第 4 章 統合生産システムにおける「支援的保護システム」を適用した実証
4.2 実証実験 1:大型モータ製造工場における支援的保護システムの実証実験
4.2.7 実証実験結果の考察
本検証実験の目的は,A社プレスライン(生産ライン)での非定常作業時において,支援 的保護システムを導入することにより,既存のシステムとのリスク低減効果を検証するこ とである。表 4-8 に支援的保護システム導入前と後との作業者の不安全行動の発生率を示 すとともに,検証項目ごとの検証実験結果と考察を以下に示す。
① 資格と権限がある作業者が対象以外の作業を実施した際のリスク低減効果
既存のシステムでは,作業者は,どの機械に対しても全ての作業を行うことが許可されて いたため,資格と権限のない作業を行う事に対する評価はできなかった。しかし,新人の研 修期間で権限のない作業やスキルの低い作業を実行した場合が考えられるが,技能不足が 原因となる労働災害が発生するリスクは大きい。そこで,作業者がスキルの低い機械がある ことを想定して,実験的に20 回当該機械の作業を選択した。その結果,20 回とも支援的保 護システムは,対象以外の作業を実行できないシステムになっていることを実験的に確認 した。したがって,支援的保護システムを適用することにより,資格と権限がある作業者が 対象以外の作業を実施した際のリスク低減が可能と判断された。
②資格と権限のない作業者が作業を実施した際のリスク低減効果
既存のシステムでは,入退出ゲートにドアを設置し,安全プラグによる入退出管理の対策 が採用されているが,どの作業者でも安全プラグを抜き作業エリアに進入することができ るために,資格と権限がない作業者でも対象の機械設備にアクセアスすることが可能とな る。その際,技能不足によって挟まれ・巻き込まれ等の労働災害が発生するリスクが大きい。
そのような既存のシステムに対して支援的保護システムは,あらかじめRF タグに入力さ れた資格と権限が一致しない限り,当該機械の設置しているゾーン入場箇所のセンサを無 効化することができず,非常停止状態となることが確認された。支援的保護システム導入前
に管理者が危険エリア内に進入した回数が6 回あったが,システム導入後は,3 回危険エリ ア内に進入したが,全て非常停止状態となった。したがって,支援的保護システムを適用す ることにより,資格と権限のある作業者以外の人が危険エリア内に進入することで発生す るリスクを低減が可能と判断された。
③作業者が危険エリア内で作業中に,第三者が再起動を実行した際のリスク低減効果 既存のシステムでは,入退出ゲートにドアを設置し,安全プラグによる入退出管理の対策 が採用されており,当該リスクに対しては,死角となる箇所に安全マットを設置して柵内に 作業者がいることを検知することでリスク低減を行っている。しかし,死角となる箇所全て に安全マットを設置することは現実的には難しい。さらに,死角となる箇所以外は第三者が 確認できることが前提となるため,万が一第三者の不注意で作業エリアにいる作業者を発 見できなかった場合は,再起動をしてしまうリスクが大きい。実験中に安全プラグを携帯せ ずに危険エリア内に進入した回数が 4 回,作業者が作業中に第三者が再起動操作を行おう とした回数が2 回確認された。対して支援的保護システムでは,進入した作業者本人が退場 したかを確認し,さらに入退場の作業者の人数が一致しない限り再起動できないシステム となっているため,再起動を行う実験を20 回行ったところ,20 回とも再起動を実行するこ とができなかった。したがって,支援的保護システムを適用することにより,危険エリア内 で作業中に,第三者が再起動を実行した際のリスク低減が可能と判断された。
④ RF タグを携帯せずに作業を実施した際のリスク低減効果
既存のシステムでは,RF タグを携帯せずに作業を実行していため、どこで,誰が,どの ような作業を行っているかを把握することは出来なかった。そのため、上記①②③の不安全 行動発生時のリスクに対応することができなかった。この既存システムに対して,支援的保 護システムはあらかじめRF タグを使用しなければ,作業が許可されないシステムとなって いるため,196 回 RF タグを携帯せずに作業を実行しようとしたところ、196 回とも当該作 業を行うことができなかった。したがって,支援的保護システムを適用することにより,RF タグを携帯せずに作業を実施した際のリスク低減が可能と判断された。
⑤ リスク低減効果に関する考察
本実験では,1 人の作業者が 1 つのタスクを行うことを条件に実証実験を行った。その結 果,図4-8に示すように,支援的保護システムを導入することにより,既存システムの不安 全行動の発生率を0%にすることで,高いリスクアセスメントのリスク低減効果を得ること ができることが示された。図4-9は,現場で実施されていたリスクアセスメントの結果に対 して,支援的保護システムを適用した場合のリスク低減効果を検討した結果である。従来
リスク低減結果となっている。
表4-8 支援的保護システム導入前と後との不安全行動の発生率
既存システムの不安全行動 SSS導入後の不安全行動 発生回数 発生率 発生回数 発生率 資格と権限のない作業者が
対象外の作業を実施した回 数
20 6.49 0 0
資格と権限のない作業者が
対象の作業を実施した回数
6 1.45 0 0
作業中の第三者による再起
動の回数
20 6.49 0 0
タグを携帯せずに作業を実
施した回数
196 63.6 0 0
4.3 実証実験 2:自動車用バンパ組立ラインにおける支援的保護システムの実証実験