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第1節プログラム作成について 1調査と実践の結果から

 本研究では,進路指導の基盤であると言われている自己 理解を発達させることが進路成熟を促進し,主体的な進路 選択の支えになるという考えの上に立ち,自己理解を進め る進路プログラムの作成を行った。その際,自己理解を単 に「自分のことがわかる」というものではなく,「自分のこ とがわかった上で,あるがままの自分を受け入れ,将来に 対して明るい展望を持つこと」と規定した。そして,真の

自己理解を発達させるためには,単に自己について分かる だけでなく,自己受容性を高め,locus of controlを内的 統制方向に高めることが必要であるとの考えに立ってプロ

グラムを作成することにした。

 作成に先だって,プログラムの中に自己理解を進める機 会として職業体験を組み入れることにし,研究1では職業 体験による自己理解の変化を調査した。調査の結果,自己 理解を進めるには,プログラムを通して事前に自分の個性 や適性を知る機会を作ったり,事後セッションを設けて職 業体験をふりかえることが必要であることがわかった。こ の結果と先行研究を受けて,生徒の特性やニーズに合わせ たプログラムで対応ができるように複数のプログラムを作

成した。

 研究Hでは、このプログラムを使った実践を行い,その 効果を検証した。そして,プログラムを学校で使う際によ

り効果をあげることを意図して,プログラムの査定モデル

を作成するとともに,利用上の留意点をまとめるために,

自己受容とlocus of con.trolの事前得点による特徴(自己認 知タイプ)別の効果測定や面接過程の分析,インタビューに

よる分析を行った。

 その結果,次のようなことが明らかになった。

(1) 職業体験によって職業観,勤労観を発達させること   は,先行研究で確かめられていたが,本研究で自己   受容とlocus of contro1を高めることが分かった。

(2) 自己認知タイプによって効果があがる面接に違いが   ある。自己認知タイプ得点の低いAタイプ,Eタイ   プの生徒には,自己受容面接が効果的であり,自己   認知タイプ得点の高いCタイプの生徒には,LOC   面接が効果的に働く。自己認知タイプ得点が平均よ   りやや上のDタイプや自己承認,自己価値,自己理   解が平均より上で10cus of controlと自己信頼が平

  均より低いBタイプには,自己受容面接もLOC面

  接も効果がある。

(3) 自己受容面接によって友達から肯定的な自己像を伝   えられたり,職場で評価されたりする体験が,自己   受容やlocus of controlを高める。

さらに,生徒のインタビューから次のことが示唆された。

(4) :LOC面接では,当日の仕事内容をはっきりとイメ   ージし,目標達成に向けて検討した上で十分な達成   感を持つことが自己受容やlocus of controlを高め   る。

(5) 体験先が希望どおりいかなかったり,体験日当日欠   席しなければならないようなことが起こると,10CUS

  of controlは下降する。

(6) 自己受容の下位尺度項目のうち,自己承認は,自己   理解(下位尺度項目:自分のことがわかる)がある程   度進むと下がることがある。

2結果を受けての全体的な考察

(1)自己受容を高めるプログラムと

  1。cus。f c。ntr。1を内的統制方向に高めるプログラム

 これまで述べてきたことから,自己受容を高めるプログラ ム(自己受容面接)と10cus of contro1を内的統制方向に高 めるプログラム(LOC面接)の効果が自己認知タイプによっ て違いがあったことについて考察する。

 自己受容プログラムでは,自己受容の下位尺度項目得点や LOC得点の低い生徒に効果がみられた。これは,自己受容 プログラムが一貫して肯定的な自己イメージをメッセージと

して面接を受ける側に送っているからである。自己受容プロ グラムは,メッセージを積み重ねることによって効果をあげ ていると考えられる。面接を受けた生徒たちにとっては,面 接で得られた自信の上に,実体験でさらに自信を重ねること

によって自己理解が進んでいくのであろう。

 LOCプログラムは,自己受容の下位尺度項目得点やLO

C得点の比較的高い生徒に効果がみられた。自己認知タイプ

得点の高い生徒は,体験する職種や自分にふさわしい目標や

目標の達成基準を定めることができるからであろう。LOC

プログラムが体験内容と本人の事情に即した目標を持ち,そ

れを達成したという達成感を持つことによって効果を発揮す

る。第2章第4節で述べたように,自己受容も locus of

contro1も無得点群では,単に職業体験をしたというだけで

は,自己理解を進めることはできなかった。locusofcontro1

は明確な目標を持ち,それを達成したという達成感を伴わな いと高まらないのである。LOCプログラムは高得点群のそ うした要求にかなっていたと考えることができる。 しかし,

LOCプログラムは「目標設定一当日のシミュレーションー 目標を意識した行動一目標達成一達成感の保持」という一連 の流れがきちんと連動することによってその効果を発揮する のである。その点が受容プログラムとの違いである。

 以上のことから,それぞれのプログラムを実施する際には,

これらの特徴を生かして利用することが重要である。

(2)グループ面接という形式

本プログラムの特色の1つにグループ面接を用いたという 点があげられる。グループという形式については,第5章で ふれた通り,ほとんどの生徒が賛成しており,「友だちがい たので安心できた」「友だちの指摘で自信がついた」など,グ ループ面接のねらいと一致した調査の回答および感想が得ら

れている。

 しかし,グループでの面接を行って効果をあげるためには,

グループ内の人間関係が大きな意味を持つと思われる。第5 章に記したとおり,グループ内の人間関係がよくない場合に は,自己理解を発達させることは難しい。自分が信頼する人 がいてくれるから安心感が生まれるのであり,自分が信頼す る人の指摘であるから自信がつくのである。グループを編成 する際には,人数で単純にふりわけるのではなく,構成員問 の関係が本当に仲のよい友だち同士となるようにすることが

必要である。

(4)職業体験における事前・事後指導

職業体験などの啓発的体験における事前・事後指導の重要 性は,これまで数多く言及されてきている(岡田忠義,1991;

鶴来町立北辰中学校,1994;文部省,1994c)。それは,実際に 指導に当たっている教師も痛感していることであり,現に本 研究の調査校、実践校でも,事前・事後指導の時間は十分確 保され,取り組みにも工夫がなされていた。しかし,本研究 を通して啓発的体験における事前・事後指導を改めて考えて みると,今後さらに必要とされるのは,個に向けての配慮を 伴った事前・事後指導を行うことではないだろうか。学年団 を中心とする中学校の指導体制の中では,学年の計画に基づ く一斉指導に主眼が置かれるのは当然のことかもしれない。

しかし,本研究の質的分析の中で追究したように,生徒の自 己認知タイプにより体験や面接の効果に違いが出ることや,

体験に向けての経緯(希望どおりの職場に行けない,体験当 日欠席してしまうなど)によっても生徒の自己理解は低下す ることを考えたとき,啓発的体験をより効果的なものとして 機能させるためには,一斉指導を1つの車輪とすると個への 配慮による事前・事後指導がもう1つの車輪として必要なの ではないだろうか。本研究における2つのプログラムも個へ の配慮を担う手段として活用することができるのではないか

と考えている。

(3)査定モデル

 第5章でも考察したように,自己認知タイプによって面接