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第 3節 学校の変化と子どもの問題行動
ここ 30年程の聞に変化したのは、子どもの問題行動や親の変化だけではない。学校自体 も大きく変わってきている。本節では、この学校の変化と子どもの問題行動について述べ る。
1 .近年の学校教育改革と教師の意識
日本の学校教育については、 1984(昭和59)年以降、臨時教育審議会答申を受けて教育 改革が推進されてきた。 1989年(平成元年)度告示の学習指導要領では、「生活科JI選択 教科j の新設、「新しい学力観」に基づく評価方法の変更、「学制」以来維持してきた学校
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・遡6日制を廃し f学校週513市むを段階的に導入するなどの教育改革 49)が実施された。そ の後の教育改革を象徴するキーワードは、「生きる力J50)である。この問、教師はどのよう に学校の変化を感じていたのだろうか。この点について、次に筆者が行った調査結果より、
教舗が子どもの問題行動の要因としてあげた学校のもつ問題について示す。
①教育課程改訂に伴い変わる授業内容や選択教科
②教師の多忙化、入手不足、時間不足
③教師の指導力不足
④子どもと向き合える時間の少なさ
⑤子どもの能力差ならびに意欲差
⑥教師全体の指導方法が統一されておらず連携不足
⑦生徒理解の不足
③生徒指導が校内で一致した見解になっていないこと
⑨ l学級の子どもの人数が多いこと
⑬教師の高齢化
ここに挙げた内容は、 2002(平成 14)年当時の回答なので、現在で、は状況が変わったり、
改善されたりしている点もある。①は、 2008(平成20)年度告示の学習指導要領により 習内容が見直され指導時数の大幅な増加が実施されている。⑩については、 f団塊世代」の 定年退職が進んで、教師の急激な若返りによる新たな問題が指摘されている。
しかしながら、②から⑨の項目については、現在においてもなお問題とされている点で ある。教師が感じる具体的な問題は、「授業や子どもとの生活以外に学校の中でやることが 多すぎるj、f子どもの人権ばかりが擁護され、教師には忍耐強さが
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郎、られるj、「不登校 生徒への対応J等、多忙化や消極的生徒指導に関する点である。2. 新しい制度の導入
前述の教育改革は、日本社会の急激な変化、「教育荒廃Jと批判されるようになった学校 教育上の諸問題の増加5、)121世紀の日本社会を担う子どもたちの育成問、知識基盤社会5:3)
への対応など、社会からの要請を受けながら、うまく機能しなくなってきた学級や学校教 育全体を修復し、その教育機能を回復させようとする試みでもあった。
しかしながら、文部省が 1981(昭和56)年度から開始した「児童生徒の照題行動等生徒 指導上の諸問題に関する調査」や、法務省の「犯罪白書J、文部科学省の白書に見られるよ
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うに、学校教育の機能回復も改善されたと えず、学校教育を取り巻く状況も好転はし ていなし、。またこの問、行政機関では、学習指導および生徒指導の改善、スクールカウン セラー (SchoolCounselor)、スクールソーシヤノレワーカー (SchoolSocial Worker)の導 入、特別支援教育 (SpecialSupport Education)の法制化等に見られる新しい制度の導入 も推進されてきた。しかし、このような改革や新しい制度の導入にもかかわらず、非社会 的な問題行動や反社会的な問題行動の増加等、学校教育における児童生徒の教育問題は山 積し、極めて厳しい状態にある学校も少なくない。
教育現場では、子ども、保護者、地域住民の品部において、学校教育を支える前提とな る自明性の崩壊やモラルハザード (moralhazard)が生じている。このような社会状況ゆ えに、「教育崩壊J54)、「学校崩壊J55)等の著書タイトルに象徴されるような状況が新たな問 題として注目されるようになってきた。そこには、日常の教育活動の正常化のために悪戦 苦闘する教師の姿が示されているが、個々の事例に共通した問題の根底にあるのは、現在 社会に生きる子どもの基礎的人間力が低下していることにある。それゆえに現状の打開の 鈎は子どもの基礎的人間力養成の如何にかかっているのである。
次章では、子どもの基礎的人間力の「育ちそびれjへの対応と学校教育の可能性を、第 3章では、子どもの基礎的人間力とはどのような能力なのかについて論じる。
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註)
1)大平健『やさしさの精神病理
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岩波新書、 1995年、 7・8頁。2)山アラシ・ジレンマとは、ショーベンハウエル (Schopenhauer、1851)の寓話から生 まれた言葉である。
藤 井 (2001)は、「山アラシ・ジレンマjについて、以下のように説明している。
「この寓話の内容を比験的に用いて、他者との適度な心理的距離をめぐる葛藤を表し た言葉であるJ
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アメリカの精神分析医Bellak(1974)が、人間関係、特に二者関係に おける適切な距離のとり方に関する「近づきたい‑離れたしリとしづ葛藤を説明するとして発展させ、「山アラシ・ジレンマ (porcupinedilemma) と命名したj
藤井恭子「青年期の友人関係における山アラシ・ジレンマの分析」日本教脊心理学会
『教育心理学研究』第49巻第2号2001年6月、 146・147頁。 3) N H K世論調査部編『日本の若者』日本放送出版協会、 1986年。
4) 千石保・鐘ケ江晴彦・佐藤郡衛『日本の中学生一時際比較でみる ~NHK ブックス、 1987 年、 185・189
5)深谷呂志・深谷和子「モノグラブ調査を振り返ってJ
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モノグラブ・小学生ナウ 特別号』ベネッセ、 2004
モノグラブ・シリーズは小学生、中学生、高校生の3シリーズが刊行されてきた。
「モノグラフ・中学生の世界」の 1978(昭和53)年4月発行
「モノグラフ・高校生J1980 (昭和55)年2月発行
「モノグラフ・小学生ナウJ1981 (昭和56)年6月発行
これまでに児童や生徒を対象とした 333本の調査レポートを発表している。
6)藤本浩之輔『子どもの遊び空間
J
日本放送出版会、 1974年。7)小川信夫『少子家族一子どもたちは今一』玉川大学出版部、 1995年。 8)仙回 満『子どものあそび』岩波書倍、 1994年、 148
9)佐々木正昭「学校教育における「子ども文化Jの継承と創造のブOログラム開発」兵庫県 立こどもの館『平成6年度こどもの館研究委員会研究報告第6集
J
、1995年、 42頁。 10)ファミリーコンビュータ (FamilyComputer)の略称。当初は、 1983年7月 15日に任天堂より発売された家庭用ゲーム機を指していた。 1985年発売の『スーパーマリオプラ ザ…ズ』が大ヒットとしたことにより、その後大幅に拡大していった。
1 1)斎藤次郎「ファミコンに友だちは必要か~ u ファミコンの輸!~の意味するもの J
U
児 童心理~ 7月号(集中特集・ファミコン・ブームを考える)、 1986年。中原美窓「ファミコン少年の病理j・土橋稔「遊びの中のファミコンJ・新井誠
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中間 集団の中でJ深谷和子・深谷呂志 f子どもの成長とメカj深谷呂志・深谷和子編『ファミコン・シンドローム』同期舎出版、 1989
12) 小川信夫『少子家族一子どもたちは今~玉川大学出版部、 1995 年。
中で小学生作文を例に次のように述べている。
「きのうのあそびJ(小学校三年生の男子作文より)
ぼくはきのう、山口くんとあそびました。この前の日曜日、ぼくとやくそくしたか らです。山口くんは「ドラゴンボール」のまんがをもってきました。山口くんは、ぼ くのかしてやった fスーパーマリオJのゲームをひとりでやりながらあそびました。
そのあいだにぼくは、山口くんのまんがをよんであそびました。四時になりました。
おかあさんが「おやつをたべなさい。」といいました。二人でおかしをたべて、ジュー スをのんで、山口くんが「バイバイ」といってかえりました。ぼくはまた山口くんと あそぼうとおもいました。
この作文でも分かるように、今の子どもの遊びの中には、それぞれ二人でいること に意味を見出すものが多い。決して相互に交わり、一つの共通ルールに沿って遊ぶと いうものは少なくなった。それぞれが個別な自分の好きなことをして過ごす。共同や
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共感、ときには感情の葛藤場面も起きるとし寸積極的な人間の触れ合う交流の遊びで はない。
13)問中治彦「子どもの遊びとその環境J~岡山県教育委員会わたしたちの PTA~ 、 1998 14)藤田英典『子ども・学校・社会』東京大学出版会、 1993年、 39
15)内閣府政策統括官(共生社会政策担当)i低年齢少年の生活と怠識に関する調査」、平成 19年2月(参照日 2012年3月 10日
http://www8.cao.go.jp/youth/kenkyu/teinenrei2
I z
enbun/index.html#2備1‑3)016)内閣府政策統括官(共生社会政策担当)、上掲資料
小中学生別にみると、「学習塾、予備校jを挙げた者の割合は中学生で、「音楽」、 f野 球、サッカー、体操などJ、「英語教室・英会話人「習字」を挙げた者の割合は小学生で、
それぞれ高くなっている。学習塾やおけいこ事などに行っているか部いたところ、「学習 塾、予備校jを挙げた者の割合が39.2%と最も高く、以下、 f音楽J(17.5%)、「野球、
サッカ一、体操などJ(14.0%)、「英語教室・英会話J(14.00/0)、「習字J(12.90/0)など のJI頂となっている(複数回答、上位5項目)。なお、「何もしていなしリと答えた者の割 合は24.7%となっている。
17)埼玉県の公立小中学校で、は、各校に校務分掌「教育相談」係がおかれている。各校の教 育相談の代表(主任)は、それぞれの市町村単位の教育相談部会に属している。各市町 村の教育相談部会は、埼玉県の教師で構成される任意団体である埼玉県教育心理・教育 棺談研究会に選出された代表者をおくることで全県的な組織に参加することになる。
者は、この研究会に所属し、研究を担当する専門委員会の専門委員長を 1997(平成9) 年度から 10年間務め、調査研究活動の責任者となっていた。
なお、「埼玉県教育心理・教育和談研究会会員
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では、事業および組織ついて以下のよ うに定めていた。(事業)第3条 本会は前条の呂的を達成するために次の事業を行う。
(1) 教育心理ならびに教育相談の研究・誠査に関することO (2) 研究成果ならびに資料等の作成刊行に関することO
(3) 教職員の研修に関することO
(4) 地区教育研究団体ならびに教科等研究団体の連絡提携に関することO
(5) その他目的達成に必要な事業。
(組織)第4条 本会は県内の小中学校およびその教職員、ならびに市町村教育相談 所職員をもって組織する。
また、「埼玉県教育心理・教育相談研究会専門委員会設置要項Jでは、事業および組織 ついて以下のように定めている。
目的(事業) 2 この会は、次の事業を遂行することを目的とする。
(1) 教育心理・教育相談の調査ならびに研究に関することO (2) 研究の成果ならびに資料の作成刊行に関すること。
(3) 研究委嬬(委嘱研究事業の選定)に関することO
組織(役員) 3 専門委員会は次のメンバーにより組織する。
(1) 専門委員長は会議を総括し、座長を務める。
(2) 研究推進専門委員5名は調査研究の大綱をまとめ、専門委員会の推進を担う。併せ て 次 の 役 割 を 分 担 す る 総 務1名 会 計2名 記 録2名
(3) 専門委員は、東・商・南・北教育事務所単位に5名程度の役員を置き、調査研究活 動を行う。
(4) 専門委員会には指導者を置き、研究について指導・助言を受けることができる0
18)調査の概要は、以下の通りである。
①実施年月日:1998年 12月1日,‑....,1999年1月29日
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