23.01 米国国務省が2009年2月25日に発行した「2008年の人権問題に関する国別 報告書」(USSD、2008 年)には、「同性愛者に対する攻撃が行われている ことは知られているが、被害者が事件の表面化を望まないため、こうした事 件を追跡調査することは困難である。同性愛者であることが社会的な不名誉 を招き、地元の人権擁護団体もこうした問題を監視していない。この国では 同性愛者を対象にした調査はほとんど行われていないのが現状である」と記 述されている。[2b] (第5節)
法律上の権利
23.02 国際レズビアン・ゲイ協会(ILGA)が 2009 年 5 月に公表した「国が助長す る同性愛嫌悪」に関する調査の結果によれば、バングラデシュでは男性同士 の同性愛は違法行為として定められているが、女性同士の同性愛は違法行為 として定められていない。[24b]
23.03 ヒューマン・ライツ・ウォッチ(HRW)は 2003 年 8 月に発行した報告書の
中で、英国による植民地統治時代から受け継がれた「不自然な不法行為につ いて」と題する 1898 年のバングラデシュ刑法の第 377 節の中に、「自らの 意志で自然の摂理に反し、男性、女性、または動物と性交を行う者は、終身 刑、または最長 10年の懲役刑、ならびに罰金刑に処す」という規定があるこ とを指摘している。この報告書では、第 377 節の規定がバングラデシュで適 用された事例をヒューマン・ライツ・ウォッチが記録したことはないと記さ れているが、以下のように述べられている。
「ヒューマン・ライツ・ウォッチに伝えられたほとんどの逮捕の事例におい て、[刑事訴訟法 - 上記の第14節を参照]第54節が適用されている。
しかし、この法律が施行されるか否かに関係なく、コティと呼ばれる男性と 性交を行う男性には刑事罰が科される可能性が十分にある。男性と性交を行 う男性は本質的に犯罪者であるとの認識を警察や社会が持っていることで、
法の下における彼らの尊厳に対する攻撃と彼らが持つ平等な権利を否定する 意識が助長される。バングラデシュ法務省は『HIV/AIDSに関するマッピング 調査の実践 - 法律、民族、および人権』と題する報告書の中で、調査の 対象になった男娼またはヒジュラーは、この節は『警察が金銭を搾取したり 脅迫する目的で公然と逮捕したゲイや両性愛の男性を不当に罰するために利 用されているだけである』と異議を唱えている。この報告書は、『刑法第 377節が、生存権と個人の自由(第32条)を拡大定義することで憲法により 保護されたプライバシーの権利を蹂躙している』と結論付けている。第377 節は性的指向に基づき差別的な規定を定めているため、この条項は国際人権 法に違反している。」[10g] (p43)
23.04 第 377 節に関して、USSD の 2008 年の報告書は「同性愛は違法であるが…
この法律が実際に適用されることは稀である」と伝えている。[2b](第5節)
23.05 憲法第 28条は、宗教、人種、身分、性別、または出生地を理由とした国家に よる差別から国民を保護しているが、性的指向を理由とした差別については 規定が存在していない。しかし憲法第 31条には、法律による保護は奪うこと のできないすべての国民が持つ権利であると記されている。[4] 参照した情報 源には、性的指向に基づく差別に対する民法または刑法による救済手段につ いての情報を見つけることはできなかった。
23.06 バングラデシュには徴兵制度は存在しない。COI サービスは、LGBT の人々
が一般的に軍隊や治安維持部隊に志願または就職することが禁止されている のかについて情報を得ていない。第11節:兵役義務を参照すること。
23.07 バングラデシュの人口の 80%以上がイスラム教徒であり、イスラム法である
シャリアが同性間の性的接触を禁じている事実を忘れてはならない。[36d]
(p29)
社会的な扱いと態度
23.08 2005 年 6 月 21 日付の BBC News の報告の中でローランド・ビューク
(Roland Buerk)は、「比較的に寛容なイスラム教国であるが、性に関する 問題については保守的なバングラデシュにおいては、伝統に根ざしていない あらゆる種類の性的傾向が厳しい非難の対象となっている…。ゲイであるこ とが判明すると社会から厳しい糾弾を受けるため、そうした傾向の者は自分 がそうであると決して口外しない」と書いている。[20q] 2004 年に Himal Magazine に 掲 載 さ れ た 記 事 の 中 で 、 ア フ サ ン ・ チ ャ ウ ド リ ー (Afsan
Chowdhury)は、家族の誰かが自分がゲイの指向があることを打ち明けた場
合、すなわち「カミングアウト」した場合、家族は大いに動揺し、「一家の 恥」であると感じる傾向があると書いている。この記事には、さらに以下の ように記述されている。
「…バングラデシュ人は、世界のゲイ人たちの中では積極的であることで知 られる。しかし、自分の指向を未だに公言していない者は、心の中で揺れ動 き、罪の意識や恐れに苛まれている…。バングラデシュにおいては、社会に おいても家庭においても性的傾向について異なった反応が示されるため、ゲ イとして暮らすことは容易ではない…。ゲイの問題に取り組む人々は、全人
口の5%から10%は同性愛者であると語っている。つまり、少なくとも600
万人から1,200万人のバングラデシュ人が同性愛者であることになる。これ
は多くの国の総人口を超える数である。この推定値が過大評価によるもの で、その半分であると見積もってみても大きな数値であるといえる。しか
し、HIV/AIDSの脅威がバングラデシュで高まり、ゲイの人たちは最もその影
響を受けやすい人々であるにもかかわらず、このことについて議論の余地は ほとんどない…。バングラデシュの社会では、同性愛者によるデモ行動が行 われるのは極めて一般的である。こうした行動をしていても社会から追放さ れることはなく、笑いものにされる程度である。他の社会のように、寄宿 舎、兵舎、労働者の宿舎、およびホステルでは男性同士の性行為が盛んに行 われている。しかし、パートナーがゲイであることが判明したことで離婚に 至るケースは見られない。」[12a]
23.09 Himal Magazine の 2008 年 3 月号の中で、タンヴェール・レザ・ロウフ
(Himal Magazine)は、2002 年に BOB(Boys Only Bangladesh)という
Yahoo グループがインターネット上に作られ、現在では「バングラデシュの ゲイの最大の社交場」に成長していると指摘している。このウェブサイトは メンバーに娯楽や友達を見つけるための機会を提供しているが、ゲイの権利 や政治的な問題に関しての情報はほとんど掲載されていない。BOB のモデレ ーターからの手紙が Daily Star に掲載され、ダッカのゲイ・コミュニティが 初めて政治的な意味で自己主張を唱えたのが2005年5月のことである。その 手紙の抜粋を以下に示す。
「[世界保健機構(WHO)は]精神疾患の一覧から同性愛を削除した。バン グラデシュは国際社会の一員であるにもかかわらず、そのことについて全く 知らないようだ。こうした無知が原因で、私のようなゲイの人々が不当な差 別を受けている。こうした差別を受けることで、精神的にも身体的にも深刻 な痛手を被ることになるのだ。私は自分の家族や友達にこのことを打ち明け られず、状況は悪くなる一方である。バングラデシュの同性愛者たちは、こ のことを隠し、自分を偽り、自分が同性愛者であることに苦しみながら生き てゆかなければならないのだ。」[12b]
BOB の多くのメンバーは、この手紙の内容について理解を示したものの、
Daily Star に宛てて送るとするこのウェブサイトの決断に反対した。それ以
来、バングラデシュのメディアではゲイに関する問題について議論はほとん ど交わされていない。一般的に、インターネットにアクセスできるのは、収 入が高い人たちと都市部に住んでいる人たちのみである。バングラデシュ国 内のゲイの多くは、ネットワークにアクセスするための手段を持っていな い。ロウフはこの記事の中で、2007 年 1 月に非常事態宣言が発令されて以 降、ゲイのコミュニティは「さらに縮小している」と指摘している。2006 年 はショーが予定通りに開かれ、非公式な集会が行われたが、2007 年に入ると そうした催しはほとんど行われなくなった。ロウフは、このようになった理 由として、ゲイの団体による催しのためにホテルが部屋を貸すことを拒み、
劇場が閉鎖され、また警察による取り締りが一斉に行われるとの噂(結果的 にこの噂には根拠がなかった)があったことを挙げている。[12b] USSD によ る 2007年の報告書には、バングラデシュには同性愛の男性を支援する非公式 なネットワークがいくつか存在するが、レズビアンのためのそうした組織は ほとんど存在していないと指摘されている。[2a](第5節)
23.10 ヒューマン・ライツ・ウォッチが発行した2003年8月の報告書には、ゲイの
男性が職場において差別に遭っていると主張するケースが紹介された。この 報告書のインタビューに応じた複数の男性は、学校で同級生による嫌がらせ を受けていると語った。[10g] (p42-43)
23.11 ジャーナリストであるリチャード・エイモン(Richard Ammon)はレズビア
ンの人々を取り巻く環境について、「この国では実質的にすべてのイスラム の女性は、結婚して母親になることを運命付けられている。女性の自立を唱 え、さらには自分がレズビアンであることを公言し、そうした枠組みから外 れれば、結婚できない女性として社会から追放され、物笑いの種になる」と 語っている。(GlobalGayz.com)[44a] 2004 年、Himal Magazine のアフサ ン・チャウドリー(Afsan Chowdhury)は、「レズビアンであることが判明 すると結婚できなくなるため、口外されることはない。結婚とは女性にとっ ての最終的な目標なのである…。社会は独身の女性を受け入れず、誰と結婚