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その他の腹筋運動は正しいか

ドキュメント内 NHKの間違いだらけの健康体力づくり番組 (ページ 131-145)

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3  その他の腹筋運動は正しいか

ここまでに、 5種目中の 3種目の間違いを解説しました。その他の2 種目も問題がありますから、どこが、何が、問題なのか間違いを指摘す

るとともに、その対処方法を含めて解説致します。

1)座布団上体起こし(シットアップまたはトランクカール) これは『ク ローズアップ現代』の「つまずき、転倒防止」の番組でも 出てきましたトレーニング種目で、第 1章の『クローズアップ現代』で は、これを「大腰筋」の運動として紹介していました。もちろん、その

やり方は適切ではないということを第 1章で述べたとおりです。

ここでは腹筋のトレーニングとして出てきました。問題は閉じ運動で 鍛える場所が違っている、ということです。 NHKの一貫性のない指導 が明らかにみえてきます。

そのやり方とは、体力のない人は仰向け上体起こしができにくいので、

4 ‑ 2 1

のように、背中に座布団(クッション)を置いて上体起こしを するものです。一見、きわめて合理性をもった運動のようにみえますが、

NHKのいう効果的な腹筋運動にはほど遠いもので、その合理性、効率 の面からみて問題があります。

(1)腹筋運動の可動領域とは

腹筋の基本運動は、フロアー水平位(背すじライン)からの仰向け上 体起こし(シットアップ)ですが、体幹(胴体)の可動領域(動く範囲) からみて、フロアー水平位では腹筋の最大伸展位(腹筋が最大に伸びた

ところ)から収縮位まで運動をすることができません。

すなわち、腹筋はアブマット(図

4 ‑ 2 2 )

とアブ ・チェアー (図

4 ‑ 2 3 )

のように、最大伸展位は背すじ水平位からマイナス 15度から 30度位ま で伸ばすことができます。これが最大伸展位から収縮させることができ る腹筋運動の可動領域となり、最も効果的に行うことができます。(ア ブとは腹筋のアブドミナルの略式語)

したがいまして、フロアーで行う腹筋運動を効果的に行おうとしたら 図

4 ‑ 2 2

のように座布団や枕を腰の位置に置いてやる方法になります。

NHKが紹介しているように、座布団を背中に当てる方法は、フロアー 水平位から 15度の位置からスタートすることとなり、明らかに効果的 に行うことはできないことになります。

ということは、この段階で確認できることは、 NHKのやり方は腹筋 が最も収縮力をもっ「フロアー水平位のプラス ・マイナス 15度前後」

の最も有効な運動位置を失うことになります。すなわち、この 15度前 後とNHKとの違いは、運動可動領域からみてプラス ・マイナス 30度 の違いがでるということです。

4 NHK朝の生活ほっとモーニング

図4‑21 座布団上体起こし(シットアップまたはトランクカール)

図4‑22 アフ'マッ卜・シ yトアプ(アブとは腹筋のアブドミナルの略式語)

+75 +75

‑15 .アプマットは、背すじラインマイナス 15度から上体起こしを開始する方法。

図423 アブチェアー・トランクカール(チェアー・クランチ) 45 + 45。

。アブチェアーは、 背すじラインマイナス30度から上体起こしを開始する方法。

(2)効果的に可動領域を大き くする腹筋台

人々はより効果的な腹筋運動をしようとして、単なる水平腹筋台(ア ブドミナル ・ボード)だけでなく、背中が反るアブドミナル・ボードや ローマン・ ベンチ(図4‑24)、そしてアブドミナル・マシンやアブドミ ナル器具(アブ ・チェアー図4‑23.25、アブ・マット図4‑22.26)など を作り、最大の効果を上げようとしたのです。

このような腹筋運動器具が最大運動効果を上げようとするものですが、

N H Kはこのような運動器具の存在すら知らなかったようです。

(3)体力のない人の上体起こし

体力がない人は上体起こしができない、とついて、安易に効果の出に くい方法を紹介してしまうのは指導力のない人のやり方です。他に指導 方法はいくらでもあります。

少なくても、腹筋を水平位まで伸ばし、そこから短縮性筋収縮を起こ させる補助的手段は、次のようにいろいろあるということを提唱してお きます。

上体起こしでの最大の負荷(重さ)は頭側の重量です。それを軽くす るには、 ①手(腕)の位置を腰側に移す。②タオルを使って手の力で頭 (頚椎)を持ち上げる(図4‑27)。③柱などの物に、タオル、チューブ、

ロープなどを掛けて、それを手で引くことにより上体を起こす。 ④何も ない場合は自分の足裏に物を掛けて手で引く (図4‑28)などの方法で す。

(4)腹筋運動と腰痛の関係

腹筋運動と腰痛の関係は、P.48の腹筋運動のところでいろいろ述べ てきましたように、そのポイントは仰向けに寝転んだ姿勢で上体を起こ すとき、股関節を曲げるか、足を押さえるか(固定)にあります。

したがいまして、図4‑29のBのように、股関節が屈曲し正しく維持 されていれば、頭側の形がどのように変化しでも問題はありません。

4 NHK朝の生活ほっとモーニンク

マン チ ェ アーシ ッ トアップ

図4‑24 ローマJ

図425 ア ブ チ ェア

図4‑27 タオルト ランクカール

図4‑26 ア ブマット

yトア y 図4‑28 チューフ ・ゾ

図4‑29 腰痛と股関節の関係図解

①②一一‑‑‑ゆるんだ筋肉

o.

一一一一緊張した筋肉

B大腹筋最低負荷

A大腰筋最大負荷 固定

‑関節

⑨筋肉が起こるところ

③筋肉が付くところ

①大腿直筋

②大腰筋

③腹直筋

+ A

は股関節を伸ばすことにより大腰筋が緊張するから上体を起こしやすい。 Bは股関節を匝曲することにより、腰椎を号│っ張り上げる大腰筋がゆるむか ら腰痛が起こらなL、。

2)座りひ ざ持ち 上 げ(シ ーテッド・ニーレイズ)

座ってひざを持ち上げ方法は、股関節屈曲運動が優先されるので、き わめて遺憾な方法にもかかわらず、ごていねいに二つの方法を解説して いました。

(1)手でひざを押さえる方法(図4‑30)

この運動方法は、椅子に座って、手で片ひざを押さえて、そのひざを 持ち上げる方法です。しかも、この方法をきわめて効果の出にくい、 7 秒静止の 「アイソメトリックニ等尺性筋収縮で行う」としています。

この方法が腹筋運動からみて、なぜ問題であるかを図4‑29により説 明します。まず、 基本的に 「ひざを持ち上げる」という動作は、今まで にも繰り返し出てきましたように、腹筋運動ではなく「股関節の屈曲運 動」であるということです。

それを行う股関節の屈曲筋は、屈曲動作あるいは屈曲角度によって若 干の違いがありますが、大腿(ひざ)を持ち上げるのに、主動的働きを する作用筋は、 ①大腿直筋、②腸腰筋(大腰筋 ・腸骨筋)、 ③大筋膜張 筋、 ④縫工筋の順番になります。すると腹筋は出てきません。つまり作 用筋ではないということです。この理由も先に述べたように「腹筋は脚

図4‑30 NHKが腹筋運動と称する 座り股関節屈曲運動

4 NHK朝の生活ほっとモーニング

図4‑31 NHKの腹筋運動の図解

図4‑32 座り腹筋運動(チェアークランチ)

その特徴→背中が丸くなる

についていない」ということと同じことで、直接的作用をしないのです。

あくまでも骨盤の安定のために作用しているのに過ぎません。ですから、

ゲスト出演していた人が「ももにも効きます」といったのです。

①  背中が丸くなる前屈姿勢

それでも「腹筋に効いています」といったとしても、ゲスト出演者ど ころか解説者までが、腹筋が働いたときの特有姿勢「背中が丸くなる状 態」になっていません。

4 ‑ 2 3

のチェアー・クランチの姿勢を見れば分かるとおり、座った 状態で腹筋運動すれば、上体は前に曲がり背中が丸くなります。

NHKのやり方と閉じような姿勢から、我々のやり方で具体的に示す と図

4 ‑ 3 2

(シーテッド ・チューブ・クランチ)のようになります。こ れが最も効果的なやり方となります。ちなみにモテールを努めている方は、

特殊に訓練された方ではなく、素人の 75歳のご婦人です。

②  ももへの意識集中で背中が反る

腹筋運動は上体を前に曲げる(脊柱前屈)という動作です。 NHKの は「もも(ひざ)持ち上げ動作」なので、神経からの運動命令はももを 持ち上げることに意識集中してしまいます。すると、ゲスト出演者に見 られるように、ももを持ち上げようとして、ますます腹筋が伸びて上体 がは反り上がり、背中は真っすぐになっていきます。(図

4 ‑ 3 0

A)

③  アイソメトリックは難しい

NHKは、この腹筋運動方法を反復運動ではなく、その動作は 7秒静 止のアイソメトリックとして行っていましたので、尚さら難しい方法と なります。運動動作のないアイソメトリックは運動負荷の確認がしにく

く、継続性がなく 、効果を上げるには難しい運動となります。後でその 理由を詳しく述べます。

( 2 )

座り両ひざを持ち上げ運動(図

4 ‑ 3 3

3 4 )

この「座りひざ持ち上げ」を(1)と (2)として 2つ種目を一つのカ テゴリーに入れたのは、両者の運動方法の間違いが同じである、という 理由です。その他で特に問題となるのは次の点です。

4 NHK戟の生活ほっとモーニング

①  運動が後半の半分しかできなし、。

両者は座った姿勢から腹筋運動をしようとするところに問題がありま す。座るということは、運動前に股関節が90度まで曲がっています。 最初の初動の一番運動に良いところがなく、後半の運動しにくい効果の 出にくいところが残り、きわめて効果的ではないことが分かります。

この点が、どしても理解できない方は、図 4‑35のAように椅子に座 りダンベルを持ち、テーフ、ルに肘を乗せてからの腕曲げと、 Bの腕を真っ すくに垂らした状態からの腕曲げをしてみてください。AとBどちらの やり方に運動の刺激効果があるかは明らかとなります。

図4‑33 N H Kの座り膝持ち上げ

図435 肘を曲げた状態から

図4‑34 N H Kの座り膝持ち上げ図解

・関節

①筋肉が起こるところ

⑧筋肉が付くところ

①大腿直筋

②大腰筋

③腹直筋

図435 肘を伸した状態から

②  プログラム上必要ない

まず大前提としてプログラムとして必要ないということです。 P.120 で述べたように、腹筋は「縦・横・斜め」に筋肉が走っており、しかも 筋肉が起こるところと、付くところ共に運動するという特徴から、同じ 要素の運動ばかりやっていると、鍛えられない積み残し部分が出てきま す。ですから、どうみても、この「座り両ひざ持ち上げ運動」は、もう 入れる必要がありません。

しかも、前項の(1)と同様、腹筋運動からみたその運動方法は、作 用筋、前屈姿勢、ももへの意識集中しすぎなど、全く同じ過ちをおかし ているわけです。したがいまして間違い指摘は同じになりますから省略 致します。

3)その場足踏みもも上げ (図4‑36と37)

この種目で「脚持ち上げ腹筋運動Jは

5

種目めになります。何と腹筋 運動の6種目中5種目が、この「脚持ち上げ腹筋運動」なのです。この 度の「おなか引き締め」というテーマが理解されているとはとても思え

ません。

図4‑36 その場足踏みもも上げ 図4‑37 その場足踏みもも上げ図解

‑関節

⑨筋肉が起こるところ

⑧筋肉が付くところ

①大腿直筋

②大腰筋

③腹直筋

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