第 7 章 米国
4. ペンシルベニア州
4.1.1. 電気事業制度の概要
1996 年12 月発電競争自由化法により、1997 年11 月より各電力会社の各クラス需要家のピークロード
5%分を対象にパイロットプログラムが開始され、1999 年1 月には全州の2/3 の需要家による EGS3(競
争的発電供給者)の選択が、2000 年1 月に全需要家による選択が可能となった。また、電力会社は1997 年 9 月までに構造改革案を提出することとなり、料金とサービスを分離、EDC4(配電会社)として送配電へ の直接的アクセスを提供することとなった。
ペンシルべニア州法では、PUC と私営電気事業者との協定により、各企業の実情に応じた自由化プログ ラムが設定されており、1998 年5 月PECO 社の構造改革計画承認を始めとして自由化スケジュール、料 金引き下げ率(1999 年から1~2 年間の料金引下げ 0~12%)、ストランデッド・コストとその回収期間、
送配電費用・発電価格の上限設定、比較価格、再生可能エネルギー開発普及のための持続的基金設立、低所 得者保護プログラムへの基金提供等が規定された。また、発電資産の売却は強制されておらず各電力会社の 任意とされた。2006年以降、競争移行期間が順次終了し、小売料金に課せられていたプライスキャップ規制 が解除されるようになり、供給事業者の変更が進展している。
ペンシルベニア州はPJM Interconnectionの系統制御エリアに属している。PJMは1927年にペンシル ベニア州、ニュージャージー州及びメリーランド州の電力会社がパワープールを形成したところに起源を有 する。その後、1962年に発電所の制御のためのシステムを導入し、1968年には初のエネルギー管理システ ムによる需給運用を達成している。1996年FERCのオーダー888・889による送電設備第三者利用開放義務 に伴い、1998年4月にISOとして承認を受けるとともに、2001年には米国初のRTOとしての承認を受け ている。その後、2002年にはAllegheny Power、2004年にはAmerican Electric Power及びCommonwealth
Edisonが加入する等で系統制御エリアを拡大し、世界最大の系統制御システムを形成している。
図 7-45 ペンシルベニア州の電気事業体制
発電会社
送電会社
配電会社
需要家(全面自由化)
小 売 会 社
電気の流れ お金の流れ
電気料金 RTOエネル ギー市場を 通じて需給
運用
託送料金 差額決済契約
表 7-7 ペンシルベニア州における主な電気事業制度関連事項
主な電気事業制度関連事項
1996年 FERC、オーダー888・889により送電設備の第三者への開放を義務化 1997年 小売自由化パイロットプログラム開始
1998年 PJMInterconnectionがISOとして認可を受ける 1999年 2/3の需要家の小売自由化開始
2000年 全需要家の小売自由化が可能に
2006年~ 競争移行期間が順次完了し、プライスキャップ制が解除され、競争が進展
4.1.2. データの出所
ペンシルベニア州の統計情報はエネルギー統計局(EIA)の公表している時系列データに基づく。EIAの 電力のパートでの” Detailed State Data”64の発電設備容量、発電電力量、燃料消費量、電気料金の年次デー タを用いている。
” Detailed State Data”の燃料消費量のデータは石炭がショートトン、石油がバレルそして天然ガスが100
万 BTU を単位としている。これを分析するため単位換算する必要があるが、EIA の、”Annual Energy Review”65における” Table 8.4b Consumption for Electricity Generation by Energy Source: Electric
Power Sector”(1兆BTU単位)で、” Detailed State Data”の米国全体の種別燃料消費量を割ることで、換
算係数を作成した。
燃料価格については、石油及び石炭については地域差がそれ程大きくないことから米国平均値をそのまま 用いた。天然ガス価格については、EIAの天然ガスのパートにおける” Natural Gas Prices”66における電気 事業者購入価格を用いている。1996年までは電気事業者購入価格が公表されていないことから、代替として シティーゲート価格を用いている。
4.2. 電力需給の状況 4.2.1. 電源構成
2010年におけるペンシルベニア州の発電設備容量は4,683万kWで、そのうち石炭火力発電が40.8%、
ガス火力発電が20.2%、石油火力発電他が10.9%、原子力発電が21.4%、水力発電が4.4%、地熱発電が0.0%、
太陽光発電が0.0%、風力発電が1.6%、木質バイオマス発電が0.0%、その他バイオマス発電が0.7%となっ ている。同年の発電電力量は2,147億kWhで、石炭火力発電が48.5%、ガス火力発電が12.5%、石油火力
発電他が0.5%、原子力発電が36.2%、水力発電が0.8%、地熱発電が0.0%、太陽光発電が0.0%、風力発電
が0.9%、木質バイオマス発電が0.0%、その他バイオマス発電が0.5%となっている。
ペンシルベニア州で電力自由化が開始された1998年以降、発電設備容量は878万kW増加したが、その うちガス火力発電が673万kW増加と全体の増加の大半を占めている。その他石油火力発電他が126万kW 増加しているが、IEAのデータでは1997年~1999年のみ他の時期に比して150万kW程度少なく、統計 上不連続となっているため、実際にはむしろ減少していた可能性が高い。このようにペンシルベニア州では 小売自由化開始以降、競争用電源としてガス火力の参入が活発であったこと推察される。
64 http://www.eia.gov/electricity/data/state/
図 7-46 ペンシルベニア州における発電設備容量・最大電力の推移
0 500 1,000 1,500 2,000 2,500 3,000 3,500 4,000 4,500 5,000
1990 1992 1994 1996 1998 2000 2002 2004 2006 2008 2010
石炭 ガス 石油他 原子力
水力 地熱 太陽 風力
木質バイオマス その他バイオマス
万kW PJM ISO運用開始 小売自由化開始
(出所)エネルギー省エネルギー統計局
図 7-47 ペンシルベニア州における発電電力量・電力消費量の推移
0 500 1,000 1,500 2,000 2,500
1990 1992 1994 1996 1998 2000 2002 2004 2006 2008 2010
石炭 ガス 石油他 原子力
水力 地熱 太陽 風力
木質バイオマス その他バイオマス 電力消費量
億kWh PJM ISO運用開始 小売自由化開始
(出所)エネルギー省エネルギー統計局
4.2.2. 稼働率と発電効率
電源種別の稼働率は図7-68のとおりであるが、原子力発電・石炭火力発電の稼働率が高水準であるのに対 し、ガス火力発電及び石油火力発電他の稼働率は著しく低い。全体の稼働率は50%程度と他州に比して高め であるが、2000年代半ば頃の発電設備容量の増加もあり、若干低下傾向にある。一方、電源種別に見た発電 効率は、ガス火力発電が小売自由化開始以降、大きく上昇しているが、これはガス火力発電の新設増加に起 因しているものと考えられる。
図 7-48 ペンシルベニア州における電源種別稼働率の推移
0%
10%
20%
30%
40%
50%
60%
70%
80%
90%
100%
1990 1992 1994 1996 1998 2000 2002 2004 2006 2008 2010
石炭 ガス 石油他 原子力 平均 小売自由化開始
PJM ISO運用開始
(注)稼働率(%)=発電電力量÷(発電設備容量×8,760時間)×100として算定した。
(出所)エネルギー省エネルギー統計局
図 7-49 ペンシルベニア州における発電効率の推移
0.0%
5.0%
10.0%
15.0%
20.0%
25.0%
30.0%
35.0%
40.0%
45.0%
1990 1992 1994 1996 1998 2000 2002 2004 2006 2008 2010 石炭
ガス 石油 小売自由化開始
PJM ISO運用開始
(注)発電効率(%)=発電電力量(kWh)×860kcal/kWh÷燃料消費量(kcal)×100として算定した。
(出所)エネルギー省エネルギー統計局 4.3. 電気料金の動向
4.3.1. 電気料金
ペンシルベニア州における電気料金の推移は図7-50のとおりである。1998年のPJMの運用開始から2000 年頃まで電気料金は下落したが、その後緩やかな上昇傾向にある。但し、ペンシルベニア州では電気事業規 制改革に伴い原子力発電の廃炉費用等の回収のため移行期間を設定して同費用の長期回収を認め、スタンダ ードオファー・サービス(自由化料金に移行しない需要家に課せられる電気料金)にはプライスキャップで の料金規制が課せられていて、多くの電気事業者のプライスキャップはここ数年で解除されたばかりである 点に留意が必要である。
図 7-50 ペンシルベニア州における電気料金の推移
0.0 2.0 4.0 6.0 8.0 10.0 12.0 14.0
1990 1992 1994 1996 1998 2000 2002 2004 2006 2008 2010 家庭 商業
産業 平均
セント/kWh PJM ISO運用開始 小売自由化開始
(出所)エネルギー省エネルギー統計局
4.3.2. 燃料価格と卸価格
ペンシルベニア州の電気事業者が購入する化石燃料価格は2000年頃から、特に石油価格及びガス価格が 大きく上昇している(図7-51)。なお、ガス価格はシェールガス革命の影響で2008年頃から低下に転じてい る。燃料価格に一定の発電効率を仮定してガス火力発電及び石炭火力発電の燃料費を推計したものが図7-52 である。PJMエネルギー市場のスポット価格と比較すると、ほぼガス火力燃料費と連動して変化しているこ とが分かる。
図7-53はPJM地域平均ではあるが、同地域における送電費用を含む卸供給費用の推移を示したものであ る。PJM地域では容量市場が運用されているが、PJMが一旦3年先までの供給力の全量を買い上げて小売 事業者に配分する信頼度価格決定方式に移行してから、容量メカニズムに伴う供給費用の金額が上昇すると ともに、エネルギー費用の項目が2008年頃までと比較すると2009年~2011年の単価が減少していること が分かる。
図 7-51 ペンシルベニア州における燃料価格の推移
0 2 4 6 8 10 12 14
1990 1992 1994 1996 1998 2000 2002 2004 2006 2008 2010 石炭
石油 ガス
ドル/100万BTU PJM ISO運用開始 小売自由化開始
(注)石炭価格及び石油価格は米国平均値を採用
(出所)エネルギー省エネルギー統計局
図 7-52 ペンシルベニア州における燃料費とスポット価格の推移
0 2 4 6 8 10 12
95/1 97/1 99/1 01/1 03/1 05/1 07/1 09/1 11/1
スポット価格 石炭燃料費 ガス燃料費 産業用電気料金
セント/kWh
(注)ガス燃料費はガス価格より発電効率50%として算定、石炭燃料費は石炭価格より発電効率を40%として算定
(出所)エネルギー省エネルギー統計局及びPJM
図 7-53 PJM における卸供給費用の推移
0.0 1.0 2.0 3.0 4.0 5.0 6.0 7.0 8.0 9.0
2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011
その他
アンシラリーサービス料金 送電サービス料金 容量
エネルギー セント/kWh
信頼度価格決定モデル
(出所)Monitoring Analytics, LLC, “State of the Market Report for PJM”各年版より作成
4.3.3. 電気料金に占める燃料費の推計
ペンシルベニア州の電気事業者の燃料購入量と購入燃料価格より推計した平均燃料費は図 7-54 のとおり である。これを図7-50で示した電気料金から差し引いたのが図7-55である。電気料金から平均燃料費を引 いた水準は電力自由化が開始された1999年以降、ほぼ横這い傾向にある。家庭用電気料金及び産業用電気 料金について、平均燃料費、卸価格(平均燃料費除く)そして残差としてのその他供給費用と内訳に分解し