類し, (2)から(7) を合計したものを非正規就 業者と定義している. 他方で,雇用と年金に関する研究会(2003) が利用する厚生労働省『パートタイム就業総 合実態調査』は, 就業形態を(1)正規の職員,従業員, (2)パート, (3)その他に分類し, (2)パートを「正社員以 外の労働者でパートタイマー, アルバイト,準社員, 嘱託,臨時社員などの名称にかかわらず, 週の所定労働時間 が正社員よりも短い労働者」とする. 本論は『就業構造基本調査』の非正規就業者の定義を非正規雇用者の定義 として採用する. 以下,『就業構造基本調査』上の分類を指す場合に限り,非正規就業者と呼ぶ.

*12『就業構造基本調査』からは,IEEOHU を男女別にしか得られないために,そのような手法を採用した.

*13本来ならば,1号および第3号被保険者にかかる非正規雇用者の就業状況に沿った按分が望ましいが, 1号被保険者および第3号被保険者の就業状況に関する十分なデータを得られなかったため,そのような簡便な 方法を採用した. ただし, 1号および第3号被保険者から第2号被保険者へシフトした総数は変化しないた ,将来の厚生年金給付および厚生年金保険料収入へ影響を及ぼさない. 他方で, 国民年金の保険料収入の減少 および基礎年金拠出金の配分へは影響を及ぼすと考えられる. なお, 山本(2003) も適用拡大の推計値を第1 被保険者および第3号被保険者の割合によって按分している.

8.4 推計方法 159

8.4.2 年金数理モデルとの接続

8.4節で推計した被保険者数を年金数理モデルに接続し, 厚生年金および国民年金の財 政収支を推計する. 適用拡大対象となる第 1号および第3号被保険者数は, 2007年度の 第1号および第3号被保険者数に占める適用拡大数の割合が, 将来にかけて一定で推移す ると仮定して将来の適用拡大数を推計し, 将来の第1号および第3号被保険者数から控除 した.

未加入者は, 適用拡大対象となった未加入者の総人口に占める割合が 2007年度以降一 定で推移すると仮定して, 将来の適用拡大数を算出した. 適用拡大対象となった第1号お よび第3号被保険者および未加入者を, 2007年度以降の厚生年金被保険者数に加算した.

非正規雇用者の標準報酬額は,『就業構造基本調査』より得られる男女,年齢,就業形態, 年間収入別有業者数を利用して, 男女・年齢別非正規雇用者の標準報酬額の平均を算出し, それらに将来の名目賃金上昇率を乗じたものを利用した.

8.3 被用者年金の適用拡大による第2号被保険者数の増大 男性 女性

総数 1,033,084 4,755,392

年齢 20 - 24 415,002 369,344 25 - 29 196,819 425,305 30 - 34 43,453 603,660 35 - 39 153,278 656,324 40 - 44 60,581 734,539 45 - 49 12,233 693,218 50 - 54 27,185 639,272 55 - 59 124,534 633,730 出所. 筆者推計