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化学と生物 Vol. 55, No. 3, 2017
女性研究者賞の創設とその意義
裏出令子
京都大学大学院農学研究科日本農芸化学会
● 化学 と 生物
巻頭言 Top Column
Top Column
2017年度,農芸化学会では女性正会員を 対象とする「農芸化学若手女性研究者賞」
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「農芸化学女性研究者賞」
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「農芸化学女性 企業研究者賞」が創設された.これらの賞 は,植田和光会長の発案を受けて男女共同 参画委員会が原案を作成したもので,2016 年5月と7月の理事会で審議され設置が認 められた.現在,女性賞を設置している日 本の学会は非常に少なく(男女共同参画学 協会連絡会に加盟している約90の学協会 のうち8学 会),賞 の 設 置 に 対し て そ の
必要性 に疑問をもつ会員もおられるこ とと思う.そこで,賞の原案作成に直接か かわった者として,女性賞創設の背景を紹 介し,その意義と必要性を説明したいと思 う.さて,経済・社会の状況は日々地球規 模で大きく変化している.このような世界 情勢の下で日本が新たな未来を切り拓き国 内外の諸課題を解決していくためには,科 学技術イノベーションを強力に推進してい く必要があることは論を俟たない.日本の 既存の社会制度は,先の大戦後の日本の発 展を支える土壌として有効であったとされ る一方,流動性の欠如,ジェンダーによる 役割分担,「阿吽の呼吸」による意思決定 など,「同質性」を重んじ「異」を排除す る特性をもっており,これらは科学技術イ ノベーションの フロンティア に挑戦す る際には足かせとなっている.科学技術基 本計画において,この足かせから抜け出す 切り札は「人材の多様性確保」と「流動性 の促進」であるとされ,女性研究者の活躍 促進(最小必要人数の確保と登用)が不可 欠であると謳われている所以である.農芸 化学会に目を転じてみると,会員の女性比 率は学生会員が38%であるのに対して正会 員は17%と半分以下,役員や委員として学 会の意思決定にかかわる,あるいは学術集 会においてリーダーシップをとる女性比率 はさらに低く,また,既存の賞の2016年 度までの女性受賞者数は,学会賞2名,功績 賞1名,奨 励 賞20名,技 術 賞12名 と,
お世辞にも女性研究者が十分に活躍してい るとはいえない現状である.このような状 況を打破するためには,「支援」
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「環境の 整備」,
「見える化」,
「意識改革」,
「女子中 高生やその保護者への科学技術系の進路に 対する興味関心や理解の促進」が必須であ り,学会としても意識的な取り組みが求め られる.このたび創設された賞は,農芸化 学分野で優れた成果を上げている女性研究 者を「奨励する」とともに「見える化」す ることを目的としており,受賞を足がかり として将来のキャリアアップにつなげても らうことを狙っている.筆者は賞の原案起 草に先立って,日本における男女共同参画 の取り組みを牽引されてきた複数の研究者 から女性賞について資料の提供および意見 やアドバイスをいただいた.特に強いイン パクトを受けたのは,ある学会では理事会 の反対に遭って女性賞の設置がなかなか実 現しなかったが,ようやく賞が設置され候 補者を募集すると極めて優秀な女性研究者 が少なからずいることがわかり,受賞者は 喜びと誇りをもって受賞しているとのお話 であった.また,候補者がすぐに枯渇せ ず,選考基準が明確である賞を創ることが 大事との助言をいただいた.このような先 駆者の貴重なアドバイス,植田会長の強力 な後押し,そして理事の方々のご理解とご 支援のお陰で,一度に3つの女性賞創設が 実現できたのである.短期間で賞の創設が 実現したことはほかの学協会から驚きを もって迎えられており,植田会長の英断に 心から敬意を表したい.女性賞が女性研究 者の増加と女性リーダーの育成に寄与し,農芸化学会で男女共同参画が当たり前のこ ととして実現する日を楽しみにしている.
Copyright © 2017 公益社団法人日本農芸化学会 DOI: 10.1271/kagakutoseibutsu.55.151
プロフィール
裏出 令子(Reiko URADE)
<略歴>1977年大阪府立大学農学研究科 農芸化学専攻修士課程修了/1978年京都 大 学 食 糧 科 学 研 究 所 文 部 技 官/1988年 Roche Institute of Molecular Biologyポス ドク研究員/1989年同助手/1994年同講 師/1995年同助教授/2001年京都大学大 学院農学研究科助教授(後准教授)/2010 年同大学大学院農学研究科教授,現在に至 る.2015年度から農芸化学会男女共同参 画委員会委員長<研究テーマと抱負>ナノ 構造と食品物性との関係・食料種子貯蔵タ ンパク質の立体構造形成の仕組み<趣味>
読書,音楽鑑賞
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