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(2)面接者とグループの生徒との関係

 実践を行った学校は,面接者が3年前まで在籍していた学校であ る。面接群の中には直接担任した生徒はいないが,その兄弟の担任,

教科担任,部活動の顧問などをした生徒が含まれている。

(3)得点変化からの考察

 Table5−1〜3に示した得点変化と自己認知タイプを中心に考察す る。まず,4班についてみていくことにする。Table.5−2からすべ ての生徒の受容得点が上昇している。自己理解と自己信頼の項目の 上昇が目をひく。このグループの特徴として,構成員5人のうち3 人の自己認知タイプがDタイプであることがあげられる。第1節 で述べたように,Dタイプは,5つのタイプのうち,面接の効果が 最もよく現れたタイプである。

 このグループでも,受容面接で自己に対する肯定的な情報を得た ことによって自己理解を深め,さらにそれが自信につながり,自己 信頼を高めたのであろう。DタイプのE男,AタイプのT男のlocus of controlの低下は,次の面接過程での考察で詳しく述べるが,希 望した職種での体験先がなかったことが影響しているものと思われ

る。

 次にTable.5−1から2班について考察する。このグループはa女

を除いた2人の受容得点が上昇している。Cタイプのa女は,面接

の際の印象から,真にlocus of controlと自己受容が高い生徒であ

った。調査結果からすると,自己理解の低下が大きい。面接につい

ての事後感想調査では,

「面接の回数はもっと多い方がよい」「面接をしてこれまで気づい ていなかった自分の性格や特徴を知ることができた」「職業につい

ての自分の興味を整理できた」(a女)

を選択しており,本人は面接によって,自己理解を深めたと考えて いる。新たな自分を知って,まだまだ知らない自分があると感じた のであろうか。Aタイプのd女と:Eタイプのe女には,受容面接 が効果的に働き,locus of control,自己信頼などの自信に関わる 項目が上昇したのであろう。

 次に,Table.5−3から8班について考察する。このグループは あまり効果があがらなかった。得点が低下した2人のうち,q女は Aタイプの生徒でg女はBタイプに属する生徒である。自己認知

タイプから考えると,どちらもLOC面接よりも受容面接で効果が あがるタイプである。面接についての事後感想調査でもg女は,

 友達と一緒にやるので来るのが楽しみだった。自分のことが少

しわかったような気がする。(g女)

と書いている。それが自己理解の得点増加につながったと考えられ る。そして,自己承認の減少は,自己理解の進化に伴う「自分を変 えたい」という気持ちの現れであろう。しかし,自己価値の減少に ついての理由はここで考えることは難しい。また,q女も面接につ

いての事後感想調査で,

 いろいろと職業体験の目標をちゃんと持って職業体験に行くこ とができた。面接は楽しかった。(q女)

と書いている。この生徒は,自己信頼,自己理解が下降し,自己承

認と10cus of controlが上昇するという結果であった。本人が面接 に対して抱いた感想と調査結果とのズレが感じられる。

 3つのグループの得点変化と自己認知タイプ,面接後の感想を手 がかりに考察を進めてきたが,前節で述べた自己認知タイプと効果 のあがる面接との関係がここでも確かめられた。ただ,8班のg女 とq女については,それには当てはまらなかった。得点の減少は,

2人とも素点で1点であり,大きな変化ではない。自己認知タイプ や得点変化,本人の感想からは,得点減少の理由は明らかにならな かったこの2人の結果については,次に述べる面接過程からの考察 でより深く追求していきたい。

(4)面接過程からの考察についての分析方法

 各グループの面接の記録と面接過程の中で用いたワークシート

(プログラムの流れに従って書き込みができるようになっている用 紙)の内容を中心に考察する。本段では考察のみを掲げ,面接記録 は,表にまとめてAPPENDIXに載せるので併せて参照されたい。な お,分析で扱わなかったグループの記録についても,APPENDIXに

掲載した。

 また,面接記録については,その内容を羅列的に示すのではなく,

本段の分析に関係する次の内容について取り上げた。

(1)構成員の関係性がわかるやりとり(表では△で示す)。

(2)自己受容,locus of contro1に関係するやりとり(表では★で

  示す)。

(3)職業体験や職業に対するグループ構成員の考え(表では◎で

  示す)。

(5)面接過程からの結果と考察

面接過程について,次の点から結果の概略を報告し,考察をする。

①面接の雰囲気について

 3つの班ともに,和やかで明るい雰囲気であった。面接者への緊 張や遠慮も特になく,本音で話し合うことができた。特に問題とな

るようなことはなかった。ここでのグループによる差はみられなか

った。

②体験先決定の経緯について

 自己受容と10cus of controlの得点変化に影響するものとして,

体験先決定に至る経緯があげられる。4班のE男とT男は,将来の 希望に合致したはっきりした体験先の希望を持っていた。しかし,

希望通りの職種の受け入れ先がなく,妥協しなければならなかった。

2人とも,自己受容得点は上昇しているが,10cus of control得点 は下降している。体験:先と希望の一致については,安達・平尾が,

大阪府の中学校2年生を調査し,

 希望が受け入れられた者は,そうでない者より能動的に活動し,

新たな発見も多く,そこで得られた充足感は良好で,仕事への理解

や自覚の程度も高い(安達・平尾,1999,p.169)。

と報告している。このE男とT男の結果も,体験先が希望通りにい かなかったことが影響したのではないだろうか。

 したがって,面接を進めていく中で体験先が希望通り決まらなか った生徒について,面接者側の配慮がプログラムの中で必要となる。

それは,体験先の決定がうまくいかなかった時には,投げやりにな

らずに少しでも興味のあるものを探すように援助をするとか,体験 先に決まった所で本人にとって有意義な目標を見出せるように援助

するなどである。

③ 面接過程での自己受容の深まりについて

 面接のセッション2,3(以下#2,#3のように表記する)の「よい ところ発見」「私は…です」での3つの班の構成員の反応をみてもあ

まり違いはみられない。

 ・書いてもらったのを見てがんばろうと思った(2班e女)。

 ・自分のことを書くより友達のことを考えた方がよくわかる        (4班D男・N男・丁男)。

 ・私はこういう所があるんだっていう発見があった(8班q女)。

などの感想が出された。自己受容面接で,友だち同士で指摘し合う ことが「知らなかった自分」の発見につながったり,新たな自信を生 むことは,これまで述べてきたことの裏づけとなるものである。

④職業に対する考えについて

 面接の効果があがった2班,4班とあがらなかった8班の違いに ついて面接過程を通して考えると,職業に対する意識の違いが影響

しているのではないかということが考えられる。2班,4班の生徒 たちは,将来就いてみたい職業がかなりはっきりしており,職業体 験の職種もそれに基づいた選択を考えている。(Table5−4)8班の 生徒たちは,p女を除いてそういう意識は薄い。 q女は,子供の夢

を引きずりながらも,かなり現実的なものの見方をするようになっ てきている段階である。

将来の職業として モデル・俳優等にはなれるといいけどなれそ

         うもないから,保母・看護婦等の中から選ぼう

         と思っている。(#1,q女)

体験先の感想:ホテルは働く所ではなくて泊まる所,外はきれい       だけれど中に回ると違うと思った。(#5,q女)

がそれを物語っている。しかし,夢と現実との統合はできておらず,

漠然とした憧れから職種を選んでいる。体験当日,体調を悪くした のも,緊張感と仕事へのイメージの違いが生んだショック的なもの ではないだろうか。q女の自己信頼とlocus of control得点の低下 や自己承認の上昇は,こうした彼女の体験がもたらしたものではな

いかと推察される。

Table5−4 受容面接生徒の体験先と動機

名前

体験先

動     機 興味のある職種 結果 d女 2 美容室

将来就きたい職業だから

美容師

受OLO

e女 2 書店

人前に出なくていいお店だから

お店屋さん

受OLO

a女 2 ホテル

人の役に立ちたい 医療関係 受×L×

D男

4

鉄工所 CPの操作ができるから

医療関係・

受OLO

CP技術者

M男 4 ホテル スイミングを持つホテルだから スイミングイン

受OLO

ストラクター

N男

4

機械工場 機械に興味。一人で体験したい

薬剤師・機械

受OLO

設計

E男 4 ガソリンス 将来バイトで経験するから

CP技術者 受OL×

タンド

T男

4 書店 将来バイトで経験するから 大工

受OL×

9女 8 ホテル ホテルの掃除がしてみたい 特になし

受×LO

P女 8

動物病院

将来動物に関わる仕事:がしたい。 飼育員・動物 受×

関係

q女 8 ホテル ホテルの掃除がしてみたい 保母・看護婦

受×L×

※結果については受容が上昇ならば受○,LOCが上昇ならば○下降ならば×

 職業体験の職種選びの際には,将来の職業を見通した選択が自

己受容を高めるために必要であることは,第2章の調査結果からも

明らかである。その結果を受けて,受容面接のプログラムにそれを

組み込むことは意図したわけであるが,8班の面接では,それが十

分に果たせなかった。