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第 2 節 子どもならびに教師 対象のア ンケ 一卜結果からの考察

「社会的スキノレの授‑業」は前節に示した通り人間関係調整力、学校生活適応力、 定感、人間関係構築力、キャリア感では、一定の効果を上げることができたと評価できる。

しかしながら、「社会的スキノレの授業」に関する自己評価式質問紙による測定法には、次 の2つの問題点がある 9)

①社会的スキノレは社会的に承認される内容ゆえに、回答者は承認欲求を喚起されて、胞千

問事項に対して、実際以上に「できる」と回答してしまう

②実│擦の実行の程度ではなく、実行できる自信度を測定しているに過ぎない

次に、これらの問題点を補うために、子どもや教師を対象に実施した質的な調査データ

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の分析をするD

1. 

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社会的スキルの授業J担当者のふり返りを中心とした全体的な考察

「社会的スキルの授業」が終了した3学期には、教師から次のような感想、を聞くことが できた。

①子どもはリラックスして楽な気分で臨んでいた

②「社会的スキルの授業jでは、子ども全員が演習に参加すること、ワークシ…トや、

ふり返り表に授業担当者が朱書きで個別アドバイスを行うなど、一人ひとりを大切に した細かな配慮、をしていたことも学習効果を高めていた

③多くの子どもからは、「スキルの時間を楽しみにしていた」、「来年も楽しみ」等の高い 学習参加怠欲を開くことができた

④教師からは、授業における発表の手順、原稿(台詞)の事前準備の大切さが子どもに 浸透してきたが、これらは「社会的スキルの授業jの影響が大きい

⑤授業中の「開く J

r

話すJためのポイントが身に付いてきた、

上述のように、「社会的スキルの授業jに対しては、概ね肯定的な反応が見られた。

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社 会的スキルの授業J担当者からは、以下のような感想、を開くことができた。

①学級や学年の障壁を感じることなく授業の中で開発的な教育相談活動を推進できた

②教師相互の連携が深まったことで子どもに関する情報が今まで以上に共有化されるよ うになった

③日常的な子どもとのふれあいや会話が増えたなどの評価を得ることができた

④学校全体で積極的な生徒指導体制を構築できたことに大きな意義がある

上に示した、 積極的な生徒指導"を具体的なカリキュラムで示したのが本研究の「社会 的スキルの授業jであるが、この点について束中学校のスキル授業担当者は実感している ことがうかがえる。既述の如く現代の子どもには 社会性の欠如"、 社会性が未熟"と指 摘されることが多いがゆえに、これからの学校教育には「社会性の極養J10)がますます求め られる。子どもの社会性を漏養していくためには、本論文で問題としている子どもの基礎 的人間力を養成していくことが効果的である。そのためには「社会的スキルの授業J年間 指導計画やプログラムの検証を継続的に行っていくこと、授業者である教師の指導力や専 門性の向上を図っていくことが必要である。また、「社会的スキルの授業」で学び、練習し た内容を単発的な練習に終始させることなく、学校生活の中に生かし、般化させていこう

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とする態度を子どもに育んでいくことも大切である。

2. 子ども対象のアンケートによる「社会的スキルの授業j評価とその考察

「社会的スキルの授業」の子ども評価に関するアンケート結果は、第Z部第3章第3節 に示した。ここでは、その結果について考察しておくO

( 1 )授業で身に付けた力と「社会的スキルの授業」の評価

間1では、 10の質問について、「はし¥J 

r

だいたいJ あまり」旬、いえ」の4段階で回 答を求めたO その結果について、「はしリ「だいたしリの回答を宵定群に、「あまりJ

r

、し いえ」を否定群として、質問項目を考察してし、く O

①「授業のルーノレ(潤く、人を傷っけない、指示に従う)を守って取り組むことができ ましたかjでは、 2年生男子の肯定群91.5%、否定群8.5%、3年生男子の肯定群98.0%、 否定群2.0%02年生女子の肯定群97.8%、否定群2.2%、3年生女子の肯定群 100.0%、 否定群0.0%であった。これらの結果からは、授業としての成立状況が極めて良好であ ったことが示されている。特に、 3年生女子の結果は、教師からの観察や子どものふ り返りに記載されていた記述とも一致することであり、授業の様子の一端をよく表し ている。

②「グ、ノレーブOで、活動するときには、協力して取り組むことができましたか」では、 2年 生男子の肯定群88.1%、否定群 11.9%、3年生男子の首定群92.0%、否定群8.0%0 2  年生女子の肯定群89.1%、否定群 10.9%、3年生女子の吉定群 98.6%、否定群1.4%で あった。これらの結果からは、大多数の子どもがグ、ループOで、の活動において協力して いたと感じていることが分かるO また、 3年生と比較すると、 2年生の方が否定群の 割合が高くなっている。これは、学年や学級における雰囲気と既述の如く学年内の「荒 れjの傾向が反映されているためと思われる。

③「各時間の目標どしたスキルを身に付けることができましたか」では、 2年生男子の 肯定群88.8%、否定群 10.2%、3年生男子の肯定群98.0%、在定群2.0%0 2年生女子 の肯定群95.7%、否定群4.3%、3年生女子の肯定群98.6%、否定群1.4%であったハ川、

1jと回答した子ども(図ll‑37、134頁参照)が男子 1名だけだ、ったことを鑑みる と、子どもの基礎的人間力を養成する社会的スキルの獲得が概ね達成で、きたと考えら れる。

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④「自分のょいところをみつけることができましたかJでは、 2年生男子の肯定群 74.6%、

否定群 25.4%、 3年生男子の肯定群 78.0%、否定群 22.0%02年生女子の肯定群 60.9%、

否定群 39.1%、 3年生女子の肯定群 88.5%、否定群 11.5%であった。本項目を言aい換 えると「自尊感情jを育むことである。十分とはいえないものの、 2年3年の男子で はおよそ 4分の 3が、 2年女子ではおよそ 3分の 2、 3年女子ではおよそ 9害IJが肯定 している。自尊感情は、現実の多様な直接体験をとおしながら育まれていくものであ る。その意味において、授業の限界を示すものである。

③ f班員やグ、ノレーブ。のよいところをみつけることができましたかjでは、 2年生男子の 肯定群 83.0%、否定群 17.0%、 3年生男子の肯定群 94.0%、否定群 6.0%0 2年生女子 の肯定群 84.4%、否定群 15.6%、 3年生女子の肯定群 98.6%、否定群1.4%であった。

これは、②の質問項目と関連するとともに他者理解の項目である。 3年生が男女とも に満足しうる評価をしているのに対して、 2年生の男女ではやや否定群の割合が高い と忠われる。これは、 1時間の授業には、それ以外の様々な学級の要因が関わってく ることを表すものであり、日常の学級運営に示唆的である

r  r

社会的スキルの授業Jを楽しみにしていましたかjでは、 2年生男子の肯定群 74.6%、

否定群 25.4%、 3年生男子の肯定群 86.0%、否定群 14.0%02年生女子の肯定群 65.2%、

否定群 34.8%、 3年生女子の肯定群 94.3%、否定群 5.7%で、あった。本項目は授業評価 の側面をもつが、それは授業者の指導力だけでなく前述の学級雰囲気も大きな影響を えている。また、「社会的スキルの授業」は

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で行われ、場合によっては担任も加 わるために、子どもにとって心理的負荷の大きな授業であったことも結果に反映され ていると思われる。他教科との比較をしていないために一概に評価はできないが、最 も低い2年生女子でもおよそ 3分の 2が楽しみにしていたと考えると、良い評価を得 ていると考えられるむ

⑦「人とのかかわり方のマナーが身につきましたかjでは、 2年生男子の肯定群 94.9%、

否定群 5.1%、3年生男子の肯定群 100.0%、否定群 0.0%02年生女子の肯定群 93.5%、

否定群 6.5%、3年生女子の肯定群 98.6%、否定群1.4%であった。人間関係の基本とな る社会的スキルについては、十分に満足できる結果である。また、社会的スキルの学 習性の高さを示していると思われる。

⑧「話し方や聞き方で気をつけなければならないことが分かりましたかjでは、 2年生 男子の肯定群 91.5%、否定群 8.5%、 3年生男子の肯定群 100.0%、否定群 0.0%0 2年

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生女子の肯定群 97.8%、否定群 2.2%、 3年生女子の宵定群 98.6%、否定群1.4%であ った。本項自についても、⑦の項目同様に、子どもは、社会的スキルを概ね身に付け ていると評価していることが確認できる。

⑨「人を気にかけ、忠いやりながら活動することができましたか」では、 2年生男子の 肯定群 89.8%、百定群 10.2%、 3年生男子の肯定群 94.0%、否定群 6.0%0 2年生女子 の肯定群 91.3%、否定群 8.7%、 3年生女子の肯定群 98.6%、否定群1.4%であった。

本項目は共感性に関わる項目であるが、大多数の子どもは他者への気遣いをもって授 業に参加していたことがわかるG 限られた時間ではあるが、授業内に意図的にこのよ

うな場を設けることの意義が示されていると思われる。

⑮ 11スキノレjの授業を苦手にしていましたか」では、 2年生男子の肯定群 25.5%、奇定 群 74.5%、 3年生男子の肯定群 33.4%、否定群 66.6%0 2年生女子の肯定群 26.1%、

否定群 73.9%、 3年生女子の肯定群 13.3%、否定群 86.7%であった。本項目は、⑥の 反転項目であるが、結果はほぼ一致していた。このことから、子どもは、⑥を含めて 間1の質問項目にきちんと回答していたことが分かる。

(  2 

) 社 会 的 ス キ ル の 授 業jで、行った活動で一番よかったもの

質問2では、子どもがよかったと考えているプログラムとその理由を白由記述で回答 させている(表 II‑312、135頁参照)0 2年生では、「漢字マイスターJ1砂漠の救助J1サ イレント・ピクチャー」等、グループOワークによる協同的な作業を伴うプログラムの評 価が高い。 3年生では、 2年生同様にグループOワークによる協同的な作業を伴うプログ ラムの評価が高いことに加えて、面接練習を通した自己理解、社会的スキルの練習の評 価も高い点が特徴である。これらのことから、プログラムは、課題という擬似的な他者 との交流体験であっても、子どもにとっては意味ある体験となっていること、面接練習 という子どものニーズにあったプログラムを通して受験(検)テクニックとは異なるア プローチ11)から、社会性の基盤となる子どもの基礎的人間力を養成している可能性が示 唆される。

( 3 )活動で弱ったこと、いやだ、ったことO

質問 3では、子どもの視点から「社会的スキルの授業jの不備や欠点について、自由 記述で回答を求めている(表立 ‑3‑12、135頁参照)0 2年生、 3年生ともに内容について

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