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学級集団についての考察とカリキュラム開発の要点 1  .学級集団の特質と問題点

第 1 章 子どもの基礎的人間力養成についての先行研究と カリキュラム開発の要点

第 2 節 学級集団についての考察とカリキュラム開発の要点 1  .学級集団の特質と問題点

まず、子どもの所属する基礎集団である学級について、その特質について述べる。

学校におけるフォーマルな集団は学級で、ある。学級は、基本的に子ども本人の意に反し て組織されている。それゆえに、学級では、年度当初に子どもの間に個人的な好き嫌いが あることは自然なことであり、最初から「みんな仲良し」としづ状態ではない。子どもた ちは、この状態から出発して、学級における人間関係を育み、周囲の者と折り合いをつけ ながら学校生活を送る中で成長してしだO このように学校では無目的なように見える学級 の生活で人間関係や規律の内面化等、様々な社会性が育まれているのであるが、子どもが 学級集団に入ってしだ最初の段階が伺年齢集団であることは、子どもの発達特性から見て 適切なことである 蜂屋41)は、この間一年齢で構成されている学級の等質性の教育的な意 義について次の7点を挙げているD

①子どもにとっての学級は、自分と同じ年齢の仲間がし1る場所である

②その仲間と一緒に学び遊ぶことで、自分にもできること、仲間と同じであることを、

同年齢だからこそ実感できる

③学級において子どもは、自分には不得手なことがあることを知る

④学級において子どもは、自分とは異なる考え方や能力を持つ他者を認める

⑤学級において子どもは、同級生の中で自分らしさに気づく

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⑤自分の個性を受け容れながら育つ

⑦学級は、自分らしさに気付き、自分に対する理解を深め、自己概念を形成していく場 として重要な意味をもっ

しかしながら、実社会では様々な年齢構成で組織された集団が通常であり、同一年齢の 集団は特異である また、同年齢(同期)で構成される集団には、等質性に起因する競争 原理の弊害(出る杭は打たれる、横並び志向、評価の基準が相対的等)や、縦の人間関係 がないなどの特質が見られる。これは、集団としての負の側面である。それゆえに、子ど もが小学校低学年から中学年、そして高学年へと進むにつれて、同一年齢の等質的な集団 活動から異年齢で構成される多様な集団活動が大切な意味を持つようになるのである。

異年齢集団の特性は、それが社会集団の自然な姿であることにもあるが、子どもの場合、

それ以上に子どもの社会性の基礎となる自己有用感を育むことになる。これに関連して既 述の毘立教育政策研究所 (2004年)42)報告書や滝 (2009年)43)は、子どもの社会性の基 礎となるのは自己有用感

ω

であり、その自己有用感を育むためには、異年齢集団における

「お世話活動Jが大きな意味を持っと指摘している。これについては、第百部第5章の神 竣台小学校における実証的研究の考察において述べる。

2.子どもの基礎的人間力養成と学級集団における人間関係育成の必要性

既述の如く現代の子どもには、社会性の低下や対人関係の未熟さが指摘されている。こ の点をふまえて、子どもの社会性の基盤となる基礎的人間力を養成するためには、学級に おける子ども相互の人間関係に関わる能力を培うことが不可欠である。

近年、子どもの人間関係に焦点を当て、学校教育の中に「対人関係jを学ばせる時間を 取り入れる教育実践が増えている 45)。学校では、子どもに、前節において検証した先行研 究の知見を活かした 意図的な働きかけ"をしていくことが求められているのである。先 行研究では、子どもの人間関係や社会性を育むブOログラムの有用性と教育課程に位置付け ることのJ意義と必要性が示されていた。そのための基礎作業として、次の5点が必要とな る。

①子どもの基礎的人間力を;養成する授業では、子どもにどのような力をつけるのかを明 らかにしておく

②社会性の基盤となる子どもの基礎的人間力の要素と、授業で育てようとする力が緊密 関連していることを、全体計画や年間指導計画等、教育課程編成上に必要な諸資料

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に示すことで授業のねらいを明確にする

③子どもの基礎的人間力が、どのように授業を通して育まれるかを授業の話的に照らし 合わせて評価する

④評価方法の1っとして定量的評定尺度を活用する。評定尺度には、すべての子どもが 無理なく答えられること、統計的信頼性があることの 2点を満たしていることが必要 である

⑤定量的尺度により得られたデータを使い授業プログラムの検証や分析を行う

筆者は、先行研究と上に示した基礎作業をふまえて、当時、勤務していた埼玉県鷲宮町 立束中学校においてお

006

(平成

1 8 )

年度より社会性の基盤となる子どもの基礎的人間力 を養成することを目的とした生徒指導プログラムを教育課程に位置付けて実施してきた。

この実践については第百部第3章と第4章で論じる。また、

2009

(平成

2 1 )

年度より兵 庫県神戸市立神綾台小学校において埼玉県鷲宮町立東中学校の取り組みを追試的に行し、授 業の検証を行った。この実践については第H部第5章で論じる。

3.子どもの基礎的人閉力養成の効果を検証する尺度の必要性

子どもの基礎的人間力と社会性との関係については第 1部第3章で論じたが、子どもの 基礎的人間力は、大きく「基本となる偲別の力」と「人と関わることのできる力jの2要 から構成されている。また、既述の如く学校では子どもの基礎的人間力が「育ちそひ、れ」

ていると、社会性は十分には育まれない。それゆえに学校(教師)は、発達の段階に応じ た子どもの基礎的人間力がどの程度身に付いているのかについて、その実態を把握するこ とが必要である。特に、積極的生徒指導としての授業カリキュラム開発を行うためには、

授業カリキュラムの有効性、その効果を検証する上でも、子どもの基礎的人間力を測る尺 度は不可欠である。

しかしながら、社会性の基盤である子どもの基礎的人間力を測る尺度はないために、本 論文では子どもの基礎的人間力を澱定するための尺度を新たに作成して、実証的に研究を 進めることとする。

次章では、筆者が作成した尺度46)について述べた上で、埼玉県鷲宮町立束中学校で、行っ た1年間の調査結果を分析し、社会性の基盤である子どもの基礎的人間力が学校において どのように養成されているのかについて、定量的データに基づいて検証する。

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註)

1)国分康孝監修・縫部義憲編『教師と生徒の人間づくり(第 1 集)~涯々社、 1986 年。

2)国立教育政策研究所生徒指導研究センター下社会性の基礎」を育む「交流活動」・「体 験 活 動 人 と か か わ る 喜 び 」 を も っ 児 童 生 徒 に 2004年3月O

3)滝充編著『ピア・サポートではじめる学校づくり 小学校編

J

金子書房、 2009年。 4)昭和 57年暮れから昭和 58年2月にかけて横浜市中区の関内需尺潟辺や山下公潤で野宿

していた浮浪者たちが次々と襲われ、 3人が死亡、 13人が重軽傷を負わされる事件。こ の事件の犯人は、市内の中学生5人を含む 14歳から 16歳の少年 10人であった。当時 の新開記事(日本経済新聞)をAppendix

‑1‑2に転載した。

5)通称、「忠生中事件j と言われる。 1983年2月15司の午後、東京都町田市立忠生中学 校の玄関にて発生。同校の3年生の生徒(当時 15歳)2入が男性英語教師(当時38歳)

に対して、玄関マットを振りかざして威嚇したところ、恐怖心を抱いた教部が所持して いた果物ナイフで反撃。生徒1人を刺し、全治数日のケガを負わせて逃亡。当日中 察に逮捕された。当時の新聞記事(日本経済新聞)をAppendix

‑1‑3に転載した。

6)  199X年度に埼玉県で開催された生徒指導講座の課程は以下の通りである。

①研修会名:生徒指導講座(学校カウンセラー中級研修会)

②主催機関:文部省・埼玉県教育委員会

③研修期間 6月y

1 3  

~11 月 Z 日 (12

1 3

関)

④研修総持数:62時間

③参加者:122名。校務分掌の内訳では、生徒指導主事(係)、教育相談担当(係)、等。

⑥研修内容

ア)演習(計 12時間)

a人間関係づくりの実際、 bグループ。ディスカッション、

C グループ。ワ…クの理論と実際。

イ)講義(計25待問)

d生徒指導と教育相談、 e児童生徒理解の;意義と方法 f生徒指導とカウンセリング、 g生徒指導の理論と実際

h

面接の技法、

I

少年相談の現状と指導の在り方 j事例研究の方法、 k生徒指導における教育相談の役割

1生徒指導・教育相談の組織と実際、 m 生徒懲戒の意義と指導 n学校と教育相談機関との連携、 O登校拒否児章生徒の理解と指導 p学校における精神保健の進め方、 q学校棺談心理学の展開 r専問機関の特質の理解と連携、 S教護院の実際

ウ)協議(計 12.5時間)

tグループ。ワーク研究発表、 U 事例研究。

エ)実習(計 12.5時間)

v心理テストとその利用、 w集団活動の理論と実際、 x面接法の実際 7) 文部省『生徒指導の手ヲ I~ 大蔵省印船局、 1981 年。

生徒指導の基本書であった『生徒指導の手びき~ (1965年)の内容が 16年ぶりに改

訂されて、『生徒指導の手引(改訂版)~となる 文部省は、その理由を2点示している。

①教育課程の基準の改訂が2度にわたって行われた。②生徒を取り巻く社会の状況など にも変化が起こってきた。

改訂された所要筒所は、第5章 f生徒指導と教育課程J、第6章「学校における生徒指 導体制」、第9章「学校における非行対策jである。第5章では、授業中の私語、

欲の低下、教師への反抗、授業妨害、授業エスケープ等の問題行動への指導の在り方。

第6章では、生徒指導上の諸問題に対応していくためには校内生徒指導体制を整備して いくことが述べられている。第9章では、暴走族の問題やシンナ一等有機溶剤の乱用等、

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