第 4 章 中日企業文化の差異に関する分析
4.2 中日企業の制度文化の差異
企業の制度文化には企業の組織構造と企業管理制度を含む。主に各種規則制度の形で現 れる。企業文化の制度面は、企業文化構造の中間層部分に当たる。企業において、企業制 度文化は、人と物、人と企業の運営制度の結合であり、人の意識と観念形態の反映であり、
ある程度物質の形で構築されている。更に、企業制度文化は精神と物質の媒介である。制 度文化は物質的文化に適応する固定された形式であり、精神文化を構築する主要なメカニ ズムの担い手でもある。制度文化の仲介の固定・伝達機能は、企業文化の建設に大いに役 立つ。企業制度文化は、企業が自身の目標を実現するために、従業員の行為にある程度制 限を加える文化であり、目標の共通性と強力な行為規範性を有する。企業制度文化の規範 性は、強制性のある約束であり、企業の全員を制限している。企業文化の制度層は、主に 企業管理者の体制、企業組織構造と企業管理制度等の面を含み、自社の文化的特色を持っ ていて、正常な企業活動を確保するための企業の様々な体制、各種の規則・制度、道徳模 範、従業員行為準則などをも含む。
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4.2.1 企業管理者の体制の差異
企業管理者体制の発生、発展と変化は、企業の生産発展による必然的な結果であり、企 業文化向上の産物でもある。歴史的沿革の視点からみれば、企業管理者体制の推移と沿革 は特殊な企業の文化現象として、企業の価値観、企業の管理思想の推移を反映するほか、
企業管理レベルが低級・粗放型の管理から、徐々に更に高級で集約型の管理へと進化する 過程をも反映している。
企業の管理者体制は、三つの段階を経て今日に至っているということができる3。第一段 階は家族的な管理者体制であり、それは、企業家の個人的な経験により管理の意思決定を 行う段階のことを指す。このような形態は、発展の初期に一般的であった。当時は、企業 の規模が小さく、技術・装備が時代遅れで、企業主は企業財産の所有者であり、企業の経 営管理者でもあった。彼らは、企業における地位が親権者のような立場にあり、全ての経 済活動は彼ら次第であった。彼らの意思決定は往々にして濃厚な家族・個人色を帯びてい て、このような封建式の家族的な管理者体制は、大量生産方式の管理者体制の誕生まで続 いた。
第二段階である大量生産方式の管理者体制の段階は、マネージャーを担当する者は、主 に一部の企業において業務に精通する技術専門家であり、いわゆる「ハード・エキスパー ト」である。これらのハード・エキスパート4は技術に長け、生産過程を熟知し、高度な専 門的知識と一定の管理能力を有し、彼らは個人的経験において従来の管理者より遥かに優 れていた。このような管理者体制の拡大は、企業管理者体制の大きな進歩と言える。
第三段階の企業経営の専門家による「ソフト・エキスパート」管理者体制は、20 世紀以 後に確立された。当時、企業は、またも大いに進化して、企業生産が更に社会化し、企業 間と企業内部の専門化が更に深まった。企業の技術水準が高まり、企業経営の範囲が、日 増しに拡大し、業務目標も煩雑になりつつあった。企業規模が拡大するとともに、企業の 内部構造が更に複雑になり、外部環境との関連性も強くなっていった。
一般的な日本企業の管理者体制は、経営者を中心とし、経営者が完全に経営に参画して いるというものである5。このような管理者体制は、経営者の役割を強調し、また、従業員 も経営と管理に参加する形を取っている。取締役会の構成員の大多数は社内出身者で、企 業内部の職務を兼任し、経営戦略を決定するほか、経営それ自体にも力を入れる。また、
大多数の日本企業では、社長と会長が前任社長と会長に任命され、取締役候補者が社長に
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指名される等の従来からの慣習があるため、経営者が企業の所有者でなくても経営者によ る支配が可能である。現代の株式会社では、株主がその保有する株式により会社を支配す ることはできず、経営者は、その地位と職権により会社を支配しているのである。
その一方で、日本企業は、人間本位であることを重視し、従業員が経営に参画するよう に推奨している。日本企業は、家族経営の伝統を思想の基礎とし、主体的に従業員に経営 に参画する様々な機会と条件を提供している。例えば、経営協議会議において、経営者と 労働者は対等の立場で、共同で経営上の意思決定を行う。通常は、労働者が品質管理グル ープ活動、欠陥ゼロ運動などの自主的な管理活動を行うように推奨している。従業員の株 式保有は、全員参加のもう一つの重要な内容である。利益を紐帯として従業員と企業をつ なぎ、労働者の参加意識と当事者としての責任感を引出し、従業員の経営に対する主体性 を喚起する役割を果たしている。
これに対して、中国企業の管理者体制は改革開放後に初めて非公有経済が認められたば かりで、巨大な国営企業と私企業が併存する状況にあり、管理者体制について明確な論評 は困難である。しかし、改革開放以降、中国は西洋の管理思想と体制を急速に導入してい る。少なくとも私企業については中国企業の指導体制は西洋企業が経過した三段階を短時 間の間に経験している企業が多数出現している。
4.2.2 企業の組織構造の差異
中国においては、従来の企業文化により、組織構造は一般的に樹木構造だと言われる。
意思決定部門と管理部門は木の根に当たり、これらの部門が、しっかりすることで、組織 全体を支える。樹冠部分は執行部門に当たり、茂っている枝と葉を触角として、各種の事 務を迎え入れる。現代企業の発展につれ、中国企業の様々な組織構造は、樹木構造に収斂 されることが多い。
それに対し、日本企業の組織構造は、ピラミッド型に近い。しかし、中央集権的な面は 当然あるが、ボトムアップ型の管理構造に基づくものである。ボトムアップ型の管理構造 とは、問題の確定、分析と解決に従業員を参加させることである。企業の最適化提案ない し計画は、通常従業員から提出され、そして、各級の管理者を経て、最後に最高経営者に より決定される。最高経営者の提出した計画でも、各級管理者ないし普通の従業員との討 論を経て、十分に計画の実行可能性を検討した上で、最高経営者の意思決定に回される。
日本では、ボトムアップ型の管理構造は、経営幹部が作業者を通じて QC グループを作るこ
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とからも、うかがえる。QC グループの核心は、品質検査を行う従業員の職能と生産を行う 従業員の職能を結合することにある。従業員が、品質管理技術の研修を受けているため、
彼らは、品質管理と生産の二つの職能を担い、品質管理活動における問題を、うまく解決 できるのである6。日本企業の組織構造は、相対的に簡単で、明確な分業があるが、作業と 管理部門の分業は形式にこだわらず、組織構成が企業の目的につれて変化するように工夫 されている。
4.2.3 企業管理制度の差異
企業管理制度とは、企業の生産経営管理において制定された、規範的役割を果たす様々な 規定あるいは条規のことを指す。具体的には、雇用制度と配分制度に反映されている。
(1) 雇用制度の差異
中日両国は国情の差異により、全く異なる雇用人事制度を採用している。日本の企業は、
一般的に終身雇用制を採用している。終身雇用制は、日本の企業文化の核心的内容の 1 つ であり、その考え方は『論語・不而篇』の「節用而愛人」(支出を節約し、民衆を大切にす る)の文章に由来するという。日本企業では、従業員への配慮に高い優先順位を置き、出 来る限り従業員の終身雇用を確保しようとする。すなわち、日本企業では、従業員は非常 に重要で貴重な財産と看做されるのである。終身雇用制とは、以下のような制度を言う。
全ての従業員が卒業後、企業に就職して一定期間の仮採用を経て、仕事に必要な熟練程度 により、長くても一年で正従業員になる。その後、従業員の在職と中間管理職研修は長く 続き、企業が倒産し、あるいは従業員が、深刻な職務怠慢があった場合以外には、企業は 一般的に従業員を解雇しない7。法律上、日本には「終身雇用制」がないが、長期にわたり 終身雇用制が慣習的な制度として企業に定着している。
終身雇用制が長く維持されてきたのは、切実な社会上、経済上の原因があった。中国の 儒教が初めて日本に伝わった時期に、「主君と上司に忠誠を誓う」という独特の道徳標準が 形成された。企業に雇用された後、従業員は企業を「身を寄せる」場所とし、自ら企業の ために「忠義を尽くす」。また、労働者雇用制度は、必ず給料制度と対応するものであって、
終身雇用制に対応する給料制度は年功序列制である。その結果、同一企業での勤続年数は 給料を左右する主要な要素となる。
しかし、終身雇用制の問題点が次第に目立ってきた。1960 年代以降に出生した若者は、
生涯にわたって一つの企業で働くつもりがなく、彼らの価値観は前の世代と異なっていて、