• 検索結果がありません。

第 7 章 米国

2. ニューヨーク州

2.1.1. 電気事業制度の概要

ニューヨーク州では1996年5月に電気事業制度改革の方針を示し、それに基づき個別電力会社と交渉を 行い小売自由化開始時期を決定するという方式で改革が進められた。ニューヨーク州では特別な立法が無く とも制度改革が可能と解釈されていたため、このような進め方になった。1998年5月から電力会社ごとに 開始時期は異なるが小売自由化が適用され、2007 年7月までに全電力会社の小売全面自由化の実施が完了 した。

ニューヨーク州では1965年のニューヨーク大停電を契機に電力供給システムの見直しが行なわれ、1966

年にNew York Power Poolが設立され、費用ベースでのプール運用が行われるようになって。その後、1996

年FERCのオーダー888・889による送電設備第三者利用開放義務に伴い、1998年にISOとして改組した。

2003年8月に北東部大停電を経験したが、微細な制度修正に止まっている。

7-13 ニューヨーク州の電気事業体制

発電会社

送電会社

配電会社

需要家(全面自由化)

小 売 会 社

電気の流れ お金の流れ

電気料金 ISOエネル ギー市場を 通じて需給

運用

託送料金 差額決済契約

表 7-3 ニューヨーク州における主な電気事業制度関連事項

主な電気事業制度関連事項

1996年 FERC、オーダー888・889により送電設備の第三者への開放を義務化 1998年 New York ISOがISOとして認可を受ける

小売自由化開始(電力会社ごとに開始時期が異なる)

2000年 私営電力会社の供給エリアで小売自由化完了 2003年 北米北東部大停電

2.1.2. データの出所

ニューヨーク州の統計情報はエネルギー統計局(EIA)の公表している時系列データに基づく。EIAの電 力のパートでの” Detailed State Data”56の発電設備容量、発電電力量、燃料消費量、電気料金の年次データ を用いている。

” Detailed State Data”の燃料消費量のデータは石炭がショートトン、石油がバレルそして天然ガスが100

万 BTU を単位としている。これを分析するため単位換算する必要があるが、EIA の、”Annual Energy Review”57における” Table 8.4b Consumption for Electricity Generation by Energy Source: Electric

56 http://www.eia.gov/electricity/data/state/

57 http://www.eia.gov/totalenergy/data/annual/index.cfm#electricity

Power Sector”(1兆BTU単位)で、” Detailed State Data”の米国全体の種別燃料消費量を割ることで、換 算係数を作成した。

燃料価格については、石油及び石炭については地域差がそれ程大きくないことから米国平均値をそのまま 用いた。天然ガス価格については、EIAの天然ガスのパートにおける” Natural Gas Prices”58における電気 事業者購入価格を用いている。1996年までは電気事業者購入価格が公表されていないことから、代替として シティーゲート価格を用いている。

2.2. 電力需給の状況 2.2.1. 電源構成

2010年におけるニューヨーク州の発電設備容量は3,345万kWで、そのうち石炭火力発電が6.8%、ガス 火力発電が40.6%、石油火力発電他が18.0%、原子力発電が15.0%、水力発電が15.3%、地熱発電が0.0%、

太陽光発電が0.0%、風力発電が3.3%、木質バイオマス発電が0.2%、その他バイオマス発電が0.8%となっ ている。同年の発電電力量は1,446億kWhで、石炭火力発電が10.4%、ガス火力発電が30.3%、石油火力

発電他が2.1%、原子力発電が33.8%、水力発電が20.1%、地熱発電が0.0%、太陽光発電が0.0%、風力発

電が2.1%、木質バイオマス発電が0.1%、その他バイオマス発電が1.2%となっている。

ニューヨーク州で電力自由化が開始された1998年以降、発電設備容量は554万kW増加したが、そのう ちガス火力発電が1,218万kW増加しており、石炭火力発電の143万kW・石油火力発電他の699万kW減 少をカバーしている。その他、風力発電が127万kWの増加となっている。このようにニューヨーク州では 自由化以降、競争用電源としてガス火力の参入が活発であったことが分かる。

7-14 ニューヨーク州における発電設備容量・最大電力の推移

0 500 1,000 1,500 2,000 2,500 3,000 3,500 4,000 4,500

1990 1992 1994 1996 1998 2000 2002 2004 2006 2008 2010

0.00 0.20 0.40 0.60 0.80 1.00 1.20 1.40 1.60

石炭 ガス 石油他 原子力

水力 地熱 太陽 風力

木質バイオマス その他バイオマス 最大電力 設備率(全電源)

設備率(再エネ除き)

万kW 小売自由化開始、NYISO設立認可 北米大停電 設備率

(注)設備率=発電設備容量÷最大電力

(出所)エネルギー省エネルギー統計局

7-15 ニューヨーク州における発電電力量・電力消費量の推移

0 200 400 600 800 1,000 1,200 1,400 1,600

1990 1992 1994 1996 1998 2000 2002 2004 2006 2008 2010

石炭 ガス 石油他 原子力

水力 地熱 太陽 風力

木質バイオマス その他バイオマス 電力消費量

億kWh 小売自由化開始、NYISO設立認可 北米大停電

(出所)エネルギー省エネルギー統計局 2.2.2. 稼働率と発電効率

電源種別の稼働率を見ると、ニューヨーク州では原子力発電及び石炭火力発電の稼働率が高く、ベース電 源としての役割を担っていることが分かる。一方でガス火力発電と石油火力発電他の稼働率は低く、負荷追 従電源としての役割を担っている模様である。なお原子力発電については電力自由化開始以降、稼働率が上 昇しているが、電力自由化以降の原子力保有者・運用者の再編等で運用の効率化が進展した結果であると推 測される。なお全体の稼働率は設備率がほぼ横這いで再生可能エネルギー発電の導入率も低いことから、大 きな変化は見られなかった。

電源種別の発電効率を見ると、石炭火力発電が2003年北米大停電以降、低下傾向にあること、及び同じ 時期からガス火力発電が上昇傾向にあることが分かる。石炭火力発電については自由化以降、稼働率が若干 低下傾向にあること、ガス火力発電については新設電源が増加したことで効率性が向上したものと推察する ことができる。

図 7-16 ニューヨーク州における電源種別稼働率の推移

0%

10%

20%

30%

40%

50%

60%

70%

80%

90%

100%

1990 1992 1994 1996 1998 2000 2002 2004 2006 2008 2010

石炭 ガス 石油他 原子力 平均 小売自由化開始、NYISO設立認可 北米大停電

(注)稼働率(%)=発電電力量÷(発電設備容量×8,760時間)×100として算定した。

(出所)エネルギー省エネルギー統計局

図 7-17 ニューヨーク州における発電効率の推移

0.0%

5.0%

10.0%

15.0%

20.0%

25.0%

30.0%

35.0%

40.0%

45.0%

1990 1992 1994 1996 1998 2000 2002 2004 2006 2008 2010 石炭

ガス 石油 北米大停電

小売自由化開始、NYISO設立認可

(注)発電効率(%)=発電電力量(kWh)×860kcal/kWh÷燃料消費量(kcal)×100として算定した。

(出所)エネルギー省エネルギー統計局 2.3. 電気料金の動向

2.3.1. 電気料金

ニューヨーク州の電気料金は自由化が開始された1998年と2010年を比較すると、家庭用で37.2%、商

業用で40.2%、産業用で77.2%そして平均で53.2%と大きく上昇していることが分かる。

7-18 ニューヨーク州における電気料金の推移

0.0 2.0 4.0 6.0 8.0 10.0 12.0 14.0 16.0 18.0 20.0

1990 1992 1994 1996 1998 2000 2002 2004 2006 2008 2010 家庭 商業

産業 平均

セント/kWh 小売自由化開始、NYISO設立認可 北米大停電

(出所)エネルギー省エネルギー統計局

ニューヨーク州では2000年初頭以降における標準的需要家の電気料金の内訳を公表している59が、のニュ ーヨーク市(Consolidated Edison)における家庭用と商業用・産業用の状況を示したものが図7-19・図7-20

59 Electric Utility Ten Year Historic Average Monthly Bill Data for Typical Customersというタイトルで、

下記のサイトでデータを公表している。

である。ニューヨーク市では継続的に電気料金が上昇しているが、主たる要因は送配電費用の増加に起因す るものであることが分かる。

一方でCentral Load Zone地域(Niagara Mohawk)における家庭用と商業用・産業用の状況を示したも

のが図7-21・図7-22である。Central Load Zone地域では電気料金はほぼ横這いであり、商業用・産業用

ではむしろ送配電費用は減少している。このように地域により電気料金変動の主要因は異なるが、ニューヨ ーク市はニューヨーク州の需要の3割程度を占める巨大消費地であり、州全体の電気料金の上昇にニューヨ ーク州における電気料金上昇が大きく影響していると考えられ、ニューヨーク州全体での電気料金上昇は送 配電費用が大きく寄与していると思われる。

図 7-19 ニューヨーク市における家庭用電気料金の推移

0.0 5.0 10.0 15.0 20.0 25.0 30.0

2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 11/02

送配電費 その他供給費用 サーチャージ セント/kWh 家庭:月間300kWh

0.0 5.0 10.0 15.0 20.0 25.0 30.0

2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 11/02

送配電費 その他供給費用 サーチャージ セント/kWh 家庭:月間600kWh

(注)図中の11/022002年から2011年までの変分である。

(出所)ニューヨーク州公益サービス委員会

7-20 ニューヨーク市における商業用・産業用電気料金の推移

0.0 5.0 10.0 15.0 20.0 25.0 30.0

2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 11/02

送配電費 その他供給費用 サーチャージ セント/kWh 商業・産業:月間12,600kWh

0.0 5.0 10.0 15.0 20.0 25.0 30.0

2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 11/02

送配電費 その他供給費用 サーチャージ セント/kWh 商業・産業:月間720,000kWh

(注)図中の11/022002年から2011年までの変分である。

(出所)ニューヨーク州公益サービス委員会

7-21

Central Load Zone

における家庭用電気料金の推移

0.0 5.0 10.0 15.0 20.0 25.0 30.0

2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 11/02 サーチャージ

その他供給費用 送配電費

セント/kWh 家庭:月間600kWh

(注)図中の11/022002年から2011年までの変分である。

(出所)ニューヨーク州公益サービス委員会

7-22

Central Load Zone

における商業用・産業用電気料金の推移

-5.0 0.0 5.0 10.0 15.0 20.0 25.0 30.0

2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 11/02 送配電費 その他供給費用 サーチャージ セント/kWh 商業・産業:月間12,600kWh

-5.0 0.0 5.0 10.0 15.0 20.0 25.0 30.0

2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 11/02 送配電費 その他供給費用 サーチャージ セント/kWh 商業・産業:月間720,000kWh

(注)図中の11/022002年から2011年までの変分である。

(出所)ニューヨーク州公益サービス委員会

2.3.2. 燃料価格と卸価格

ニューヨーク州の電気事業者が購入する化石燃料価格はちょうど電力自由化が開始された1998年以降、

特に石油価格及びガス価格が大きく上昇している。なおガス価格はシェールガス革命の影響で2008年頃か ら低下に転じていることが分かる。

ニューヨーク州で送電系統運用を担っているニューヨークISOはエネルギー市場市場を運営しているが、

同ISOから購入する卸供給費用の推移を示したのが図7-24である。ニューヨークISOの運営費やアンシラ リーサービス費用は全体の僅かであり、大部分がエネルギー市場からの購入費用を占めていることが分かる。

エネルギー市場で決まるニューヨークISOのスポット価格とガス燃料費用60の関係を示したのが図7-25で ある。ガス燃料費とスポット価格はほぼ同水準で推移していることが分かる。

60 ガス火力発電の発電効率を50%と仮定して算出したガス火力発電の燃料費用

関連したドキュメント