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アイソメトリックの基本的問題

ドキュメント内 NHKの間違いだらけの健康体力づくり番組 (ページ 187-193)

1)アイソメトリックとは

アイ ソメ トリ ック ・トレーニングとは、

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年代 から

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年代 に か け て、欧米の体育学者らが静的筋力トレーニングの研究から提唱されたも ので:す。 これは実 験 学的に筋力トレーニングの運動効果を示したもので

あって、一般的な人々が、具体的に実践して効果を示したのではありま せん。これらの実験のためには、少なくても最大筋力測定の握力や背筋 力が用いられていましたから、一般的なアイソメトリック実施方法との 聞に聞きがあります。

これを一部の日本の体育学者らが「手軽にできる、簡単にできる、ら くらくできる、 7秒でできる」というタイトルをつけ、新しい筋肉づく り手段であるかのようにみせかけて普及させようとしたものです。実験 以外で、そんなに簡単に基礎代謝が上がるほど筋肉がつくれるものなの か、是非、提唱者の筋肉と筋力をみせてもらいたいものです。

さて、ここでいう 7秒とは、図6‑7のように 7秒間、呼吸も止めずに 最大筋力(100%)を出すものです。 NHKが提唱者のする形の真似を することはできても、実際、中高年者や女性に 100%筋力の発揮などで きるはずがありません。 NHKのいう最大筋力発揮7秒と息を止めない 指導法には矛盾があるわけです。

すでに経験された人はお分かりのことと思いますが、誰でも最大筋力 (100%)測定である握力や背筋力などは呼吸を止めて測定します。する と、筋肉内の血液の流れが阻止され、筋肉の発達にとって有効な現象が 現れます。

当時の実験で、この時の最初の筋肉内の血流停止時間が、運動開始か ら6秒であったところから、筋肉は 「一日最大筋力を6秒間発揮すれば 発達する」、という学説が定着したのです。多くの人達が試みたものの 筋力トレーニングの専門家以外には普及しませんでした。

2)静的トレーニングと動的トレーニング

まず大前提として、そのトレーニング処方は静的筋力トレーニング (アイソメ トリ ック)ではなく、動的筋力トレーニング(アイソ トニッ ク)でなければなりません。

動的トレーニング、静的トレーニング、いずれもその手段が適切であ れば、その動作にこだわることなく目的別トレーニング効果を上げるこ とができます。問題点はその対象者と運動の継続性にあります。

6 NH K教 育 テレビ

厚生省 ・国立健康栄養研究所 ・運動生理研究室では、1991年に図6‑8 のような 「筋力、筋持久力を高める家庭でできる体力づく り」と称して、

日 本 全 国 に 静 的 ト レ ー ニ ン グ (尺 性 筋 収 縮=ア イ ソ メ ト リ ク)を 提 唱しました。はたして、これを実践し効果を出した人がいるでしょうか?

6‑7‑A アイソメ yクの負荷と時間 .アイソメ yクの強度と時間

(2002年:湯浅) トレーニング強度 適正ニング時間 (最大負荷に対する%) (収縮秒)

45‑50%  45‑60 60‑70%  18‑30 80‑90%  12‑18 100%  7‑10

図67B アイソメ の負荷と時間 .アイソメト ック・トレーニングに必 要な筋力と収縮持続時間(へティンガー)

トレニング強度 トレーニング時間 長大筋力に対する (収縮持続時間:秒)

(%)  最低限度 適正限度 45‑50  15‑20  45‑60  60‑70  6‑10  18‑30  80‑90  4‑6  12‑18 

100  2‑3  6 ‑10 

図6‑8 厚生省のアイ ソメ トリック(等尺性)トレーニ

‑腕の屈伸 イミ?ト

(上腕ニ・三頭筋)

‑上体起こしイすト

(腹直筋)

‑クラウチングスタート イラスト

③ 

(大腿四頭筋・下腿三頭筋)

.上体そらし ラス

(固有背筋・大殿筋)

今週の日本 '911014

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家庭でできる体力づく J(イラストナバー:著者)

私は、筋力トレーニングに出合って 50年、そしてアイソメトリック に出合って40年、その問、専門的な筋力トレーニングを行ってきまし たが、専門的にはともかく一般的に厚生省やNHKが提唱しているアイ ソメト リックのやり方で効果を出した人に出合ったことがありません。

一般的な筋力トレーニング手段は、 全てパーベル、ダンベルそしてトレー ニングマシンなどで行う動的トレーニングでした。

3)アイソメトリックの継続性

アイソメトリックが普及しなかったといって、その効果は否定される ものではないが「手軽、簡単、らくらく」という発想と、「動作が伴わ ない」ということが、人間の知的な本能と動物的な本能からみて、トレー ニング効果を上げるまで「運動の継続性」がないということです。つま り、一般的な人ほどアイソメトリックではトレーニング効果が出るまで 続かないということです。

この問題にいち早く気づいたトレーニング器具メ ーカーは、 30年 ぼ ど前に図6‑9の「フソレーワーカー」というアイソメトリック器具を開発 して売り出し、ヒット商品となりました。一時期ブームの「ぶらさがり 健康器」や「ルームランナー」などと違い現在も売られているところか

ら、明らかにアイソメトリックといえども、運動器具を利用した動作が 伴わなければ、その継続性がないという一つの証明です。(図6‑9のブ ノ

レーワーカーは著者が30年前に購入しアイソメトリックに使用したも ので、今でも使用できる)

したがって、徒手による「アイソメ トリック」と称する「静的トレー ニング」処方は運動の継続性がなL、から、何らかの運動の動機になる器 具を利用する手段か、最初から動作が伴わなったダンベル体操のような

「動的トレーニングJを選択したほうが、明らかに効果的で継続性のあ る運動処方となります。(私のダンベ ル体操教室は 10年の継続がある) 4)アイソメトリックの実施上の長所と欠点

アイソメトリックの長所は、運動様式からみて障害の危険が少なく、

6 NHK教育テレヒ

最大運動負荷でトレーニングをしやすいところにあります。ということ は、アイソメトリ ック は過重な運動負荷でトレーニングしてこそ価値が あるものなのです。

この利点を生かすために生まれたのが、図6‑10のアイソメトリック ・ ラ ッ ク (パワー・ラックとも呼ぶ)です。若干、メーカーによって作り 方は違いますが、基 本 的 に は ら10の形で、多くのトレーニ ング場で使 6‑9 著者が30年前に購入したブルワーカー

図 610 アイソメトリック ・ラック

A国産品 B外国品

用されています。

この器具の最も大きな特徴は、最大筋力トレーニング実施者の安全を 守るために、前後 ・左右 ・上下にバランスを崩してもケガをしないよう に作られています。図

6 ‑ 1 1

2 2

年前に著者が考案したアイソメ トリ ッ ク・ラ ックです。パーの挙上コースが二つあり、固定されて上下するも のと、フリーに上下するものとがあり およそ 20~30 種目の運動がで きます。

つまり、アイソメト リックとは、一般人が「手軽に、簡単に」実施す るために企画された トレーニング手段ではなく、専門的にハイレベルの 筋力アップのために行う手段である、ということです。

最も大きな問題はNHKのやり方です。 NHKは「最大筋力7秒方法」

を提唱していますが、いずれのトレーニング種目も実施するのにはきわ めて難しいといえます。それは素人が行う「徒手によるアイソメ トリ ッ ク」だからです。自分の手足で運動した場合、どうしても自分自身の手 足を押さえつけることになりますから、負荷の強弱コン トロールをして しまいます。すると、

1 0 0 %

の筋力がでないどころか、何パーセントの 筋力を出しているのかすら分かりません。ですから、とても効果など期 待できるものではありません。

図6‑11 著者が

2 2

年前に考案し、現在も使用しているアイソメトリック ・ラック

アイソメ トリ yク・ スクワット系運動

アイソメトリ ック アイソメ トリ ック ベンチ ・プレス系運動 デッド ・リフト系運動

6 NHK教 育 テ レ ビ

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