さて、今日「スクワット運動」は、雑誌などのスクワット運動特集か ら『超スクワット健康法,j(講談社、野沢秀夫著)と題するスクワット 単行本まで出回るようになりました。現代社会では、それほど注目され ている「価値の高い運動」であるといえます。
ところで必要不可欠といわれる運動でも正しく指導しているか、とな ると疑問だらけとなってしまいます。やり方L、かんによっては、たとえ 自体重だけのヒンズー・ スクワットといえども、日ごろ運動していない 人が「間違いだらけのスクワット」をすると「膝関節障害」をおこす要 素は多分にあります。
ですからスクワットを正しく行うには、正しい姿勢でのスクワットが 当然必要となります。そのスクワットを、 NHKでは「簡単な運動」と しか思われていなし、から 「お年寄りでも簡単にできます」と解説してし まうのです。そんな簡単なものではないので、以下その問題点について 述べます。
尚、ここでもN H Kの映像画面スチール写真の使用がで、きませんので、
わたしが撮影した番組再現写真でもって説明します。
1)スクワット運動を「屈伸」と命名する指導法?
NHKでは、このスクワ ットのことを 「屈伸」と呼んでいます。まず、
第一歩の間違いはこの 「屈伸」と呼ぶ名称の問題から始まります。
N H Kのようにスクワット運動を「屈伸」と命名するとなぜだめなの かというと、その動作が膝のみの屈伸運動と理解されてしまい、スクワッ
トに不可欠な股関節の運動が無視され、ヒップアップ効果のない、危険 な「間違いスクワット」となってしまうからです。この膝屈伸スクワッ
トはきわめて悪いスクワットになりますから、この項の後半で、その理 由について詳しく述べます。
一般的に確認されている運動は、誰でも理解できるように共通した名 称でなければなりません。スクワ ットは世界共通したトレーニング名称
であり、競技専門名称の「スクワッ 卜=SquatJであり、その意味は
「しゃがむ」という意味で、これに
I
a ~J となれば「しゃがんだ姿勢」を意味します。
伝統的名称はディープ ・ニー ・ベン ド (deepknee bend)でありま すが、今は使われていません。
したがって、日本でも「スクワット」を共通名称とし、これを日本語 でいう場合でも、しゃがんで立ち上がるという動作なので「しゃがみ立 ち」とするべきであります。
このことは専門書や トレーニング用語辞典などで確認されていること ですが、一般的なフィッ卜ネス著書には複雑怪奇の名称がつけられてい ます。写真やイラストでもなければ、その名称、からでは運動の動作が理 解できません。
一般的なフィッ 卜ネス著書を
1 0
冊ほど調べてみると、その名称には 次のようなものがありました。a)足腰を鍛える屈伸運動
2
例 b)ひざの屈伸c)屈伸
2 O
1l
d)膝の屈伸運動2例 e)脚の屈伸運動 f)屈み運動
g)スクワッ ト
2 O
1l
以上のような名称上の問題からいえることは「膝の屈伸」と名付けら れると、それはスクワットを膝の運動と考えているから、図3‑3のB のような「膝の屈伸」となり、結果、ヒップアップする大殿筋(股関節) 運動が行われず、膝に負担がかかり過ぎる問題スクワッ 卜が起こってく
るのです。
したがって、名称上と正しい運動をする上で混乱しないよう、世界共 通名称「スクワッ ト」と して、NHKも正しいスクワッ ト運動の普及に 努めなければなりません。
第3主主 NHK朝の生活ほっとモーニンク
NHKの背すじ伸ばしスクワットとリラックス ・スクワ ットのかまえの違い 図3‑4A N H Kのかまえ 図3‑48 リラックスのかまえ
J K宇崎 、ω/
2)スクワット姿勢指導法の間違い
健康づくりの運動はスクワッ トに限らず、全て安全に正しく、そして 効果的な方法を指導しなければなりません。中でも、このスクワッ 卜姿 勢に関する問題は、ひざと腰を痛めやすいので正しい指導が重要です。
ですから、NHK解説者も「背すじ」を曲げると腰を痛めるからと、注 意しているのです。(図3‑4のA NHKの背すじ伸ばし写真)
ところがNHK解説のように、背すじは最初から最後までまっすぐに 伸ばしていなければならないものなのか? 図3‑4のBでは、背すじは リラックスしてかまえています。背すじはいつ伸ばすものなのか? ま ず第一の姿勢の間違いは、この 「背すじ伸ばし」の意味を間違えている
ことにあります。
背すじの注意も必要ですが、他に大事な注意事項、①足幅(スタンス)、
②膝を曲げる方向、③膝の屈曲角度、 ④腰(尻)の方向、⑤股関節の屈 曲角度、⑥つま先の方向、⑦重心の位置などで、す。
このうちの③の膝の角度と⑦の重心の位置の解説がありました。 ③の
膝の曲がる角度は
1 0 0
度といい、スクワットにならない膝角度の解説し いましたが、膝の角度は、運動目的による股関節との角度バランスによっ て決まります。膝角度だけを1 0 0
度とするのはきわめてナンセンスな方 法です。基 本的な正しいスクワ ットでは、 写真3‑9のBのように 90度以上深 く曲がっても何ら問題はありません。このスクワット指導ができないか らスクワッ トを屈伸と呼び、膝の角度が
1 0 0
度こすと危険などと称する 指導をするのです。この膝の角度の問題はきわめて重要なことですから、これも後半で、その理由を詳しく説明します。
⑦の重心の位置は足裏全体と解説しつつも、N H K体験者の全員がつ ま先重心で、特に図
3 ‑ 1 0
のモデルの人のスクワットは、最も大事な運 動開始時に瞳が浮いてつま先重心になっていました。また解説者が①の足幅(スタンス)という大事な注意をしなかったの で、ゲスト出演者の下肢は、つま先重心の膝の屈伸の運動となり、つま 先聞きのひざO脚となってしまいました。当然です。解説者自身の下肢 がつま先聞きのO脚になっており、正しいスクワッ トになっていなかっ たからです。
このように大事なスクワットですから、後半で詳しくスクワッ 卜・フォー ムの分析と解説を致します。そこでN H Kスクワットの間違い点を確認 し、正しいスクワ ッ卜と間違いスクワッ トのあり方を理解してくださし、
3)痛 か っ た ら 無 理 し な い と い う 指導法
N H Kの指導方法は典型的な運動中止方法で、 交通事故に例えますと
「車は乗らなければ事故は起こ らない」ということと同じで、その運動 を「止めればケガしない」と同じだということです。
NHKのスクワット運動のところで、ゲスト出演者が膝が痛い、といっ たら解説者が「痛かったら無理しない」とか言われていますが、どこが、
どのような痛みか(筋痛、関節痛、神経痛)などのチェックが必要です。
私が見た限りでは 「やり方が悪かった」ので膝が痛かったのです。 N H
K
放送の『ほっとモーニング』の図3 ‑ 1 2
の方法では多分にその傾向が図3‑5 上方より
A
②⑥
A
②⑥
①足幅(スタンス)
②膝を曲げる方向
③膝の匝曲角度
第3章 NH K朝の生活ほっとモーニンク
図3‑6正面前方より
④腰 (尻)の方向
⑤股関節の屈曲角度
⑥つま先の方向
図3‑8 正しいスクワッ トのかまえ
図3‑9 正しいフィニッシュ位置 G
図3・7 側面より
(G)
⑦ 重心の位置 (G)
図3‑10 N H Kのフィニッシュ 位置の間違い
図3‑11 N H Kモデルのかかとが 浮いてつま先過重になっている
屈伸で骨をきたえる
‑ ‑
あります。
テーマは 「骨を強くする」ということですから、日ごろ使っていない 筋肉に強い刺激を与えることになります。したがって耐えられる多少の 痛みは起こって当然です。痛かったら無理せずやめるという指導は、正
しい指導ができない場合の責任逃れにいう方法です。
一般的な健常者では、正しい効果的なスクワット(図
3 ‑ 1 3 )
であれ ば筋肉痛はあっても障害的痛みは発生しません。ですから、まず痛くな らない指導方法で実施させ、それでも痛みが起こる場合は、 トレーニン グとは別問題で、もともと障害をもっているわけですから、医療機関の 仕事となります。その場合はし、かなる運動も中止させ治療を優先させることは当然です。
4 )
スクワットの運動効果とは (筋肉名称は図3 ‑ 1 4 )
NH K解説では、運動効果は「大腿骨と腔骨 ・緋骨に効果がある」と 解説していますが、これは間違いで、基本的スクワッ 卜で使う筋肉は、 股関節を伸ばす(伸展運動)お尻の大殿筋や内股の大内転筋、もも(大 腿)裏のハムスト リング、そして膝関節を伸ばす (伸展運動)大腿四頭 筋などです。ただし、大腿四頭筋の内の一本(大腿直筋)は使いません から、大腿伸筋とか、膝関節伸展筋とでもいっておけば問題はなかった
と思います。
以上のことから、股関節を伸ばす運動で強化される骨は 「骨盤」、膝 関節を伸ばす運動で強化される骨は「大腿骨」ということができます。
ですから、下腿骨の「腔骨と緋骨」はスクワットで強化しようとするも のではなく、足首運動の支持圧力と運動圧力を受ける足首運動 (つま先 立 ち =カーフレイズ)で強化します。(図
3 ‑ 1 5 )
したがってNH Kの解説は骨盤運動に関する股関節運動がなく、しか も腔骨と緋骨に関する足首運動がなL、から、正解は大腿骨一つで、他に 三つの間違がありましたら、正解率4分の l、テス ト成績でいうなら 100満点で 25点ということになります。これでは大学では単位がとれ ません。