• 検索結果がありません。

子どもの基礎的人間力養成カリキュラムの 実証的研究 2 (小学校)

本意では、第百部第3 よび第4章で論じた中学校における子どもの基礎的人間力養 成カリキュラムを、兵庫県神戸市立神陵台小学校(以下、神陵台小学校と絡す)で追試的 に取り組んだ実践とその効果について検証する。

1 節 子どもの基礎的人間力を養成するための教育 (小学校における

3

年間の実践)

本節では、

2009

(平成

2 1 )

年度から

2 0 1 1

(平成

2 3 )

年度までの

3

年間、神陵合小学校 において、筆者が研究協力アドバイザーとして関与しながら取り組まれた子どもの基礎的 人間力を養成するための教育実践について述べる。

1 .実践校の概要と実践までの経緯 ( 1 )実践校について

神陵台小学校は、神戸市垂水区の明舞団地1)造成に伴い

1 9 7 1

(昭和

4 6 )

年に設立さ れた開校

4 0

年の比較的新しい学校である。児童数は開校当初

2 1

学級

( 6 3 1

名)であり、

1 9 7 3

年には

44

学級(1

8 5 7

名)のピークを迎えた以降、学級減が続いている。

2009

(平 成

2 1 )

年度以降は

1 3

学級(各学年

2

学級と特別支援学級

1

学級)規模の小学校である。

筆者が、神陵台小学校の教育に関わる契機は、

2 0 0 7

(平成

1 9 )

4

1

日に第

1 4

代 校長として着任した校長(根津隆男氏)の訪問

( 2 0 0 9

(平成

2 1 )

3

月)を受けた際、

その場において外部指導者(以下、研究協力アドバイザーと表す)としての要請を受け たことにある。研究協力アドバイザーとして依頼された理由およびその内容は、以下に 述べる神陵台小学校の実態とその改善への研究協力で、あった。

当時の神陵台小学校には、校長の学校経営の見地からみると、大きく 2つの教育問題 がみられた。それは、教師側の生徒指導体制に関わることと、子どもの生徒指導上の諸 問題に関することである。具体的な生徒指導体制に関わる問題には、組織としての生徒 指導を推進していくために生徒指導委員会を機能させることがあり、子どもの生徒指導 上の諸問題に隠することでは、人間関係のトラブノレが多く自尊感情の低い子どもが多い 現状を改善するための積極的な生徒指導を推進していくことであった。そのために、校

‑1 8 3  ‑

長は、教育現場と協働的に研究協力できる人材を求めていた。そのような折、第 H部第 3章および第4章で論じた筆者の実践を知る兵庫県尼崎市教育委員会の指導主事が、校 長に筆者を推薦するとともに紹介をしたことが、神陵台小学校の教育と関わるきっかけ

となった。

校長が、筆者の研究室を訪れた際の依頼内容は、 2009(平成21)年度4月以降の神陵 台小学校の教育への支援で、あり、特に次の 2点が要請された。

①毎月 1回の定例生徒指導委員会に外部指導者として参加し、子どもの生徒指導上の 諸問題に関する事例の検討および生徒指導全体に関しての指導助言を行う

②「社会的スキルの授業jを神陵台小学校生徒指導ブOログラムとして教育課程に位置 付けるまでの研究協力アドバイザーを務めるとともに校内研究授業の指導や講演等

を行う

当時の神陵台小学校の実態は、校長の分析によると以下のような特徴が見られた。

ア)経済的な困難を抱える家庭や一人親家庭の割合が高い

イ)家庭における基本的な生活習慣や社会性が十分に育まれていない子どもが多い ウ)中国残留孤児帰国子女の受け入れ校であるため国際理解教育に取り組んでいる エ)定期的な異動や学級減にともなう人事異動により教師の入れ替えが急速に進ん

でいる。そのために教師の指導観にバラツキが見られる

オ)組織的な生徒指導体制づくりが、喫緊の学校経営上の課題となっている

また、心理教育的な子どもへのアプローチとして、これまで、に校長が行ってきた実践 について情報提供を受けた。具体的には、①場面繊黙や発達障害と診断された特別な支 援を要する子どもに対して、スクールカウンセラーと協働的な個別支援を行うことによ り改善が見られた成功事例、②神陵台小学校の道徳、の待問に出前授業を行い、その中で 構成的グループ・エンカウンターを取り入れた示範授業を行い、教師に啓発を行ってき たこと等n これらのことから、校長が筆者の実践について十分な理解をしており、強い 信念を持って「社会的スキルの授業Jの導入を図ろうとしていることが覗えたので、

者は、研究協力アドバイザーの依頼を受諾した。

なお、訪問を受けた時点では、神陵台小学校の校内研修は、子どもの学力向上のため に国語と算数を中心としたアカデミックスキルを定着させることに取り組んでいた。し かしながら、校長は学校経営の方針として、 2009(平成21)年度からは、生徒指導を核 とした研修、とりわけ生徒指導委員会の運営の見直しと、「社会的スキルの授業」を導入

184

していくことにしていた。神陵台小学校では、生徒指導委員会が、各学年2学級のうち の1名の教師と生徒指導主担当の教師、養護教諭、スクールカウンセラー、教頭、校長 で構成され、この生徒指導委員会が校内外で起こる子どもの問題行動の対応に当たって いた。校長は、この生徒指導委員会を対症療法的な生徒指導だけではなく、積極的生徒 指導を推進するための組織に改善しようとしていたのである。また、神陵台小学校は、

神戸市教育委員会の研究指定校「神戸市ノtイロットスクール事業J2)として、子どもの社 会性を育てるスキル教育を柱に 子どもの自尊感情を脊.て"、 コミュニケ…ション力を 育てる"研究を始める準備をしていたが、そのためにも研究者を必要としていたことが 筆者への研究協力アド、パイザー要請の理由であった。

( 2 )実践までの経緯

2009 (平成 21)年度に神綾台小学校は、研究テーマ fくらしを切り拓く学力を求めて 人としてのあり方・生き方を考え、具体的なトレーニングを通してソーシャルスキノレ を身につける'"'‑'Jを設ける。このことにより、神陵台小学校の教師に対しては、社会的 スキルの授業の導入を留り、全校での実践を呂指す方向性が示されたことになる。

しかし、年度当初の神陵台小学校の教師には、所講「心理教育J的な技法や、子ども を育てる積極的な生徒指導を共通理解しているわけではなく、校長のトップダウンによ り、 よく分からない授業"に取り組むことになったと感じている雰囲気が一部にみられ た。そこで、校長、教頭、研修担当者、生徒指導主担当者らと初年度の目標を検討し、

2009 (平成 21)年度の重点を次の 3点とした。

①子どもの基礎的人間力養成のための「社会的スキルの授業Jの必要性と、積極的生 徒指導としての授業に期待される効果に関する基礎研修を行う

②生徒指導委員会の運営を見註していく

③校長による示範授業を継続して実施していく

神陵台小学校における子どもの基礎的人間力養成のための「社会的スキルの授業」の 導入は、校長の学校経営の一環としてトップダウン的に進められてきたことから鑑みて、

初年度は全教師にその意義を浸透させるための準備が必要であった。このために本格的 な「社会的スキルの授業」の実践は、翌年 2010 (平成 22)年度からとなり、当面 3年間 をかけて全校での実施体制を構築していくことになった。

この間の筆者と神陵台小学校との協{動的な関わりを次頁の表IT‑51に示したむ 3年間 を通して、主に生徒指導委員会では、生徒指導上の諸問題に関する事例への指導劫弓と、

185‑

表II‑5‑1  筆 者 と 神 陵 台 小 学 校 の 協 働 的 研 究 の 記 録 ( 平 成21年 度 平 成23年 度 ) No.  月日 曜日 F持 喝

平 成21 629日 (月) 生徒指導委員会 727日 (月) 校長・教頭との打ち合わせ

826日 (水) 神戸市立神綾台小学校・中学校舎詞研修会 9J929日 (火) 生徒指導委員会

10月初日(舟) 生徒指導委員会 11月初日(月) 生徒指導委員会 12J9 21日(月) 生徒指導委員会 平 成22 1月初日 (月) 生徒指導委員会 222日 (月) 生徒指導委員会 10  316日 (火) 生徒指導委員会 11  513日 (木) 生徒指導委員会

12  623日 (水) 垂水区教育講演会(会場神駿台小) 13  927日 (舟) 生徒指導委員会

14  1025日(月) 生徒指導委員会

15  1116日(火) 神戸市教育委員会管内の小中学校生徒指導担当者を対象に講演 (神駿台小学校における実践を紹介)

16  1122臼(月) 生徒指導委員会 17  12J920日(火) 授業研究会 18  平 成23 126日 (水) 授業研究会 19  317日 (木) 生徒指導委員会 20  425日 (月) 生徒指導委員会 21  5月初日 (木) 生徒指導委員会 22  630B (木) 生徒指導委員会 23  720日 (水) 生徒指導委員会 24  9月初日 (月) 生提指導委員会 25  1019日(水) 授業研究会 26  1128日(月) 授業研究会 27  1215日(木) 授業研究会 28  平 成24 119日 (木) 授業研究会

29  131B  (火) 神戸市立神綾台小学校研究発表会における記念講演

「子どもたちの自尊惑構を宵て、コミュニケーションカを育てる 一社会性を育てるスキル教育を柱にして‑J

30  3J919日 (舟) 生徒指導委員会

ど も を 育 て る 積 極 的 な 生 徒 指 導 ア プ ロ ー チ の 方 法 に つ い て の 小 講 義 を 積 み 重 ね て き た 。 ま た 、 授 業 研 究 会 の 指 導 助 言 、 講 演 会 、 啓 発 を 目 的 と し た 講 話 等 、 研 究 の 上 台 作 り に 努 め た 。 以 下 、 そ の 概 要 に つ い て 述 べ る 。

初 年 度 は 、 生 徒 指 導 委 員 会 に お け る 指 導 助 言 活 動 や 神 陵 台 小 学 校 の 教 師 と の 人 間 関 係 づ く り 、 授 業 研 究 会 に お け る を 通 し て 積 極 的 な 生 徒 指 導8)の 意 義 を 共 有 化 す る

‑186 ‑