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積極的生徒指導のための授業カリキュラム開発についての研究 : 子どもの基礎的人間力養成の授業実践とその有効性の検証

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(1)

積極的生徒指導のための授業カリキュラム開発につ

いての研究 : 子どもの基礎的人間力養成の授業実

践とその有効性の検証

著者

中村 豊

学位名

博士(教育学)

学位授与機関

関西学院大学

学位授与番号

34504乙第351号

URL

http://hdl.handle.net/10236/11385

(2)

積極的生徒指導のための授業カリキュラム開発についての研究

一子どもの基礎的人間力養成の授業実践とその有効性の検証一

201 2年 11

7

(3)

主 査 佐 々 木 正 昭

副 査 : 米 山 直 樹

4

(4)

凡例 1.引用文献・資料などについては、各章の終わりにまとめて示した。 2.

U

jは書籍や雑誌を、 I J は論文および資料名を表す。 例) 1)佐々木正昭・中村豊 f社会的発達課題に応える特別活動一これからの学校づくりをど う考えるかJ

U

日本特別活動学会紀要

J

第 19号、 2011年、 1-9 2)文部科学省『生徒指導提要』教育図書、 2009年。

3)Abraham Harold Maslow /小口忠彦訳『人向性の心理学

J

産業能率大学出版部刊、 1987 (昭和62)年、 55・72

Abraham H. Maslow, Motivation and Rθ'rsonalit

y

secondθdition, New York: Harper & Row, 1970.

3.表と図のローマ数字とその番号は、その園が掲載されている章と順番を示す。 例) 表 1-1は、表 1(第1章)-1(番号)を表す。 図 1・1の番号は、図 1(第1章)-1(番号)を表す。 図表はできるだけ、関係する本文のすぐ後に示すように努めたが、頁設定の関係で入 らないときには、次真に示すことを原則とした。 参照などで頁が離れている場合は、該当の頁を示している。 {列) 図

n

-2-1 (102頁参照) 「学校生活に関するアンケートj経年比較結果(表

n

-4-4、171頁参照) 4. Appendix (巻末資料)のローマ数字とその番号も 3に準じる。 例) Appendix 1 -1-1は、 1(第1部) -1(第1 -1(資料番号)を表す。 Appendix II -1・1は、 II (第 2部)-1(第1 ヨ(資料番号)を表す。

(5)

自 次 序 1 .問題の所在 2.研究の毘的と意識 3.研究の方法 4.本論文の構成 n t a 斗 F b 第 I部 生徒指導のための授業カリキュラム隣発についての瑳論的研究 第 1章 現 代 の 子 ど も の 状 況 第1節 指導困難な子どもの増加 1 .子どもの友人関係や環境の変化 8 (1)友人関係の変化 8 ①本音を轄し建前でつきあう友人関係 8 ②ヴアーチヤルな人間額係の出現 9 (2)子どものあそびの変化一集部外遊びの減少 9 (3)放課後の環境の変化 11 ①道草の消滅 11 ②子どものあそぶ時間の減少 12 2.教師のみた子どもの問題行動の変化 対教師アンケート調査結果より 13 (1)第1問調査 [1998(平成10)年]埼玉県の教鯛を対象とした調査結果 13 ① r指導の鰻界を惑じる、困っている、悩んでいる子どもがいますか 13 ② f指導に限界を惑じる子どもの状況jについての自自記述 14 ③学級内の「指導の霞界を感じる子どもの人数 16 (2)第2周鵠査 ①予備額資 [2001(平成13)年]埼玉県教育心理・教育相談研究会を対象とした鵠査結果 16 ②第 2田本調査1 [2002(平成14)年]埼玉県の教師を対象とした調査の結果 17 ア)調査校及び調査対象者の概要 17 イ) r最近の子どもは変わったか?J 18 ウ) r現在の学校(学級)の子どもの指導の中で「困難さJを感じますか?J 18 エ)指導する中で困難さを感じる場覇 19 オ)指導盟難さの饗罰 21

(6)

③第2関本調査2[2005(平成17)年]全巨額査の結果 23 3 子どもの問題行動の変化 25 第2節 子どもの問題行動の変化の背景 1 保護者の変化 (1)保護者の変化の状況 29 ①2002(平成14)年の本調査結果 29 ②事例 30 (2)保護者の変化についての考察 30 ①保護者が育ってきた時代的背景 30 ②理解しがたい苦情や理不尽な要求をしてくる保護者 31 ③家鹿の変化と子どもの育ち 32 2 家麗・地域社会における子どもの膏ちの変化 33 (1)家廃生活の学校化 33 ①子どもの多忙化 33 ②家謹の学校化 33 (2)地域における異年齢集団活動の消滅 34 (3)社会の変化 34 第3館 学校の変化と子どもの問題行動 35 1 近年の学校教育改革と教師の意識 35 2 新しい制度の導入 36 第2意 現代の子どもの f育ちそびれjとその対応としての基礎的人調カ養成の必要性 第 1節 現代の子どもの育ちそびれとその対応 二子どもの基礎的人間力の欠如と学校における教育の必要性 44 (1)子どもの基礎的人間力の欠如 44 (2)学校における子どもの基礎的人間力養成の必要性 47 2 子どもの基礎的人間カ養成と学校教育 49 第2節 子どもの基礎的人間力を養成する学校教育の可能性 51 肥大牝する学校教育の現状 51 2 子どもの基礎的人間力を養成するための教育 生徒指導を手がかりとして 52 (1)学校教育と生徒指導 52 (2)生徒指導の定義と範閤 53 (3)生徒指導に必要な指導能力 56

(7)

第3章 子どもの基礎的人間力の概念と類語 第1節 子どもの基礎的人間カの構成要素 1 子どもの基礎的人間力 64 2 子どもの基礎的人間カと社会性ならびに社会化 66 ( 1 )子どもの基礎的人間カと社会性 67 (2)社会性の定義と社会化 67 ①社会性の定義 67 ②社会牝の考繋 68 3 子どもの基礎的人揖力の概念の整理 69 第2節 子どもの基建的人間力の類語 71 1 人間力 71 2 人間基礎力 72 3 社会人基礎カ 73 4 社会力 74 第 耳 部 積極的生徒指導のための授業カリキュラム開発についての実証約研究 第 1章 子どもの基礎的人関力養成についての先行研究とカリキュラム開発の要点 第1欝 子どもの基礎的人間力養成についての先行研究とその検証 1 .子どもの社会性!こ欝する研究の背景 2.先行研究としての子どもの社会性に関する研究 (1)教育行故主導型の実践事例 (2)教育現場で行われた実識的な研究 第2鮪 学級集団についての考察とカリキュラム瞬発の要点 1 学級集団の特賞と問題点 2.子どもの基礎的人間カ養成と学級集団における人間関係育成の必要性 3.子どもの基礎的人関カ養成の効果を検証する尺度の必要性 78 78 79 n u n U 内 d n 6 0 6 0 0 n o n B o o n E 89 90 第 2章 子どもの基礎的人間力の澗定方法と子どもの基礎的人調力を養成するための学校教育 第1節 子どもの基礎的人間力を測る尺度の作成 95

(8)

目的 2 方法 (1)調査対象者と鵠査対象校 (2)調査時期 (3)調査内容および手続き 3 結果 (1)因子分析結果 (2)信頼性の検討 第 2節 子どもの基礎的人間カ尺度による国子得点の変化 目的 2 競査手続き (1)誠査対象校について (2)社会性の基盤としての子どもの基鑓的人間カの調査方法 3 結果 4 考察 (1)子どもの基礎的人間力の測定 (2)子どもの基礎的人間力尺震の各臨子得点の変化 第 3節 子どもの基礎的人間カ尺度と f社会的スキル (Kiss-18) 尺度jに関する考察 1 社会性と社会的スキル 2 杖会的スキルと子どもの基礎的人間力養成 3 子どもの基礎的人間カを養成する学校教育 第 3章 子どもの基礎的人調カを養成する実額的研究 1 (中学校) 第1節 子どもの基礎的人間カを義成するカリキュラムの実際(中学校における実銭) 1 .実読までの経緯と翼接校について (1)実践までの経緯 (2)生徒指導プログラムとしての授業を具現化するための諸準犠 (3)実議校について 2.子どもの基礎的人間カ養成のための f社会的スキルの授業jのねらいと評価 (1)ねらい (2)評価方法 ①子どもの基礎的人間力尺度 ②カリキュラム終了後の、子どもによる授業評価 95 95 95 96 96 96 99 99 99 100 100 105 107 108 109 110 111 114 114 114 116 117 118 118 119 119 119

(9)

③子どもの授業ふり返り表、ミニッツペーパー、ワークシート等の評偏 ④日常の学校生活全体を通じて行う観察による評価 ⑤教師を対象とした意識調査 ⑥東中学校独自に実施されていた既存の費関紙調査 3 実施の方法と過程ならびに実施の評錨 (1) r社会的スキルの捜業Jの担当者及び実麗学級 (2) r社会的スキルの控業Jの内容 (3) r社会的スキルの授業Jの実施時期とプログラムの概要 (4) r社会的スキルの授業Jの方法と評価方法 第2節 子どもの基礎的人間力尺度による評価 子どもの基礎的人間力尺度による「社会的スキルの授業jの評価 (1)陸釣 ( 2)調査対象者 (3)調査実施時期 (4)調査手続き 2 2年間の実競の結果 (1) r人間関係諮整カj盟二子 (2) r学校生活適応力j扇子 (3) r自己肯定感J因子 (4) r人間関係構築力J因子 (5) rキャリア感J因子 (6) r共感性J因子 第3節 カリキュラム終了後の f社会的スキルの捜業jに対する子どもの捜業評価 1 授業で身に付けた力と f社会的スキルの授業j評価 2 f社会的スキルの授業jで一番よかったもの 3 活動で菌ったこと、いやだったこと。 4 授業をとおして自分に身についたもの・できるようになったこと 5. 13由記述による授業評価 第 4章 子どもの基礎的人間カ養成の学校教育カリキュラムの検題 第1節 子どもの基礎的人間力養成の「社会的スキルの授業Jの検証 f人揖鵠保調整力J因子 2明 f学校生活適j本力j閤子 119 119 119 119 120 120 121 121 123 124 124 124 124 124 126 128 129 129 129 130 131 132 132 135 135 137 140 145 146 148

(10)

3 f自己肯定感j因子 4 「人間関係構築力j因子 5 「キャリア感J昭子 6 f共感性j因子 第 2節 子ども並びに教師対象のアンケート結果からの考察 「社会的スキルの授業j担当者のふり返りを中心とした全体的な考寮 2 子ども対象のアンケートによる f社会的スキルの授業j許錨とその考察 (1)授業で身に付けた力と「社会的スキルの揖業Jの評儲 (2) r社会的スキルの捜業jで行った活動で一番よかったもの (3)活動で困ったこと、いやだったこと。 (4)授業をとおして自分に身についたもの・できるようになったこと ( 5)自由記述による授業評価 3 教飾アンケートによるカリキュラムの評舗とその考察 (1) r社会的スキルの授業jのねらいと実施時期、実施方法など (2) r社会的スキルの捜業Jに期待される効果 (3) r社会的スキルの授業jの学習効果が表れたと思われる子どもの様子 (4) r社会的スキルの接業J全般、次年度へ向けての課題 第 3節 既存の質問紙調査結果からの評価と考察 1 学校生活に寓するアンケート 2 人権意識に関するアンケート 3 教育に関する 3つの達成目標における「規律ある態度Jの育成 第 5章 子どもの基礎的人間力を養成するカリキュラムの実証的研究 2 (小学校) 第1節 子どもの基犠的人間力を養成するための教膏(小学校における 3年間の実践) 1 .実践校の概要と実践までの経緯 (1)実設校について (2)実践までの経緯 2.子どもの基礎的人間カを養成する「社会的スキルの授業Jの芭的と意義 (1)子どもの基礎的人構力を養成する「社会的スキルの授業Jの自的 (2)子どもの基礎的人間力養成の f社会的スキルの接業Jの意義 3.子どもの基礎的人間力を養成する「社会的スキルの授業jの概要 (1) r社会的スキルの授業Jの内容 (2)子どもの基礎的人間力養成の f社会的スキルの揖業jの学年別年間指導計笛 150 152 154 156 157 158 159 159 161 161 162 163 163 164 165 167 169 171 171 173 176 183 183 183 185 187 187 189 189 189 191

(11)

第2節 子どもの基礎的人間力を養成する r社会的スキルの捜業Jの評価 193 子どもの基礎的人間カ尺度(鰭易版)による調査 193 (1)自的 193 ( 2)調査手続き 193 (3)調査内容 194 2 子どもの基礎的人間カ尺産(簡易版)調査の結果 194 (1) rコミュニケーションカJ因子 196 (2) r自己表現力j罰子 198 (3) r集屈参加能力J因子 198 (4) r共感性j菌子 199 (5) r自尊感構J因子 200 (6)神髄台小学校における子どもの基礎的人間カ尺度(簡易版)得点の学年比較 200 第 3節 教 部 ア ン ケ ー ト 結 果 202 子どもの基礎的人間力養成の f社会的スキルの授業jのねらいと実施時期など 202 2 子どもの基礎的人間力養成の f社会的スキルの捜業Jf二期待される効果 204 3 子どもの基礎的人間力養成の f社会的スキルの授業Jの学習効果 204 4 子どもの基礎的人間カ養成の f社会的スキルの授業j全般と次年度の諜題など 206 第4節 授業者による子どもの基健的人間カ養成の「社会的スキルの授業jの評傭 207 1 第 1学年 207 2 第2学年 208 3 第 3学年 208 4 第4学年 209 5 第6学年 209 6 第6学年 210 第5節 小学校における子どもの基礎的人間カを餐成する f社会的スキルの授業Jの考察 210 1 子どもの基礎的人間カ尺度(簡易額)得点 210 2 教師による子どもの基礎的人間力養成の f社会的スキルの授業j評価結果の考察 212 (1) r社会的スキルの捜業Jのねらいと実施時期、実施方法など 212 (2) r社会的スキルの授業Jに期待される効果 213 (3) r社会的スキルの授業Jの学習効果 213 (4) r社会的スキルの授業j全般、次年度へ向けての課語など 213 3 小学校での実践をふり返っての総合的考察 214

(12)

第 服 部 研究の成果ならびに今後の課題と展望 第 1章 研 究 の 成 果 1.現在の教育現場の要求!こ応える実用的な積撞的生徒指導プログラムの提供 2.多面的な評価方法によるエピデンスの構築 3.積犠的生徒指導のための授業に関する実証的エピデンスの獲得 4.長期的な調査研究 5.学校の教師と研究者との協働的な研究 6.研究成果の提供 第2輩今後の課題と展望 1.本研究の一般的な課錨 (1)実接研究における課題 学校の翼態把握ならびに研究への理解と教締の協力 (2)研究推進上の課題 2.本研究!こ鵠する今後の展望 (1)学校の教育課穫に組み込んだ績極的生徒指導のための授業カリキュラム開発の継続 (2)積擁的生徒指導のための授業担当者の育成 (3)予防*開発促進的な教育相談の動向を踏まえた包括的な生徒指導研究の推進 (4)小中高にわたる子どもの基礎的人間力養成のための教育体系の構築 219 220 220 220 221 222 222 223 223 223 224 224 224 225 226 227 資料 第I部 第1章 Appendi x 1 -1-1 調査研究協力依頼文書及び質問紙 第I部 第1章 Appendix1 -1-2小中学校教師が児童窓徒を指導する中で閤難さを感じる場面 第I部 第1章 Appendi x 1 -1-3小中学校教師が児輩食徒を指導する中で閤難さを感じる場面(聾困) 第I部 第1章 Appendi x 1 -1-4 どのような子どもが増えていると思いますかj集 約 結 果 第I部 第1章 Appendi x 1 -1-5 要因は、どのようなことにあると思いますかj集約結果 第I部 第1掌 Appendi x 1 -1-6 日本学校教育相談学会による学会員の現状と意識調査j結 果 第1部 第1掌 Appendi x 1 -1-7 新聞記事「親の理不思な要求、抗議!こ学校智恵j 第I部 第1掌 Appendi x 1 -1-8平 成22年産 不登校になったと考えられる状況 第I部 第1章 Appendi x 1 -1-9新18授業科自の時数増減一覧 第I部 第3章 Appendi x 1 -3 社会人基礎力 第 耳 部 第1章 Appendi x n -1-1 平 成23年疫 学校カウンセリング中級研修会 第 耳 部 第1章 Appendi x

n

-1-1 平 成23年疫 学校カウンセリング上級研修会 第E部 第1章 Appendi x

n

-1-2 新 聞 記 事 第E部 第1章 Appendi x n -1-3 新 開 記 事 5 6 8 0 1 2 3 4 5 7 8 1 1 1 1 1 1 1 1

(13)

第E部 第2意 Appendi x II-2-1 人間関係調整力j時期群の多重比較 第E部 第 2章 Appendi x II-2-2 学校生活適応力j時期群の多重比較 第E部 第2章 Appendi x II-2-3 自己肯定感j時期群の多重比較 第E部 第2意 Appendi x II-2-4 人間関係構築力j時期群の多重比較 第E部 第2意 Appendix耳一2-5 キャリア感j時期群の多重比較 第 耳 部 第2章 Appendi x II-2-6 共感性j詩期群の多量比較 n t n t n t q J q u q u n t n t n t η t n t n t 第E部 第3章 Appendi x II-3-1 子どもの基礎的人間力を養成する「社会的スキルの授業j全体計画 24 第 草 部 第3章 Appendix立一3-2 子どもの基礎的人間カを養成する f社会的スキルの授業j指導計画:中学校 1年生 25 第E部 第3章 Appendi x II-3-2 子どもの基犠的人間力を養成する「社会的スキルの捜業j指導計画:中学校2年生 26 第E部 第3章 Appendi x II-3-2 子どもの基礎的人間力安養成する「社会的スキルの操業J指導計画:中学校3年生 27 第E部 第3章 Appendi x II-3-5 学習案内J (1年生 28 第E部 第3章 Appendi x II-3-6 人権意識に障する鵠査J結果と FいじめJ認知件数(経年比較) 29 第E部 第3意 Appendi x II-3-7 子どもの基織的人間力尺麗 30 第E部 第3章 Appendi x II-3-8 子どもの基礎的人間力を養成する f社会的スキルの授業Jのふりかえり 31 第E部 第3章 Appendix耳-3-9 社会的スキルの授業j主捜当者打ち合わせ資料 32 第 茸 部 第3章 Appendi x II-3-10 子どもの基礎的人間力を饗成する f社会的スキルの捜業J指導略案と教材例 33 第E部 第3意 Appendi x II-3-11 多藁比較一覧 39 第E部 第3章 Appendi x II-3-12 社会的スキルの綬業jを受けてのふり返り 40 第E部 第3章 Appendi x II-3-13 生徒の授業評錨 41 第H部 第3章 Appendi x II-3-14 社会的スキルの授業jに対する生徒の評価(自由記述一覧) 第E部 第4章 Appendi x II-4-1 答辞J 第H部 第4掌 Appendi x II-4-2 社会的スキルの接業j担当者の評錨 第 誼 部 第4章 Appendix耳-4-3 社会的スキルの捜業j教師アンケート用紙 第 耳 部 第5章 Appendi x II-5-1 第1学年学級活動学習指導案偶 第 亙 部 第5章 Appendi x II-5-2 第ヰ学年学級活動学習指導案例 q u n H v n v n 4 4 ・ n o a 斗 戸 0 7 ' 7 ' 7 ' 7 '

(14)

本論文「積極的生徒指導のための授業カリキュラム開発についての研究一子どもの基礎 的人間力養成の授業実践とその有効性の検証は、生徒指導を正規の授業として行うこ とを提案するための試案である。その目的は、第1に、生徒指導を授業として行うことに よって生徒指導の方法を明確にし、より効果を高めるためであり、第 2に、現在の生徒指 導上の問題行動の低減を図るためには、子どもの基礎的人間力養成のカリキュラムを組み、 これを全校あげて取り組むことが喫緊の課題だからである。 本論文は 3部で構成されている。第 I部では、子どもの基礎的人間力に関する理論的な 考察を行い、第H部で、子どもの基礎的人間力を養成する授業実践についての検証を行い、 第田部で、本研究の成果ならびに今後の課題と展望について論じる。 まず、本論文における問題の所在、研究の目的と意義、研究の方法、論文の構成につい て述べるG 1 .問題の所在 現在、義務教育段階の小中学校の教室には、陰湿深刻化する“し1じめ" I)問題、不登校の 増加、暴力行為の低年齢化、いわゆる“学級崩壊"等、早急に解決してし、かなければなら ない問題が山積している。また、少年非行、少年犯罪、高校段階における不登校、中途退 学等、子どもの問題は校種を超えて拡大傾向にある。例えば、文部科学省初等中等教育局 児童生徒課が、平成23年 8月 4日に公表した平成 22年度「児童生徒の問題行動等生徒指 導上の諸問題に関する調査」の速報による主な特徴は、以下の通りである 2)。 ①小・中・高等学校における暴力行為の発生件数は約

5

.

9

万件(前年度は約

6

.

1

万件)、 児童生徒 1,

000

人当たりの発生件数は

4

.4件(前年度

4

.

3

件)に微増。 ②小・中・高・特別支援学校における、いじめの認知件数は約 7.5万件(前年度は約 7.3 万件)で、児童生徒

1

0

0

0

人当たりの認知件数は

5

.

6

件(前年度

5

.

1

件)に増加。 ③小・中学校における、不登校児童生徒数は約 11.5万人(前年度は、約 12.2万人)で、 不登校児童生徒の割合は1.

14%

(前年度1.

1

5

%

)

に微減。 ④高等学校における不経校生徒数は約5.3万人(前年度は、約 5.2万人)で、不登校生徒 の割合は1.

66%

(前年度1.

55%)

に増加。 -1・

(15)

⑤高等学校における中途退学者数は約5.3万人(前年度は、約 5.7万人)で、中途退学者 の割合は1.7%(前年度1.7%) 0 ⑥小・中・高等学校において自殺した児童生徒は 147人(前年度 165人) しかしながら、これら児童生徒の生徒指導上の諸問題に関する統計値は、子どもの実態 を必ずしも正確には表していない。報告されている子どもの問題数は氷山の J 角にすぎな いというのが、長年教育現場で子どもと向き合ってきた筆者の偽らざる感想、である。 例えば、食事を摂らない、著しい偏食、場面繊黙、集伺遊びができない等、周囲に迷惑 をかけてはいないが看過できない子どもがいる。また、落ち着きに欠ける、やってはいけ ないことを意図的に行う、暴れる、大声でわめく等、非行とは異なるが学級生活に支障を 来す子どもが目立つようになっている。現在の教室には、以上のように問題行動として取 り扱うほどではないが、気になる子ども、いわば問題化傾向の子どもであふれでいる。 V のような子どもの状況に戸惑いながらも、個々の教師は日々教育実践に励んで、いるが、 体的な教科指導及び生活指導の場面において、子どもの指導に行き詰まる場面が増えてい る。しかし、これを教師の指導力不足もしくは指導力の低下と批判するだけでは、現状の 打開は難しい。というのは、現在、子どもの問題は、 1教師の指導を超えている事例が多 くなっており、また、問題が発生してから対症療法的に対応する指導だけでは追いっかな し1場合が多し、からである。 子どもの問題行動は、ただ問題視して、やっかいなもの、除去すべきものとして見るの ではなく、基本的には社会や大人の代表者としての学校や教師に対して、教育のあり方に 関する問題を突きつけている指標と捉え直す必要がある。問題行動をこのように子どもか ら教師に出された問題であると捉え直さない限り、子どもの問題行動の本質は見えてこな い。子どもの問題行動をこのように捉え直すと、問題行動は又違った色彩を帯びてくるの であり、別の形からの解決へのアプローチの示唆が得られるのである。これは一つのパラ ダイム

(

p

a

r

a

d

i

g

m

)

転換である。本論文では、このように子どもの問題行動を捉え直すこ とによって、今、学校に必要な教育の可能性を追求する。 2. 研究の目的と意義 子どもの問題行動の理解と対応のために、まず行わなければならないのは、子どもの実 態を把握することである。子どもの実態を把握するために、本研究では、子どもの問題行 動の背後にある様々な要因の中でも社会性と社会性の基盤となる力に注目したい。社会性 . 2・

(16)

は、多義的な概念であり、これについては、後の章でさらに詳しく述べるが、本章では、 とりあえず、社会性を、人間関係をつくる力、コミュニケーション能力、規範意識等を含 んだ「入と関わる力j としづ概念としてゆるやかに捉えておきたい。 子どもの社会性を育むためには、子どもの発達の段階において必要となる体験がある。 例えば、家庭生活における親や兄弟とのふれあい、地域社会における異年齢集団遊び、基 本的な生活習慣の定着等、就学前に一定レベノレの社会牲が育まれていることが重要である。 子どもは、これを踏まえて学級集団の中で自分とはちがう他者と出会い、他者との相互作 用により集団にふさわしい生活様式や知恵、を習得していくのである。 しかしながら現代社会では、子どもにとって基本的な集屈である家族、遊び仲間、近隣 の地域集団の機能が急速に失われつつある。その結果、今や子どもの「人間性の養成所J3) は家庭でも地域でもなく、学校しかないのが実'清である。就学前の子どもに社会性が十分 には育まれていないことは、学校教育の前提が崩れていることを意味する。学校は、現在、 否応なくその前提である家庭や地域での社会性育成の欠如の補完を担わなければならなく なっている。つまり、学校は、学校教育の前提であるはずの人間としての基礎的な力をも、 まず養うところから出発せざるを得なくなっているのである。 本来、学校は、「家族から世界への移行を可能にするため、われわれが家庭の私的領域と 世界との間に挿入した制度J4)であり、家庭と社会との中間的な位置を占め、両者を媒介す る役割を果たす所であった。しかし、現在の子どもたちは就学前に人間として必要な経験 を欠如しており、これによって現在の子どもたちは、社会性並びに社会性の基盤となる 質や能力を欠いている。これは、子どもの成育にとって看過できない重大問題であり、 者はこれを現代の「育ちそびれJ5)と呼ぶことにしたい。現代の子どもの問題行動の根本に は、この現代の「育ちそびれjがあるゆえに、これを補完して子どもの健やかな成長を保 証するとなると、事はどうでし¥1教師だけの問題ではなくなってくる。 子どもの問題行動を低減していくためには、社会性並びに社会性の基盤となる「人間と しての基礎的な力(以下、「基礎的人間力Jと略す)の養成が必要である。本来、これは 家庭や地域で育まれるものであるが、それを望めない現状では、これを学校で行うしかな いのが実情である。基礎的人間力の養成は、 1人の教師が 1時期もしくは特定期間やれば よいという話ではなく、ゃるからには学校あげてのプロジェクトとして、すべての子ども を対象とした意図的計画的なカリキュラムのもとに取り組む必要がある。 -3耐

(17)

従来、子どもの問題行動に対しては、ともすれば対症療法的なアプローチによって治療 することを目的に指導を行ってきた。しかし、上述のように、子どもの問題行動の根本に は、人間としての基礎的な力の欠如、つまり、「基礎的人間力」の「育ちそび、れ」にある以 上、これを育むには、教科指導とは異なる観点から出発しなければならない。 本論文では、基礎的人間力養成のために、そのカリキュラムを組み、これを学校あげて のプロジェクトとして実施し、その効果を実証的に検証しているが、その目的は、教育現 場との緊密な連携及び協{動体制のもとに、子どもの「基礎的人間力jを養成する教育実践 のエピデンス構築を行うことによって、今後の学校教育における生徒指導に従来の機能論 を超えた新しい可能性を開くことにある。 なお、本研究では、教育課程に位置付けられた授業を使って実践することを目指したの で、研究協力校を公立小学校1校と公立中学校 1校の合計 2校に眼定している。また、本 論文でいう子どもとは、特に断りがない限り、小学生および中学生の児童生徒を意味する。 3. 研究の方法 現代の子どもに欠如している社会性の基盤となる子どもの基礎的人間力を養成するため には、現在の学校制度の中でそれを学校教育全体の中でどのように位置付けていくのか、 そのために、どのような授業をすれば効果的なのか等について、エビデンス

(

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引 に照らした研究は少ない 7)。例えば、日本の小中学校を中心とした教育現場で取り組まれて いる子どもの社会性に関する実践研究は、倍々の学校における研究が独立して行われてい るために分断されており、それぞれの研究の分析方法では統一性や関連性が意識されては いなし10 その結果として、これまでの研究成果が体系的に積み重ねられてこなかったため に、実践研究で得られた研究成果に対する信頼性は低く、また、類似する研究が断片的に 取り組まれているのが現状である。この現状を改善していく上でも、エビデンスペースの 研究を構築していくことが必要なのである。 エピデンスに基づく(または照らした)教育そのものについては、

OECD

報告書

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2

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7

年)に、その課題が6点挙げられている 8)。その中でも次の3点は重要である。 ①多面的研究の必要性:

r

実証的な研究の成果が安定的なものであるためには、検証可能 であることJ、「規模が大きく妥当性が高いこと」、「複数の専門家によって、復数の視 点や異なる手法による多面的な研究が行われることJ -4・

(18)

②仲介機関の重要性:

r

ある教育方法について、どのような効果があるのか、どのような 場合にどのような配慮、の下に用いるべきか、そして教師はどのような能力を身に付け ていなければならないか、等についての研究成果を提供する仲介機関jの役割が教育 実践にとって役立つ。そのためのここピデンスセンターの必要性。 ③教師の研究能力開発:r臼本では教舗による授業研究が盛んであるが、そのことがむし ろ、教師の世界で実践研究が完結してしまい、やはり教育研究者と現場との距離は大 きいことj、また、「先進校における優れた実践研究の成果を、エピデンスとして他校 に普及することができるかについても課題が残るとし1う指摘J 本研究を推進する上においては、上述の3点に留意していくこととしたい。 本論文では、現在の子どもの問題行動や教育問題は、子どもの発達の段階に応じた 礎的人間力」が就学前に十分には保証されてこなかった事に起因するとし寸認識に立ち、 現代の学校教育の中でそれを補完するための方法と、それをエピデンスペースの研究とし ていくために、多面的研究、仲介機関、教師の研究能力開発の3点をふまえ、小学校と中 学校を研究フィールドとした実践的研究に取り組む。 4. 本論文の構成 本論文は、第 I部として基礎的人間力の理論的研究、第H部として子どもの基礎的人間 力養成の実証的研究、第田部として本研究の成果と今後の課題と展望の3部構成になって いるO 第 I部では、子どもの基礎的人間力に関する理論研究として、基礎的人間力の構成、 どもにとっての基礎的人間力の意義、子どもの基礎的人間力養成のための方法と教育の可 能性について考察する。まず、現代の子どもの状況について、筆者が行った質問紙調査や、 教育現場における教師の観察等を通して、その実態を把握する。その上で、現代の子ども に欠如している基礎的人間力及び子どもの「育ちそびれ」への対応として、学校教育にお ける積極的生徒指導としての授業カリキュラム開発の必要性について論じる。そして、現 代の子どもに必要な基礎的人間力の構成と意義についての考察を行い、基礎的人間力の概 念を整理するO 第狂部では、子どもの慕礎的人間力の養成について、学校教育における教育課程に位置 付けた生徒指導の授業を手がかりとして実証的に研究を進める。具体的には、社会性の基 盤である子どもの基礎的人間力を養成する方法について、生徒指導の機能を手がかりとし . 5・

(19)

て論じるが、まず、子どもの社会性に関する先行研究を検証した上で、子どもの基礎的人 間力測定のための方法を述べ、次に、子どもの基礎的人間力を養成する学校教育の実証的 研究として、埼玉県鷲宮町立東中学校における実践と、兵庫県神戸市立神陵台小学校にお ける実践を整理し、その教育効果について、それぞれ検証を行う。検証には、筆者が作成 した尺度に加えて、子どもの自由記述、教師からの評価、学校独自のアンケート評価等、 多面的に考察することで、エビデンスを構築していくことに努める。 第関部では、本研究の成果と、今後の展望と課題について述べる。 -6・

(20)

註) 1)いじめの定義は、文部科学省初等中等教育局児童生徒課「児童生徒の問題行動等生徒指 導上の諸問題に関する調査Jによれば、以下の通りである。 f本調査において、伺々の行為が「し1じめJに当たるか否かの判断は、表面的・形式的 に行うことなく、いじめられた児童生徒の立場に立って行うものとする。「し、じめjとは、 f当該児童生徒が,一定の人間関係のある者から、心理的,物理的な攻撃を受けたこと により、精神的な苦痛を感じているもの。Jとする。なお、起こった場所は学校の内外を 問わない。

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平成

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年度調査結果には、東日本大震災の影響により調査の実施が困難であった岩手 県、宮城県、福島県の結果は計上されていなし、。

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Charles Horton C

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,大橋幸・菊池美代志訳『社会組織論』青木書応、

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Social Organization study ofthe larger mind,

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5)辞書に拠れば、「そびれるJ とは、「その行為をする機会を失う J、「機会を失って、とう とうしとげないでしまう。しそこなう。しこじれる。Jとある。一般的には、動詞の連用 形に付けて用いる言葉である。 6)エピデンスとは、「研究の成果であることを内包しており、エビデンスに基づくというこ とは、質の高い研究に基づくということjである。「エピデンスという考え方は医療の領 域jから始まっている。

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年に英国の医師で疫学者の

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は、大半の儲床行為が科学的根拠に基づいていないことを指摘し、その上で、 ランダム化比較試験

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の重要性を強調した。このような考え方は、

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することによって得られるの が最良のエピデンスとされる。J 1エビデンスの考え方は医療から公衆衛生や医療政策へ、 さらに社会政策全般に拡大されるようになったんなお、日本の教育界で、エピデンスとい う吾葉が広く知られる契機となったのは、

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年の中央教育審議会の義務教育特別部会 における議論の提唱からとされている。 惣脇宏「より一層エピデンスに基づいた教育政策と実践をJ

OECD

教育研究革新セン ター編著岩崎久美子、菊津佐江子、藤江陽子、豊浩子訳『教育とエビデンス 研究と 政策の協伺に向けて

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河村茂雄『データが語る学校の課題①

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年。 同 『データが語る子どもの実態②J図書文化社、

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年。 河村は、 f学級集団アセスメント Q-UJの結果から、 f学力向上、学級の荒れ、いじめj 及び「学習意欲、友だち関係、規範意識Jを検証している。そこでは、子どもの問題行 動に対して、 f積極的な予防的取り組み」の必要性を示している。

8

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OECD

教育研究革新センター編著、

-7

(21)

I

積極的生徒指導のための授業カリキュラム開発に

ついての理論的研究

1

章 現 代 の 子 ど も の 状 況

本章では、指導困難な子どもの増加について論じるとともに、 1998(平成 10)年から 2005 (平成

1

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)

年の間に、筆者が埼玉県公立小中学校の教師ならびに日本学校教育相談学会会 を対象として実施した予備調査と本調査の結果を基にして、学習面、生活面で指導が難 しくなってきている子どもの状況について述べる。その上で、このような指導困難な子ど もの増加をもたらしている家庭や保護者の状況と学校の変化について考察する。 さらに、以上の考察を踏まえて、現代の子どもに必要な「人間として必要な基礎的な力」 (H uman Basic Skills、以下、「基礎的人間力」と略す)は、学校で養成せざるを得なくな っている現状を述べるG 第

1節

指導因難な子どもの増加

1 .子どもの友人関係や環境の変化 日常生活における子どもの変化について、「友人関係の変化J

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子どものあそびの変化J

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環 境の変化」の3つの視点から論じる。 ( 1 )友人関係の変化 ①本音を隠し建前で、つきあう友人関係 教青現場で子どもを観察していると、多くの子どもは、友だちと本音で、ぶつかり合 うことによる心理的な痛みを回避し、上辺だけを繕うような友人関係に終始する傾向 が見られる。この点について、大平 (1995) 1)が指摘する若者の「意味のねじれた“や さしさ勺や、教育心理学でいわれる対人関係における心理的距離の比喰「山アラシ・ ジレンマ」は、現在の子どもの人間関係を考える手がかりとなる。 大平は、若者の“やさしさ"は、濃密な人間関係に伴う煩わしさや、心の葛藤およ び痛みを回避するために、いわば、自分が嫌な思いをしないために相手に対してやさ しく対応する言動の現れであると分析している。また、藤井2)は、「山アラシ・ジレン マ」で例えられる二者間の心理的距離の場合は、相互に試行錯誤しながら、おし、に 傷つけ合わない適度な問をとるようになることを説明している。 -8・

(22)

筆者の経験した教育臨床においても、友人をうまくつくれない子どもや、対人関係 を深めることを不得手とする子どもは増加傾向にある。思春期の子どもの友人付き合 いでは、相互の領域を侵さないという了解があり、本者の話や内面に関わることは、 あまり話さないようになっているのが実情である。このような他人とiの間に心理的距 離をとる傾向が、青年を中心として広がってきている点については、すでに fNHK 世論調査部の調査」結果3)や、ヂ石による中学生の「希薄な友人関係J4)、ベネッセ教 育研究所の誠査「モノグラフJ(小学生ナウ、中学生の世界、高校生)5)等で示されて いる。 ②ヴアーチャルな人間関係の出現 現代の子どもは、誰かと一緒の時間と空間を共有できれば友人であると認識される。 例えば、ケータイ上での「メル友」や、コンピュータ・ネットワーク上のコミュニケ ーション (Computer-mediatedCommunication : CMC) のヴアーチャルな世界にお ける人間関係であっても、アドレスが登録された時点で友人となるのである。 近年では、スマートフォンの普及によりフェイスブック (Facebook) に代表される ソーシャル・ネットワーキング・サービス (SocialNetworking Service : SNS) が、 子どもにも利用できるようになったために、直接には面識のない友人関係も見られる。 例えば、スマートフォンにおける「ライン (LINE)Jのコミュニケーションでは、こ の問題が顕著に現れている。また、極端な例では、隣同士で、座っているにも関わらず SNSを通してコミュニケーションをとる友人関係も現れるなど、ヴアーチャルな人間 関係、が子ども世界に進行している。 このように現代の子どもの友人関係は、これまでの「友人Jや「親友J とは、その 概念が変化してきている。つまり、「うわべJだけの表面的な浅い関係になってきてい るのである。これが大人たちには、子どもが変わってきたと映る一つの要因である。 ( 2 )子どものあそびの変化-集団外遊びの減少-高度経済成長期頃より「子どもの遊びが変化してきたJ6)ことが指摘されてきたが、 現代においては、ますます子どもの生活空間から小)11のいう「現実の遊びJ7)が失われ ている。「現実の遊び」とは、複数の子ども間に双方向のコミュニケーションがあり、 社会的相互作用および感情の交流を伴う遊びのことを意味しており、その典型は異年 齢による集団外遊びである。従来の伝統的な集団外遊びに見られる子どものあそびに は、物理的条件(時間、空間、仲間、方法)8)と精神的条件(信頼、思い遣り)ゆが必 制 9・

(23)

要であるが、現在では、そのことが当てはまらなくなりつつある。特にファミコン 10) の登場と急速な普及により、子どものあそびは、集団外遊びから少人数の室内遊びに 変わってきた。すでにファミコンが大ヒットした 1985 (昭和 60) 年の翌年には、ファ ミコンに関する論文 11)が発表され、子どものあそびと人間関係に関して様々な危倶や 指摘がなされているが、次にそれらを年代順にあげてみる。 禁藤 (1986) は、ファミコンを「ひとりでも十分たのしく遊べるように設計された 遊び道具j と捉えるが、それにも関わらず子どもたちがお互いの家を訪問して集まっ てファミコンをする理由を考察し、そこには「ひとりになりたくなしリという子ども たちの気持ちが潜んでいる点を指摘した上で、集団外遊びからファミコンによる室内 あそびに変化することにともなう子どもたちの人間関係の危うさを示唆している。 中原 (1989) は、ファミコンによる子どもの人格形成上のゆがみの影響を、相談室 での集団不適応を主訴とする小申学生の事例をもとに指摘する。また、土橋 (1989) は、ファミコンで遊ぶ子どもの実態について調査データを踏まえて紹介し、ファミコ ン・ブームは「都市の生活環境の問題と、学習塾の隆盛そしてその中で遊ばなくなっ た子どもたちj という問題を反映している状況であると指摘している。 一方、新井 (1989) は、教室でファミコンがどう扱われているのかを述べ、子ども はファミコンだけでは昔のギャング集団のような体験ができないために「真のj仲間 づくりはできないと批判している。 さらに深谷和子・深谷呂志 (1989) は、子どもはファミコンに代表される「貧しい 遊 びJによって孤立化して、直接体験を失った子どもが、かつての子ども像とまるで っていることに危機感を抱き、「子ども期には子どもはヒトの中で、青つべきであり、 メカのあいだで育てるべきではなしリと提言している。 ファミコンの登場以降、家庭用ビデオ機器およびビデオソフトの普及により家庭で 気軽に映像作品を楽しめるようになった。また、子ども向けの雑誌をはじめマンガの 発行部数は飛躍的に伸びてきている。これらの影響をうけて現代の子どもは、幼い頃 より室内で個々に漫画を読むことがあそびであり、ビデオ (VHS、。マックス、 DVD. Blu -rayDisk)を観ることがあそびであると捉えている。しかし、これらは、小

J

11のい う「遊ばない遊びJ12)の事例そのものである。そしてこの「遊ばない遊び」の参加メン ノミーになるためには、既知の間柄であることが必要で、誰かとあそぶには、携帯窓話 -10聞

(24)

やメール等で、予約を取らなければならないのである。このようにして、現代では、不 特定多数で行う子どものあそびは減少している。 田中 13)は、向山大学が小学校4'"'-'6 を対象に実施した「子どものメディア体験 と遊び」アンケート調査の「きのう放課後にした遊びJで、小学生のあそび、の特徴を 分析している。そこでは、「ゲームをしたJ1テレビを見たJ1マンガと本」が上イ立項目 となっており、あそんだ人数は、「自分一人J (52%)、12'"'-'4人J (36%)である。外 あそびでは、野球やサッカーといったスポーツはするが、昔ながらの異年齢による集 団外遊びはしない傾向にある。 孤独なゲームあそびや少人数でのあそび、そして“ルールの決まったスポーツ"が あそびの中心になり、従来の地域社会における自然発生的で、異年齢集団によるノレー ルも柔軟な集団外遊びは少なくなっている。このことによって、子どもは、あそびを 通しての人間関係を構築していく力や調整していく力が育ちにくくなっている。特に、 異年齢による集団外遊びの欠如は、人間関係の基礎的スキルを含む子どもの基礎的人 間力が「育ちそび、れjる要因となっている。つまり、子どものあそびが社会性を育む 「教育的役割J14)を持つことは言うまでもないが、子どもの社会性の欠如が問題とされ るようになった背景には、あそびの変化があるのである。 ( 3 )放課後の環境の変化 ①道草の消滅 かつて子どもは、学校の帰りに道草をすることが、友だちとの屈託のない語らいの 時間となっていた。学校で少々いやなことがあっても友だちに話を開いてもらうこと で“心の洗濯"をして、すっきりした気分で帰宅することができたのである。このよ うにかつて、子どもは、道草などのように何気ない無目的な時間を友だちと過ごすこ とで、自然に白己開示を行い、友だちの話に耳を傾け(傾聴) 友だちを支持したり励 ましたり したりすることを通して相互の粋を深めていた。道草には、友人関係の 形成および促進機能があったのである。 現在、道草は完全に消滅している。その理由は、第1に、子どもが被害者となる犯 罪事件の発生や自宅近隣の遊び場の消滅である。第2は、次に述べるように放課後の 子どもの多忙さである。現代の子どもは道草すらできないほど多忙な生活を送ってい るのである。 -11・

(25)

総数 ②子どものあそぶ時間の減少 内閣府政策統括官が実施した「低年齢少年の生活と意識に関する誠査J15)によれば、 現代の子どもは、習い事や学習塾等で忙しく、 l週間の半分以上を学習塾普い事に通 っている子どもが約3訴にも達しているため(表1-1-1)、子どもによっては、 1週間 前から予約を取らないと「遊べない子ども」もいるというのが現状である。 また、(表 1-1・2)にみられるように、現在の子どもは、放課後には、習い事、学習 塾、スポーツクラブ等に向かうために慌ただしく帰宅の途につかねばならず、こうし た子どもの移動のために告家用車で送迎をする保護者の姿を見ることも特段珍しい光 景ではなくなっている。このよう どもの遊ぶ時間は著しく減少しているのである。 表1-1欄1 子どもの学留塾習い事の頻度 該 当 者 数 1日 2日 3日 4日 5日 6B 7日 その他 ( 1614人) 9も 19.0 26.0 25.3 14.5 8.2 4.0 2.4 0.7 表 1-1-2 子どもの学習塾習い事の種類16) 音楽(ピア ( 学習奇襲、 人工レク野E章、サッ英語教 之ングス柔道、剣 ンス工ア家縫教師 その俄 {可もしてい富十 (MT) 該 当 者 数 予 備 校 一、体操室・英会 習字 クールな送、空手そろばんロビうスなに習う 絵 麗 ない 話 ど) など ど) 2143 39.2 17.5 14 14 12.9 9.9 4.7 3.5 2.9 1.1 5.5 24.7 230.28 〔小中学生男1)) 小学生 1105 30 22.4 21.4 17.5 17.8 15.9 6.4 7.9 5.2 1.7 1.8 9.2 18.6 257.5 中学生 1038 48.9 12.3 6.2 10.2 7.7 3.6 3.6 1.3 1.6 4.1 0.3 1.4 31.2 201.3 〔性・小中学生男1]) 努小学生 541 30.9 8.9 37 15.3 13.7 16.6 9.8 5 - 2.2 0.9 6.7 19.4 247 中学生 528 51.5 3.8 10.2 8.9 4.4 3 4.9 1.5 - 3.6 0.2 1.9 31.6 193.9 女小学生 564 29.3 35.5 6.6 19.5 21.8 15.2 3.2 10.6 10.3 1.2 2.7 11.7 17.7 267.6 中学生 510 46.3 21.2 2 11.6 11.2 4.1 2.2 1.2 3.3 4.7 0.4 30.8 209 表 1-1・2では、放課後に学習塾習い事等、「何もしていない」子どもは小学生で、 18.6%、 中学生で

3

1.2%しかいない実態が示されている。こうして現代の子どもの対人関係は、 習い事や塾、スポーツクラブなどの特定の空間で出会う子どもたちに限定される傾向が あり、子どもたちの人的交流は、ますます狭く固定化する傾向が強まっているのである。 以上、日常生活における子どもの友人関係や環境の変化について述べてきた。 これまで述べてきたように、現在では、子どもの生活空間から「現実の遊びjが失わ れ、子どもが「基礎的人間力j獲得に必要な人と関わる力を、日常生活の中で自然に修 得していくことが難しい状況にある。 次項では、学校における子どもの変化について、主に教師の視点から検証する。 -12・

(26)

2. 教 部 の み た 子 ど も の 変 化 対 教 師 ア ン ケ ー ト 諦 査 結 果 よ り ( 1 )第~ 1回 調 査 [1998 (平成 10) 年]埼玉県の教師を対象とした調査結果 では、子どもの変化を把 埼玉県教育心理・教育相談研究会 17) (以下、研究会と略す) 握するために、小中学校の教師を対象とした質問紙調査を実施した 18)。調査対象者は、 埼 玉 県 公 立 小 学 校 教 諭51名(男性 16名、女性 35名)と中学校教諭 22名(男性 15名、 の73人、学校数は 9校である。 女 性 7名) 調査対象者の校種、性別、経験年数53IJに整理した人数は、表1-1・3に示した通りであ なお、質問紙の詳細についてはAppendix1 -1-1に示した。 る どもJ 「指導の限界を感じる、困っている、悩んでいる 質 問 項 目 は 次 の3点であるO の有無、「指導に限界を感じる子どもの状況J についての自由記述、「指導に限界を感じ る子どもの人数j。次に、当時の埼玉県の小中学校教師が感じていた子どもの変化を示す。 第1回調査の対象者 一 性 一 女 校 一学一 性 男 女 性 校 一学一 中 一 性 男 表 1-1・3 合計(人) 5年未満 5年-10年 10年-20年 20年以上 合計 aunO ヴ IauTnd ndnt 吋 I ハ U n t n d 司 L 吋 , , ハ υ 円 tnHMa 品 T 広 JV d E E E ﹄ 斗 n U 守 I a 且 T k u t g 一 曾E 円 d 内 ぷ n t n O 8 咋 円 。 J B E 経験年数 ①質問「指導の限界を感じる、困っている、悩んでいる子どもがし、ますかJ これに対して、中 であった。 (31.27%)、九、いえJ(66.67%) IJ , ~j吋交で、は、 「はしリ であった(表 1-1開4)。 中 学 校 教 師 学校では、「はしリ (77.27%)、川、いえ J (22.73%) の方が、子どもの教育に苦労していることが顕著に表れているが、小学校においても お よ そ3分の 1の教師が指導の限界を感じている。本結果は、小学校における「学級 がうまく機能していない状況(1,;¥わゆる学級崩壊)が深刻な教育問題となった時期 19) タであり、埼玉県においても教師が小学校の段階から子どもの指導に困ってい -13・ る状況が示されているO の デ

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表 1-1・4 指導の限界を感じる子どもの有無 小学校 (人)

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中学校 (人)

Z

合計 (人)

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lま い 16 31.37 17 Yλ27 33 45.21 いいえ 34 66.67 5 22.73 39 53.42 無回答

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0.00 J.37 合計 51 100. 00 22 100. 00 73 100.00 調査対象の教師が指導に困難を感じる子どもの性別内訳は、男子のみが 16名、女ー のみが 6名、男女混合が 10名であった。また、教師が指導に困難を感じる子どもにつ いて!職場内で 「話合いJや 「相談Jをしているか否かについて閉し1たところ、33名の うち 32名の教師が、1人で、は問題を抱えきれずに周囲に協力を求めていた。 ② 「指導に限界を感じる子どもの状況Jについての自由記述 EI記述で得られた回答は、KJ法により校種別に子どもの問題を集約した。KJ法 に参加したのは、筆者を含めて 3名。内訳は、小学校教諭1名、中学校教諭 2名の巾 駆教師から成り、3名は大学院で教 小学校で、は、問題行動に関する 21項目を抽出した。主な分類項目は、学力、粗暴え 行動、 ~J さ、 および発達障害や保護者に関する内容である。 以下、 子どもに関する概 要を示しておく。 {小学校](複数回答) ア)学力に関する内容 a.学力が低い b.学力不振 c.無気力 d.耐性の著しい欠如 8.集中力がない イ)粗暴な行動 a.学級内での トラブルが多い b.鹿理屈が多い c.すぐに暴力をふるう d.悪口がひどい 8.かっとしやすい ウ)幼さ、および発達│雄割 a.自己中心的な言動 b.給食を食べず大声で騒ぐ c.反省が浅く同じことを繰り返す d.自己中心的で交友関係が不得手 8.情緒障害による奇f -14・

(28)

中学校では、 11項自の問題行動を抽出した。分類項目は授業と問題行動である。 【中学校

1

(複数回答) ア)授業に関する内容 a.低学力 b.授業中の出歩き c.授業ここスケープ d.授業妨害 イ)問題行動 a.e3己中心的な迷惑行為 b.異装 d.性非行 e.不登校£対人恐

i

布症 g.情緒障害 h.規範窓識の希薄さ 本調査の教師が指導に困難や限界を感じている子どもの具体的事例には、「小学校入 学時から、じっと座っていられない、話を開けない、幼児性が強し1など、低学年段階 で学校教育を受けるための基本的な力が身についていなし'J 等の実態と、小中学校と もに「情緒障害J(当時の表現)が挙げられているように、特別支援教育の対象となる どもの指導に苦労している状況が回答されていた。本調査は特別支援教育20)が法的 根拠を持ち施行される前であるが、 LDチェックリストを用いた調査21)も行っているO これは、発達障害を抱えもつ子どもへの支援が、新たな教育問題として注目されるよ うになってきた当時の状況を反映して、実態調査の一環として実施されたものである。 しかしながら本論文では、特別支援教育に関する論考を行う章は設けていないため に、 LDチェックリストの結果については省略する。 調査結果において、小学校と中学校の指導に限界を感じる子どもを比較すると、中 学校では反社会的な問題行動が多い。このことは、非社会的な問題行動よりも、集団 生活の中で周囲に迷惑をかける反社会的な問題行動をとる子どもの方が、指導上、よ り切実な問題であると意識されていることを示している。 自由記述内容を子どもの発達段階で整理すると、小学校低学年段階で、は f基本的な 対人関係が築けなし 'J

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基本的生活習慣が身についていなしリ、小学校中学年段階以降 は「低学力J

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家庭との連携の難しさj、中学校段階は「非行jが、教師にとって指導 の限界を感じて困ったり悩んだりする子どもで、あった。また、教師が回答した子ども の問題行動の特徴は、耐性や規範意識の欠如、社会的自我の未熟、学年相応の社会性 が十分に育っていないことを挙げている点にある。 締 15.

(29)

③学級内の「指導の限界を感じる子どもの人数」 教師が指導に限界を感じる子どもの人数の回答では、 5人 (8学級)、 7人 (1学級)、 10人 (1学級)、 13人 (1学級)、 17人 (1学級)、 27人 (1学級)であった。このよ うに教師は、極めて厳しい状況にあることがポされていた。 10 入 ~27 人という子ども が指導困難もしくは限界であるということは、いわゆる学級崩壊の状態にあるのでは ないか、と考えざるを得ない人数である。 以上の結果を踏まえて、さらに詳しい状況を把握するために、新たに第 2回予備調 査と本調査を行った。 ( 2 )第2回調査 筆者は、第1回調査の結果を受けて、より詳細なデータを収集するために、「小中学校 の教師が子どもの問題や課題と感じていること」について、新たに次の 3つの調査を行 った。第 1の調査は予備調査、第 2の調査は調査対象を埼玉県内全域に拡大して実施し た本調査 1、第 3の調査は、筆者の実施した本調査 1を基礎調査として臼本学校教育和 談学会が実施した全国調査としての本調査2である。 次に、これらの調査結果から、教師からみた指導困難な子どもの増加の実態ならびに 教師の問題意識を述べる。 ①予備調査 [2001 (平成 13) 年]22)埼玉県の教師を対象とした調査の結果 研究会の専門委員(現職の小中学校教師)24名を対象に、「学級担任が感じる子ども の課題や問題Jについて自由記述で回答を求めた。この予備調査は、教育相談に関わ る教師だけが回答しているために偏りがある可能性もあるが、回答者は全員が学級担 任をしていること、教育相談に関する様々な研修を受けているために広い生徒理解の 視点からの回答が期待できることから調査対象者とした。この予備調査により得られ た子ムどもに関する課題や問題を整理すると、次のような点が指摘されていた。 ア)人間関係に関すること a.人と関わり合う力が弱くなってきている b.対人関係の能力が身についていない C.自分の気持ちゃ思いを適切な言葉で表現できないために起こるトラブルが多い d.人間関係をつくるのが難しい -16・

(30)

イ)個人的資質や家庭に関すること社会性に関すること a.耐性の欠如 b.集団に参加できない C.目を見て話すことができない d.相手の気持ちを察することができない e.親からの虐待が身近にある このア (4項白)、イ (5項目に挙げられているように、当時の子どもの課題や問 題は、人間関係に関する項目が多いG また、親からの虐待という新しい問題が挙げら れている点にも着許しておきたい。 埼玉県の教育現場では、指導に限界を感じる子どもの状況や子どもの課題や問題、 、換えるならば、学校における問題の一因は、子どもの変化にあると意識されてい たことが、先の2つの調査の結果には示されている。 ②第 2田本調査 1 [2002 (平成 14)年]埼玉県の小中学校教掛から見た教育困難状況 様々な児童生徒の生徒指導上の問題行動の要因は、子どもが変わってきている点に あると確信を得た筆者は、調査対象を拡大して、

r

IJ

I十I学校教師から見た学校教育にお ける教育困難状況の実際jに関する実態調査23)を実施した。 ア)誠査校および調査対象者の概要 調査対象校は、埼玉県内の東西南北全地域から小学校 23校、中学校 21校、合計 44校である。対象となった教師は、小学校 317名、中学校 163名、合計 496名であ り、 479名から有効な回答を得ることができた(表 1-1欄5)0有効回答率は 96.57% であった。回答者の校務分掌は、学級担任が 367名 (76.62%)、担任外が 86名 (17.95%)、 養護教諭 (3.97%)、管理職(1.46%) である。以下、結果の一部刊について述べる。 回答者は、小学校教師の人数が多いために女性の割合が向くなっている。回答者 の大多数は教諭 (94.57%)であるが養護教諭や管理職からの回答も含まれている。 回答者の年代構成は、 20代が 33名 (6.65%)、30代が 110名 (22.18%)、40代が 244名 (49.19%)、50代が 106名 (21.37%)、無回答が 3名 (0.60%) であった。経 験年数をみると中堅教師 (10'"'-'20年)およびベテラン教師 (20年以上)の占める割 合が高い。このことから回答者の多くは、教職に就いた頃の昭和の子どもと、調査 -17・

(31)

時の平成の子どもを比較して回答していると考えられる。それゆえに、本調査1で は、教師がどのように子どもの変化を捉えているのかを知ることができるのである。 表 1-1・5 第 2回本調査 1の有効回答者の内訳 経 験 年 数 小学 校 中学校 合計 男性 女 性 男 性 女 性 (人) 5年 未 満 14 11 4 3 32 5 年 ~10 年 7 14 9 2 32 10 年 ~20 年 40 30 39 33 142 20年 以 上 36 164 32 41 273 合計 97 219 84 79 479 イ)質問 1 i最近の子どもは変わったか?J 小中学校に勤務する教師の問題意識について、小学校と中学校の教師の回答を集 計 し た (表 1

-

1

・6)。 表

1-

1

-

6

「子どもは変わったか」に対する教師の意識 小 学 校 (人) Z 中 学 校 ( 人 ) Z 合 計 (人) Z │ ま い

2

6

3

8

5

.

39

1

3

4

81.01

3

9

7

8

5

.

9

3

いいえ

5

!.

6

2

4

2.60

9

!.

9

5

無 回 答

4

0

1

2.

9

9

1

6

10.39

5

6

1

2.

1

2

合 計

3

0

8

100.00

1

5

4

100. 00

4

6

2

100. 00 ヌ近の子どもは変わったかという質問について、「変わったJ iやや変わった」を 合わせた 「はし¥」は、小学校

2

6

3

(

85.39%

)

、中学校

1

3

4

(

8

7

.

0

1

%)、合計

3

9

7

(

85.93%

)

であり、多くの教師は子どもが変わってきたと感じている。他方、「あ まり変わらなしリと 「変わっていなしリを合わせた 「し¥いえJは小学校

5

名 (1.

62%

)

、 [0母校4名

(

2.60%

)

、合計

9

0

.

9

5%

)

であった。 ウ)質問

2

i現在の学校 (学級)の子どもの指導の中で 「困難さjを感じますか?J 小学校と中学校の教師の回答を集計した(表

1

-

1

-

7

)

。現在の子どもの指導の中で 「閃難さJを感じるかという質問については、「あてはまるJiややあてはまるJを ムわせた 「はし¥」は、小学校

1

7

3

(

5

7

.

2

8

%

)

、中学校

1

1

0

(

70.06%

)

、合計

2

8

3

-

1

8

(32)

ノタ

(

6

1.

6

6

%

)

の教師が困難さを感じている。逆に、「ややあてはまらなしリ 「あては まらなしリを合わせた 「し¥いえ」と回答した教師は、小学校

3

2

名 (1

0

.

60%

)

、中学 校

1

1

(

7

.

0

1

%

)

、合計

4

3

(

9

.

3

7

%

)

にすぎない。無回答の割合が、小学校

9

7

(

3

2

.

1

2

%)

、中学校

3

6

(

2

2

.

9

3

%

)

、合計

1

3

3

(

2

8

.

9

8

%

)と

高くなっている。こ れは、質問紙調査は無記名で実施しているが、何らかの心理的な圧力がかかり、「は し¥」と回答することに抵抗を感じたり 、臨賭したりしたのではなし¥かと推察される。 このことからも、子どもの指導の中で困難さを感じている教師の割合は極めて高い ことが分かる。 表 1

-

1

7

子どもの指導の中で困難さを感じる教師の割合 小学校 (人) Z 中学校 (人) Z 合計 (人) Z lま い 173

5λ28

110 70.08 283 61.66 いいえ 32 10.60 11

01 43

9

.

3

7

無回答 97 32.12 36

2

2

.

9

3

133

2

8

.

9

8

合計 302 100. 00 157 100. 00 459 100. 00 次に、「指導する中で困難さを感じる場面Jと 「指導困難さの要因」について自由 記述で、回答を求めた。回答内容については、筆者を含む3名でKJ法により整理した (Appendix 1

-

1

-

2

、Appendix1

-

1

-

3

)

0

KJ法の参加者内訳は、小学校教諭

1

名、中 砂校教諭2名。この3名は既述した質問紙調査の分析を行っている。 エ)指導する中で困難さを感じる場111] 「指導する中で困難さを感じる場面」の分類にあたっては、「学習面J、「生活面J、「保 護者J、「その他Jの大分類後、記述内容が似ているものをまとめて、それぞれの内谷 を表していると考えられる項目名をつけた。複数の内容が記述されているものは、そ れぞれに分けることで計上した。そのために、調査対象者数

4

9

6

名に対して、

6

9

0

の 口│答数となっている。各項目については、回答者数と全体総数に占める割合を出現キ として集計した。子どもに関わる自由記述を整理した項目については、表 1-1・8~こ/い した。 では、自由記述の内容を

1

2

項目に分類して、回答人数と全体数

6

9

0

に占める 出現率を集計した。最も多かった項目は、「学力差J58人 (8.41%)、以下、「集中力J

-

1

9

参照

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